パラレル
昔どこかでみた一文の小説が忘れられず自分なりに制作しました
「またくるから」
そういって、彼は、後ろを向きに部屋を出た。ここは、ある病院の一室。彼が語りかけていたのは、その部屋のベッドに静かに横たわっている女性だ。そしてその女性は、彼のフィアンセになる予定だった。。。しかし彼を交通事故から守り、植物状態になってしまったのだ。
「なんで、、なんで俺を守ったんだよ、、、」彼は一人呟く。「くそ、、できることならあいつにもっとやさしく、、」「できんこともないぞ」そう誰かが彼の独り言を遮った。「誰だ!?」「とりあえず聞け、お前は彼女、斉藤るなともう一度恋をし、今度は、お前が彼女をまもりたいんだろう?」そう。彼女の名前は斉藤るな、そして彼の名前が石田幸平である。「なぜ彼女の名前を知っている!?」「何度も言わすな、彼女を守りたいのか、このまま植物状態の彼女の回復をまつのかどっちだ!!」「まもりたい!!守りたいよ、、、でも、、、」彼の口調が徐々に弱まっていく。「だってむりじゃないか、過去に戻るんだぞ?そ、そんなのできっこないじゃないか!!」彼は叫んだ。「だから、それができんこともないぞと最初からいっておるじゃないか」「えっ?」彼にはしんじられなかった。この、幼い少年のような声だけの人物に怒りさえ覚えた。彼女との同居祝いに彼女の母親に買ってもらった壁掛け時計は午前3時を指していた。「ああなんだ、また幻聴か、、、」彼は彼女が入院してからよく幻覚、幻聴に悩まされるようになり病院で薬をもらい服用している。「それにしてもおかしな幻聴だったな、過去に戻る?ばかばかしい」彼はそう呟きながら死んだようにねむりについた、、、、
翌朝、薬のせいか、彼はいつもよりずいぶん遅く起きた。時刻は午後3時おやつの時間だ。「ああ、ずいぶんと寝たなあ」大きく伸びをする。彼は斉藤るなのお見舞いにいく準備を始めた。5分ほどたった時自分の携帯電話から、懐かしい着メロが流れた。「んん?なんでこの曲がながれてんだ?」彼は不思議に思いながら電話に出た。「もしもし」電話の主は聞き覚えのある声の老人だった。「あ〜石田くんかねえ〜?」老人の語尾をのばす独特なしゃべり方が彼の記憶を一瞬で呼び起こした。「長谷川先生!?」「あっああそうだがあ〜?」長谷川先生とは、彼の大学4年の時の数学の教師である。彼の担任でもある。「どうしたんですか?懐かしいですね!」彼は元気よく聞いた。「僕が聞きたいよお〜。どうして今日休んだんだい?」「え?なにいってるんですか?今日って同窓会でしたっけ?」「同窓会?何をいっているんだあ?今日は1学期の終業式じゃないかあ〜」彼はすごい勢いでカレンダーをみた、7月19日今日は事故からちょうど1年の日だ。先生に確認する。「今日って2016年の7月19日ですよ、、、ね?」彼はおそるおそる先生に聞く。「なにを〜いっているんだい〜?2013年の7月19日ですよお〜?』
携帯が彼の手から落ちる。彼の手はもう物なんて持てないほど汗ばみ、力が抜けていた。ふと、昨日の幻聴を思い出した。「まさか、、、」急いで彼の通っていた大学にバイクを走らせた、事故で粉々になったはずのバイクで、、、
大学につくとほとんどの生徒が帰宅しようとしているところだった。少し歩いていると見覚えのある人物を見つけた、斉藤るな、彼女である。「るな!」彼が走り出そうとした瞬間、「おまたせ!まった?」と生徒の一人が走ってきた。どこかでみたことのある男性であった。「ううん。かえろ?」「うん!」そしてしゃべりながら彼の横を通った。彼女は振り向きもしなかった。しかし、彼にはそんなことがどうでもよくなるくらいの物みた。「えっ、、?うそだ、、、ろ?え?」彼はこれしか言葉がでなかった。3分程立ち尽くした後、彼は大学のトイレへと走り出した。
「だれ、、だ?」トイレの鏡には見知らぬ男性が映っていた。「だれだよ、、こんなやつしらない!!」そして彼は叫ぶ。「でてこい!昨日のやつ!説明しろ!もとにもどせ!!」「なにが、、どうなっ」またも彼の独り言を遮った。「どうだった?お前が望んだ世界は?」「こんなの俺は望んでない!!もとにもどせ!!」
彼は出せるだけの大きい声をだした。「お前は望んだぞ?過去で彼女を守りたいと」「それは確かに言った!でも何なんだよこの顔!」「もとにもどりたいか?」
「当たり前だ!!」「なら戻る前に一つ忠告しておく」「なんだ!はやくしろ」
「向こうの世界の彼女は死んだ」「えっ?」一瞬にして彼の世界は壊れた。前は見えなくなり、立っているのか、座り込んでいるのか、全くわからない状態になった。「それともう一つ」「なんだ?もうなにを言われても、、」「お前も死んだ」「えっ?」この言葉を最後に彼は気を失った。
翌日、またもいつもよりも遅く彼は起きた。ふとカレンダーを見る。2013年7月20日、大学4年の夏休みの初日である。「はあ〜。」大きなため息を一つつく。「なんで、、なんでなんだ、」彼は戻ることを許されなくなったのだ。なぜなら、もといた世界の彼女が死に、それにショックを受けた向こうの世界の彼は自殺をしてしまったのだ。「あれ?」彼はふと、思いついたように幻聴の主を呼んだ。
「おい!出てこい。いるんだろ?」「なんだ?」すると彼は思いついたことを次々と言い放った。「なんで俺の顔が変わってる?しかも大学ですれ違ったるなと歩いていたやつは、どう見ても4年前の俺だ。」「それと、なんで俺はタイムスリップしたんだろ?ならなんでもといた世界の俺が死ぬことになる?もといた世界の俺ってここで今しゃべっている俺のことじゃないのか?」「何を勘違いしているんだ?お前はタイムスリップなぞしておらんぞ?」「じゃあなんでここは2013年何だよ?」「それはのちのちわかることだ」幻聴の主は曖昧にしたまま消えていった。
「分けわかんねえよ!!」彼はベッドに横たわる。「う〜ん」そうこうしているうちに夜がきた。今日は夏休み初日と言うのに彼の携帯は一度もならなかったことからこの世界の彼の友人の少なさ、クラスでの位置という物がわかってきた。「前の世界ならこんなことはなかったんだけどなあ」「まあ明日図書館にでも行ってみるか」彼は大学生とは思えないような時間午後8時に寝床についた。
翌朝、彼は早起きし、図書館に行ってみることにした。時計は午前6時を指している。そして家から15分程歩き、図書館に到着した。図書館はまだ開いておらず、古い建物だけが静かにその時を待っている。「ちょっと早くつきすぎたかな?」
そういいながら建物に近づくと、彼と同じようなお世辞にもかわいいとは言いがたい女性が待っていた。「あっ」と彼女は小さく声を出しまるでいたずらがばれた少女のように照れながらうつむいた。彼はなんだかそう動作に見覚えがあった。しかしそれが誰のどんな時にする動作か全く思い出せなかった。
図書館が開き、彼はパラレルワールドという言葉に気を引かれた。「パラレルワールド、、か」「いやまてよ、パラレルワールドなら俺は俺の姿をしているはずだ」
彼がずっと考え事をしているうちに彼女の動きが目に留まった。彼女も自分と同じカテゴリーの本を探していた。思い切って話しかけようと近づく。「あれ?匂いどっかで、、」彼の足は懐かしい匂いに止められた。しかしその匂いがなんなのか、どこから出てきている物か、何もわからない状態であった。結局何も手がかりがつかめない状態で図書館を出た。ちょうど同じ時にあの女性も出てきていた。しかしなにも話すことなくかえっていってしまった。「あの女性なんなんだ?なんか懐かしいような、、、」
帰宅し、また考え事をした。「あの女性はいったい、、?」「あーもう!駄目だ!
わからんもう寝てやる!」午後6時就寝また最速記録更新だ。
翌朝、昨日早く寝たせいかまた早く起きてしまった。カレンダーを見ると2013年7月22日、2016年ではこの日は恋人達のイベントの日になってしまっていた。そして、彼、石田幸平も今日2013年7月22日に彼女斉藤るなに同居を申し込んだのだ。「今日、、か」彼は呟く。「もう嫌だ、、こんなの」「なんだどうした?」幻聴の主だ。「もう今日きょうなんだよ。今日をこえてしまったら、、」「なら自分の勇姿を見届けて、その後いま思っていることを実行すればよいと思うぞ?」少しの間沈黙が続く、、、「やってみるよ!見届けてやるよ!」
そして午後7時彼は同居を頼んだ時間の5分前にその場所についた。「はあ。これで俺も終わりか、、、」そう独り言を呟いているうちに二人がやってきた。時間通りだ。「あのさ、、結婚を前提に同居してくれないか!?」我ながらひどいプロポーズだ。「はい!!よろこんで!」二人の幸せそうな顔が目に映った。彼は涙を必死に抑え、俯いている。すると、鼻のすする音となき声が聞こえてきた。横を向くと、図書館であったあの女性である。よく見ると自分と同じような年齢だと言うことに気づく。「どうしたの?」彼は意を決して聞いてみた。すると彼女の顔がすっとこちらを向いた。「はっ」「はっ」目があった瞬間にお互いに映像がながれてきた。「る、、な?」「幸平?」二人の思いが通じ合ったしゅんかんである。
その後、二人は再び同居を始めた。お互い顔は変わってしまったが、、、
何年か時がたち2015年7月19日二人はドライブに出かけていた。彼女がジュースを買っている最中、暴走した車が、彼女に向かって、突っ込んできた。「るな!」彼は一心不乱に走り出した。「今度は俺が守る番だ!」ドン!
彼は事故にあい、二度と動くことのできない植物状態になってしまった。
時は2016年7月18日彼の見舞いにきていた彼女はこう言って部屋を出て行った。
「またくるから」
パラレル