指輪を捨てたら、

project blue #001

右手の薬指。
ここにはめた指輪をどうしたらよいのか、。

左手は、今度もっといいやつを二人で選びに行こう
給料の3ヶ月ぶん、とか?
そうそう

今度が訪れないまま、右手の薬指、あのときもらった指輪が空しく光る。

夏も少しすぎた海には人もまばらで、
それでも太陽はじりじりと海を照らしていた。


何分、何時間、
どれくらいの時間が流れただろうか。


浜辺ではしゃいでいる恋人たちをみていたら、
なんだか馬鹿馬鹿しくなって、
右手がすっと軽くなった。
けれどその分、左手の中は、ずしりと重たい。
気持ちは、もっと重たい。

左手の中。
この指輪をどうしてしまおうか。

左手をそっと傾ける。
砂に落ちる指輪。
指先に少しの力を込めて、ぐっと押す。
ずぶずぶと、砂に埋まる指輪。

見たくないものにふたをするような、
罪悪感が増す。

あぁ、やっぱり、私は、

前に進む事もできなければ、
後ろに下がる事すらできない。

このまま、

重い腰を上げる。
生温い風が、気持ち悪い。


「落としましたよ」
きっとこの人は、
「僕が、捨ててあげましょうか?」
全部見ていたんだ。

私の罪悪感の固まりが、彼の手から滑り落ちる。

瞬間、

「待って」

その言葉が自分の口から出たとは思えなかった。
でもそれは、
指輪にすがりたかった訳じゃない。
多分、
自分でやらなきゃいけないって、どこかで思ったから。

「どうぞ」
彼が差し出した、私の罪悪感の固まりを受け取って、

キラキラと放物線を描き、小さく音をたてて。

海が小さく揺れた気がした。

「これですっきりしました?」
「意外と、何も変わりませんね」


夕日がゆっくりと、海に落ちて行く。

指輪を捨てたら、

指輪を捨てたら、

project blue #001 Blue, 果てしなく広がる海の青

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-21

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