知らないもの11

「ひゆ姉様身体痛くないー?」
「頭は?」
「尻尾綺麗ー!」
ちびっこはそれぞれ違う言葉を口にした。


数時間はどんちゃん騒ぎの中にいた。
長いようだったが、あっという間に終わってしまって、すこし名残惜しい気もする。
私は泉ちゃんと同じ部屋に寝泊まりをするらしい。

「ここね、あまり広くないけど、自由に使ってね。」
泉ちゃんは綺麗な笑顔で言った。

ーコンコンコンー
「泉?いるか?」
咲紀くんの声だ。

「えぇ、入っていいわよ。」

「よう、」

「無理矢理眠らされたのね。」
さっきほどより断然顔色が良くなっている。

「妃雪にな。」

「あんた心配されてるんだからね?雪様だって心配してやってるんだから少しはね?」

「・・・」
なんだか咲紀くんがこんなに落ち込んでいるのって中々見れない気がする。
目線を下に下ろし考えるような素振りをした。

「雪様、大分調子は良さそうだけど、あまり無理はさせないようにね?」

「天月様が来てるんだよ。」

「え?」
天月?
天月って誰だろう。
人なのかな?

「雪様の中?」

「当たり前だ。ばばあと呑んでやらあ。」
咲紀くんは頭をがりがりと掻きながら言う。
同時に欠伸もする。

「あー、あのじじいめんどくせえ。」

「まあね、とりあえず相手しに行きましょう。」
泉ちゃんはすくりと立ち上がり言う。
ふわふわと蒼い髪の毛がゆれる。

「お前も来いよ。紹介しなきゃねえ。」
咲紀くんに手招きをされる。

長い長い廊下をひたすら無言で歩く。
何か発する事はなく、ただひたすら。

ついたのは先程とはすこし違うところだ。
ーギィー

「天月様、咲紀です。」

「おぉ、咲紀か。ん?泉じゃねえか、久しいなあ。その後ろのは誰だ?」
見た目、声はまんま雪妃ちゃんなのに口調は全く違う。
しっとりと、柔らかい話し方ではなく、ガサツで、男の人のような話し方だ。

「御影彩奈です。」

「御影か。にしてもついに女が生まれたかあ。」
お酒をのみながら言う。

「さあて、俺は少しは眠るとするかな。明日また顔を出してやろう。
咲紀、妃雪を頼んだ。」

「は、はい。」

「あまり強く薬を抜くなよ?優しくし抱いてやれ。」
そう言った瞬間咲紀くんの顔が一気に真っ赤になった。
そして、蚊の鳴くような声で「はい」と言った。

「ひひ、えらいえらい。咲槻(さつき)なんて笑顔引き受けてたから蘭雪に何があったのか心配になったもんだ。
お前は大丈夫そうだな。まだ二回目だけど。」
何があるのだろう。

「彩奈と言ったな。俺は天月だ。初代の狐巫女。天狐と言っていいだろう。
詳しい話は明日する。俺は少し眠る。」
そう言った瞬間雪妃ちゃんはがくりと膝から崩れた。

「さて、俺は妃雪の薬抜いて来る。お前らは早く寝た方がいいだろうな。おやすみ。」

「おやすみ。あまり雪様に負担がかからないようにしてね。」

「あぁ。」
咲紀くんは雪妃ちゃんを抱き上げ部屋を出て行った。

「私たちも寝ましょう。」

「あ、はい。」

知らないもの11

知らないもの11

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-03

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