mermaid tear

最初の言葉は、余り関係ないかもしれないです。

世界が終わってくれるなら、それを私は厭わないと思った。
逢月七瀬(あいづきななせ)私はただそうなってほしいと思っていた。
「よう、七瀬」
クラスメイトの池田久遠(いけだくおん)が、声をかけてきた。
ただの、クラスメイトではないけど。
久遠とは、幼馴染。
頭が良くてかっこいい。絵に描いたような人物。
私は、彼に恋をしていた。
「久遠。ちょうど良かった。この数学の問題教えて?」
「七瀬・・・おまえなぁ。それぐらい自分で解けよ。」
そう言いながらも彼は教えてくれる。
「・・・・こう、かな?」
「そう。正解。良くできました。」
髪をくしゃくしゃになでた。容赦なく。
「髪ぼさぼさになるじゃん。」
私が少し怒った口調で言うと、
「はは、悪い、悪い」
そう言って反省もせず、少し続けた。
「もう!!」
そういった私に彼はふと、その手を止めてたずねた。
「そういえばさ、七瀬」
「何?」
「おまえも空月高校受けんの?」
そういわれた時少しだけ心臓がはねた。
「そうだよ。久遠もじゃないの?」
できるだけ平静に言葉を返す。
「そうだけどさ・・・あの高校、ここの学校より厳しいぞ?」
「知ってるよ。でもあの高校なら大学進学ほぼ確実だから」
「ふーん・・・」
そう言った彼の表情は、少しだけ曇っていた。
正確には申し訳ないという感じの顔だった。
また”あの顔”だ。
不安な私の顔を察したのか
「わっ!!」
私の髪をわさわさとなでる。
髪が乱れるが気にしないという風になでられまくる。
けれど抵抗はしなかった。
だって、私にしか、しない事だったから。
でもね、
その申し訳ないという、表情をするのは何故?
どうしてそんな顔で私を見るの?
そう私は考えていた。

帰り道、私は彼と一緒に帰る。
彼は私と雑談を交わしながらもときどき”あの顔”で私を見る。
顔を見ないように私は適当なおしゃべりをし続けた。
あの顔を見続けることができなくて、
なぜかはわからないけれど、少しの不安、恐怖
それを感じたから顔を見られなかった。

その答えを私はすぐに知ることになる。

例えば、世界が時を止めてくれるのならば、ずっと止まったままがいい。
そんなことは絶対ないけど。
時はとまることを知らないし、止まるはずもない時間
それは私にもやってくる。
申し訳ない顔をする理由がなんとなくわかった気がする。
斜め前の席、桃川李乃(ももかわりの)さん
彼は時々その人を見ているときがあった。
授業中とか、帰る少し前とか
それは他人にはわからないだろうけど私にはわかった。
だって私は、彼をずっと見てきたから
私のことではなく彼女を
彼は時々眺めていた。
放課後の私と久遠しかいない教室
「ねぇ、久遠」
「何?七瀬」
「久遠の好きな人っている?」
「いねぇよ」
「嘘」
「何でそう思うんだ。証拠は?」
「桃川李乃」
「なっ!!」彼は動揺する。
「正解?」
「・・・・おまえはめたな?・・・」
「騙されたほうが悪いの。それで、正解なの?」
「・・・・ああ」少々顔が赤い彼
「そっか。かわいいもんね李乃さん」
「・・・・・皆には内緒にしとけよ?」
彼はぼそぼそと照れつつ言った
「了解」
私は少々笑いながら言う。
どうやら、私の勘は当たったようだ。

どこかでなにかが崩れる音をきいた気がした。

愛だとか恋だとかの物語はきっとHAPPYENDをむかえる
それがどんなカタチであろうとも。本人が納得する結果を迎える。
幸せに主人公はなれる。
どうやら、私はヒロインにはなれないらしい。
恋をしている彼にもふられた。
直接的なのか、間接的なのか
どちらでもかまわないけど。
ただ、何故か涙は出なかった。
どうしてだろう。悲しいはずなのに
悔しくて、惨めなのに なのに
涙が一筋も流れなかった。なんでだろう。そう心から思った。

彼の口から答えを知ったあの日から、私は彼にあまりかかわらなくなった。
彼に迷惑にならないように、自分で勉強をしたし、できるだけ彼と桃川さんが一緒にいられるように努力をした。
そして、一緒に帰らなくなった。

帰り道、夕日、1日が終わる 夜の始まり。
ただ彼がいないだけで。
「なんて、別に、明日になったら会えるし」
そう、会える。
それだけ。
「別に、今生の別れってわけじゃないんだから。」
びゅうっと風が吹いた。
「あはは、寒い寒い。 帰ろ帰ろ。」
空元気で自分に言い聞かせ歩く。
帰って寝てしまおう。それに限る。
歩き出した私の視界は暗転した。

昔両親が泣いていたのを見たことがある。
その時私は、病院にいて、なんとなくだけれど気づいた気がした。
自分のことなんだろうなと
目が覚めたら、病室だった。
ゆっくり体を起こし何気なく窓を見つめた。
空が蒼い。そして緑がキラキラと輝いていた。
「七瀬、起きたのか?」彼の声が聞こえた。
振り返りそうになった。でもそれを堪えて
「うん、どのくらい寝てた?」
「3日、だ」
「そう」そう言った後
「逢月さん、体大丈夫?」
少女の声、今度は私は振り返れなかった。
「桃川さん?」おそるおそるきくと
「え、あ、うん」
おしとやかそうな声が聞こえてきた。
声を荒げて殴りかかりたくなる。でも抑えて
「私、のどが渇いたんだ。2人で買ってきてくれる?」
そう言った。
少しした後、
「・・・・・わかった」
彼はそう言った。
ドアが閉まる音、少ししてから
こっそりベッドを抜け出し、ドアを開けゆっくりと外に出た。
こそこそ、こそこそ、気まずい私は、彼らに出くわさないように警戒しながら動く。
そして屋上にたどり着いた。
蒼い空 太陽 白いシーツ達が干されてゆらゆらとはためいていた。
無意識に足が動き、そして何かにぶつかる
「・・・・・?」
足元を見てみると・・・
「!?」
男の人が寝ていた。
ゆっくりとかがみ、男の人の顔を見る。
青くなく、むしろ健康そうだ。
「あの・・・・」
「すぅ」
すっごく安らかに寝ている。
少し揺さぶってみると
「ん、うん?」
ゆっくりと目を開けた。
「・・・いい場所で昼寝し取ったのに誰が俺の邪魔をする・・・・」
私と目があう。
男の人の声は止まった。
「・・・ゅき?」
小さな呻きのような声
やがてぼんやりしていた彼の表情は焦点を定めた。
「えっと・・・・誰やあんた?」

mermaid tear

続くと思います。・・・・・・・・少しだけでもいいからあなたの心に触れてるといいな。

mermaid tear

多分ピュアな恋物語?

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-23

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