びゅーてぃふる ふぁいたー(1)
誕生Ⅰ
中心部から四方に向かって、光の波が押し寄せていく。画面が明るくなった。
あたしは生まれた。おぎゃあ。そんな歓喜の声は上げない。あたしが生まれるのは簡単だ。プチ。静かな音。パソコンか携帯電話の電源を入れ、インターネットにつなぎ、美少女戦闘ゲームをクリックすればいいのだ。あたしはゲームの子、チャイルド。さしずめ、このゲームのソフトはマザーだ。
あたしは死んだ。ブズ。擬音が鳴る。もう少しましな音が出せないのか。あたしの心臓にナイフが突き刺さっている。血は出ない。代わりに、エネルギーモードがゼロとなった。その場に膝から崩れ込むあたし。
「くそっ、もう終わったのか」ゲームプレイヤーの声が聞こえる。何を言ってやがる。こうなったのは、あんたのせいだろう。あんたが操作ミスしたからだ。あたしはあんたの操作どおりにしか動けない。だが、責任はあたしがとらなければならない。
たまには、あんたが死んで、責任をとってみろ。あたしの意識が遠のく。お葬式はあげない。ただ、画面から消え去るのみ。再び、起動したときは、ゲームプレイヤーに何の怨みもなく、あたしは生まれ出る。ゲームの子、チャイルドだ。
びゅーてぃふる ふぁいたー(1)