千年物語

始まりの刻

「…こんなのありえねぇ。」
高校1年生の主人公、榊 勇斗は1枚の紙を見つめてうなだれている。
その真っ白な紙に赤字で記入されている゛0点゛の文字。
テストの点数で0点とるなんてのび〇君以外もいるんだ。とさらに落ち込む
それも5教科すべてのテストにおいて、見事に無回答の0点なのである。
これはさすがにのび〇君より馬鹿なんじゃ…。もう絶望しかなかった。
「勇斗が全部0なんてめずらしいじゃんー!」
そう馬鹿にしたように話しかけてきたのは、クラスメイトの灰原 隼であった。
もともと、勉学においては可もなく不可もなくだった勇斗。
しかし、自身はテストには回答を半分ぐらい記入はしているはずであった。
誰かの悪戯で答案用紙をすり替えられたのか?と思う勇斗だったが、結局その答案用紙は紛れもなく自分のものだった。

勇斗の通う高校ではあまり欠点者がいない学校であった。
生徒が皆、頭がいいというわけではなく単にテストが簡単なだけである。
故に、欠点補習の授業の参加者は少ないので教師にこっぴどく叱られるのである。
うだるような暑さの教室(どうやらクーラーが壊れて電源が入らないようだ)で一人でポツンと教師を待つ。
窓の外をのぞくと、生徒のほとんどがすでに帰宅を終えているので人の気配は0だった。
「もしかして、俺一人かよ…」
1人で補習もよくあることなので。
独り言にしては大きすぎる声で愚痴を漏らした瞬間、黒板の横にある扉が開いたのである。
と、同時に教師ではなく生徒が2人入室してきた。
内心少しホッとしていた。
「おーい、勇斗!おまたせ‼」
聞きなれたうざい声が教室に響いた。
やはりというか、あっぱれというか、隼も欠点者の1人であった。
隼は毎回のテストにおいてことごとく補習授業に参加していたのである。
本人は頭が悪いので回答できないのではなく、テストに興味がないので回答しないのである。
だが、もう1人の入室者はこの場においてかなり場違いな生徒だった。
その少女は、生徒会長の立花 葵だったのだ。
いままで成績優秀、容姿も綺麗、まさにパーフェクトな生徒だった。
彼女の登場により場の雰囲気がかなり悪くなった。
隼もどうやら生徒会長、葵に気を使って、そんなこともあるだとか、人間は頭良ければいいってもんじゃないだとか、話しかけていたが葵はうつむいて黙っていた。
どうしたもんかな。
時間がたつにつれて勇斗も葵も、ついには隼も黙り込んでしまった。
間を察したかのように扉がガラガラと音を立てて開いた。
今度こそ教師が登場した。が見たことがない教師だった。
入学してから2か月以上たっているので、認識できていない教師がいたことに少し驚いた。
教師がゆっくりと言葉も発さずにプリントを配り始めた。怒っているのだろうか?
3人の生徒にプリントが配られた。
プリントには何も書いてなく、名前記入欄すらないので、印刷ミス?とか思いながら手を挙げてプリントを取り換えてもらおうとした。
その時、教師が数珠を取り出しその場でお経?らしきものを唱え始めた。
勇斗は不思議とそのお経に聞き入ってしまっていた。他の生徒も聞き入っていたはずだ。
意識が虚ろになり、我に返った時にはすでに遅かった。
「な…なんだよこれ‼」
刻印が真っ白なプリントにあらわれ、青白く発行していた。
その刻印からチェーンが伸びており、勇斗の手元に巻き付いていた。
そのチェーンは具現化しているわけではなく単なる絵のようなものだが、そこに本物のチェーンがあるように身動きが取れなくなっていた。
驚いた勇斗が声を発し、隼に目を向けた。が隼も同じくチェーンにより身動きが取れないようだ。
「おい勇斗、あの教師の手元みてみろ」
隼がいつも以上に冷静な声でゆっくりと話した。
目を向けると、教師の両手にはサバイバルナイフが2本、夕日に反射し赤く光っていた。

千年物語

千年物語

何も変わらない日常に突如として現れた“神“という存在。 榊は神々に突如、命を狙われる存在となった! 驚き戸惑う彼の目の前に現れたのは、神に抗い戦う人々“神撃団“だった。 魔法、剣術、武術、狙撃なんでもありのバトルファンタジー‼

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-07

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