~天空の冒険者達~
~父は偉大な冒険者であった~
村に住む少年、シオンは夢見ていた。いつか、父のような冒険者を目指し、広大な世界『ヒューガルド』に旅立つことを・・・。だが、彼はまだ知らない・・・。この先に待つ出会い、別れ、困難。そして、いつか自分が、この世界の歴史に名を刻むことを・・・。
これは、シオンのその仲間達が繰り広げる冒険譚・・・。
旅立ち編『第一章 ヒューガルド』
「今から45年前、世界には、4つの大陸がありました。
ひとつは、人間の王が治め、ひとつは、エルフの王が治め、ひとつは、ドワーフの王が治め、ひとつは、オーガの王が治めていた。
それぞれの大陸では、独自の文化を築き、どこも活気がありました。
しかし、それぞれの大陸の王は皆、他の大陸をあまりよく思っていなかったのです。そんな思いから、ある日、4つの大陸の間で、戦争が起こりました。戦争では、たくさんの人、エルフ、ドワーフ、オーガが、殺し合い、傷つき、血を流し、死んでいきました。
戦争の最中、人間の王とエルフの王は、ドワーフやオーガに内緒で、手を組みました。
人間とエルフ達の侵略の規模は更に大きくなり、ドワーフとオーガは、更に苦戦を強いられました。
ある日、ドワーフの王と、オーガの王が亡くなりました。指揮を失った両国は、たちまち人間たちに侵略されてしまいました。エルフの王は、話が違うといいました。二人は、手を組む代わりに、領地を半分に分ける、というはずでした。しかし、人間の王は、しらを切り、なんとエルフの王をも殺してしまったのです。怒ったエルフたちは、人間たちに復讐しようとしたが、たちまち返り討ちにされてしまいました。
その後は、エルフたちも侵略されてしまい、戦争には、人間たちが勝利しました。王は、その後、英雄として、長く後世に語り継がれるのでした・・・。人間の王様が統一した国の名は・・・、『ヒューガルド』・・・。」
老人は、ゆっくりと本を閉じた・・・。
ここは、『ランクス村』という、小さいが、豊富な海の資源に恵まれ、賑やかな町だ。海岸では、朝からたくましい漁師たちが漁船を出し、漁に出かけていた。漁港では、賑やかな市場が開かれ、色々な人が様々な売り物を並べていた。
俺の名前は『シオン』。このランクス村に住む、ただの青年だ。俺には夢がある。いつか、冒険者になって、世界を旅してみたい、という夢だ。ランクス村にはないが、遠くの町に、『ギルド』という、世界の冒険者が集まる組織がある。俺は、15歳になったら、村をでて、そのギルドに向けて旅をする。そして、今年で俺は15歳!今、身支度をしているとこだ。
不意に、部屋のドアが開いた。村長さんだ。
「シオン、身支度は済んだか?」
「はい。あとは旅立つだけです。」
「今更お主を止めようとはせん。だがひとついっておく、父の跡は追うんじゃないぞ。」
「はい、わかっています。」
俺の父は、冒険者だった。しかし、クエスト中に、民間人をかばって、10年前に、この世を去った。それ以来、俺は母さんと二人で暮らしていた。寂しかったが、不自由はなかった。
俺は、村長に礼をすると、これから始まる大冒険にワクワクしながら、村をでた。
「よし!いくぞ~!」
作者より
新たに始まりました、~天空の冒険者達~!相変わらずの文ですが今後もよろしくお願いします!
旅立ち編『第二章 初めての仲間』
村を出てから3日、シオンの旅は、順調だった。シオンは、少し気が抜けた様子で、鼻唄を歌っていた。
「♪~」
しばらく進むと、なにやら道端で、騒ぎが起きていた。一人のドワーフの少年を、人間の大人が睨んでいる。人間たちは、イラついた様子で、ドワーフ言い寄っていた。
「おい!てめぇ、ドワーフのくせに、人間様にぶつかっておいて、詫びねえのかよ!」
「ちゃんとあやまったじゃないですか。俺、急いでるんです。」
次の瞬間、大人がドワーフの少年を殴った!ドワーフの少年は、その場でよろめいた。
「ぐは・・・」
「生意気なんだよ!しゃべれなくしてやる!」
男は、何度もドワーフの少年を殴った。
「がは・・・、許して・・・ください・・・。」
「(あいつ・・・、やりすぎだろ!種族の差別は無くなったはずなのに。なぜあいつはあんなにひどいことをするんだ!)」
俺はだんだん腹が立ってきた
怒った男は、懐からショートソードを抜いた。ドワーフの少年の顔が青ざめる。
「そんな・・・、やめてください・・・。」
「死んで詫びろぉ!」
ガキィィィィン!
俺は、ドワーフの少年へ振り下ろされたショートソードを受け止め、男を蹴り飛ばした。
「おいお前!やりすぎだろ!」
「・・・なんだお前・・・!やんのか!?」
男は、俺を睨んできた。
ドワーフの少年は、心配そうにこちらに訪ねてきた。
「あの・・・、俺は・・・大丈夫だから。」
ドワーフの少年は、ニコッと笑った。
俺は言った。
「大丈夫じゃないだろ!?俺が助けてやる!」
「大丈夫。手を出したら負けだから。」
俺は、その言葉を聞いて驚いた。ドワーフの少年は、抵抗せず、ただ攻撃
に耐えていた。
「おらぁ!」
「ぐふっ!」
男の拳が鳩尾に入り、ドワーフの少年は、胃液を吐き、その場に倒れこんだ。その隙に、男は再び剣を取りだし、ドワーフの少年に向けた。
「なめやがって・・・、下等種族が!」
その言葉に俺はカチンときた!
「いい加減にしろっていってんだろ!!!」
俺の怒りの拳は、男の顔にヒットした!男は、数メートル先に吹き飛ばされ、ピクピク痙攣している。
「よし!気が済んだ!・・・君、大丈夫?」
「ありがとう・・・!大丈夫です」
「よかった。君、名前は?」
「俺は、レブといいます。」
ドワーフの少年、レブは、シオンと同じく、冒険者志願で、ギルドを目指して旅をしていたという。夢が同じだったからか、二人はすぐ打ち解けた。
しばらく喋った後、シオンは、決意した。
「レブ、よかったら、俺と一緒に旅しねえか?目的同じだしな!」
「・・・ああ!喜んで!」
二人は、固い握手を交わした。
シオンは、新しい仲間、ドワーフのレブと一緒に、ギルドへと旅を続ける・・・。
~冒険は、今始まったばかり~
登場人物紹介1
シオン=レグラント
主人公。活発で好奇心旺盛で、バカ正直。考えずに突っ込むのがタマにキズだが、正義感が強く、とても仲間思い。[人間 男]身長は150cm。
レブ=シフリー
シオンの仲間。正直者で、手先が器用。色々な物を作ったりする。たまに無茶することが多い。[ドワーフ 男]
身長は120cm。
ギルド編『第一章 ギルドとは』
シオンは、新しい仲間のレブと共に、冒険者ギルドがある町、『チャシル』に向かっていた。ランクスからはかなり遠く、4日目にして、未だついてはいない。歩いている途中、いきなり、レブの腹が鳴った。
「シオン~、休憩しようぜ~。俺・・・限界・・・。」
レブは、近くの草むらに身を投げ出して、仰向けに寝転がった。
「あとちょっとだから、我慢しよう。もう町が見えてきたよ。」
「でも俺・・・動けない・・・。」
「置いてくぞ~。」
「ちょ、待てよ~!」
レブは渋々、歩き始めた。
~10分後~
シオン達は、目を丸くした。
「すげぇ、ここがギルドか!!」
チャシルに着いたシオン達は、ギルドを見て驚いている。ギルドだけでも、ランクス村より大きいからだ。シオン達は、恐る恐るギルドの中に入った。
中には、鎧を着た凛々しい戦士や、大きな杖を背負っている賢そうな魔道士、巨大な斧を担いでいる、いかにも野蛮そうな者などが、集まって酒を飲んだり、会話したり、また、力比べをしている。とても賑やかだ。それを見て、シオンとレブは興奮していた。
「うは~!!!ここがギルドか!すげぇ!」
「そうだね!俺達も、いよいよ冒険者だ!」
すると、カウンターの方から、優しそうなお姉さんが、こっちに来て、微笑んだ。
「君たちは新人さん?」
「はい。ランクス村から来ました。シオンです。隣は、ドワーフのレブ、冒険者志願です。」
「シオン君にレブ君ね・・・。フフッ。よく来てくれました!ここは、世界の様々な冒険者が、様々なクエストをこなす場所!つまり『ギルド』よ!今、君たちを冒険者名簿に登録しました!君たちも今日から、冒険者よ!」
「やった~!」
その後のお姉さんの説明によると、冒険者は、実力ごとにランクが決まる。そのランクによって、受注できるクエストが変わってくる。ランクが低い程、依頼の内容は簡単で、報酬も少ない。逆に、ランクが高ければ高いほど、依頼の内容は難しく、報酬も多い。ランクは、クエストをこなしていけは、どんどん上がっていくらしい。
「じゃあ、君たちにはこれから、『試験』を受けてもらいます!」
「!!?」
俺たちは驚いた。
「この試験は、冒険者として、最初のランクを決める大事な試験!ただで冒険者になれると思ったら大間違い!この試験に合格しないと冒険者ではありません!頑張ってね!お姉さん応援してるよ!」
俺達は、試験であんな事件が起きるなんて、今は知るよしもなかった・・・。
ギルド編『第二章 試験の果てに』
~冒険者試験当日~
ギルドの前の広場では、新人かと思われる、冒険者が集まっている。もちろん、俺とレブも参加している。しばらくすると、先程のお姉さんが、舞台の上に上がって、司会の進行をした。
「新人冒険者のみなさん!はじめまして!クエスト仲介係の、ミレイユです!今日開催する冒険者試験!みなさん頑張ってください!それでは!試験内容について、マスターからどうぞ!」
「あの人が・・・ギルドマスター!?」
俺は驚いた。マスターというぐらいだから、もっと怖そうな人だと思ったのに、一見すると、どこからどう見ても優しいお爺さんにしか見えない。レブも同じことを考えていたらしい。
「シオン・・・。マスターが、想像と全然違ったよ・・・。」
「あはは・・・、俺も思った。」
「オホン!え~、それでは、試験内容について説明しよう!今からお主らには、二人一組で、『信実の果実』を持ってきてもらう!信実の果実は、ここから北にある、『センド山』のどこかになっている!一組一個づつ持ってきてもらおう!制限時間は3時間!さあ!未来の冒険者たちよ!存分に奮え!」
『オー!!!!』
こうして、試験が開始した。当然、俺のパートナーはレブ!俺たちは、駆け足でセンド山に向かった。
~1時間後~
目的の果実は一向に見つからず、俺たちは山をさ迷っていた。この山は道が複雑で、果実どころか、まともに進めない。レブは早くも音をあげている。
「果実なんてどこにもないじゃないか~。俺、疲れた・・・。」
「レブ、頑張って探そうぜ・・・。冒険者になるためだ!」
「ハハッ!それを言われると、頑張るしかないな!」
珍しくレブが真面目に探している。レブは、あっちが怪しい、といって奥に進んだ。すると、レブが俺の視界から消えた!レブが落ちてしまった!
「うわっ・・・助けてくれ・・・シオン!」
「レブ!今行く!」
レブは寸のとこで崖にしがみついていた。俺はレブに向かって手をさしのべた。しかし、遅かった。レブが手を滑らせ、崖から落ちてしまった!
「うわぁぁぁぁぁ!」
「レ、レブ~!!!」
ガサガサッ!
レブは、下の草むらに落ちて、草がクッションになったのか、ほぼ無傷だった。俺は急いで後を追った。レブのところに着くと、俺は、目を丸くした。レブも同様に、驚いていた。なぜなら、そこに、信実の果実がなっていたからだ。レブは少し間をおいて、歓喜の声を上げた。
「やった!見ろよシオン!信実の果実たぞ!」
「ああ、やったな!これで合格だ!」
俺達は、その後信実の果実をギルドに持ち帰り、見事、冒険者として認められた!
今回の試験で合格したのは、俺達を含め、3組、つまり6人だ。マスターは、合格者たちにこう告げた。
「諸君、合格おめでとう!今日から君たちは、我等のギルドの冒険者だ!」
「やったー!」
合格したみんなは歓声を上げた。
しかし、マスターから、驚きの言葉がでてきた。
「それでは、二次試験を始める!」
「ええ!!?」
一同は騒然とした。只でさえ、さっきの試験でヘトヘトなのに、二次試験なんて、無茶だ。二次試験の内容は、とてもシンプル、僕らが戦い合うのだ。いきなり実戦とは、冒険者の道は厳しいな・・・。だが、これはこの学年内の順位を決めるものらしい。これを聞いて、少しだけほっとした。だが、これは、もしかしたらレブと戦うことになるかも知れない、そう思うと、なんだな気分が重くなるような気がした。
ギルド編『第三章 二次試験』
二次試験の形式は、AグループとBグループに分かれ、3対3で戦う。それぞれで勝ち残った二名が、決勝で戦う、ということだ。くしくも、レブとはグループが違い、運が悪ければ決勝で・・・。友達同士で戦いたくない、でも、友達には負けてほしくない。俺は、複雑な気持ちのまま、試験を迎えた。
~Aグループ シオンvsラギvsレイドル~
Aグループは、俺の番だ。他の二人を見ていると、どっちも、ガタイがよく、俺なんて一捻りにされてしまいそうな気がした。突然、ラギが話しかけてきた。
「おう!チビ!せいぜい死なないように、努力しな!ガッハッハ!優勝は俺様だ!」
俺は何も言えなかった。すると、もう一人の選手、レイドルが、ラギにくってかかった。
「なんだと!?優勝は俺だ!」
「ああ!?俺に決まってんだろ!」
「んの野郎!!」
俺は叫びたかった。こんなのいやだ!と。観客席でレブが笑っていた。恐らく俺の心を察したんだろう。なんか軽くムカついた。
そんなこんなで、Aグループ戦が始まった!
先手はラギ。見た目からして、ファイター系だろうか。そんなことを考えていたら、思わぬ攻撃を繰り出してきた。
「くらえ!『火炎(ファイア)』!!」
「!!!!?」
ラギがそう叫ぶと、ラギの手から、火炎がでてきた!そのとき、俺は心の中で叫んだ。「あいつ・・・、魔法使いかよ!!!」と。分けがわからなくなりながらも、俺は咄嗟に魔法を避けた。避けた先には、レイドルがいた。レイドルは見た目通りの、ファイターだ。
「終わりだ!チビ!」
俺は、レイドルから繰り出される剛拳をひらりとかわして、レイドルに渾身のキックを浴びせた。レイドルは、腹を押さえて悶絶している。どうやら決まったようだ。一撃で終わるなんて、予想外だった。不意に、ラギが拍手をした。
「いや~!お見事!チビなのに、その筋肉バカを一撃で!たいしたもんだ!」
「次はお前だ!」
そう言ったあと、俺は、一気にラギとの間合いを詰めて、パンチを繰り出した!しかし、ラギはそれをかわして、魔法を繰り出した。
「甘い!『氷結』(アイシクル)!」
複数の氷が俺を襲ってきた。俺はそれをギリギリかわす。やはり相手は魔法使い、拳のリーチには中々入れてくれない。ラギは余裕の表情で、挑発してきた。
「所詮、君もあの筋肉バカとおなじだな!」
「じゃあ・・・、あいつとは違うってことを見せてやるよ。」
そういうと、俺は、限界まで力をためた。それを見たラギは、
「ガッハッハ!隙だらけだぞ!『火炎』(ファイア)!」
「終わりだ!ラギ!」
俺はためていた力を解放し、ラギに向けて放った!ラギの魔法をかきけし、力はラギに直撃し、ラギはダウンした。審判は叫んだ。
「Aグループ勝者!シオン!」
観客は、一斉に拍手をくれた。
控え室では、レブが迎えてくれた。
「勝ち残りおめでとう!次は俺だ!決勝て待ってろよ!シオン!」
「ああ!待ってるよ!」
~Bグループ レブvsクルトvsゲンブ~
(ここからはレブ視点です)
「突然ですが、クルト選手は、試験を放棄する。とのことです。従って、今回は、レブvsゲンブとなります!」
俺は、クルトのことが気になった。なぜ不参加?色々不可解だな。まあ、今は試合に集中だ。しかし、相手のゲンブってやつは殺気がすごい。しかも無口。なんか末恐ろしいな。
『Bグループ戦、スタート!』
開始と同時に、ゲンブは攻めてきた。絶えることのない拳の連撃。俺は手にした斧でいなすしかできない。防戦一方だ。斧でのいなしに疲れ、俺の動きが鈍くなった。ゲンブはそこを逃さず、攻撃を繰り出した。しかし、ゲンブは、俺の体にトンッ、と触れただけだ。あとは、距離をおいていた。
「こんな攻撃、通じねえよ!」
「もうすぐ・・・。」
ゲンブは、静かにしゃべった。俺はよくわからないので、手にした斧で、反撃しようとした。しかし、体に違和感を感じた。すると、
「・・・ぐっ!」
俺は腹を押さえ、膝をついた。倒れそうになったが、なんとか持ちこたえた。
「うぐ・・・、何が起きたんだ・・・!」
俺は腹を押さえながらも、ゆっくりと体勢を整えた。。ゲンブが静かにいった。
「俺はさっき、拳から、あんたの内蔵にに微量の衝撃を送った。量を変えれば、あんたの内蔵を簡単に壊せるぜ。」
ゲンブは、衝撃使いらしい。衝撃は魔法の一種だ。しかし、限りなく物理に近い。ゲンブは、武術と衝撃を使い分けている。
「手強いな・・・。なら、こっちも奥の手だ!」
レブは、斧に風の力を纏わせた。これは、レブが自分で製作した、魔力がなくても風を起こしたり、操ったりできる斧だ。
「これが、俺が作った、『風纏斧』だ!荒ぶる風の力をくらえ!」
レブはゲンブにめがけて、風を纏った斧の一撃をくらわせた。ゲンブはたまらずその場で倒れた。
「ぐあ・・・。ま、まいった・・・!」
審判は叫んだ。
「勝者は、レブ!!」
拍手と歓声が響きわたった。すると、マスターが決勝について発表した。
「皆のもの、健闘ごくろうだった!さて、決勝は、シオンvsレブ!期待の新人がぶつかり合うぞ!ふたりとも、健闘を祈る。」
~決勝前夜~
俺は、複雑な気持ちだった。決勝まで進めたのはうれしい。しかし、親友と戦うのは気が引けるな・・・。・・・でも、全力でやらなきゃ失礼だな!明日は、持てる力全て出しきって、シオンに勝つ!
その時、シオンも、同じことを考えていた。
ギルド編『第四章 シオンvsレブ』
(ここからは、シオン視点です。)
まさか、こんなことになるとは思わなかった。二次試験最後の相手は、レブ。いくら試験とはいえ、仲間同士で争うなんて気が引ける。こんなことを考えていると、不意に、レブが苦笑しながら話しかけてきた。
「シオン・・・。何でこんなことになったんだろうな。」
「正直、俺はこの試合を・・・」
俺の言葉を遮って、レブが明るい声でいった。
「こうなっちまったもんはしょうがない。シオン、戦おうぜ!言っとくけど、やるからには真剣勝負だからな!」
そういって、レブは風纏斧をかまえた。俺は、レブの言葉で吹っ切れた。
俺も拳を構える。
「勝負だ!レブ!」
『二次試験 決勝、始めっ!』
俺は、開始の合図とともに、レブとの距離を詰め、先手を取ろうとした。。しかし、その先にレブはいなかった。
「動きが単調だぜ!シオン!うなれ、『風纏斧』!」
レブは上空で風纏斧を構えていた。レブの声とともに、斧が風を纏い、突撃してきた。俺は、咄嗟に回避しようとした。しかし、斧の着弾地点に発生した荒れ狂う風に巻き込まれ、俺は数メートル吹き飛ばされてしまった。
「そんな回避じゃあ、俺の斧からは逃げられないぞ!」
それからは、攻撃したりされたりの五分五分の攻防戦だった。殴る、蹴る、斬る、吹き飛ばす、互いの技の応酬が延々と続いた。最初に出逢ったときの印象でレブは温厚で戦いを好まないと思っていたが、まさか、レブがこんなに強いとは。厄介なのは、『風纏斧』と呼ばれる、レブの武器だ。仕組みは分からないが、自在に風を操って、斧の斬撃と組み合わせてくる。俺は、接近戦を得意とするため、苦戦を強いられた
戦いはじめて20分。すると、レブの顔には、疲労の様子が見てとれた。ただの疲労とは言いがたく、汗が尋常ではなく、息も荒かった。あの不思議な斧のせいか、レブの体の元気がだんだんなくなってきたような気がする。
「レブ!もう息切れか!?」
「ハァ、ハァ、・・・そんなわけ・・・ないだろ!まだまだだぁ!」
レブは力強く斧を振り上げ、こちらに向かってきた!しかし、途中でレブの斧は、乾いた音をたて、地面に落ちた。その直後!
「・・・がふっ!」
レブがいきなり吐血をし、地面に倒れこんだ。俺は、目の前の出来事をまだしっかりと把握出来ておらず、茫然と立ち尽くしていた。
「・・・おい、レブ!しっかりしろ!」
俺は、慌ててレブの元へ駆け寄った。見たところ外傷はまったくない。観客もどよめいている。しかし、マスターやギルドの人たちは、半ば呆れたように見ていた。俺はどうしていいかわからなかった。レブは、途切れ途切れの声で話した。
「シオン・・・ちょっと・・・はりきり・・・すぎちまった・・・・ゴホッゴホッ!」
レブは喋ろうとするたびに、咳き込み、血を吐いた。原因はわからないが、かなりの重体だ。すぐに救護人がきて、レブは、すぐさま医療施設に運ばれた。すると、マスターが皆に呼び掛けた。
「二次試験は、レブの戦闘不能により、シオンの勝ちとする!よって、今年の首席は、シオン=レグラント!」
『ワァ~!』
「ちょ・・・、マスター!こんな時に何をいっているんですか!?」
俺はマスターに問いただした。すると、思わぬ返事が返ってきた。
「シオンよ。あれは、事故でもなんでもない。ただのレブの過失なんじゃ。レブが自滅して、お主が勝った。それだけじゃ。今度、詳しく聞かせてやろう。ほれ、今日はお主も休みなさい。」
俺は、ますます意味がわからなくなった。
登場人物紹介2
アルトリス=コルグ
冒険者ギルドのマスター。とても物知り。齢80歳というが、マスターとしての威厳は今もなお健在。若いころは凄腕の冒険者だったという。[人間 男]
ギルド編『第三章 それぞれの道』
俺は試合の後、急いでレブのいる医療室に向かった。
「お、シオン!」
「レブ!無事だったのか!よかった~!」
思った程状容態は悪くなく、レブは、笑顔で俺を迎えてくれた。突然、感情がこみあがってきて、俺はレブを強く抱きしめた。レブが生きていてよかった。
「レブ~!!」
「ぐえぇ・・・。シオン・・・俺、一応怪我人なんだよ・・・。」
「あ、ごめん。」
「でも、シオン・・・心配かけてすまねぇな・・・。これで、魔具の使いすぎは悪いって痛いほど分かったよ。」
レブは苦笑をした。突然、俺の頭には疑問が浮かんだ。『魔具』とは何だろう?俺は、思いきってレブに聞いてみた。
「ええ!お前・・・魔具を知らないのか!?」
俺は黙ってうなずいた。すると、レブは得意気に魔具について話し始めた。
「この世界に生きている人たちは、みんな体の中に、『魔力』っていう、まだ詳しく解明されていない、未知のエネルギーが流れているんだ。そのエネルギーを、火や水、雷や風などの、様々な現象に変換し、あやつることができる武器。それが、『魔具』なんだ。ちなみにこの斧は、風を操れるんだ。・・・簡単に説明すると、こんな感じだ。」
「その斧、そんなにすごいものだったんだな・・・。それにしても、お前はこの魔具をどうやって手に入れたんだ?」
「これは、俺が作ったんだ。自分で作ったのに、上手く制御できないって、おかしな話だろ?」
俺は驚いた。ドワーフは、筋肉質な体とは裏腹に、比較的高い知能と技術を持っている種族だが、こんなすごい武器を作れるなんて。俺は、改めてレブがすごい奴だと知った。
「シオン・・・。」
「ん?」
「俺、しばらく遠くの地で修行しようと思うんだ。」
「ええ!?」
突然の話に、俺はびっくりした。何でも、レブは今回の戦いで、自分の非力さを実感したらしく、今後一緒に旅する俺に迷惑がかかるとかもしれないから、と。修行には、怪我が治り次第、[一人で]旅立つらしい。なぜ、一緒に修行してくれないだろう、と思い、悲しい気持ちになりながらも、俺は、レブの前では明るく振る舞おうと努めた。
「修行・・・か・・・。そうだな!修行は大事だもんな!俺も修行しようかな!ハハハ・・・。」
「今度会うときは、もっと強くなるぞ!」
「俺も!・・・。」
~一週間後~
今日は、レブとの別れの日。俺は引き留めはしなかった。理由は、最高の友達の邪魔になるような事をしたくなかったから。レブには元気に旅立ってほしいから。
「シオン・・・。俺は、強くなって、すぐ戻ってくるからな!」
「おう!いつまでも待ってるからな!」
俺とレブは固い握手をかわした。レブは、チェシルを旅立っていった。
「・・・もういっちまったか・・・。次に会うのが楽しみだな~!・・・。」
「・・・シオン。」
突然、マスターが、俺を呼び止めた。
「どうかしましたか?」
「シオン・・・。レブの前では、よくこらえたのう。」
「・・・なんの話ですか?」
「シオン・・・。辛いときは、泣いてもいいんじゃよ・・・男は、涙や別れをを乗り越えて、強くなるんじゃから・・・。」
「・・・・・。」
俺は黙ってその場を後にした。
「マスター、追わなくていいんですか?」
「ここはシオン君の気持ちを察してやろうではないか。」
ここは、ギルドから遠く離れた、とある岬。ここはとても静かで、聞こえる音といったら波の音しかない。
「・・・・・・うぐ・・・ひっぐ・・・、うわぁぁぁぁぁん!」
俺は、今まで押し殺してた感情を爆発させたかのように、泣いた。静かな岬に、波以外の音が響きわたった。
~翌日~
俺は、マスターととある島に来ていた。
「・・・レブはどんな修行をしているんだろう・・・。・・・俺も負けてられないな!」
「シオン。今日からここが、君の修行場所じゃ。奥に進めば進む程、難関が待ち受けている。この全てを乗り越えたとき、君はまた強くなってゆくだろう。全てを乗り越えたら、ついでに、ワシから『奥義』たるものを伝授しよう。さて、あとは君の返事だけだ・・・。」
「もちろん・・・・・・、やります!(・・・レブ・・・。お前は、今度会うとき、どれくらい強くなっているんだろう・・・。俺も、お前に負けないくらい強くなるよ!また会う日を、楽しみにしてるよ!)」
そして・・・、3年の月日が流れた・・・・・・。
作者より
どうも!今一番欲しいものは文才とお金とドワーフ!(笑)ホシゾラです!
まず、私の小説をここまで読んでくれて、誠にありがとうございます!それにしても、小説書くの難しいですね~(・・:)
誤字脱字ないか不安です(苦笑)あと、この物語、今頭の中の構図だと、最後はハッピーエンドにはならない気が・・・(汗)タイトルの時点でやばいです(汗)
はい、余談はこれぐらいにしておいて、とりあえず解説。
ひとつの山場である、『幼少期編』がこれにて完結、そして、3年後の物語、『成年期編』がスタートします!
それぞれの修行のために、一時期別れたシオンとレブ。二人は果たして再会するのでしょうか!?しないでしょうか!?(それはないです笑)
引き続き、私の小説をお楽しみください!
設定の補足
まだ詳しく言ってなかった設定を、この場を借りて説明させていただきます。
まずは、この世界の通貨について。簡単にまとめると、この世界には、金貨、銀貨、銅貨の三種類があります。
金貨1枚=銀貨100枚
銀貨1枚=銅貨1000枚
金貨1枚=銅貨100000枚
こんな感じです。これだけではちょっと分かりにくいと思いますが、この世界では金貨1枚あれば、だいたい2日は楽に生活できます。
番外編『レブの修行』
俺は今、チェシルから遠く離れた、『スノフル山』に来ている。ここは、季節に関係無く、年中雪が降り積もる山だ。俺は、この山の頂上に住んでいるかもしれない、『マトク老師』に会うためにきた。マトク老師は、魔力を扱う事なら右に出るものはない。と言われるほどの魔力の達人だ。俺も、魔力の扱いについて学べれば、魔力切れ何て事は起きないはずだ。しかし、この山は、頂上にいく途中に、70%は死ぬ、と言われるほど、過酷という。この厳しい気候のせいでもあるが、とある奥地を、狂暴な熊が陣取っているらしい。まあ、普通に進めば、滅多に会わないだろう。・・・その瞬間!
「グルル・・・」
猛獣の唸り声が聞こえたと同時に、猛獣が、太い腕で俺を叩きつけた!
「・・・がはっ!」
「うう・・・・・・、最初からこれかよ・・・。」
どうやら、こいつが例の狂暴な熊らしい。逆立った毛は白く、目は紅く血走っていて、なにより特徴的なのは、二本の太い腕だ。後一発や二発喰らったら、命はないだろう。
「やるしかないか・・・!」
俺は、風纏斧を構えた。熊は、空高く雄叫びをあげた。
「ハァ、ハァ・・・」
死闘は長引き、俺の魔力もあとわずか。しかし、熊はまだ体力が有り余っているようだった。俺は、こいつとの圧倒的な力の差を、感じとっていた。
「一か八か、魔具の力を限界まで・・・!」
俺は、魔力を魔具に込めた。しかし、魔力の量が足りないのか、魔具はちっとも反応しない。もたもたしている内に、熊は俺に、太い腕で渾身の一撃を浴びせた。
「ぐはあ!!」
俺は、数メートル先に吹き飛ばされ、木の幹にぶつかった。体じゅうの骨が砕けるような音がした。
「うぐ・・・・・・ぶはっ!」
折れた骨が内臓に刺さり、口から大量の血を吐き出した。真っ白な雪の大地に、赤い血の跡ができた。熊が、仰向けに倒れ込んだ俺を、じわじわと踏みつけてきた。再び大量の血が口へ込み上がってくる。
「うぶっ・・・、ごふ!ゲボッ!(・・・歯が立たない・・・。シオンが待っているのに、こんなとこで・・・終わっちまうなんて・・・。すまねぇ、シオン・・・。)」)
俺の意識はそのまま深い闇へ落ちていった。
気がつくと、俺はベッドの上にいた。熊にやられたせいか、体中がまだ痛む。まだ動けそうにない。すると、奥から一人の老人がやってきた。
「おお!やっと気がついたか!スープでも飲むか?」
「・・・いただきます。」
俺は、老人からスープを受けとり、ゆっくりと飲む。体がすごい温まる。寒いからか、温かいスープがとても身に染みる。俺は、恐る恐る老人に訪ねた。
「あの、俺はどうしてここへ?確か俺は熊にやられて雪山の中にはいたはずですが・・・。」
「採集の途中、偶然君を見かけての。なんとか家まで運べてよかったわい。」
「あの熊から逃げれたんですか!?」
「ほっほっほ、倒したんじゃよ。あいつは図体の割りにはすばしっこいからのう。」
俺は、この老人がただ者じゃないことをすぐに感じとった。
「君はすごい危険な状態じゃったよ。全身ボロボロで、あと少しで死ぬところじゃった。しかし、3日で目を覚ますとは、回復魔法が効いたのもあるが、大した体力じゃ。」
回復魔法。確かに老人はそういった。この老人は魔法を知っているのか!俺は、老人に問いただした。
「あなたの名前は・・・?」
「ワシはマトクというが・・・。どうかしたのか?」
「!!」
俺は、驚いた。まさか、この老人が、マトクさんだったなんて。俺は、マトクさんに、ここまできた目的を話した。
「ほっほっほ。バレてしもうたか。ワシは確かに魔力の扱いには長けているが、そんな風に言われておったか。それにしても、ここまで来てまで修行したいなど、今までにはなかったわい。なぜ、修行を?」
「友達の力になりたい。その為に、力が欲しいんです!!」
「ほっほっほ、君のこと、気に入ったわい。よし。怪我が治ったら、修行じゃ。修行というからには、とことん厳しくするからのう。覚悟するんじゃぞ?」
「はい!お願いします!」
こうして、俺は、マトク老師の元で、修行をすることになった。一番の親友・・・シオンのために・・・。
再会編『第一章 三年後』
ここは、世界中の冒険者が集う、『ギルド』がある町、チェシル。チェシルは、若者が集う酒場、品物を我先にと買い、売る市場の人たち、世間話に盛り上がる主婦たちなどが見れ、今日もチェシルは賑やかだ。
そんな賑やかなチェシルのメインストリートを歩く、布装束の若者が一人・・・。その若者は、身長は180cm、細身だが、どこか力強さを感じさせる。腰には銀製のショートソードをぶら下げている。
「・・・なつかしいな。」
若者ははギルドの前にたち、そう呟いた。すると、ギルドの中から、一人の老人がひょっこりでてきた。
「おお!シオン君!久しぶりじゃのぉ!」
あの老人は、このチェシルのギルドの四代目マスターだ。もう齢83だが、そんなことは感じさせないほど、パワフルなお爺さんだ。若い頃は、一流の冒険者だったらしい。
「マスター!元気そうでなによりです。」
「なあに、まだまだ83歳、若い者には負けんわい!・・・アイタタタ・・・、腰が・・・。」
「マスターったら・・・。無理しないでくださいよ。」
「「ちょっと~!シオン!置いてかないでよ~!」
マスターと話をしていると、後ろから、大剣を背負った長髪の女性が駆け寄ってきた。彼女は、ミーナ=グランス。身長は174cmと、俺とあまり変わらない。彼女は修行の途中で出会った、気が強いが、実力は相当ある、大剣使いだ。
「もう!先いかないでよ!私はまだこの町よく知らないんだから!」
「悪い悪い。」
「ほっほっほ。シオン君もミーナちゃんも、元気じゃのう。修行はどうじゃった?」
「もちろん、オールクリアです!」
「そうかそうか。」
マスターは、にっこり微笑んだ。すると、ミーナが途中で口をはさんだ。
「そういえばシオン、もう一人のドワーフの子はまだこないの?」
レブのことだ。ミーナは、レブみたいなドワーフに会ったことはないから、会えるのを楽しみにしているらしい。
「うん・・・。もうそろそろ来るはずだけど・・・。」
「お!あの子じゃないかね?」
マスターはそういって、メインストリートの奥を指差した。その先には、ドワーフが一人いた。俺は、目を凝らしてそのドワーフを見た。
「うーん・・・。あれはレブじゃないかも。レブはもうちょっと幼くて子供みたいだったよ。」
「でも、3年たったんでしょ?」
「いくらなんでも、3年でそこまでは・・・。」
俺とミーナは、そのドワーフから目を背けた。すると、そのドワーフは驚いた様子で、こちらに向かってきた。
「お~い!シオン~!俺だよ俺!レブだよ!」
「ええ!!」
三年間とは長い。レブは、三年前までは子供のような声だったのに、今では立派な大人の声だ。しかも、三年間前より更に逞しく、身長は145cm、腕や足はがっちりした筋肉がついていて、腹は少しぽっこりしているが、大人の逞しい感じをかもし出していた。背中には斧を背負っていて、左の目には深い傷痕らしきものがあり、修行の壮絶さを物語っていた。
「・・・まさか、気づかなかったとか?」
「あはは・・・。」
俺は、ポリポリと頭をかいた。一方、ミーナは、初めてみるドワーフ、レブをじっくり見ていた。
「おお~、ドワーフ初めて見た!意外と身長は小さめだけど、逞しそうだね~!」
「あ、どうも・・・。」
「私はミーナ。シオンとは、修行でお世話になったの!噂には聞いてたけど、やっぱりドワーフってすごい!・・・そういえば、レブは魔具を作れるんだよね?」
「まあ・・・多少はな・・・。複雑な構造の奴は難しいんだ・・・って!いきなり何だ!?」
「へ~!器用なんだね~!」
ミーナは、レブの腕や腹、顔を触りながら、関心していた。レブはミーナの思うがままにいじくられていた。レブはちょっと苦しそうだ。
「アハハ!くすぐったいよ!ひょ、ひゃおは・・・ひゃめへ・・・あう・・・。(ちょ、顔はやめて・・・。)」
「顔はぷにぷにしてるね!かわい~!」
「ミーナ・・・。これ以上はやめてくれ。レブが・・・。」
ミーナは、渋々レブを解放した。レブはフラフラで、足元がおぼつかない様子だ。俺は、フラフラなレブを介抱した。レブが質問をした。
「・・・シオン・・・、あの子は・・・?」
「ちょっと変わってるけど・・・実力は相当だよ。まあ・・・、レブ、気を付けて。」
「俺からしたらちょっとどころじゃないんだけど・・・。それに気を付けてって・・・、体が持たない・・・。」
レブはうなだれた。たぶん、しばらくレブはミーナの遊び相手になるだろう。しかし、あくまでそれはミーナの遊びだろう。まあ、レブならなんとかなるだろう・・・たぶん。
「ようやく三人揃ったな・・・。それではお主らには・・・」
「レブ捕まえた!」
マスターの話を遮るように、ミーナが歓喜の声をあげた。
「うわ!助けて・・・シオン・・・!」
「アハハ、ミーナはレブを気に入ったたいだな。」
レブはミーナに捕まり、思いきり抱きしめられていた。普通、男なら喜ぶ場面だが、レブは違った・・・いや、それどころじゃなかった。抱きしめられている・・・じゃなく、絞められているようにも見えた。
「ぐ、苦じぃ・・・、は、はなしで・・・」
レブは足をばたつかせながら、必死に訴えた。しかし、ミーナはレブの悲痛な訴えを聞いてはいなかった。ミーナの腕がレブをどんどん絞める。
「助けて・・・助けてくれよぉ・・・、ぐぶぅ・・・。」
レブが白目を剥き、泡を吐きだしたので、俺はミーナから慌ててレブを引きはなした。レブは、涙目ながらも、お礼を言った。
「ケホッ、ありがと・・・シオン・・・。まさか、仲間に絞め殺されそうになるとは・・・。」
「ごめんね、ちょっと力が入っちゃった・・・。」
ミーナは反省しているようだった。突然、マスターが呆れた様子でこちらを見た。
「お主ら・・・話続けてもよいか?」
「・・・あ、はい。」
マスターは、深いため息をついたあと、ゆっくりと話をした。
「久々の再会、積もる話もあるじゃろう。しかし、お主らにどうしても頼みたい事があるんじゃ。」
「頼みたい事?」
「それは、ここ、チェシルの北東に位置する、『タタラ遺跡』の探索。先日、遺跡に入った王都の調査団員数名が、その遺跡に入ったきり、戻ってこないんじゃ。」
「つまり・・・、その人たちを助けにいくの?」
「うむ。これは、王都の方から正式に依頼がきておる。報酬は金貨15枚。つまり、『クエスト』じゃ。どうじゃ?これからの肩慣らしにはなるんじゃないかの?」
この世界では、金貨15枚は大金だ。これからの生活費も含めて、この収入は大きい。人助けをして、生活費が手に入るなんて、一石二鳥だ。レブたちも、うなずいている。
「・・・わかりました!そのクエスト、引き受けます!」
「ほっほっほ。お主らならそういってくれると信じていたよ。」
出発は明日の早朝。俺達は、明日のクエストに備え、宿でぐっすりと休んだ・・・。
閑話『チェシルの宿にて』
俺達は、明日のクエストに備えて、今はチェシルの宿で休んでいる。俺は、レブと一緒に、お互いの修行について話していた。
「シオン、お前はどうだった?」
「ああ、大変だったよ。たぶん、ミーナがいなかったら、俺は死んでただろうな・・・。二人で協力して、なんとか試練は制覇したよ。見かけによらず、ミーナって強いんだぞ?」
「そうなんだ・・・。でも、俺はあの子はちょっと・・・。」
「まあ、理由はだいたいわかるよ。ハハハッ。レブはどんな感じだったんだ?」
「俺は、マトク老師のところにいって、魔力の訓練を積んできた。おかげで、魔具の力をよりたくさん引き出せるし、強い魔具だって作れるようになったんだぞ!」
「マトク老師!?こりゃまた大物・・・。」
「辿り着くまでが大変だったけどね。スノフル山の熊に襲われ、死にかけて、危なかったとこを、老師に助けてもらったんだ。そのときは酷かったよ。全身の骨がバキバキで、動けなかったし、血だってたくさん吐いたり流した。でも、老師はそんな俺をすぐ治してくれたんだ。魔力ってすごいよな・・・。」
「レブの修行も、かなり大変だったんだな。」
修行話に夢中になっていると、突然俺達の部屋のドアが開き、ミーナが入ってきた。
「二人とも~!」
「げ・・・。」
レブは気まずそうな顔をしている。ミーナは、レブを見るなりに、嬉しそうに飛び付いてきた。
「レブ~♪一緒に寝よ~!」
「げぶぅ!!・・・うあああっ・・・」」
ミーナは思いっきりベッドへ・・・いやレブへダイブした。レブはミーナの下敷きになり、大ダメージを受けていた。
「ミーナ!なんで男部屋に?」
俺はミーナに尋ねた。
「だって、一人じゃん。つまんないし~!フフフ、さ~て、レブ~?朝までたっぷり遊ぼうね~♪」
「え、ちょ・・・嘘だろ!?た、助けて・・・!助けてくれぇ!シオ~ン!」
俺は、毛布を深く被った。毛布越しにレブの悲鳴が聞こえたが、俺は寝たフリをした。すまない、レブ。
明日はいよいよクエストだ!がんばるぞ!
タタラ遺跡編『第一章 ハプニング』
~タタラ遺跡地下1階~
「ふぅ・・・、どうしようか・・・。」
レブは深刻そうな顔でため息をついた。
「レブ、私達、今やばい状況だよね・・・。」
ミーナも深刻そうな様子で、レブを見ている。
「さすがは遺跡。入った直後に罠があるなんて・・・。」
「そのせいでシオンとはぐれちゃったね・・・。」
「痛たたた・・・。なんで入り口に落とし穴?・・・畜生、レブ達とはぐれちゃったよ・・・。」
俺は、遺跡の落とし穴に落ち、レブ達とはぐれてしまった。ただでさえ、ここは未知の遺跡。無闇に単独行動は避けたいところだが、ずっと一人でいるのも危険だ。俺は落下の際に痛めた足に、鎮痛効果のある、レブ特製の湿布を貼り付け、ゆっくりとレブ達の探索に向かった。
一方、レブ達は、シオンの捜索も兼ねて、奥へと進んでいた。湿り気のある一本道を、慎重に進む。先程の落とし穴により、レブ達は罠に対して細心の注意を払った。
「・・・シオン見つかんないね・・・。」
「かなり進んだはずだけど・・・。行き止まりだな。」
レブ達はとある部屋にはいっていた。中には棺桶らしき、固く閉じられた箱、そして、中央には、一際目立つ祭壇が佇んでいた。祭壇には、文字が刻まれており、レブは、その文字を凝視した。
「ミーナ、なんか見つかった?」
「うん・・・。こんなの。」
ミーナは、ボロボロの石板を差し出した。石板には、なにやら細かい文字が刻まれている。
「これは・・・!『ラジア語』の文章・・・!大昔に使われていた古代文字がなぜここに・・・。」
「レブ、読めるの?私にはさっぱり意味がわからないんだけど・・・。」
「多少はね・・・。」
レブは石板を手に取り、文の解読をし始めた。普段のレブとは違い、今はものすごく集中している。ミーナは、こんなレブは見たことない、と言わんばかりに、レブをじっと見ていた。
「ふむふむ・・・。・・・よし!解読できたぞ!」
「なんて書いてあるの!?」
「『我ここにあり。我が主の遺跡をあらすものには死者の裁きを与えよう。太古の死者を呼び戻すは、『操霊(ネクロ)。』・・・なんだこれ・・・。」
「ちょ・・・、レブ・・・、後ろ!」
「ん?」
気づいた頃には遅かった。地面から突如現れた骸の兵士が放った矢が、レブの腕に深く突き刺さる。
「うぐあっ!な、なんだこいつらは!・・・骸骨!?」
レブは矢が刺さった左腕を押さえながら、驚愕した。目の前には、骨だけの骸兵士が群れを成している。
「もしかして、石板の文にでてきた、『太古の死者の裁き』ってこれのことじゃないかしら・・・。」
「骸骨が動いているところにも突っ込みを入れたいけど、認めざるをえないな・・・。多分、俺が石板を読んだせいで、こいつらを呼び覚ましてしまったのか・・・。しかし・・・この数は・・・!」
骸骨兵士の数はおよそ100~150。レブ斧は風纏斧を構えながら石板を読んだことを悔やむ。たくさんの骸兵士に囲まれ、レブ達は絶対絶命だ。
「レブ!あなたの魔具の力で、この骸骨達、蹴散らせない?」
「そうか!・・・いざというときまで、魔力を温存しておきたかったけど・・・今がその時だな!」
レブは風纏斧に魔力を込め、勢いよく空を薙ぎ払う。
「うらぁ!」
すると、斧から竜巻が起こり、目の前の骸骨兵士達を吹き飛ばす。骸骨兵士の数は半分に減り、骸骨兵士達の士気も低下している。
「今だミーナ!たたみかけるぞ!」
「まかせてっ!」
ミーナは、素早い動きで骸骨達を翻弄し、砕いてゆく。レブは、魔具の力で骸骨達を怯ませ、次々と砕いてゆく。状況はいい方だった。しかし、骸骨兵士を八割程倒したとき、部屋の奥にある、一際大きい棺桶が開いた。
『・・・我ガ眠リヲ・・・妨ゲシ・・・愚カナドワーフノ男、ヒトノ女・・・死ンデモラオウ・・・』
「おいおい・・・、やべぇの出てきちまったよ・・・!どうする・・・!?」
「どうするって・・・、戦うに決まってるでしょ・・・。」
そうは言ったものの、レブもミーナも、疲労はピークに達していた。
タタラ遺跡編『第二章 骸の王』
レブ達とはぐれたシオンは、遺跡の深部に到達していた。そこでは、5~6名ほどの集団に出会った。集団の長らしき者が、シオンを見て、目を輝かせた。
「・・・おお!君はもしかして、冒険者かい?」
「は、はい。あなた達は?」
「俺達は、王都の調査団、ていえば分かるかな?」
「・・・やっと見つけた!これで依頼達成だ!」
「依頼?何のことだい?」
「王都の調査団の団長が、あなたたちの捜索の依頼を出していたんですよ。俺達はそれを見て、助けにきました。」
団員たちは歓喜の声をあげた。突然、団員の一人が質問をしてきた。
「なあ、君は見たところ一人のようだが・・・、他に仲間はいなかったのか?」
「あと二人いたんですが・・・、途中ではぐれて・・・。実を言うと、俺もこの道よくわからないんです。」
「・・・そうか・・・。じゃあ、仲間の捜索と脱出口の発見は、俺達も協力しよう。来てくれただけで助かったよ。」
「はい!ありがとうございます!」
俺は、王都の調査団と一緒に、出口とレブ達を探すことにした。
「・・・ミーナ!無事か!?」
「全然大丈夫!でも、こいつ、タフすぎる!」
レブ達は、突然現れた巨大骸骨に苦戦していた。レブもミーナも、次々と攻撃を浴びせているが、どれも決定打にはならなく、巨大骸骨に弾かれてしまう。一方、巨大骸骨は、手にしている剣を大きく振り回してくる。体も剣も巨大なためリーチが長く、少し油断すれば、一瞬で剣の錆になってしまうだろう。レブは、一旦骸骨から距離をおいて、額の汗を腕で拭い、懐から丸い玉を取り出した。それに気づいたミーナも、骸骨から距離をとる。
「よし・・・、新魔具のお披露目といこうか・・・!」
レブが骸骨に狙いを定め、手にしていた球状の魔具を放り投げた。球状の魔具は、骸骨の眼前で赤く輝き、大爆発を起こした。たまらず骸骨はたたらを踏んだ。倒れはしないものの、骸骨が手にしていた剣は粉々に砕け、確実に大ダメージを与えていた。ミーナは、魔具の威力に驚愕していた。
「すごい・・・。こんなすごいのが作れるなんて、レブすごい!」
「これであいつの武器も封じた・・・!ミーナ!いくぞ !」
ミーナはレブに言われる前に、骸骨に向かっていた。
「私も負けてられない・・・!」
ミーナは、手にした大剣に、力を込めた。すると、大剣が白く輝いた。
「いっけ~!『氷撃剣』!」
「魔具!?」
ミーナの使う大剣も、魔具だったことに、レブは驚きを隠せなかった。ミーナの魔具は、レブの『風纏斧』とは違い、凍てつく冷気を放っていた。ミーナが大剣で骸骨の左腕を切り落とした。どうやら、ミーナの魔具は、氷を纏わせるだけではなく、武器自体の切れ味をも上昇させるらしい。
左腕を切り落とされた骸骨は、よろよろと後退していく。その隙を逃さず、ミーナは骸骨の胸に氷撃剣をつきたてた。骸骨は氷撃剣が突き刺さった部位から、徐々に凍り付き、終いには大きな氷塊に成り果てた 。
「やった!レブ!勝ったよ~!」
「おう!やったな!ミーナ!お前の魔具、かっこよかったぜ!」
「レブの新武器もよかったよ~♪」
「さて・・・、シオンの捜索と行きたいところだけど、疲れたな・・・。少し休憩。」
そういって、レブは岩場にもたれかかった。ミーナもレブの隣に座った。
「それにしても、ミーナが魔具を使えるなんて、びっくりしたよ。」
「えへへ~♪驚くと思って、内緒にしてたんだ~♪」
「フフッ、今度、魔具を見せてほしいんだ。もしかしたら、改良できるかもしれない。」
「え?本当に?よろしく頼むよ~♪」
「おう!」
のんびり会話をしていると、遠くから、複数人の足音が聞こえた。そして、レブ達にとって聞き覚えのある声が聞こえた。
「おーい!やっと見つけた!」
「シオン!!やっと会えた~♪」
「あれ?後ろの人たちは?」
「王都の調査団の人たちだよ。」
「と、いうことは・・・クエスト達成だ!」
「やった~!」
レブとミーナは、歓喜の声をあげた。調査団の人たちも喜んでいる。調査団の一人が遅れてこちらへきた。
「遺跡の出口を発見しました!みんなで帰れますよ!」
「シオン君たちには本当に感謝している。役に立つかどうかは分からないが、依頼の報酬の追加として、これも渡そう。」
リーダーは、本を差し出した。
「これは・・・?」
「我が調査団が今まで調べた調査内容をまとめた本だ。今後の冒険に役立ててくれ。」
その本には、モンスターの生態、それぞれの地域についてや、冒険に役立つ道具の作成方法までもが記されている。
「ありがとうございます!」
こうして、俺達の初めてのクエストは、無事成功に終わった・・・。
閑話『マイホーム!』
クエスト達成から一週間後、シオン一行は、チェシルの宿屋にて宿泊していた。シオンがため息混じりにつぶやいた。
「ふう・・・、旅を始めてから、この宿屋にはずいぶんとお世話になってるよな・・・。」
「私達、家ないもんね~。」
二人の会話を聞いて、レブも話に介入した。
「なあ・・・。そろそろ俺達の家を探さねえか?こないだのクエストの報酬で家計には余裕があるし、家があった方が、今後の旅に役立つんじゃないのか?」
「お!いいね~♪」
レブの意見に、手を叩いて賛成するミーナ。シオンも、うなずいている。
「そうだな・・・。でも、肝心の家はどうやって探すんだ?」
「ほら、これ見てみろよ。」
レブは、シオンに一冊の冊子を渡した。冊子には、『チェシルの物件案内』とかかれている。中を見てみると、様々な形式の家が、細かく説明されている。
「・・・今の俺達の貯金は、クエスト報酬と前の貯金を合わせて、金貨20枚銀貨420枚銅貨60枚。だいたいの家の家賃は金貨5枚だな・・・。大丈夫だな。」
「あ!これなんてどう?」
ミーナは、とある家を指した。家賃は金貨6枚、銀貨500枚だ。多少高めだが、クエストの収入を考えたら、そう高くはなかった。
「へぇ・・・。値段の割りには、すごくよさそうな家だな。」
レブは冊子を見ながら感心した。
「でしょ?3人で住むのにも最適だと思うんだ~♪」
「そうだな・・・、よし!この家に決まりだな!」
~チェシル物件案内所~
「いらっしゃいませ!」
店に入ると、髭を生やしたドワーフの店員が、にこやかに呼び掛けた。シオンが、店員に尋ねた。
「あの、この家に興味があるんですけど・・・。」
「お目が高い!そちらの物件は、広さ、住みやすさ、共に上級ランクの物件でございますよ!では早速、ご案内致します♪」
俺達は店員に連れられ、家の前に来た。
「うわぁ!すご~い!」
ミーナは家を見て感動している。店員の言う通り、広く住みやすそうで、とてもいい家だ。
「気に入ったよ。この家にする。」
シオンは、金貨6枚銀貨500枚が入った袋を店員に渡した。
「毎度あり!では早速、手続きをいたします!」
こうして、シオン一行は無事家を買うことができたのであった・・・。
作者より
どうも!受験が来年までに迫っているのにも関わらず、小説を書いているホシゾラです!(笑)こ、これは国語の勉強ですよ。・・・ハイ(汗)。
余談はこれくらいにしておきましょう(笑)とうとうシオン達がマイホームを持ちました!・・・と、このように、閑話では、ほのぼのエピソードを中心に書いていきますが、本編では、戦いなどのシーンが多く入ったりしています(汗)なるべく自重していきます。それと、私も一応受験生になりつつあります。なるべく毎日投稿していきたいですが、もしかしたら、日にちが空いてしまうかも知れません。ご了承お願い致します。さて、今回の次回予告は、ある方に来ていただいています!
レブ(以下レ)「おっす!今回は俺が次回予告をしていくぜ!」
作者(以下ホ)「ちょ、私もいるんだけど・・・。」
レ「悪い悪い(笑)冗談だよ。」
ホ「んじゃ、よろしく~♪」
レ「お前はやんないの?」
ホ「レブ見てるだけでもう満足~♪」
レ「(ミーナにそっくりだな・・・。)しょうがないな・・・。じゃあ、次回予告に移るぞ。遺跡での捜索を終えた俺達は、次はわがままなお嬢様の依頼を受けるんだ。本当に大変だよ・・・。」」
ホ「へ~。(ニヤニヤ)」
レ「え・・・?うわっ・・・!そこは・・・、アハハハハハハ!くすぐったいよ!やめろよ!アハハハハハハ!まって、本当にミーナに、そっくり、アハハハハハ!」
ホ「やわらかいね~♪」
※二人が遊び始めたので、これにて終了いたします。
レドリアの魔壺編『第一章 お嬢さまの依頼』
「そこのあなた達!私からの依頼を受けなさい!これは命令よ!」
「はぁ!?」
依頼板の前でクエストを選んでいた時、後ろから優雅な身なりの女性に呼び掛けられた。あまりにも突然で、えらそうな命令口調。シオンは戸惑った。すると、レブが、その女性にもの申した。
「おいお前、人に物を頼むときには、それなりの礼儀ってやつがあるんじゃないか?いきなりその態度はないだろ。」
レブは静かながらも、威厳のある口調で女性を問い詰めた。しかし、女性はツンとした態度で返答した。
「うるさいですわ。そんなこと、私の自由ですし、何より、汚らわしいドワーフの意見など、この可憐な私が聞くわけないでしょう。」
「・・・てめぇ!」
「お、落ち着いて!レブ!」
殴りかかろうとしたレブを、ミーナが慌てて止めに入った。しかし、レブの抵抗する力はとても強く、解放したらこの女性をすぐに殴り飛ばしそうな勢いだ。
「放せミーナ。こいつを一発殴る。」
「ダ、ダメだよ!」
「あら、女性に暴力を振るおうとするなんて、身も心も汚い種族ですわね。」
「この・・・、放せミーナ!こいつをぶん殴ってやる!」
「ちょ、痛い・・・、レブ!ううっ!」
「放せっていってるだろうが・・・!」
レブは本気でふりほどこうとしてくる。いくらミーナでも、やはり女の力。ミーナではすぐふりほどかれてしまうかもしれない。
「落ち着けよレブ!ミーナに危害を加える気か!」
「いいから放せぇ!」
「この・・・、」
ドスッ!
「・・・ぐふ・・・なぜだ・・・シオ・・・ン・・・。」
レブはその場で崩れ落ちた。シオンはレブを静めるために、レブの腹を思いきり殴り、気を失わせた。多少荒いが、激昂したレブを制止するには、これが最善だ。ミーナも女性も、目の前の光景を見て、目を丸くしていた。そんな女性に向かって、シオンは謝罪した。
「この度の仲間の失礼、お詫びします。だが、そちらにも非があることを忘れないで欲しい。」
「フンッ・・・。」
女性は相変わらずツンとした態度だ。シオンは、苛立つ気持ちを抑え、女性に尋ねた。
「・・・で、依頼とは?」
「あなたは3人の中ではまともですわね。そちらの女なんて、未だに睨み付けて来るのに。」
ミーナはレブを抱え込み、女性を睨み付けていた。
「ミーナ、抑えてくれ。・・・ところであんたの名前は?」
「人に名を尋ねるときは自分から名乗るのが筋ではなくて?」
シオンは更に苛立つ気持ちを抑えていた。
「俺の名はシオン=レグラント。今倒れているのがレブ=シフリー。」
「・・・私はミーナ=グランス。」
「よろしい。私の名はクレア=レドリア。レドリア家16代目第3王妃でございますわ。」
「・・・第3王妃!?」
「あら・・・知りませんでしたの?」
レドリア家といえば、この世界では知らない人はいないだろう、と言うぐらい、有名だ。特に、レドリア家初代第1王妃のラフーラ=レドリアは、『ヒューガルド創世伝説』を残し、もはや偉人である。その後の代も、文化の発展、魔力の解明など、様々な偉業を成してきた。
「・・・そんな王妃がなぜここに・・・?」
「ギルドに来る理由はもちろんただひとつ、依頼を出しに来ましたの。その依頼を、あなた達に頼んでいるわけですわ。」
「・・・シオン!やめようよ・・・。こんな人の依頼なんて・・・。」
「・・・で、依頼の内容は?」
「シ、シオン!」
「・・・物わかりがいいですわね。我が家に代々伝わる、『壺』が盗まれましたの。それを取り返してほしいのですわ。」
そういうとクレアは、二枚の紙をシオンに手渡し、ギルドを足早に去った。ミーナはシオンを不安気に見ていた・・・。
レドリアの魔壺編『第二章 暗雲』
~自宅~
「シオン!何故あんなやつの依頼を受けた!」
「俺は冒険者として当然のことを・・・!」
シオンとレブは、夜中だというのに、激しく口論していた。事の発端は、シオンがクレアの依頼を勝手に受注したこと。シオンの独断に不満があったらしい。
「俺達仲間だろ?お前一人の考えで事を進めちゃいけないはずだろ!?なのに・・・、なんで・・・!」
「そ、それは・・・」
まさにレブの言う通りだった。何故あそこで、一回考える時間を設けなかったのか。シオンは自分の行いを激しく悔やんだ。しかし、悔やんだところで、レブの怒りは収まらない。
「今まで一緒に戦ってきた俺達より、人間以外の種族を平気で差別するような自分勝手などっかのお嬢様の方が大事なのかよ・・・!俺達は結局、そんなもんだったのかよ・・・!!」
「そ、そんなことあるわけないだろ!」
「・・・今まで俺は、皆の役に立ちたい一心で旅を続けてきた。それなのに、こんな形で裏切られるなんてよ・・・!」
その言葉で、シオンは気づいた。レブが内心、深く傷ついていたことに。自分の勝手な考えで、知らない内に仲間の心をこんなにも傷つけていたことに。外では、しとしとと雨が降っていた。皆の心情を写し取っているかのように・・・。
二人はしばらく黙りこんでいた。5分程たつと、レブが普段の落ち着いた口調で話し始めた。
「・・・シオン、ちょっと熱くなっちまった。冷静に考えたら・。、お前は悪くなかったんだ。怒鳴ってすまねぇ・・・。」
「・・・俺も、もっとみんなのことを考えていればよかった。ごめんなレブ。」
「・・・でも、悪いが俺はパスだ。あんな女の依頼は流石に無理だ。」
「・・・レブ・・・。」
二人の口論についていけずに、ずっと黙り混んでいたミーナが、レブを心配そうに呼び掛けた。
「・・・レブ・・・。そんなにあの人が嫌なの・・・?どうして?」
「・・・・・・似てるんだよ。」
「だ、誰に・・・?」
「・・・・・・話すと長くなるけど、いいか?」
シオンとミーナは、黙って頷いた。レブは、ふうっと一息つき、ゆっくりと話し始めた。
「これは・・・俺がまだ4歳の頃の話なんだ・・・。」
レドリアの魔壺編『第三章 レブの過去』
これはまだヒューガルドで、大きな種族差別があった時代・・・。
レブの生前、つまり25年前、各地では『奴隷制度』が普及していた。人間は捕まえる側、オーガ族、エルフ族、ドワーフ族は捕まえられる側にあり、このときは、人間が世界を支配していたといっても過言ではなかった。捕まった者は、使用者に死ぬまでこきつかわれる運命だった。特に、高い知能と技術を持っているドワーフ族の奴隷は、高値で取引されていた。
レブが住んでいた、『チャッカ村』。ここは面積は広く、ドワーフ達が沢山住む村だ。人口は約15000人。資源も豊富でとても豊かな村だ。しかし、ここでも奴隷狩りの被害は出ており、村の人口は減っていく一方だった。ドワーフ達も、その高い知能と技術を駆使して、落とし穴や落石トラップなど、人間達を追い返す術で対抗していた。でも、人間達の軍事力には勝てず、被害は抑えきれることはなかった。
「・・・また減ったの・・・か・・・。」
この村では週に一度、集会というものがある。本来は村人達が広場に集まり、情報交換の場なのだが、奴隷狩りの影響で、今では生き残りの確認になりつつある。この村の村長、ボラクスは、村人達の人数を確認し終わると、ため息をついた。村人の数名が、また奴隷として連れ去られていたのだ。
村人達の気が沈む中、とある青年が声を張り上げて呼び掛けた。
「・・・もう堪えられない!これ以上仲間が人間共に連れ去られるのはいやだ!人間達に戦争を仕掛けるぞ!」
『そうだそうだ!横暴な人間達を、これ以上好きにさせるわけにはいかない!』
村人達の我慢は限界まで達しており、村人が次々と声を上げた。
「ならん!戦争だけは、断じてならん!」
村長の一喝により、大半の村人は黙った。しかし、最初に声を上げた青年、ラーグルだけは、物怖じせずに、村長に異を唱えた。
「何故ですか!抵抗しなければ、どんどん人が連れ去られていく!黙って見ていろとでもいうんですか!?うちにはもうすぐ子が生まれます!子供には、危険な目に合わせたくない!うちの子だけじゃない、この村の子達だって、被害を被るんですよ!?」
「復讐は、更に大きな戦いを生む・・・!お主の気持ちも分かるが、戦争だけは断じてならん!耐え忍ぶ戦いをするんだ!」
「・・・でも・・・!」
ラーグルの意思は伝わらず、今日の集会は幕を閉じた。ラーグルはとぼとぼと家へ戻った。家に入ると、目の前に、倒れている妻、リーシャが目に入った。
「リーシャ!どうしたんだ!しっかりしろ!リーシャ!」
「あなた・・・、も・・・ぐ・・・・・・れる・・・。」
「はっきりといってくれ!リーシャ!」
「・・・もうすぐ・・・生まれる・・・!ううっ!」
「えっ!生まれるのか!?・・・待ってろ!」
それから、リーシャの数十分の奮闘の甲斐あって、無事、元気な男の子が生まれた。そのとき生まれたのが、レブだ。
レブは活発で、よく外で遊ぶ子だった為、毎日すくすくと成長していった。ラーグルは、そんなレブを見ているだけで、毎日が幸せだった。このあと、チャッカ村を脅かす大きな事件があるとは露知らず・・・
レブが6歳の頃、未だに奴隷狩りの影響で、人口は減りつつあったが、チャッカ村は平和だった。レブは、ボラクス村長の所へ遊びにいっていた。
「ボラクスじいちゃん!遊ぼう!」
「いいぞ。何して遊ぶ?」
「・・・外で遊ぼう!」
それから、レブと村長はたくさん遊んだ。日が暮れて来た頃・・・。
「・・・レブ君は元気じゃな。こうして、村の子の成長を見るのは楽しいのう
。」
「元気すぎて困るぐらいですよ。」
村長は、たまたま居合わせたラーグルと、のんびりと語り合っていた。・・・次の瞬間、ボラクス村長の胸を、銀のナイフが刺し貫き、あたりに多量の鮮血が飛び散った。
「・・・・・・うぐぅ!何故人間が・・・。」」
村長は、血を吐きだし、その場に倒れた。
「なに・・・、そ、村長!」
目の前の突然の出来事に、ラーグルとレブは戸惑った。村長を刺した人間は、薄ら笑いを浮かべていた。
「貴様!よくも村長を!」
「フッフッフ・・・。悪いねぇ・・・。奴隷として有能な分、もったいねえが・・・、この村のドワーフは皆殺しという令がでていてねぇ・・・。君も殺してあげよう。」
人間は、激昂するラーグルに、ナイフをつきたてた。しかし、ラーグルにひらりとかわされ、渾身の打撃を喰らった。・・・一撃。人間は地面に倒れこみ動かなくなった。ラーグルは、急いで村長の所へ向かった。
「村長!しっかりしてください!」
「・・・ラーグル・・・、レブ君は・・・無事か・・・?ゴホッゴホッ!」
「はい、でも村長が・・・。」
「ワシは・・・もう・・・ゴホッ・・・、長く・・・ない・・・・・・ラーグル・・・、村は・・・任せ・・・た・・・ぞ・・・・・・。」
「そ・・・、村長!!」
村長は、ラーグルに遺志を伝えると、その場で息を引き取った。ラーグルは、村長を抱きかかえながら声をあげて泣いていた。その時、一発の銃声が、静寂な森を包んだ。
「うっ・・・!」
ラーグルの目の前には、武装した人間の集団。その一人が、ラーグルを撃ったのだ。ラーグルは顔を歪ませ、撃たれた腹を押さえた。
「ハァ・・・ハァ・・・、ゲホッ!・・・・・・お前らは・・・一体何の目的で俺達を・・・!」
「・・・貴様には関係無い・・・。とにかく死んでもらおう・・・。貴様にもこの村のやつらにもな。」
男は冷たく答えると、ラーグルに銃を向け、放った。しかし、ラーグルはそれをかわし、武装集団を一人一人蹴散らしていく。手負いにも関わらず、ラーグルの力はすさまじかった。5分程で、武装集団は全滅した。しかし、ラーグルのダメージも相当で、もはや立っていられず、血を吐きだし、その場に倒れこんだ。避難していたレブがラーグルに駆け寄る。
「お父さん!」
「レ、レブ・・・、無事で・・・よかった・・・。・・・がはっ!」
「父さん・・・、き、傷が・・・。」
レブは、血塗れの父を見て、ひどく怯えていた。そんなレブの手を、ラーグルはゆっくりと握りしめた。ラーグルは、自分の死期を悟り、レブにこう告げた。
「・・・いいか・・・レブ・・・、父さんがいなくても・・・ゴフッ、・・・立派に生きるんだぞ・・・。母さんには・・・よろしく頼む・・・。最後に・・・、人間のことは、絶対に憎むなよ・・・。」
「いやだぁ!死なないでよ!父さん!」
「・・・心配するな・・・。俺はいつまでもお前を・・・見守ってるから・・・な・・・・・・」
ラーグルはレブに優しく微笑み、ゆっくりと目を閉じ、動かくなった。
「父さぁぁぁぁん!」
レブの悲痛な声が、深い森に木霊する・・・。
翌日、村長とラーグルの突然の訃報には誰もが驚き、、悲しんだ。村では二人の葬式が開かれている。葬式には、村の住人ほぼ全てが参列し、皆揃って、亡くなった二人に黙祷を捧げている。また、リーシャはそこにはおらず、家のベッドで療養していた。リーシャは、父の訃報を聞くなり、卒倒してしまったのだ。レブは、涙をボロボロと流しながら、、帰らぬ姿になった父に祈りを捧げた。
~ラーグルの墓前~
ラーグルの墓は、村の南にある小さな湖畔にある。ここは、父さんが大好きな場所だった。レブは、墓の前でポツンと立ち尽くしていた。
「・・・父さんは人間を憎むなっていったけど、・・・僕には人間が憎くて憎くてたまらない・・・!僕はどうすればいいの・・・!?父さんを殺した人間が憎いよ・・・憎いよぉ・・・!」
レブは大粒の涙を流し、訴えたが、返ってくるのは、静かな波の音だけであった・・・。
レブが父の死を乗り越えて、旅に出るのは、今から10年後の話であった・・・。
レドリアの魔壺編『第四章 闇の誘い』
「・・・・・・。」
レブの壮絶な過去を聞いたシオン、ミーナは、愕然としている。それと同時にシオンは、レブがクレアの依頼を難くなに断る理由を確信した。
「・・・お前にとって、人間は、父さんの仇みたいなものだったんだな・・・。」
「ああ・・・。種族差別をするような人間は、親父を殺した人間にそっくりなんだ・・・。クレアもそう見えたんだ。だから、あいつの依頼は絶対受けない。すまねぇな。」
「そうか・・・。それだけの理由なのか。」
「・・・何だと?」
シオンがため息混じりに言うと、レブの心に苛立ちが募っていく
「それだけって何だよ。それだけで表せる事じゃねぇのによ・・・!」
「俺には、お前が親父さんの死を理由に物事から逃げているようにしか見えないが・・・?」
「・・・俺は逃げてねえ!」
「逃げてるじゃないか!お前の言ってることは結局、親父さんを殺したような人間が怖いって事だろ!?初めて会ったクレアが、親父さんを殺したようや人間と同じとは限らないだろ!?ビビってんじゃねえよ!」
「・・・うるせぇ!」
レブは怒り、シオンを思いきり殴り飛ばした。シオンの体が、壁に激突した。
「ぐあっ!・・・レブ!何をするんだ!」
「・・・さっきから、知ったような口聞きやがって!お前が何を知ってるっていうんだ!」
「・・・・・・!」
「二人とも!落ち着いてよ!話し合いになってないじゃない!」
「こんなやつと話し合いなんてできるか!」
ミーナは二人を宥めようとするが、それはレブの怒号にかき消された。
「・・・もういい・・・レブ。お前の好きにしろよ・・・!こっちは、お前なんていらないよ・・・!どこへでも勝手にいけ!」
「・・・・・・!」
堪えかねたシオンは、怒鳴り口調でレブに言った。レブは、10秒程下を向いて黙りこみ、普段の落ち着いた口調で話した。
「・・・ああ、俺の好きにさせてもらう・・・。・・・じゃあな・・・。」
レブはそういうなり、荷物をまとめて、雨の中、家を出ていった。シオンは、寝室で寝転がり、無言で外を見つめていた。ミーナはシオンに問い詰める。
「・・・シオン!あの言い方はいくらなんでもひどいんじゃない!?」
「・・・・・・知らない。あいつの事はもう考えたくない。一人にしてくれ・・・。」
「シ、シオン・・・。」
ミーナは言われるがままに、寝室を後にした。ミーナは、一階の食卓机で、頭を抱え込んでいた。
「なんだか・・・みんながバラバラになっていくみたい・・・。どうすればいいの・・・?」
一方、レブは、大雨の中、ひっそりとしたチェシルの裏通りを、とぼとぼと歩いていた。辺りは既に暗く、人気が少ないせいか、裏通りは不気味な雰囲気に包まれていた。
「・・・・・・・・・。」
レブはシオンとのケンカで、ひどく気落ちしていて、足取りは重く、目はうつろになっていた。
ドンッ
レブは、気落ちしていたあまり、一人の青年にぶつかってしまった。青年は、苛立った様子でレブを一瞥すると、突然正面からレブの首を掴み、持ち上げて壁に押し付けた。
「・・・エホッ!」
「今ムシャクシャしてんだよ・・・!」
「・・・その手を・・・離せ・・・!」
「ドワーフの分際で!」
「ぐおっ・・・!・・・・・・かはっ・・・。」
青年はレブに強烈な膝蹴りをくらわした。半開きの口から唾液が飛び散り、レブはだらんと崩れ落ちた。
意識が朦朧としているレブに、青年は、とどめを刺そうとした。しかし、青年が拳を振り上げた直後、青年の体が一瞬で、凍りついた。しかし、レブを掴んでいた腕だけは凍りついてなかったため、レブは凍りつかずにすんだ。レブは咳き込みながら、青年の後ろに立っている黒と白の装束を纏った謎の人物を見た。
「・・・・・・?」
「・・・・・・。」
一見すると、その人物が女性というのは分かった。しかし、フードを深く被っているせいか、顔はよくわからない。
「・・・た、助けてくれてありがとう。君は・・・魔法使いなのかい?」
「貴様は・・・・・・人間が憎いのか?」
「えっ・・・」
女性はレブの問いを聞き入れず、逆に問いで返した。突然の問いに、レブは驚きを隠せなかった。女性は、レブの心を見透かしているように淡々と話を始めた。
「・・・貴様の名前はレブ=シフリー。仲間はシオン=レグラント、ミーナ=。しかし、今はシオン=レグラントと、クレア=レドリアの依頼について、喧嘩をし、家を出ていって、このあり様というわけか。フッ・・・、分かりやすいな。」
「・・・お前は・・・何者だ!何故そんなことを知っているんだ!」
「貴様の目を見たらわかる。私は、相手の心の内を読む術を持っているから、このぐらい造作でもない。貴様の心は読みやすかったぞ。フフフ・・・。」
女性は軽い笑みを浮かべ、レブの元へ歩いた。それと同時に、レブは今まではなかった、女性からの殺気を感じとった。レブの頬に冷や汗が流れる。レブは、風纏斧を恐る恐る構えた。
「・・・・・・もう一度問おう。人間が憎いか?」
「・・・お、お前には・・・関係無い!第一、親父を殺した人間はもう死んだんだ!もう人間は憎んでいない!」
「・・・素直になりなさい・・・。そして、私のものになりなさい!私の歌声で、あなたは心を支配される・・・!」
「何だと?」
女性は、美しくも不気味な歌声を辺りに響かせた。レブは、女性の歌声を聞くなり、斧を落とし、頭を押さえて絶叫した。
「なんだよこれ・・・!・・・やめろー!やめてくれー!入ってくるなぁー!」
「この歌は人の心の内の闇を引き出す歌声。さあ、人間への復讐心をさらけだしなさい・・・!」
女性が歌い終わると、レブの心の中には、とてつもなく大きい"復讐心"が生まれていた。レブの心には、『人間に復讐する』この一つしか無かった。レブの目が、淡い蒼碧色から、禍々しい真紅に染まっていた。
「・・・親父の敵・・・。人間・・・!殺す・・・!親父の死をバカにした、シオン=レグラントも・・・!」
「フフフ、素直でいい子だ。さて、面白いのはこれからだ・・・!」
女性は、不気味な笑みを浮かべ、レブと共に深い闇の中に消えた・・・。
お詫び
申し訳ありません。受験の影響で、更新が全く出来ていませんでした。誠に申し訳ありません。遅くとも来年には、元のペースに戻していきたいです。
レドリアの魔壺編『第五章 シーグ盗賊団』
『
~天空の冒険者達~