The onlyone world
ここは、日本のとある場所にある、時渡高校。この学校に通う生徒、「上野龍星」は本とパソコンだけが友達で、それ故に同学年の生徒たちからは敬遠されていた。高校2年になった始業式の数日後、彼の運命の歯車は、とある出来事をきっかけにまったく違う方向に動き始めるーーーーー
第一章 突然の終わり、そして始まり
「え…、なんなんだ…?」上野は気まずい顔でつぶやいた。その視線の先で、一人の少女が上野を睨んでいた。
逆戻ること30分前ーーーーーー
上野は、苦手な数学の授業を終え、一人昼食を教室でとっていた。周りには何組かグループで話しながら食べているクラスメイトもいたが、彼に話しかけようとする生徒はいなかった。
すぐに食べ終えた上野は、ひとり呟いていた。
「どこに行こうかなぁ。本は昨日借りて、まだ読み終わってないし…。パソコン室でも行くか。」
上野はひとりごちながら旧校舎の一番端まで向かった。
いつも通り、誰もいないーーー上野はそう思いながらパソコン室のドアを開けると、真ん中の方に、一人女子が座ってモニターを食い入るように見ていた。
(あれ?こいつどこかで見たような…?)
上野はそう思いながらも無表情で後ろを通り過ぎようとした。少女はよほど集中しているのか、それともヘッドホンの音が大きいのか、上野が入ってきたことさえ気づいていない。
ただ、後者は確かなようでシャカシャカと音が少し聞こえた。上野は、
(何やってるんだ、こいつ?)
と思いながら、思わずパソコンのモニターを見てしまった。そこでは、信じられないほど速いスピードで文字が下から上へと動いている。それにも驚いたが、上野が一番驚いたのは、ヘッドホンの音声である。
「クラッキング、50%完了。データを回収、及び破壊するまでおよそ3分。」
あっけにとられた上野にも気づかす、少女はモニターを数秒見つめたあと、一心不乱にキーボートを叩き始めた。すると、モニターの字もさらにスクロールし、いっそう速い速度で進んだ。そして2分後少女は手を止め、ふう、と息をついた。その耳に付いているヘッドホンの音がここまで聞こえた。
「ハッキング完了。データを回収及び破壊しました。」
少女は深呼吸をしているが、上野は呆然と立ち尽くすことしかできなかった。少女はハッと息を飲むと、こちらに振り返った。ようやく気づいたようだ。その少女はとても美しい容姿をしていた。でも顔は少し子供っぽくて、胸は小さい。
「見た?」
その少女は真剣なめつきで上野を睨んだ。その瞬間、上野の孤独で、しかし平和な生活は終わりをつげ、刺激的で非平凡な世界が、ゆっくりと動き出した。
第二章 再会
時間は現在に戻る。上野はその美少女をまじまじと見た。長く黒い髪で身長は低め、子供っぽい顔つきで胸は薄い。上野は、
(なんか見たことあるよなぁ)
と思い、聞いてみた。
「あ、あのさ」
「なに?」
怒りを押し殺した声に少しとまどいながら、なおも聞く。
「どっかで会ったことあるっけ?」
「はぁ!?」
その子は少し考え、気づいたような顔をした。
「ああ、君、2年B組だったね。今思い出したわ。確か私の席の前の人だっけ?」
そう言った少女にああと上野は思い出した。そういえば確かにそうだ。
「君確か…ごめん、私自己紹介のときいなかったんだ。君の名前教えて。」
なぜ近くの席の奴の名字すら覚えてないんだと思ったが、よく考えたら自分も同じなので言わなかった。
「俺は上野龍星っていうんだ。」
そう上野が言った途端、少女は驚愕の表情を浮かべた。
「上野…龍星…?嘘…」
「本当だけど…。」
そう言うと少女は身を乗り出して言った。
「私よ、私!天野いちご!」
「えっ?」
聞いたことがあるような気がする。が、思い出せない。
「覚えてないの?えっと、星空小学校の小学5年のとき一緒で、6年になるとき転校していった!」
「あー!!」
ようやく思い出した。確か小学5年の頃、いつも一緒で将来は…
「結婚の約束したよな…。」
「思い出した!?」
「あぁ、もちろんだ、いちご」
「龍くん、久しぶり!かなり変わったね!」
そう言いながらいちごは上野に抱きついた。上野は驚いて、あやうくこけそうになったが、なんとか耐えた。
「今まで忘れてたなんて、ひどいよ龍くん」
そう言いながら、いちごは、顎を上野の上にのせた。当然ながら、上野から見えるのはいちごの上半身、しかも胸だけである。
(うわぁ…)
上野の顔はみるみる内に真っ赤に染まった。遠くだとわからないが、近くで見ると、少し膨らみがあるのがわかった。上野はあわてていちごから離れた。
「もー、どうしたの?急に」
さすがに本当の事は話せず、上野は話題を変えて避けた。
「そんなことより、さっきの、なんだ?」
「えぇ、それについてなんだけど」
いちごは少し間を開けてこう言った。
「龍くん、ちょっと頼まれてくれない?」
The onlyone world
これは、自分の心で作られた世界です。別に誰かに宛てて書いたものではありませんが、読んでいいだき、そして少しでも心を動かしてくれたら幸いです。