笑えない、笑わない
表情とは他人に思いを伝えるためにかなり重要な部分である。その重要な表情で他人に感情を伝えることができなくなったら、他人はどのように思うのだろう。
これは上司 幾太が自分自身の感情表現が下手なことを悩み、また、感情表現が下手でもわかってくれる他人がいればどれだけ救われるのだろうと考えた。
自分の対人関係の不器用さから、悩んで作者が書き綴った作品である。
笑わない、笑えない
僕は高校一年生のときに病気にかかって入院した。
そのときに、同じ年の彼女が個室で空をただ眺めていた。
その彼女のことがなんとなく気になって、度々彼女の個室を覗いて見たが、いつも彼女は空をただ眺めていた。
僕は勇気を出して彼女に話しかけてみた。
「空に何かあるの?」と話しかけた。
「何も無いわよ。雲がただ浮かんでるだけ。」と彼女は答えてくれた。
それから、しばらく彼女と話したが彼女はずっと笑わずにいた。
僕は彼女が怒っているのかと思い、ある程度話をしてその場を離れた。
次の日、僕は看護師さんに話しかけられた。
「愛沢さんと話したの?」
「彼女すごく嬉しそうにしてたわよ。」
「これからもいい話相手になってあげてね。♪」
それを聞いて僕は驚いた、だって彼女は話をしていてもまったく笑わなかったのに、本当はすごく楽しかったんだ。
それを思うと僕は自分がすごく恥ずかしくなった。
彼女が笑わなかっただけで、彼女が怒っているのではと勘違いしていたからだ。
もっと彼女の気持ちをわかってあげれば良かったと・・・。
彼女は頬の筋肉が硬直していて笑うことができなかったのだ。
「笑わない」じゃなくて「笑えない」だったんだ。
彼女は頬の筋肉が硬直していること意外は健康な体らしいんだけど、学校には行きたがらない。
それはそうだと思う、学校に行けば同級生と楽しい話などのとき、真顔のままで話さなければいけなくなる。
そんなことをすれば必ず学校でいじめられるのだから・・・。
それからは、彼女としっかり向き合って話を毎日した。
今なら伝わる彼女は真顔のままだけど心で笑ってる。
大丈夫、僕には伝わっているよ。
いつか、彼女が僕と話しているうちに元気になれば、一緒に学校にも行けるかも知れない。
そんな日を夢見ながら、僕は今日も晴天の空の下で彼女と楽しい話をする・・・。
笑えない、笑わない