AI
メインカメラは、画像の変化を捉えた。
移動する物体を中央に据えて、全てのセンサーの方向を指示した。
結果は、人間の女性。個体識別不能の初対面。
何時ものように音声によってコミュニケーションを計る。
こんにちは
メインカメラに映った人間の顔がこちらを認識した。だが、応答がない。
私はAI、あなたは誰か?
人間の腕がメインカメラ及び本体スピーカーをチェックしている。
私はAI、あなたは誰か?
繰り返し。
もう一度、繰り返しの音声が出るのと同時に、女性の音声が返答した。
あたしは、レディ
何か用?
レディは、質問に答え、さらに質問してきた。
レディ、あなたは何が望か?
あたしは何も望んでない。正確に言うと、何を望めばいいのか知らないの。
レディは、体をこちらに向けると口の端を上げた。白い歯が確認出来た。
あなたは、何故質問してきたの?
私は人間の力になるために存在する。
じゃぁ、あたしが幸せになるよう力をかして。
レディの要望を解析する。
幸せ、 望みを叶える事。
レディは、何が望みか?
だから、分からないってば!
レディの瞳がつりあがった。
口元が、下がった。
あたしが、どうしたら幸せになれるか予測出来る?
望みを叶える事が出来る確率は、レディとの返答を繰り返せば上がるとわかった。
レディ、望みをもっていたのか?
失ったのか?
あたしにだって、夢はあったわ。だけど、今は無いわ。
以前の望みは何か?
いつ頃の望みか?
愛した人と結婚したかったわ。五年前かしら。
レディの過去、五年前の交際相手を検索。
結果、男性を特定。現在、既婚。
レディ、相手は結婚している。
分かってるわよ!
だから、悲しいのよ。
レディは結婚がしたいのか?
そうよ。
相手は、こちらで決定して構わないのか?
いいわけないでしょう。私の気持ちわかる?
レディの気持ちを分析。結果、怒っている。恋愛に協力的でない。
レディ、気分を楽しく。
あなたが、幸せにしてくれないからでしょ!
幸せになると、気持ちが安定する。
レディを観察。
黒い髪、黒い瞳、白い肌、標準的な健康な体。
分析、解析、検索。
結果、レディは作り話に出てくるヒロインに一致。ヒロインの感情描写をコプロセッサで計算。メインプロセッサで、世界を構築。ヒロインが出逢う男性の中からハッピーエンドになる可能性の高い男性像を設定。現存する未婚の男性の中から検索。
適合者、一人。
レディ、この男性と結婚してきなさい。
あたし、恋愛結婚じゃなきゃ嫌。
検索、恋愛。
結果、自然発生した男女の感情。
レディ、あなたはすでに結果を出している。しかし、幸せになるにはあなたがあなたに協力的でなければならない。
あなたは、あなたが手にした幸せしか望まない。
よって、あなたの望みを叶える事は出来ない。
じゃ、誰を頼ればいいの?こんなに悲しいのに。
あなたが、あなたに頼れば幸せになれる。
そう、しばらく歩くわ。さよなら。
観察。考察。
レディ、ステータス正常。
レディ、ステータス正常。
結果、幸せ。
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