黒子のバスケ~恋愛編~

個人的に好きな黒子のバスケの夢小説です。
ちょっぴりおかしな点もありますが、広いお心でぜひ読んでいってください。

一日目

よく晴れた夏の日。

漣 憐亜(さざなみ りんあ)は、これから足を踏み入れる新たなる居場所の前に立っていた。

もう、泣いたりしない。

燐亜は、そう強く心に決めていた。
そして、もう一つ。

強くなる

燐亜はそう言って、自分の胸をドンと叩いた。



キーンコーンカーンコーン

学校のチャイムが鳴ると共に、散らばっていたクラスメイトたちが自分の場所へと座る。

「あーあ、結局青峰っちに教えてもらえなかったっスー…」
黄瀬が残念そうに口を尖らせると、隣の席の黒子が微笑んで言った。
「青峰くんは、口では言えないんですよ。すべて、感覚でやってますからね。何事にも」
黄瀬は黒子の言葉にプッと吹き出した。
「確かにそうっスね!特に勉強なんか、ほぼ勘でやってるっスからね」
そのとき、突然に後ろから低い声がした。
「んだよ黄瀬。わりいのかよ」
黄瀬は驚いて、バッと後ろを振り返った。
するとそこには腹だたしさにほおずえをついて顔を歪ませている青峰がいた。
「げっ!青峰っち!いたんスか!」
「おめえ、テツと一緒にすんなよ」
その言葉にカチンときたのか、黒子は目を細めて青峰を見つめると、青峰は少しも悪びれず、「ん、どうかしたのか?」と聞き返してきた。
黒子は青峰から目をそらすと、「…なんでもないですよ」と言った。
 そんな他愛もない話をしていると、ふいにドアが開いた。
担任の、松山先生が入ってきたのだ。
松山は一応クラス全員を一瞥し、出席をとり始めた。
青峰から始まって、やがて出席をとり終わると、松山は咳払いをして、言った。
「えー今日は転校生がやってくる。入っていいぞ」
同時に、教室がざわつき、無駄口をたたく生徒も増えた。
そして、その一人、黄瀬は後ろを向いて青峰に話しかけた。
「ねえ、どんな人っスかね?女の子だったらいーなー」
「ああ?なんで女子がいんだよ」
黄瀬はさりげなく自分の前髪をなでながら、
「だって、俺のかっこよさが、また一人、伝わるじゃないスか~!」
「死ね」
青峰は即答した。
マジこいつのこういうところ腹立つな…。
と心底思った。
黄瀬は苦笑いをしながら青峰に訴えた。
「えぇ~?!なんでっスか!いいじゃないスか!そんなこと言って青峰っち、本当は期待…」
黄瀬の言葉を遮ったのは、先ほど聞いたドアの開く音だった。
そして、ドアを開いた人物は、すたすたと教卓の前にやってきて、立った。
「自己紹介をしなさい」
先生にうながされ、その人物はゆっくりと口を開いた。
教室も静まり返る。
「漣 燐亜です。よろしくお願いします」
長い髪を茶色のゴムで縛り、目はぱっちりしていて体型も細すぎず太すぎず、というような”ブサイク以上かわいい未満”なごくいっぱんの女子生徒だった。
やはり、そうであるからか、ほかの生徒たちの反応も薄かった。
「おー…」「まあまあじゃね?」
などと、男子生徒の中から聞こえてくる。
「これからみんなと勉強する仲間だ。仲良くしてやってくれな」
「はーい」
「それでは、漣はあの青パツの奴の隣な。分かるな?」
青峰はすかさず松山につっこみを入れた。
「おい!青パツってなんだよ!」
松山は顔色一つ変えず、
「だって本当のことじゃねえか」
「……ッ」
青峰は反論できず悔しさにまた顔を歪める。
そうこうしているうちに、青峰の隣の席の子ー漣燐亜が座った。
漣はふんわりとした笑顔で青峰にあいさつした。
「これからよろしくね、えっと…」
「青峰大輝」
「あ、青峰くん」
あいさつを済ませると、漣は前を向きなおした。
漣は驚いた。
青い髪の人、黄色い髪の人、それから前にいる黒子の水色の髪の色に。
人それぞれの個性の象徴なんだろうなぁ、と思った。
漣燐亜という新たなクラスメイトが加わった中で、一時間目の授業は始まった。


やがて終わると、待ってましたとでも言うように、右ななめ前の黄瀬が話しかけてきた。
「ねえ、りんちゃん、俺のこと、知ってるっスか?」
漣は急に呼ばれたことと、りんちゃんという聞きなれない言葉に驚いた。
「えっ!?…あ、ああうん知ってるよ。黄瀬涼太くんだっけ?」
「わー知ってるんスか!ありがとっス!」
黄瀬は雑誌などに載っているあの笑顔で微笑む。
「う、うん…あのそれでりんちゃんって何?」
苦笑いしながら黄瀬に問いかける。黄瀬はそのままの笑顔で続ける。
「え?かわいいじゃないスか!ねー黒子っち!」
黄瀬は後ろにいる黒子に同意を求めたが、黒子は読んでいた本を閉じて「すいません、聞いてませんでした」と言いながら漣に体を向けた。
漣はそれを機にすかさず黒子にあいさつをした。
「黒子くん、これからよろしくね」
「はい。こちらこそ、お世話になると思うので」
「え?なんで?」
漣は小首を傾げて尋ねた。
「青峰くんと黄瀬くんのことです」
黄瀬がその言葉にすかさずつっこみを入れる。
「えぇ!?なんでっスか!黒子っち!」
漣はよくわからなかったが、笑顔で「うん」とだけ言った。
とうの青峰は小さくいびきをかいて寝ている。
毎日こうなのかな…。
と漣は思った。
そして漣は、思い切って言ってみた。
「…ねえ!」
黄瀬と黒子は少し驚いた顔をして、漣を見た。
「ここって、バスケ部ってあるよね?」
その質問に、黄瀬が答えた。
「そりゃあもちろん!俺等、バスケ部っスから!」
「俺等?」
「そ!青峰っち、黒子っち、そして俺!」
黄瀬は俺の部分だけ自分を親指でさして自慢げに言った。
「そっか。じゃあ…私、そこのマネージャーになってもいい?」
「えっ!?…い、いや…まあ…多分、いいと思うっスよ」
「多分って?」
「いやー、うちにはちょっと厳しいキャプテンがいるんで…顧問がいいよって言っても、確実に入れるかどうかは保障しないっスわ」
「わかったよ。なら、ちょっと頼みがあるんだけど…」
黄瀬は目を丸くした。


~放課後~

「なんで俺がわざわざ赤司っちの所に行かなくちゃならいんスか、も~」
黄瀬は悪態をつきながら2-Bの教室へ向かった。
漣はそんな黄瀬の悪態もスルーした。
 2-BはすでにHRは終わっていて、廊下に大勢の生徒がいる。この中で見つけるのはさぞ大変だろう…と思ったが。
「あ!いたー」
「えっ?」
漣は黄瀬の視線を追った。
するとそこには、2m近くあるだろうか、かなりの背の高い、それにがたいのいい男子がいた。
もしかして、あの人がキャプテン…!?
一瞬そう思ったが、そうではなさそうに見えてきた。
よくよく見ると、目は今にも眠ってしまいそうな目をしているし、なによりだるそうだった。
「き、黄瀬くん、あの背の高い人がキャプテン…?」
「え?…いーや、違うっスよ。その隣にいる、赤い髪の…」
人ごみから抜けられた背の高い男は、一人ではなかった。
赤、緑、紫色の髪の人たちがいた。
赤い髪の人。
それは、ほかの二人と比べて背が比較的低い人だった。
「赤司っち!」
黄瀬はそう言ってその人の元に駆け寄った。
「黄瀬。どうした?」
漣は黄瀬の後についていって、改めて赤い髪の人を見た。
なにかすごいオーラを感じた。
「?その人は?」
その人は漣を見つめ、黄瀬に聞いた。
「あー、今日うちのクラスに転校してきた、漣燐亜っス」
「…漣、なんか僕に用か?」
漣は赤司の目を不思議そうに見つめていた。
鋭くて、狼みたいな怖い目で、きれいな赤色で、澄んでいる。
漣にはそう見えた。
「あっ、うん。赤司くん…だよね?」
「ああ。そうだが」
「私をバスケ部のマネージャーにしてくれない?」
「わかった」
漣はあまりの即答に驚いて一瞬言葉を失ったが、すぐに立て直して「ありがとう」と笑顔で言った。
「…しかし、うちの部はマネージャーが多いから、必死でやらないと仕事がなくなるぞ。心してやるんだな」
「あ、はいっ!」
用が済むと赤司は「行くぞ」と紫原と緑間を引き連れて帰っていった。
漣はひしひしと赤司のすごさを感じていた。
同学年なのに、敬語を使ってしまうくらいすごい。
でも、ちょっと怖い……。
漣はそんな気持ちを心の中に溜めていた。
「…りんちゃん、帰るっスか?」
「あっ、うん。そうだね…って、一緒に?」
「そりゃあ、そうっスよ」
「え、でも、いいの?」
「…いいって…ま、俺が帰りたいだけ?」
「あ、そか。じゃ、行こ」
「うん!」
黄瀬と漣は一定の距離を保ちながら、歩いていた。
 学校を出ようとした、そのとき。
「あっ!黄瀬くん!」
「待ってよ~」
外にいた女子たちが一斉に黄瀬に群がる。
漣は思い出した。
黄瀬くんは、モデルだったんだ…。
なんだか漣は急に孤独感を覚えた。
「どもっス~!」
黄瀬が快く手を振ると、女子たちは黄色い声を上げて目がハートになっている。
「じゃ、俺は帰るんで~!…いこ、りんちゃ…」
黄瀬が漣の方を振り返ると、そこにはいたはずの漣がいなかった。
「あ、あれ?」
黄瀬は不思議そうにきょろきょろと辺りを探すが、どこにもいなかった。
そのとき、黄瀬に群がっている女子の一人が、意地の悪そうな声で言った。
「なんかあいつ、走って帰ったよ。はっ、わけわかんない。ねー、黄瀬くん」
「…………」
黄瀬は女子の言ったことを聞き流し、ただ、ただ漣の帰っていった方向へ視線を向けていた。



      漣憐亜、一日目終了。

黒子のバスケ~恋愛編~

どうでしたか?

たのしめていただけたでしょうか?

ここで言うのもなんですが、私はシリアス系の小説が大好きです。
なので、どうしても内容がシリアス気味になってしまいます。

そこも踏まえて、読んでいただければ嬉しいです。

黒子のバスケ~恋愛編~

帝光中学校の黄瀬、黒子、青峰のクラスに転校生がやってきた。 だが、その転校生はなにか大事なことを隠しているようで…!?

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-22

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