魔法使いのおはなし

とある魔法使いのおはなし

とある魔法使いが独りで旅をしていました。普通では独りで旅になど出られないような年齢に見えます。
普通の魔法使い(彼女以外にはもうほとんどいませんが)は、人々をしあわせにするために魔法を使っていましたが、彼女は違います。
彼女は世界を憎んでいましたので、他人のために魔法は使えないのです。魔法は自分のためだけに使います。
まだまだ若いその魔法使いは、今日も世界を憎みながら旅を続けます。


ある日、彼女が険しい山道を歩いていると、道の脇に仰向けに倒れた男性がいました。頬わ痩せこけ、顔全体が垢で汚れています。おそらく遭難してしまったのでしょう。
魔法使いは、もうその男性が死んでしまっているものだと思いましたが、男は彼女を見つけると顔を輝かせ、這って近づいてきました。
「もう終わりだと思ってた。あとは死ぬだけだと。でも神は俺を見捨ててなんかいなかった!」
男は今までの衰弱が嘘だったかのように喜びました。そして魔法使いに頼みました。
「旅人さん、なにか食べるものをわけてくれないか。俺は遭難しちまって、5日間なにも口にしちゃいないんだ。」
魔法使いは表情を変えず、正直に答えます。
「私は魔法使いです。いつも食べ物は魔法で出しています。なので食べ物を分けることはできません。」
男は驚き、そして聞きます。
「それなら魔法で俺に食べ物を出してくれればいいんじゃないか?」
「残念ながら私は他人のためになる魔法は使えません。なのであなたを助けることはできません。」
そう彼女は言うと、男はもとの、衰弱しきった顔に戻りました。
「世の中そんな甘くないってことか。やっぱり神はとっくに俺のことなんざ見捨ててしまっていたのかね。」
彼はどこか遠くを見つめ、体力も少なくなっているというのにさらにつぶやきます。
「どうせ死ぬっていうなら、楽にしにたいねぇ。苦しいのは嫌だ。そうだ魔法使いさん、俺を殺してくれないか。できるだけ苦しまないようにさ。」
男の言葉を聞き、魔法使いは首を傾げます。そしてしばらく考え、数秒かかった後、口を開きました。
「あなたを殺すことが『あなたのため』になってしまうのなら、魔法で楽に殺すことはできません。でもその反対のことになら魔法は使えます。」
そういうと彼女は魔法を使いました。男の前に袋が出てきます。
男がその袋の中身を確認すると、数日分の食料と水、それに帰り道を指すコンパスが入っていました。
男は再び目を輝かせ、魔法使いに礼を言うため顔をあげました。しかし先ほどまで彼女がいた場所にはもう誰もいませんでした。魔法使いはもうこの場から離れるため、歩き始めていました。
男は衰弱も忘れ、魔法使いにむかって感謝の言葉を叫びました。大声で何度も、彼女の姿が見えなくなるまで何度も、何度も。


「…… …  」
先ほどの男が何かを叫んでいるようでした。しかし、魔法使いは自分に彼の言葉が聞こえなくなるよう魔法をかけたので何も聞こえません。
他人のために魔法が使えない魔法使いは、今日も世界を憎みながら旅を続けます。

魔法使いのおはなし

はじめましてkinaと申します。今回の魔法使いのおはなしは、先にいくつか別のお話が思いついていたのですが、一番最初のお話としてどうかなと思ったので一から考えて書いてみました。というのもほかのお話はほとんど魔法が出てこなく、そして主人公の魔法使いの性格というか内側が見えないようなお話になってしまっていたからなんです。これからのお話を続けていくうえで、私の思っている主人公の内側を読んでくださる方にまず伝えたい。そういう気持ちから今回のお話を書かせてもらいました。それが少しでも伝われば幸いです。
さて話しは少し変わって、この作品のジャンルのことですが今回のお話は間違いなくファンタジーです。魔法って言葉いっぱい出てきますしね。しかし!先ほども言っていたように頭にある他のお話では魔法なんてほとんど出てきません。だったらなんで主人公を魔法使いにしたんでしょうか…無自覚からくる私自身の趣味なんでしょうか。魔法使い萌えなんでしょうか、、、
そんなことはどうでもいいとして、ジャンルの話です。今後のお話もジャンルはファンタジーにしておこうと思います。主人公が魔法使いなんだからいいですよね?そういうことにしておきます。なのでファンタジーだと思ってみたらちげーじゃねーか!!!!という方には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいですがこの場を借りて説明をさせていただきました。
気づけばあとがきだけで本編ぐらい書いてしまってますね。ほんとすみません。ということでこれからもこのシリーズをよんでもらえたらなって思います。ちなみにシリーズなんて言ってますけど、このお話は短編集みたいなものでストーリーが続いてたりはしません。「キノの旅」見ないな感じです。
あれ?締めに入っていたはずなのにまだ続いてる?すいません文章まとめるの下手なんで。今度こそ締めます。
長文失礼しました。こんな駄文に最後まで付き合ってくれた方がいらっしゃれば本当にありがとうございました。これからのお話もよろしくお願いします!!

魔法使いのおはなし

――とある魔法使いが独りで旅をしていました。普通の魔法使い(彼女以外にはもうほとんどいませんが)は、人々をしあわせにするために魔法を使っていましたが、彼女は違います。彼女は世界を憎んでいましたので、他人のために魔法は使えないのです。魔法は自分のためだけに使います。まだまだ若いその魔法使いは、今日も世界を憎みながら旅を続けます。―― なぜか世界を憎みながら旅を続ける少女。彼女は魔法使いだった。さまざまな人々に出会い、さまざまな国々を訪れ、彼女はなにを感じるのだろうか。 本編並みに長いあとがきを書く注目のあとがき作家kinaが送るファンタジー(?)作品の第1作目! あれ?これキノの旅にくりそつじゃね?という自身の心の声を無視して書き上げた『おはなし』をお楽しみください!!

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-23

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