控え室にて

とある撮影現場の控え室。

控え室。

全身黒タイツの男、渋谷がふてくされた様子で座っている。
ケータリングのコーヒーを持って、マネージャーの村井が現れる。

渋谷「で、どうだった?」
村井「しばらく待機だそうです」
渋谷「ふざけんなよなんとかしてこいよ」
村井「そういわれましても衣装が」
渋谷「そこをなんとかするのがマネージャーの仕事だろう?」
村井「あ、じゃあ、書きます?白いポスカとかで」
渋谷「ふざけてんの?」
村井「なんとかしろっていったの渋谷さんじゃないですか」
渋谷「だいたいさ、人が足りないからどうしてもっていわれて、仕方なくきてるわけよ。こっちは。なのに衣装がないってどういうこと?」
村井「無いっていうか、間違えてるっていうか、足りないっていうか(笑)」
渋谷「笑ってんじゃねーよ」
村井「すいません。あ、メイク室の横、野上さんの楽屋ですよ」
渋谷「野上ねぇ。なんかあいつ最近調子のってない?」
村井「オーディション一発目で仮面ライダー大抜擢ですからねー多少は鼻高くなっても仕方が無いんじゃないですか?周りのスタッフさんにはかなり評判いいんですけど」
渋谷「お前ずいぶんくわしいじゃん」
村井「僕、野上さんのマネージャーですからね」
渋谷「えっお前俺のマネージャーじゃないの?」
村井「野上さんの、です。渋谷さんはオマケみたいな」
渋谷「オマケって」
村井「ライダーオーディション落ちて、ショッカーの補充要員で呼ばれるような俳優にマネージャーがいるわけないでしょ」
渋谷「それはちょっとー言い過ぎじゃないかな村井くん」
村井「事実ですし。あ、野上さんから聞いたんですけど、あの自己紹介辞めた方がいいですよオーディションの」
渋谷「え、普通じゃん」
村井「渋谷の騎士とかいて、シブヤナイト、25歳です!よろしくお願いします!のどこがふつうなんですか。てか、芸名キラキラネームとかウケる本名山田正雄なのに。日本ハムのGMと同姓同名、ウケる(笑)」
渋谷「本名出すなよ。嫌いなんだよ自分の名前」
村井「いい名前じゃないですか正雄さん(笑)」
渋谷「半笑いで言うな!馬鹿にしてるだろ!」
村井「渋谷騎士もどうかと思いますけどね」
渋谷「え、かっこいいじゃん騎士」
村井「正雄さんけっこう恥ずかしい人ですね」
渋谷「(舌打ち)気分わりい帰る」
村井「いやいや、ショッカーも大事な仕事ですよ正雄さん」
渋谷「誰のせいだ。衣装も無いし、どうせ俺は補充のいてもいなくてもいいショッカーなんだろ?」
村井「ショッカーナメたら駄目ですよ正雄さん」
渋谷「正雄やめろ」
村井「ショッカーって意外と強いんですよ。ナメてかかると怪我しますよ」
渋谷「うるせーなじゃあ俺の代わりにお前がやれよ」
村井「え、いいんすか?俺ライダーシリーズ大好きで、(以下仮面ライダー、ショッカーについて語りだす)」

ドアがあき、撮影スタッフが顔をだす

スタッフ「村井さん、ちょっと」
村井「はい」

スタッフと共に控え室を出る村井
帰る準備を始める渋谷
控え室に村井が戻ってくる

村井「あの、衣装の予備がみつかって、ショッカー役は変わらないんですけど、ライダーと対峙するおいしい役所どうかって監督さんがおっしゃってるみたいで、あの、お詫びみたいなかんじなんですけど、いいんですよね?僕やっちゃうーあの、渋谷さんやらないかんじで」
渋谷「(被せ気味で)やりますー。やらせていただきますー。うんすぐ着替える。もう5分で現場行くからー。村井くん用意してー早くねー」

end...

控え室にて

控え室にて

とある撮影現場の控え室。 俳優とそのマネージャーによる密室劇。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-21

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