短編・体育祭編

体育祭

 けだるい気分にさせる日光をうけながらスタートラインに並んだ。二日間限りのグランドのトラックは、どこが白線なのか分からないほどに踏み散らかされていた。

…ヨーイ。

 そう、これは男の維持をかけた一発勝負…

ドンッ

――借り物競争だ!

 合図と同時に俺は一気に飛び出し、三百メートルトラックのコーナーにさしかかる頃にはトップになっていた。そのままのペースで反対側の直線にある封筒を拾い上げ、中身を確認した。

「こ、これは!」

 チャンスだ!

 心の中で神に感謝をして、自分のクラスの軍勢のところまで走っていく。

「由紀さん! 俺と来てくれ!」

 強引、かつ丁重に彼女の手をとり駆け出した。

「ちょ、ちょっと待って! 速い速い」

 そう言われて、彼女が運動音痴だったことを思い出した。スピードをさっきより3分の1程スピードを落としてゴールへ駆けた。
 そして、白いビニールテープを二人同時に切った。

 ぜぇぜぇいいながらも何とか立っていた由紀さんは少し怒り顔を近づけて、
「私はどんな借り物だったのかしら? 教え てもらうわよ!」
こういわれちゃあ仕方ない、というよりも、最初から言うつもりだった。
「これだよ、好きな異性を連れてくる。そう、これから一緒に時間を過ごしませんか?」
 息をきらしながら俺は臭いセリフをかました。

短編・体育祭編

短編・体育祭編

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-22

CC BY
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