図書室の恋
夕焼け色に照らされた、僕の片思いの物語
夕方5時過ぎ、用事のない日の俺の日課。
「失礼します。」
校舎の片隅の教室の扉を開く。
廊下の床から絨毯になったその室内に入るために靴を脱ぎ、近くにある戸棚に荷物を置いた。
『いらっしゃい、今日も来たの?』
カウンター越しに聞こえた、司書の人の声。
静かな空間に居るのは、俺とその人の二人だけ。
「本、好きですから。」
いつも返す言葉は同じだった。
読書好きな少年。きっとあの人からの俺の認識はそんなものだろう。
だって、放課後に用事がない日はいつものように校内の図書室に足を運んでいるのだから。
・・・本当の理由なんて、知りもしないんだろう。
『本当に本が好きなんだね。お薦めとかある?』
「・・・・好きなように読んでるので、特にないです。」
『そっか。』
いつも途切れる会話。きっと、いや絶対に途切れさせているのは俺の方だけれども。
もともと話題提供する様な性格ではないので、仕方がないと言えば仕方がないのだ。
『じゃあ、時間は少ないけど・・・ゆっくりしていってね。』
「はい、ありがとうございます。」
夕日に照らされた図書室の中。聞こえるのは俺がページを捲る音と、あの人が鳴らすキーボードの音だけ。
読書をしているフリをしてそっとカウンターの方を盗み見る。
毎日の事ながら、思うことは一つだけ。
(・・・やっぱり、綺麗だな。)
今日も僕の恋心は健在です。
図書室の恋
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