短歌集
2012年10月
秋来たり
厳しき残暑
過ぎ去りて
冷たき雨の
降るも嬉しき
舞い落ちる
秋の枯れ葉に
吹く風は
冷たき木枯らし
すさびけるかな
2012年11月
冬近し
朝霜降りて
早朝に
息の白きは
煙りの如し
儚さは
美しさにも
酷似して
我が身を憂いて
悦に入るなり
宝石の
輝きまばゆく
見ゆれども
君の愛する
心に劣れり
君は花
かぐやかしきかな
その香り
我はうっとり
溺れてあるらむ
希望など
藁のごとしと
うそぶきて
それでも掴む
瀕死の我ゆえ
2012年12月
如何かな
政治の混迷
目の当たり
破壊とも言え
新生ともなり
期待込め
投じた一票
衆議院
政権交代
吉か凶かと
山際の
赤く縁取る
輝きは
真紅の太陽
出ずる前触れ
心にて
総て捧げて
愛すれど
求むる身体
満ることなし
我誘う
君の仕草の
悩ましさ
我胸内は
千々に乱れて
愛なるか
君への想い
振り返り
狂おしくもあり
君をば欲せん
我が思い
君に届けと
叫ぶれど
こだま虚しく
我が胸に帰る
旅立ちて
何処へ行くとも
あてもなく
ただ今の我
捨て去りたけれ
時刻む
長い歴史の
ひと駒を
庶民の暮らし
それを支えて
酔いしれて
さまよう街を
千鳥足
師走の夜の
年忘れかな
2013年1月
祈りなん
年の始めの
旭日に
我が願うは
平穏な毎日
人の世は
睦みて過ごす
ものなれば
嘘偽りの
人ぞ悲しき
喧騒を
逃れて一人
佇みて
沈黙に浸り
心省み
光あり
大雪の朝
雲間から
差し込む朝日ぞ
雪を照らして
雪照らす
眩き太陽
輝きて
溶かせし雪は
川と流れん
2013年2月
君を抱き
肌の温もり
感じつつ
伝わる鼓動は
至福の時かな
夜半過ぎ
甘き菓子をば
頬ばりて
メタボになるとも
欠かせぬ至福
溢れくる
涙の訳は
我が孤独
泣くも笑うも
ただ一人なり
遠い過去
若かりし日の
情熱を
ありしを思い
涙ぐむ我
気を使い
人の心の
移り気に
人はをれども
我は孤独に
時を待ち
何時かは夢が
叶うかと
思いて永き
微睡み続く
毎日を
同じ仕事を
なさぬなら
生きるを許さぬ
牢獄人生
旅に出る
此処より永遠を
求めつつ
ただ見つけしは
無限のさまよい
夢を追い
希望に溢れた
若き日々
今でも疼く
胸の奥にて
2013年3月
弥生立ち
春は近しと
覚ゆれど
雪も残りて
山里寒し
毎日を
かくてありけり
繰り返し
疲労に包まれ
それでも永らう
川流れ
水は遥かな
旅をして
大海に至り
天から戻りぬ
酔いどれて
周りに絡み
覚えなく
酒に溺ると
認むも難し
疑わず
迷いもなしに
ひたすらに
働く蟻よ
幸せありしか
永遠を
誓いし人との
すれ違い
人の心の
変節悲しき
ーーーーーーーー
3・11二周年。
復興への祈りを込めて二首。
震災に
消えたる街々
戻らずも
既に花咲く
陸奥の丘々
故郷を
流されしとも
震災に
負けぬ魂
金剛の力
ーーーーーーーー
春風に
揺れる蕾は
色めいて
花開く時
待ちきれずとも
芽吹き待つ
早春の野は
枯れ草に
埋もれたりしも
息吹包みて
天よりの
恵みの雫
春雨に
桜も開きて
卯月近きに
2013年4月
卯月来て
身を動かせば
汗ばみを
感じる季節に
夏を予見す
文字綴り
我が心根の
奥底を
描く願いを
込めて謳えど
一人待つ
愛しい君を
思いつつ
高まる気持ちに
愛は深まり
何の色
薄桃色の
花びらの
桜吹雪は
雪より紅く
暖かき
陽気に誘われ
咲く桜
冷たき日にも
負けず輝く
残せしは
我が魂魄と
情熱と
形はなけれど
心に生きなん
見聞を
広げたしとは
願いつつ
詰まらぬ知識に
溺れさまよう
未練なり
気持ち伝えず
見守りて
旅立つ君の
門出祝うは
背伸びして
萌え出でなんと
する季節
春の魔法は
それを誘いて
怒り来る
脅かしばかりの
かの国は
世界中から
見限られたり
新緑に
混じりて咲ける
山桜
時期を逃して
儚く見ゆる
西瓜食べ
暑き日光
苦にもせず
幼き頃の
山里の夏
2013年5月
晴れ晴れと
青空広がり
日も照れど
五月の風は
ひやりと寒し
朝の夢
心地の良さに
微睡みて
褥恋しく
暁覚えず
開墾の
はじめは豚と
ひとつ鍋
依田勉三の
不退の心
永遠に
我が在りしかを
残さんと
心掛けども
空回りの日々
芽吹き立つ
山里の木々
その背には
雪を頂く
信濃の山々
願い事
五月の空に
泳ぐ鯉
強く生きなん
折れもせず
夏蝉の
しぐれる季節を
待ちわびて
薄着を急ぎ
風邪をひく我
この国の
在り方変えたは
昭和なり
戦の時代は
まだ一昔
祖父思う
毎年年始に
行きたれば
二十歳を過ぎても
お年玉くれ
眼路遙か
霞むアルプス
雪残し
新緑の此処より
異国と見えなん
燕飛ぶ
五月の晴れた
大空に
雲もなくして
無限に高く
滅びゆく
太古の国々
振り返り
自国の今を
問い掛けてみる
思い立ち
行く先知らぬ
バスに乗り
あてどさまよう
見知らぬ地
春の夜に
明るし満月
西の空
山の端掛かりて
夜明けも近しと
永久と
誓いし平和
憲法に
普通が良いと
臨戦態勢
2013年6月~10月
水無月の
梅雨の晴れ間に
初夏の風
汗ばむ額に
夏を感じて
酷暑過ぎ
感じる朝の
肌寒さ
長袖通すが
懐かしきかな
君を待ち
逢えぬ我が身の
寂しさよ
思いありしと
信じしかども
恋に墜ち
その苦しさに
悶えども
止まらぬ心
思い煩う
宵に泣く
恋しい君に
想い込め
明日また会えると
淡く期待し
愛すれば
苦しみすらも
分かち合い
共に嘆くも
喜びとなり
想いあり
君に届けと
叫びたる
心に秘める
愛は確かに
日々迫る
忙殺されし
毎日に
秋の深まり
驚きこそすれ
短歌集