ただ今、絶賛恋してます

まだ気づかない先輩と、必死に頑張る後輩の話

 午後3時30分。学校中に授業が終わるチャイムが鳴り響き、同時に放課後の始まりを告げる。短いホームルームが終わった後、私はいつもの如く夕暮れの赤色に染まった廊下を歩き教室から無駄に遠い生徒会室に向かった。
 先々月前の校内選挙にて有り難く「書記」という役職に就いた私の専らの日常は、生徒会通信のネタ収集であった。毎月一回のペースで生徒会からプリントを全校生徒に配布するのだが、何せ載せる内容がないのだ。
選挙の結果が出た先々月はそれぞれの抱負を述べ、冬休みが近くなった先月は注意事項と簡素な雑談を書いた。そして問題は冬休み明けの今月。目立つような行事もなければ、何か大きな物事があるわけでもない中途半端な時期。そんなこんなで私は非常にに困っていた。
 それと、もう一つ悩みの種があった。

「先輩、また内容探しッスか? そんなの諦めていい加減俺と付き合ってくださいよ。」

 ペンとメモ帳を片手に一人生徒会室内で唸っていると、ノックもなしに男子生徒が入ってきた。ゆっくりとした動作でドアの方へ顔を向けると、そこには校内選挙で1年ながらに当選し理数系の頭脳故に会計に就いた後輩が居た。
そしてこの後輩こそが私の最近の悩みの種である。どこで気に入られたのかは知らないが、事あるごとに…というより顔を合わせるたびに好きだの付き合えだの告白してくるのだ。正直、今はそれどころではないというのに。

「だから私は仕事があるの! 締め切りがもうすぐだから早くしなきゃいけないのに…。」

「そんなの関係ないッスよ。俺は先輩に誠心誠意告白してるだけッスから。」

「誠心誠意が軽すぎるよ。」

外見で決めるのは悪いと思うけど、とても軽いイメージの恰好をしているし第一に一日一回のペースで告白をしてくるのだ。これで誠心誠意と言われても怪しまざるを得ない。というより、私が許さない。

「本当なんスけどね。」

「いつも軽すぎて本心が分からないんだよ。」

 外見だけうなだれる後輩を見ながら、心の底からの本音を言う。
生徒会役員に任命され、それぞれと顔合わせをしてから早数ヶ月。挨拶代わりとでも言うように毎日言われ続ければそれこそ冗談にしか聞こえなくなってくるものだ。
それに、恋愛経験皆無の私に言われても恋愛感情なんて知ったことではない。要するに、どの道返答のしようがないのだけれど。

「…じゃあ、本気だったら答えてくれるんスか?」

 私が一人で悶々と考えに耽っているとやけに真面目な声色で話しかけてきた。
いつもと違うその様子に私は驚いて後輩を見る。未だにドア付近で立ったままの後輩は、常に笑顔を張り付けたようにヘラヘラしていたのに、今に限って真剣な顔をして私を見ていた。
普段と違う後輩の雰囲気に、不覚にも胸を高鳴らせてしまう。なんというか、羞恥以外の何も出てこない。
わけの分からない感情に頭の中を支配され、今までペンを走らせ続けていた右手もいつの間にか止まっていた。

「先輩、顔真っ赤ッスよ。」

 一体どれほどの時間が経っただろうか。
数秒の様な気もするし、十数分ほど経っているような気もする。張り詰めたような室内の雰囲気の中で口を開いたのは、後輩のほうだった。私自身、自覚のなかった表情の変化を指摘されさらに顔に熱が集中するのが分かる。

「な…この際言っておくけど私は年上の方が好みなんだからね!」

 先輩と言うこともあっていつも会話の主導権は私が握っているようなものだったのだが、今日に限って何故か負けているような気がした。いや、多分負けていた。それが何故か悔しくて苦し紛れに私の好みを暴露する。…なんの解決にもならない事は重々承知だ。

「そんなの…先輩が先に生まれたのが悪いんッスよ。」

 やけに優しい声でとても理不尽な言葉を吐いた後輩を見て、思わずときめいてしまったのは健全な女子高生の性だと主張しておこうか。

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放課後の生徒会。 そこで繰り広げられるのは、愛の駆け引き

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-03-01

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