リテイル・パレット ~二人の色鮮やかな物語~
※ご注意ください。物語上、男キャラは多少出ますがどちらかと言うとかなり百合寄りの物語です。
百合物に耐性が無い百合物は嫌だ!って言う方はお気をつけください。
またまだ一話目なので百合要素は少なめです。
【第一話:いつまでもその強気な君で…】
「ほんと……亜麻音はいつも突然だよね」
私は親友の亜麻音にそう言った。
「だって有名になりたいじゃない?絶対、いけるよ!」
「でもね亜麻音。出展するにしてもだよ。学園が許してくれないと思うよ」
一回、決めたことは貫くタイプの子だからいくらいっても諦めないってわかってはいるけどさすがにこんな事、出来ないでしょ。と今回ばかりは思った。
「先生も絶対、大丈夫だって言ってくれる!だから。ねっ七葉!」
私も亜麻音の気持ちは分からなくないけど……何だかこれから大変な予感がするよ……
これはあらゆる分野の美術や工芸品を学ぶ為、世界各国から生徒が集まる国立リンセント美術学園で始まる壮大な物語!………………なのかな?
※【国立リンセント美術学園は世界の中心、中央洋海にある巨大人工島に建設されたリンセント学園都市内にある、美術学園である。】
【第一話:いつまでもその強気な君で…】
それはじりじりと太陽が照りつけ始めてきた六月、初夏の物語。
六月の始め、登校中に親友の亜麻音はいきなりとんでもない事を言ってきた。
「ねぇ。七葉?私思うんだけど…八月開催の国際絵画展示博に絵画部として出展、出来ないかなって……」
私は少し笑いながら言った。
「ちょっと亜麻音。今日も冗談が上手いよね!その冗談スキル私に半分頂戴よー」
少し拗ねたように亜麻音は喋り始めた。
「むっ。七葉ったら!私は本気だよ!だって思わない?美術学園なのに展示博とかそういうのに一切、出せないんだよ。みんなにもっと見て貰いたいでしょ七葉だって」
確かにもっといろいろな人に見て貰いたいけど自分の作品を……
「んー確かに思うけど……でもこの学園って美術を学びにくるとこでしょ?あくまで作品を出展しに来る所じゃないんだし。それに学園主催のコンクールとかあるしそれでいいんじゃない?」
国立リンセント美術学園では毎年二回、学園都市で大規模なコンクールが行われる。彫刻や陶器やら様々なジャンルに分けられてコンクールが開催される。コンクールと言っても世界から様々な人が来て毎年、お祭り騒ぎだけど。
「でも亜麻音はそれじゃ嫌なの!だって国際絵画展示博で飾られたら……一気に注目されるじゃない。【絵画の天才女子高生!あの国立リンセント美術学園から初の展自博出展!】とかなってニュースとか新聞に載るかもだよ!」
苦笑い気味に言ってあげた。
「あはは……亜麻音は夢が大きいよねー私、ほんと羨ましいよ」
「もう!七葉ったら笑わないでよ!私、本気だからね!今日の昼休みに先生に言ってくる!」
私は慌てて咄嗟に言った。
「ちょ、ちょっと亜麻音。そりゃ亜麻音は学園内でもかなり絵画に関しては成績いい方だよ。でもあの展示博は世界から著名な絵師さんが出展するとこだよ。さすがにそれに出るって無茶すぎるって!」
まだ諦めないのか亜麻音はちょっと怒りながら言ってくる。
「むー!そんなことないよ!大丈夫、亜麻音に任せて!それじゃまた昼休みね!」
…………そう言い残し亜麻音は私を置いて学園に向け走っていった。
「はぁーーほんと……亜麻音のあの行動力はある意味、羨ましいよ…まぁあんな意地っ張りで我が儘なとこも可愛いと言えば可愛いけど……可愛いって何言ってんだ私…ははっ」
私は学園に向かって歩きながらそう独り言を言った。
この学園では入学時に最大、五つまで学べる科目を選択することが出来る。
版画、陶芸、染織、写真、映像、果てには漫画やゲーム、映画などの科目も選択可能だ。
まさに美術、芸術の総合学園といったところ。
でも選択できる科目が多いからと言っても実際、五つも選択しちゃうと追いつかないので皆は多くても三科目までしか選んでない学生が多い。
私は今の所、絵と言うか亜麻音と同じ絵画しか選択していない。
だってまず一つを極めるのが一番、効率が良いような気がするし……
そして亜麻音は正直言って凄いと思う。絵画の他に写真、映像、陶芸、漫画全部で五科目選択しているのにちゃんとそれぞれの美術、芸術を把握して勉強出来ているからだ。
「ほんと……亜麻音は何でも超人か!ってね」
小声でそう独り言を言った。今は一限目の数学の時間、正直私はあんまり勉強が出来る方じゃないのでぼんやりと外を眺めている。
あくまで国立リンセント美術学園は学校なのでちゃんと数学やらの必修科目がある。
「亜麻音……本気で出展する気なのかな」
私はどうも亜麻音の事となると気になって仕方がない。別に友達はそこそこいるけど亜麻音は親友だからかなっていつも思う。
そうそうこの国立リンセント美術学園は女子校であったりする。
じゃあ男子は学べないの?ってみんな思うんだけどリンセント学園都市内にこの国立リンセント美術学園の姉妹校で国立中央洋美術学園があってそっちが男子校だったりする。
別々にある理由は設立者が【男女、別々に学ぶ事で効率よく技術力を身につけれる】と言うイマイチ、効果あるのそれ?って言う理由だという。
「七葉ーー今日のお昼どうするの?良かったら私達、食堂で済ませようかなって思ってるから一緒に行かない?」
同じクラスの友人達が声を掛けてきた。
「ほんとごめんね!今日は亜麻音に呼ばれてて。お昼はまた今度、付き合うよ」
一人の友人が笑いながら言った。
「ほんと七葉は亜麻音さんの事が気になってしょうがないんだね。分かったよじゃあまた今度ね。……目一杯、イチャついてきなよ!」
「ちょ、ちょっと!何言ってるのよ!亜麻音とはそんなんじゃないから!」
友人達は分かった、分かったって表情をしながら去っていった。
私と亜麻音は今、二年生だ。亜麻音と出会ったのは私が初めてこの学園都市に来てからだからかれこれ丁度、二年ちょっと経っていて結構、一緒に居る時間が多い。
たぶん寮も同じだから余計に帰ってからも居る時間が多い。
そんな事を考えている内に四限目のチャイムが鳴った。
それぞれ食堂に行くなり集まってお弁当を食べたりと賑やかだ。と思いながら私は席を立ち亜麻音の居る二年一組の隣にある特別組に向かう。
その組は各学年にあって各学年の優等生が集められて授業している組である。
「この組に来ると毎回、亜麻音が優等生なんだな~って思い知らされるよ」
と笑いながら小声で言った。
「……な・な・は!聞こえてるんだけど!」
どうやら聞こえていたらしい。
「えっ。あっ!もしかして聞こえてた?……いやー亜麻音様には敵いません恐れ入ります!ははー」
私は笑いながら言った。
「もう!七葉ったらそんな冗談を言って……七葉だってここに来るぐらいの成績、あるのに何で来ないの?」
そう言い、職員室に向かい始めた。
「いやー私はひじょーに不真面目な学生でして。優等生が集まる教室じゃゆっくり寝れない……っと。じゃなくて勉強の速度について行けないかなーってね」
「……はぁー。ほんと七葉らしいね。七葉の脳みそどんな構造になってるか見てみたいよ」
私はちょっと怯えながら言った。
「はは……お願いだから私が寝てる時に頭、解剖しないでね」
「も、もうそんなのする訳無いじゃない!冗談よ冗談」
「良かった!……で話は変わるけど朝の事、本当に先生に頼む気なの?私は無理だと思うけどなー」
話は朝の登校中の話に変わる。どうやらまだ亜麻音は大丈夫だと思っているらしい。
「当たり前よ!私はやると言ったら必ずやる人間なんだから!」
私は諦め気味に言った。
「で、ですよねーーー………」
私達はそうこうしている内に職員室に到着した。
「失礼しますーー!」
亜麻音は元気よく職員室の扉を開けた。亜麻音はどうどうと職員室に入り。絵画部の顧問であるクロエ先生の前に立った。
「えー、えっと。鳳月院さんどうされたんですか?」
クロエ先生は気弱な物理兼絵画担当教師だ。生徒からはその気弱で小動物のような可愛い感じからいい意味で少しだけからかわれている。
「クロエ先生!単刀直入に言います!八月に開催される国際絵画展示博に絵画部から作品を出して出展したいと思います!」
何秒経っただろ、職員室内が静寂に包まれた……
「えーと……鳳月院さん?あのね絵画部の部長だから気持ちは分かるけども……ちょ、ちょっと私にはそのお願いを叶えてあげるのは無理かなーって思うのだけども…」
亜麻音は咄嗟に言った。
「ど、どうしてですか!この私の溢れんばかりの気持ち!熱意が伝わらないんですか?」
小声で亜麻音に言った。
「あ、亜麻音?やっぱりさすがにこんなお願い無茶だよ……」
「大丈夫よ!七葉は心配しないで!」
「あのね……鳳月院さんそのお気持ちは凄い分かりますけどね。………」
私はふと亜麻音の顔を見た。亜麻音のその綺麗な紅色の瞳から涙が零れ落ちそうに見えた。……って何時も強気のあの亜麻音が泣きそうなんですけど!
何を思ったか私は無意識の内に口が開いていた。
「先生!私からもお願いします!亜麻音の思っている気持ちは私も一緒なんです!だから……だからお願いします先生!」
あれだけ無理、無理と言っていた私からは想像できない言葉が無意識に出てきた。亜麻音の泣いている顔なんて見たくないと思ったのだろうか。
「秋野宮さんまで……」
先生は数十秒考えてこういった。
「分かりました!可愛い教え子がこんなにお願いしているのにその気持ちを先生は無碍に出来ません!……あっでもさすがに私には決定権が無いので放課後に学園長先生に三人で頼んでみましょう!」
亜麻音はころっと表情を変え満面の笑みでこういった。
「先生!感謝します。やっぱり先生はやる人だと思ってましたよ!」
えっ……まさか亜麻音さっきの嘘泣きじゃないよね?だよね?
「それでは私達はこれで失礼します!」
そう言い残し亜麻音は私の制服を引っ張って足早に職員室を出た。亜麻音は本当に嵐のような子だ……
「亜麻音……私、何だか亜麻音が怖くなってきた……」
「な、なによ七葉!こ・れ・は私の戦略勝ちよ!」
「はは……さすが亜麻音だよね……」
多少でも可哀想と思った私が浅はかだったのかな。と少し思ったがまぁでも亜麻音が喜んでるならいっか。とも思った。
そんなこんなで昼休みが終わるチャイムが鳴り始めた。
「って私達、お昼食べてないじゃん!亜麻音さまー、お腹減ったよーー死にそうだよー……」
「はいはい。じゃあ七葉、手を開いて」
亜麻音は笑いながらそう言い私に何か手渡し教室に戻っていった。
「……これハッカ飴じゃん……亜麻音ーこんなんじゃお腹いっぱいにならないよー……あっでもちょっと嬉しいかもあの亜麻音から貰えるなんて」
私は小声で独り言を言い教室に急いで戻った。
六限目のチャイムが鳴り始めた。教室は荷物を纏めて帰宅する生徒や集まって談笑する生徒がちらほら居る。
この学園では基本的に教室も含め学園は用務員の方達が掃除をする。改めてここはお嬢様学校だなーと思うものだ。
お嬢様学校にしては需要内容もさほど他の学校と代わり映えしないし特別、お嬢様言葉が飛び交っている訳でもないのであんまりお嬢様学校って言う雰囲気でも無いけども。
「……こんにちは。七葉さんはまだいらっしゃいますか?」
教室の扉付近に居た生徒に亜麻音は話しかけた。
「えぇ。まだいらっしゃいますよ。お呼びしますね」
同じクラスの生徒が呼びに来た。
「わざわざ、ありがとうございます」
私は荷物を急いで纏めて亜麻音の所に向かった。
「珍しいね。亜麻音が呼びに来てくれるなんて。いやーお姉さん嬉しくて涙が出そうだよー」
泣きそうなポーズをして亜麻音に言った。
「はいはい!それより早く行くよ七葉」
また私は制服を引っ張られて連れて行かれた。亜麻音……ちょっとはゆっくり行動しようよ。そんな風に思った。
と言うか亜麻音って力強い……全然、手を離してくれないんですけど……てか制服が伸びちゃうよ……
そんなこんなで学園長室前に辿り着いた。そこには既にクロエ先生が着いていた。
「鳳月院さん、秋野宮さん。ちょっと遅いですよ。先生も緊張してるんですから……」
いやいや先生に緊張されたらこっちまで緊張するんですけどもね。
「先生!そんな弱気でどうするんですか!ここは一発、ガツンと学園長に言ってください。私はおもっきりいきます!」
あのーー亜麻音さん?学園長先生を怒りにきたんじゃなくて頼みに来たって事は分かってるよね?
学園長先生は優しい方だから怖くはないけどやっぱりその風格というかオーラを感じてしまうとやっぱり緊張してしまう。
私もお願いした立場だからここはちゃんとしないと……
「ほら七葉!行くよ。先生もちゃんとシャッキとして!」
さすが亜麻音……女の子ながらその強気具合、お姉さん惚れ惚れしちゃうよ。
そして亜麻音は学園長室の大きな扉に手を触れおもっきり開けた……………
【To be continued.】
【七葉と亜麻音の解説部】
七葉「いやー亜麻音さん!いよいよ始まりましたね!」
亜麻音「御託はいいのよ。早く解説を始めるわよ」
七葉「いやはや御託はいいって……私のこの亜麻音に対する気持ちは御託
なんて言葉では片付かないよ!」
亜麻音「はいはい。分かったからほんと始めるわよ。今回、解説するのは……私よ!そう私!」
七葉「あ、亜麻音さん……自分で自分を紹介するっておかしくない?」
亜麻音「むっ。そう言うなら七葉が解説しなさいよ」
七葉「りょーかい!亜麻音の事なら私が解説したいし!」
【鳳月院 亜麻音】
今作のメインヒロイン?って位置づけの超強気で我が儘なお嬢様だよ。
とは言っても世界的に名の知られている鳳月院財閥のご令嬢だからこうなっちゃうのも仕方ない気がするかなって。
鳳月院財閥と言うのは……まぁこれはまた今度、解説するとして亜麻音は私や親しい友人には強気な口調だけどあんまり知らない人とかにはお嬢様言葉で猫かぶっちゃうんだよね。
私は素の亜麻音の方が好きなんだけどなー
でもそんな亜麻音だけど時折、未だに自分の事を亜麻音と下の名前が一人称な事かな。
本人は気にしてないらしいけどね。他人からしたら子供かってね……はは!
亜麻音は瞳は紅色で髪は黒髪に見えるけど濃い紺色って感じかな。
身長はたぶん百五十センチ前後で小柄で胸はあまりないけど髪の毛がさらさらで触り心地が良くて………ってこれ以上言ったら怒られるから止めとくそれでは以上!
七葉「こんな感じでいい?亜麻音?」
亜麻音「七葉ちゃんーよく出来ましたねー……って言うと思ってんの!何よこれ亜麻音は解説をしなさいって言ったのよ!ってかなに亜麻音のコンプレックスをさらっと言ってんのよそれに加えて亜麻音が寝てる時になんで勝手に髪触ってんのよ!あとたまにぐらい一人称を自分の名前で呼んでも別にいいじゃない!」
七葉「ちょ、ちょっと落ち着いて亜麻音!分かった分かった!私が悪かったから!そ、それじゃ皆さん亜麻音が暴れだしたのでまた次回お会いしましょうそれではそれでは!…………ちょっとー亜麻音ってばー怒んないでよー………」
リテイル・パレット ~二人の色鮮やかな物語~
後書きで言うのも遅いんですが百合要素が入ってきます。
まだ一話目なのでその辺りの要素は薄いですが段々、濃くなってくる場合がありますので
百合ものとか嫌いだよ!とかの人はお気をつけください。
予定では物語の都合上、そこまで長くならないかと思います。
また誤字脱字に関しては出来る限り精査、してますがもしあった場合は仕方ないなと言う寛大な気持ちで見てやってください。
秋野宮 七葉は優しくて心配性でもぶっきらぼうな感じの主人公です。
反対に亜麻音は我が儘で厳しくてしっかり者と言う感じのメインヒロインです。
あと余り小難しくならないよう噛み砕いた形の文章にしております。ご注意ください。