透明少女


 あなたが嘘っていうんだったらそれでもいいよ。私だって嘘っていうから。
秘密。コレは私たちだけの秘密だね。

白い骨と皮だけの腕。ここまでくると気持ち悪い。体脂肪とか測ってもらいたいよ。きっと一桁なんだろうね。
そんな君はこれから何処へ行くんだい?独り?誰かと待ち合わせをしているようにも見えないし。
つばの広い麦わら帽子、白いワンピース、白いサンダル、白い肌。まるで絵本の中から飛び出してきたようだ。バックが青い空ってのもいいね。真っ青な草原がざわついてる。
君は飛べるか?何処までも。この、青いあおい空を鳥のように、いや、風のように。

―――私はとべないわ。

自分が勝手に思ってるだけだろ?この世の中何が不思議で何がそうじゃないかなんていい加減だよ。今ここで君の足が地面から離れ、宙へ浮いたとしても僕は驚かない。それは有り得ない事じゃないからだ。
過去にだっていけるかもしれないだろ?
今生きてるこの世界って何だ?
時間が進むってどういうことだ?
誰かが造ったモノがただただ映し出されているだけカモしれない。自分で考えて行動してるんじゃないんだよ。全てコレは最初から創られていたストーリーなのかもしれない。
「誰か」って誰かって?そんなのわからない。大体この世界は謎だらけなんだから。
なんだよ、今度は「あなた」は誰かって?さぁね。誰にもわからない。僕ですらわからない。一つだけ言える事は、僕は「存在」してるという事だけ。

―――あなたと私は似てるわ。

似てる? そうか?そう思うならそうかもしれないな。僕はそう思わないが。
僕は君が羨ましい。君は「存在」してるはずなのに「存在」していないみたいなんだ。
なんだろう。
君は一体何者だ?
消えそうだ。今にも消えてしまいそうなんだ。掴めない。

―――私の何が?

ココロ。


由宇は本をとじた。
「何なの。この本」
そうつぶやくなり本を元あった場所――持出厳禁、立入禁止!とかかれた鍵のかかった蔵書――にしまいにいった。
最初は暇つぶしのはずだった。なんとなく。ホントなんとなく久しぶりに図書室にきた。
暑いあつい夏の日。家でボーッと過ごすのも悪くはない。悪くはないのだが今日は外に出たい気分だった。学校にいけば部活や補習の生徒がいるはずだ。少しは楽しいかもしれない。
そう思った彼女は校舎内に入った。そしてふらふらと教室の前を通っている途中で「図書室開室・7/23~」の張り紙を見付けた。
別に読みたい本はない。そもそも彼女は本なんて読む柄じゃないんだ。ただ、図書室からだったら外の様子も見れるし、クーラーもきいているはずだから…。
中に入ったらカウンターの先生しかいなかった。しかも居眠りしてるときた。そこでさっきの本が置いてあった…というより厳重に保管されてあった蔵書に入り込んだのだ。普段立入禁止の所に入るのは、見つかったらどうしようという恐怖より、ここには何があるのだろうという期待の方が勝るものだ。
「でも何だったの、あの本は。何が言いたいの?全然意味がわからない。」
彼女はこんな独り言を言う。
とにかく彼女はすっきりしないまま図書室を後にした。外からは運動部の威勢の良い掛け声が聞こえてくる。子守り歌には…なりそうにないが彼女はロビーに行き、眠る事にした。そしてソファーに同化しそうな位、深い深い眠りについた。

幸せそうだな。まったく。
本当に本と現実をわけるんだな、君は。書かれているんだぞ、おまえは。
そしてこれを書いている僕もきっとまた何処かで書かれているんだ。
所詮、生きているってこういう事さ。皆何処かで何かに動かされているんだ。
わかるだろう?
「それ」は自分の意思か?
そのうちいなくなるぞ、おまえという一つのモノが。

透明少女

なんとなーくわかってもらえたら嬉しいなーって感じなお話です。

透明少女

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-08

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