ハルカカナタ
このページを開いて下さり、ありがとうございます。
まず、私の書くものは「小説」ではないかもしれません。
これは一つの「物語」として、見てくれれば幸いです。
では…突然ですが…
あなたには、譲れない事…というものはありますか?
曲げたく無い事。
諦めたく無い事。
認めたく無い事。
たとえ、現実が無理だと語っていても…
信じたい事があなたにもあるはず。
その揺らがない「想い」がいつか…
軌跡を生む事を信じて…。
この物語は「想い」をテーマにしたクロスオーバーストーリーです。
2人の主人公と、その仲間達…。
それぞれの「想い」が鮮やかに交差していき…
物語を彩ってくれます。
信じ続けた「想い」の先に…
一体、何が待っているのか。
あなた自身の目で確かめて下さい。
プロローグ
「私は、旅に出ます。」
あの日、君がいなくなりました。
そばにいて…当たり前だと思っていた君が…。
私のそばから消えました。
今君は、凄く辛い気持ちに押しつぶされそうで…
負けそうになっているかもしれない。
でも、忘れないで。
君にはたくさんの味方がいるって事。
君がどんな事になっても、見捨てないでいてくれる人がいるって事。
君を想う人がいるって事。
私は信じてる。
君が君のままでいるって事。
絶対に負けないでいてくれるって事。
どんな遥か彼方、離れていても…
きっとまた…会えるよね。
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これは私達の住んでいる世界と、ちょっと違う世界の話。
フォーリー・レクス
人はこの世界をこう呼ぶ。
フォーリー・レクスには、「霊力」と呼ばれるエネルギーで構成されている。
私達の住んでいる世界と変わらないのは
「文明」である。
車もあるし、携帯電話もあるし…
私達の文明より、少し進歩しているくらいである。
ただ、違うのは「車」「携帯電話」など
全ての物体が「霊力」で構成されている事である。
物の形などを「水の霊力」
エネルギーなどを「火の霊力」
人間や動物にのみ存在する「魂の霊力」
この3つの霊力がフォーリー・レクスを栄えさせている。
一方で、この世界にも「脅威」が存在する。
1000年前に世界に誕生した。
「負の霊力」である。
負の霊力は、他の霊力の形を歪ませる効果があり。
その霊力に触れた物は形を崩し。
植物は枯れ。
そして、動物や人はやがて…
「狂魔」
という化け物に変貌する。
生き物の身体を作る「水の霊力」が歪み
身体が異形と化し。
エネルギーの源である「火の霊力」も歪み。
理を超えた力を得て。
感情を司る「魂の霊力」までも歪み。
理性を失う。
その姿はまさに、狂った悪魔のようだからである。
世界中に負の脅威が広まり、世界問題となっている。
政府は、負に汚染される事を「極負汚染」と名付け。
汚染され、まだ狂魔になっていない人間を「極負汚染者」と呼ぶようになった。
そして、「極負汚染者」を「狂魔」になる前に殺す…
「狂前処分」
という政策を行っている。
負に汚染された人間を救う方法は、無い。
「極負汚染者」は政府に発見され次第、拘束され
処刑されている。
このような過酷な世界で生きている。
ある、少年と少女がいた。
序章 EP1「血縁無き家族」
フォーリー・レクスの南に位置する街「カナル」
この街は比較的に温暖な気候であり、住みやすい街である。
その街の、あるマンション。
「304号室の人、家賃待って欲しいんだって。」
「またかい、あの14歳の男の子と女の子が住んでいる部屋だろ?」
話しをしているのは、マンションの管理人らしき人だった。
家賃の延滞者についての話しをしているらしい。
「あそこ、2人だけで住んでいるんだろ?まだ若いのに大変だね。」
「いや、病気の母親が病院にいるらしいんだよ。」
「病院に!?そりゃますます大変だ!」
「だからあの2人、中学辞めてバイトしてるらしいんよ。」
「まじか…もう少し家賃待ってやろうや。」
「ああ、でもちゃんと払ってくれるよ。あの子達は…。」
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「……ん…。」
ある少女が目を覚ます。
茶髪のショートヘアの女の子だ。
虚な目で時計を見ると、一気に目を覚ます。
「やばっ!遅刻!」
女の子はベッドから飛び起き部屋のドアを開ける。
すると、黒髪の少年がパンを食べながらテレビを見ていた。
「目覚まし鳴ってた!?」
少年は横目でちらっと少女を見てから言った。
「鳴った。でもお前は一向に起きないし、音がうるさいから消した。」
「ちょっ、起こしてくれても良かったじゃん!」
少女はテーブルの上にある食パンをくわえて準備を始める。
「んふふ、ふんはんふふ?」
「今日は、バイト昼からだ。後、食ってからしゃべれ。」
少年は、携帯電話を開く。
「今日、午後から雨だってよ。傘もってけよ。」
「んーん!」
「よし、いってきます!」
「きいつけろよ。」
そして、急いで準備し終わった少女は家を出て行った。
「ふぅ…」
残された、少年はため息をひとつ。
「帰りに…病院寄ってくか…。」
そうつぶやくと窓から見える青空を見た。
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少女は小走りで駅に向かう。
「んー、間に合うかな…?」
私は、レア・フォーエバイト
みんなには、天然だとかバカとか言われるけど
私は気にしてない。
チャラチャララ~♪
レアの携帯が鳴る。
「何?アルからメール?急いでるのに…!」
メールの内容は一文字だけだった。
『傘』
レアは朝言われた事を思い出す。
「そういえば!傘忘れた!」
そして、青空を見る。
雲一つ無い快晴だ。
「こんだけ晴れてるし、雨なんて降らないよね…。」
そう自分に言い聞かせる。
メールの送り主は
アルバート・フローミア
私はアルって呼んでる。
私の幼馴染で…訳あって一緒に住んでいる。
いつも何考えてるのか良く分からないし…
無愛想だけど。
家事も料理もできる男の子。
まぁ、頼りになるかな?
「っと…急がないと!」
レアは、駅に向かって走り出した。
なんとか駅に着くと、いつもの2人がホームにいる。
丁度電車が来ていた、
「お、きたきた。」
「レア、ギリギリだったね。」
レアは息を切らしながら電車に乗り込んだ。
「危なかったぁ。」
「アルバートは?」
「今日、バイト昼からなんだって。」
この2人は
リイナ・ラインハート
ダモス・セレク
2人とは幼稚園からの友達。
リイナは良く気が利くし、優しい女の子で…
ダモスが冗談上手な面白い男の子だよ。
2人とも私達とタメで、これから学校なんだ。
レア達は空いている向かい合わせの席に座り、普通ならアルバートが座る席に荷物を置く。
リイナ「バイト初めて、半年ぐらい経つけどもう慣れた?」
レア「うん、まぁ、たまにミスするけど…」
ダモス「大変だよなぁ。あ、そうだ。サラさんの調子は?」
レア「今はだいぶ良いみたい。」
リイナは外を眺めて言った。
リイナ「レア達が学校辞めてから…ちょっとさみしくなったかも。」
レア「リイナ…」
『間もなく、霊結界を通過します。衝撃に気をつけて下さい。」
そして、数秒後にドンッという衝撃が電車に響く。
そして周りの景色が一変し、建物がいっぱいだった場所から
何も無い平原に変わった。
霊結界っていうのは、外から街に狂魔を入らせない為の結界の事。
霊結界は街に一つずつあってそれぞれ守ってるんだ。
平原には狂魔とか…危険がいっぱいだから普通の人立ち入り禁止。
だけど、街から街に移動する電車からなら外の景色を見る事ができるんだ。
他の乗客も慣れてるみたいで、衝撃に驚く事は無かった。
レア「リイナ達は、もうすぐ受験かぁ。」
ダモス「そうだよ。勉強しなきゃなんねーよ。」
リイナ「ダモスは正直ヤバイかもね。」
レア「2人とも高校生になるのかー。」
リイナ「レアとアルバートも、一緒になれれば良かったんだけど…。」
レアは笑顔で首を横にふる。
レア「ううん、私、今のままでも十分幸せだから。」
リイナ「レアは強いね…。」
ダモス「まぁ、俺達はレア達ほど大変じゃないって思えば受験なんて大丈夫だろ?」
レア「ふふ、そうだね。」
リイナ「本当に頑張ってよ?」
ダモス「へーい、がんばりますぅぅ。」
『まもなく、セネラの街の霊結界を通過します。衝撃にご注意下さい。」
再びの衝撃。
そうすると、また建物がある景色が広がる。
『間もなく、セネラに到着します。』
レア「あ、降りないと!じゃね。2人とも!」
リイナ「頑張ってね。」
ダモス「いってら!」
レアは電車を降り、仕事場に向かっていった。
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午後4時…
予報通り、外の天気は一変し大雨が降り注いでいた。
その頃アルバートはバイトを終わらせ、帰ろうとしていた。
アルバート「やっぱり降ったか…」
♪♪♪
すると、アルバートの携帯が鳴る
レアからのメールだ。
『やっぱり降っちゃった(笑)
もし、傘二つ持っていったなら迎えに来て欲しぃなぁ…
なーんて^^;』
アルバート「ったく…」
アルバートは二つある傘の一つを刺し、歩き出した。
レアの働いているスーパーに着くと、屋根の下にレアがいた。
アルバート「ほら、傘。」
レア「ありがとー!やっぱり、私が忘れたから二つ持って行ってたんだね。」
アルバート「今日はたまたまだ。もう忘れんなよ。」
レア「うん、分かった。」
レアは傘を刺し、歩き出す。
アルバート「これから、病院に寄るんだけど…来るか?」
レア「あ、うん。行く!」
二人はセネラ病院に着くと、病室に入っていった。
「あら、二人とも今日はどうしたの?」
アルバート「なんとなく…な。」
レア「サラさん、具合大丈夫?」
「うん、全然大丈夫よ?」
この人はサラ・フローミア
29歳で、アルの義母で私の保護者。
私には、音信不通な父親がいるから正式な家族では無いんだ。
サラさんが19歳の時、身寄りの無い私達を引き取って育ててくれた恩人
でも、その時の苦労のせいで半年前に重い病気にかかって入院。
だから、私達は中学を辞めてバイトをしてるんだ。
サラ「ごめんね、二人には苦労させちゃって。」
アルバート「何をいまさら。」
レア「そうだよ。今度は私達がサラさんを助ける番なんだよ?」
サラ「早く病気…良くするから。」
アルバート「無理すんなよ?無理してそうなったんだから。」
サラは病室に貼ってあるカレンダーを見た。
サラ「明日、二人の誕生日ね。」
レア「え!?そうだったっけ?」
サラ「だから、ちょっと早いけど誕生日プレゼントよ?」
サラは、同じ二つのネックレスを渡した。
アルバート「これ、作ったのか?」
サラ「うん、二人にあげたくてね。」
レア「うわー、ありがとう!サラさん!」
レア「アルと同じネックレスか…」
アルバート「ん?なんか不満か?」
レア「い、いやいや何でも無い!」
サラ「ふふ、二人とも良く似合ってるわよ。」
それから3人は色んな事を話した。
バイトでの出来事
これからの事
レア「それじゃ、またねサラさん。」
アルバート「体調には気をつけろよ?」
サラ「うん、あなた達もあまり無理しないでね?」
そう言って、2人は病院を後にした。
俺達はたとえ血が繋がってなくたって…
家族だ
序章 EP2「2人きりの生活」
アルバートとレアは近くのスーパーに買い物に来ていた。
レア「夕飯何にする?」
アルバート「逆に何が良い?」
レアは迷わずしゃべった。
レア「牛丼!!」
アルバート「ふーん。」
アルバートは野菜を見ている。
アルバート「そこのじゃがいも取って。」
レア「え?牛丼にじゃがいも使うの?」
アルバート「今日はカレーだよ。」
レア「え!?じゃあ私に聞いた意味は?」
アルバート「無い。」
レア「何それ!?ひどい!」
レアはじゃがいもをアルバートに投げつけた。
アルバート「おい、売りもんは粗末にすんな。スーパーでバイトしてんだろ?」
レア「スーパーの中の花屋だもーんだ!」
アルバートは投げられたじゃがいもを見た。
アルバート「このじゃがいも芽出てんじゃねぇか。レア。他のやつ。」
レアはもう一個じゃがいもを投げつけた。
アルバート「だから、粗末にすんなって。」
店員「こらっ!売りものは粗末にしちゃ駄目!」
レア「あ、ご、ごめんなさい!」
アルバート「ほら見ろ。」
レア「うー。」
アルバート「ついでにりんごも買うか。」
レア「はい。」
レアはりんごを渡した。
アルバート「んー、駄目だ。このりんご。」
レア「え!?なんで!?」
アルバート「りんごは、けつのくぼみが深い程味が良いんだよ。」
レア「へぇ、どこでそんなの覚えたの?」
アルバート「本」
レア「アルはいつも本ばっか読んでるからね。」
レア「インドア系?」
アルバート「悪かったな。」
アルバート「それよりりんご。」
レア「おしりが深いものだから…これ?」
アルバート「ああ、良いけつしてるな。」
レア「…なんか、変に聞こえるの私だけ?」
アルバート「お前だけだ。ほら、良いけつしてるだろ?少なくともお前よりは。」
レア「な…な、み、見た事無いくせにそんな事言うなー!」
アルバート「見た事ある。子供ん時。」
レア「子供の時の話しでしょ!?」
レアは顔を真っ赤にしておしりを両手で抑えた。
アルバート「それより次は肉だ。牛肉は赤いやつを選べよ?」
レア「もう…いっつもアルにいじられっぱなしだよー…。」
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2人は家に帰ると夕飯の準備を始めた。
アルバートがルゥを作り
レアが野菜を切っている
アルバート「きったねぇ切り方だな。」
レア「だ、だって不器用だもん。」
アルバート「まぁ味は変わらないからいいか。」
レア「もー、そんな事言うのやめてよー!」
アルバート「はいはい。」
また、無言で料理支度を始める。
もう、ちゃんと切ればいいんでしょ!
レア「痛っ!」
アルバート「ん?足くじいたか?」
レア「この状況で足くじくわけ無いでしょ!手切ったの!」
アルバート「ちょっと見せて見ろ。」
レア「大丈夫だって!こんなの舐めときゃ治るって…」
アルバート「お前の血入りのじゃがいもなんか食いたくねぇんだよ。ほら。」
アルバートは、レアの手をつかんだ。
アルバート「めちゃザックリいってんじゃん。いたそー。」
レア「だから、大丈夫だって!」
アルバートはレアの手を水で流した。
レア「……っ…。」
アルバート「ちょっとしみるけど我慢しろよ?」
アルバートは救急箱から絆創膏を取り出し張った。
アルバート「これでよし。」
レア「……あ、ありがと……。」
アルバート「全く、別にヘタクソでも良いから気をつけて切れよ?」
レア「へ?」
アルバート「俺に言われて悔しかったんだろ?」
レアは目を大きく開いた。
レア「べ、別に!?不注意だしぃぃ?」
アルバート「あそ。」
なんで私の事分かるのー!?
こっちは全然分からないのに…
アルはいつも無表情だからなぁ
カレーが出来上がり、2人はテーブルに座った。
アルバート「このじゃがいもひでぇな…ほぼミンチじゃねぇか。」
レア「あ、味は変わらないよ。」
アルバート「味まで変わってそうだな、お前の血混じったし。」
レアは若干本気で凹み悲しそうな目をしてる。
アルバート「それより、手大丈夫か?」
レア「え、あ、うん。」
アルバート「その手じゃ、洗い物は無理だろ?俺がやっとく。」
そして、アルバートはカレーを一口。
アルバート「ん、以外とミンチのじゃがいもも良いかもな。」
レアはアルバートをじっと見ている。
アルバート「…なんだよ…。」
レア「もしかして、言い過ぎたって後悔してる?」
アルバート「ん、別に…」
レア「良いですよ、大丈夫です。いつもの事ですから。」
そして、レアはカレーを一口。
あれ?本当に美味しい。
じゃあ、アルは別に後悔なんてしてない……?
レアはアルバートをもう一度見る。
アルバート「…?」
レア「やっぱり…わかんないや…。」
アルバート「は?何が?」
レア「何でもない!アルのバカ。」
アルバート「はぁ?なんだよそれ?」
すると、レアはカレーを食べながら言った。
レア「アル、最近道場行ってる?」
アルバート「全然。」
レア「まぁ、忙しいからね。」
アルバート「まぁ、行っても先生も含め誰も俺に敵わないからな。」
レア「へぇ、なんだろ。昔からアルって何でも飛び抜けてるよね。」
アルバート「さぁ、なんでだろ?」
レア「あ、そだ!ちょっと見せてよ!戦い方!!」
アルバート「はぁ?いやだよ。」
レア「良いから!良いから!」
レアは食器を片付けてアルバートを外に引っ張って行った。
レア「ここなら、広いし大丈夫だね!」
アルバート「マジでやんのかよ。」
レア「よーし、かかってきなさい!」
レアは木刀を構えた。
アルバート「なんだよ、その構え。間合いもあったもんじゃねぇ。」
レア「仕方ないでしょ!?始めてなんだから!」
その瞬間。
レア「うぇ!?」
アルバートの木刀の先がレアの喉を捉えていた。
レア「ま、参りました…。」
アルバート「これで良いだろ?」
レア(まったく見えなかった…。)
レア「いや、いつもの練習してよ!」
アルバート「ん?いつもの…?」
レア「私知ってるんだからね!いつも夜な夜な練習してるの。」
アルバートは頭をかいた。
アルバート「仕方ねぇな…。」
アルバートは木刀を振りながら、鮮やかに動く。
レア「うわぁ、凄い……。」
アルバート「これで良いだろ?」
レア「いーや、まだ!」
レアは木刀をもう一本渡した。
アルバート「…………………。」
レア「ほら、いつも練習してるやつ!」
アルバート「はぁ…。」
アルバートは2本の木刀を構えた。
アルバート「はあああぁ!!」
もの凄い速さで木刀を力強く振り回すアルバート。
周りに、衝撃波がビンビン伝わってくる。
レア「すご……。」
そして、最後にフィニッシュを決めると地面に生えている草が抜けて舞い上がるほどの衝撃波が発生する。
レア「…………あ…。」
アルバート「はぁ…はぁ…。」
アルバートは2本の木刀を地面に捨てた。
アルバート「狂魔と戦う軍隊はたくさんいるけど、2刀で戦うやつはいないんだ。」
アルバート「理由はたくさんある。有効な構が無いこと、安全性が無いこと、片手で一本の剣を扱う為危険な事とかな。」
アルバート「メリットよりデメリットの方が高いから、結果的に片手剣の方が良いんだ。」
アルバート「だから、うちの道場でも教えてない。」
レア「じゃあ、なんで2刀を?」
アルバート「そんなの……。」
アルバート「かっこいいからに決まってんだろ。」
レア「ぷっ!変なの!」
アルバート「悪かったな。」
2人は家に帰った。
アルバート「じゃあ、俺は洗い物しておくから先風呂は入れよ。」
レア「はーい。」
レアは風呂場に行き、服を脱いだ。
やっぱり、アルの考えてる事は分からない。
昔からアルはあんな感じだった
他の男の子となんか違うんだよなぁ。
やけに大人っぽいし
インドアな癖に運動神経めっちゃ良いし。
家庭的だし。
レアは、体を洗い湯船に入った。
レア「はあぁ…癒されるぅぅ。」
でも、生きていく上であんな近くに男の人がいるって…
なんか不思議だなぁ。
お父さんもいなかったし…
レア「お父さん…か…。」
仕事してて会えないって言ってたけど…
本当にそうなのかな…
レアは風呂からあがった。
レア「あれ?着替えが無い…。」
レア「あー、部屋に忘れて来ちゃった!」
レア「んー、仕方ないか…。」
レアは風呂場の戸をそっと開け誰もいない事を確認すると叫んだ。
レア「アルー!!私の着替え持って来てー!!」
返事は返って来なかったが、こちらに歩いてくる音がする。
レアは戸を閉めて中で待った。
すると、戸の向こうにアルバートが来た。
アルバート「持って来たぞ。」
レア「ありがと!じゃ、着替えそこに置い……」
ガラララ
レア「ふぇ?」
戸が開いた。
アルバート「……ちっさ。」
レア「し…し……」
レア「信じられない!!!」
レアは、そこら辺にある物を投げつけた。
アルバート「痛っ…持って来いって言ったのそっちだろ?」
レア「良いから早く着替え置いて出て行って!!」
アルバートは戸を閉めた。
アルバート「なんなんだよ…あいつ…?」
レア「はぁはぁはぁ…」
レア「やっぱり、アルは分からないよー!」
レア「しかも、小さいって言われたぁぁ!」
そして、アルバートも風呂からあがった。
アルバート「なぁ……まだ怒ってんのか?」
レア「………………」
レアは携帯ゲームをやって徹底的に無視している。
アルバート「はぁ…しかたねぇなぁ…。」
アルバートは携帯ゲーム機を出した。
アルバート「モンファン一緒にやってやるから。」
すると、レアの頭がピクッと動いた。
レア「……本当に……?」
アルバート「ああ、本当だ。」
レア「やったぁ!じゃあ、一緒にやろぅ!」
アルバート「はぁ、単純だなお前も。」
モンスターファンタジー
略してモンファン
今、フォーリー・レクスで大人気のゲームである。
しばらく2人はゲームをしていた。
レア「はぁ~、疲れた。」
アルバート「本当にな。」
レア「じゃあ、ゲームはここまでにしよ!」
アルバート「そうしてもらいたい。」
そして、レアは携帯ゲーム機をしまうとある物に目がとまる。
レア「ん?アルバム?」
アルバート「ん?どうした?」
レア「見て見て!これ懐かしい!」
アルバート「あぁ、俺たちが中2の時の写真だな。」
レア「アル、無表情だね。」
アルバート「そうだな。」
レア「あ、これは小学校の卒業式!」
アルバート「懐かしいな。」
レア「やっぱり、アル。無表情だね。」
アルバート「…まぁな。」
レア「小学校の入学式!みんな可愛いなぁ。」
アルバート「本当だな。」
レア「でも、アル無表情だね。」
アルバート「悪かったな。」
レア「なにこれ、1人だけ毎回葬式じゃん。」
アルバート「こういう顔なんだよ。」
レア「後は……あ…。」
アルバート「ん?なんだ?」
アルバートが写真を見ると、茶髪の髪の長い綺麗な女性が幼いレアと写っていた。
アルバート「これも……懐かしい…な?」
レア「……うん…。」
レア「これは、アルと会う少し前の写真だね。」
アルバート「あぁ、覚えてる。後ろのでかい木も…。」
アルバート「でも…俺の記憶もここまでだ。」
レア「ねぇ?後ろの大きな木ってなんなの?」
アルバート「魂の還樹」
アルバート「人が死んだ時、残された魂の霊力がこの木に還り。」
アルバート「また、新しい魂となって出て行く。そんな役目を果たしている木だ。」
レア「そんな重要な木だったんだ。」
アルバート「国宝の一つだったけど…その木がある「ハイム」の街が10年前に「霊結界消滅事故」にあって、今はだれも近づけない。」
レア「霊結界消滅事故……あの時だね…。」
アルバート「あぁ、あの時だ。」
今から、10年前…
アルと私は初めて会った…。
序章 EP3「過去に負けない…今」
ハイムの街。
巨大な木、「魂の還樹」があり観光の街ともされていた。
ハイムの街に住む親子。
エリア・フォーエバイトと娘のレア。
2人は魂の還樹に遊びに来ていた。
レア「ママー!早くー!」
エリア「こら!勝手に走っちゃ駄目でしょ?」
レア「はぁーい。」
レアは、大きな木を指さした。
レア「わぁぁ!あのおっきな木がキラキラしてる!」
エリア「あれは心って言うのよ?」
レア「ココロ?」
エリア「そう。レアは夕ご飯牛丼だったら嬉しい?」
レア「嬉しい!!」
エリア「そう、嬉しいってなるのは心のお陰なのよ?」
レア「へぇ。」
________________________________________________
「…………‥ん…」
「……ここは…どこだ……?」
少年が目を覚ますとある小屋のベッドに横になっていた。
少年は体を起こすとふらふら歩き始める。
「なんなんだここ?」
少年は小屋から外に出て行った。
周りは大きな大人ばかり…
すると、ある女性が話しかけて来た。
「あら?ぼく?迷子なの?」
「え?いや、迷子?」
「お父さんかお母さんは?」
「お父さん…お母さん…?」
「こりゃ、迷子センターに届けた方が良さそうね。」
「ぼく?ちょっとついて来て?」
「え、ああ…。」
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その頃エリア達は記念撮影をしていた。
エリア「はい、よし!」
エリアはシャッターが切られる前にレアの横に並んだ。
パシャ!
エリア「良いの撮れたわね。」
レア「うん!がんばった!」
2人とも良い笑顔だ。
エリア「レア、明日誕生日よね?何が欲しい?」
レア「なんでもいい!?」
エリア「私にできるならね?」
レア「うーん、じゃあ…。」
レア「お父さんに……会いたいなぁ…。」
エリア「…あ………。」
レア「お母さん、できないの?」
エリア「…ご、ごめんね?お父さんはお仕事忙しいから無理よ?きっと。」
レア「でも、レア。お父さんに会った事無い…。」
エリア「きっと、いつか会えるわよ…?」
レア「うん…。じゃあ、何か考えとく…。」
エリア「うん、ごめんね?」
レア「ううん。」
ピンポーンパーンポーン
『迷子のお知らせです。黒髪で、簡素な衣服で5歳くらいの子供に心当たりがある人は迷い子センターまで起こし下さい。』
エリア「迷子ねぇ…。」
レア「お母さん!チョコバナナ買って!」
エリア「あぁ!レアは迷子になっちゃダメよー!?」
_____________________________________________
係員「ぼく、お名前分からないの?」
「んー…やっぱり、思い出せない。」
係員「どこにいたの?」
「あそこの小屋にいた。」
係員「その前は?」
「寝ていた。」
係員「起きたら誰もいなかったの?」
「いなかった。」
係員「寝る前、何してたの?」
「…分からない。」
係員「お父さんとお母さんの顔の特徴は?」
「分からない。」
係員が頭を抱える。
係員「うーん、名前思い出せないんじゃ…記憶喪失?」
係員「分からないなぁ…」
係員が色々と調べてる中、少年は外に見える「魂の還樹」をじっと見ていた。
係員「じゃあ、ちょっと待ってて……って、いない?」
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その頃…霊結界制御施設
「やめろ!!これを外したらどうなるか分かるだろ!」
「いちいち、あんな人混みから探すのが面倒なだけだ。」
そして、男は装置についている玉を外した。
「な、なんてことを……。」
_________________________________________
エリア「ん…?風?」
エリアの頬に冷たい風が当たる。
エリア「変ね。街の中じゃ風は吹かないはずなんだけど…。」
エリアは周りを見渡した。
レアの姿が無い。
エリア「あれ?レア?どこにいったの?」
その頃レアは、1人で魂の霊樹の真下に来ていた。
レア「うほぁ〜、大きいなぁ。」
すると、レアは立たずんでる少年を見つける。
レア「あの人…。」
レアは近寄って様子を見るが、少年はこっちを見る気配が無い。
ただ、木だけを見ている。
レア「木好きなの?」
少年はちらっとレアを見る。
「いや、別に。」
レア「じゃあ、なんでそんな見てるの?」
「悪い?」
レア「んー…、なんでそんな見てるのかなって思った!」
少年は、また木を見つめて言った。
「なんか、懐かしくて…。」
「へぇ。」
その時、2人に強い風が吹く。
レア「ふぁ!?」
周りで響く悲鳴声。
すると、上空にたくさんの虫の狂魔が飛んでくるのが見える。
レア「いやー!でか!」
一匹の狂魔がこちらに飛んで来た。
「……!」
少年はとっさにレアの手をつかみ走り出した。
レア「こ、怖い…!」
狂魔からなんとか逃れる事ができたが、事態は最悪だった。
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エリア「レアー!?どこー!?」
周りの悲鳴声でエリアの声がかき消されていく。
エリア「レア…!どこにいるの?」
すると、遠くからレアと少年が走ってくるのが見えた。」
エリア「レア!!」
レア「お母さん!」
エリアはレアの肩をつかんだ。
もう離さ無い。
エリア「レア!早く逃げるわよ?」
すると、一緒に来た少年に目がとまる。
エリア「レア?その子は?」
レア「レアを助けてくれたの!」
エリア「君?お父さんかお母さんは?」
「…分からない…。」
すると、頭上で狂魔が建物に衝突する。
レア「ひっ!」
エリア「……っ!君、走れる?」
「大丈夫。」
エリアは二人の子どもを連れて走り出した。
エリア「駅に…駅の列車に乗らないと!」
なんとか駅に着くが、電車はもう無かった。
エリア「…っ!どうすれば…!」
「エリア!?」
エリア「え?サラ!?」
エリア「久しぶりね!」
サラ「こっちこそ!」
レア「だれ?」
エリア「私の友達よ?」
二人は学生時代の友達だったらしい。
エリア「レヴァントに行ったんじゃなかったの?」
サラ「今日はたまたま帰ってきたの。」
ドーン!!
辺りに響く爆発音。
レア「ひっ!」
エリア「…再会を喜んでる場合じゃないわね。」
サラ「だけど、電車は行っちゃったわ。」
エリアは使われていない貨物列車を見つけた。
エリア「…サラ…電車って運転できる?」
サラ「できる訳ないでしょ!」
すると、後ろからたくさんの狂魔が来るのが見えた。
エリア「これは、選択の余地はなさそうね。」
サラ「まさか…。」
エリア「みんな!早くあの貨物列車に乗って!」
サラ「やっぱり…ね。」
4人は貨物列車に乗った。
エリア「えっと、どこがアクセル?」
サラ「わ、私にも分からない。」
狂魔がすぐそこまで来ていた。
レア「お母さん!早く!」
エリア「えっと、あ!「自動運転」ってある!これね!」
エリアはボタンを押すとゆっくり動き出した。
サラ「早く!」
電車は無事発車したが、何匹か狂魔がくっついてしまった。
エリア「狂魔をなんとかしないと。」
サラ「列車を切り離すのよ!」
サラとエリアは走り出した。
レア「お母さん!」
エリア「あなた達はここにいなさい!絶対動いちゃダメよ?」
レア「お母さん…」
サラとエリアは、後部に行った。
サラ「鎖で巻いてあるわね。外すのには時間かかりそう。」
エリア「でも、そんな時間無いわ!」
エリアは、2連目の列車に飛び乗った。
サラ「何を…。」
エリアは貨物列車の扉を開けると、たくさんの武器があった。
サラ「この貨物列車が積んでるのは武器…?」
エリア「私が、これで時間を稼ぐからサラは鎖をお願い!」
サラ「分かった。」
エリア「どれくらいかかりそう?」
サラ「……1分で終わらせる。」
エリア「よし…。」
エリアは電車の上に立った。
狂魔はすぐそこまで来ていた。
エリア「学生時代の護身術がこんな所で役に立つなんて…。」
エリアは右手に銃、左手に軍用の剣を持ち身構えた。
エリア「あれは…バッタの狂魔ね。」
エリアは銃を撃った。
しかし、狂魔が跳ねて当たらない。
狂魔が飛びかかってきた。
エリア「…っ!」
エリアは剣を振り、斬り倒した。
しかし、まだまだこちらに寄ってくる。
次々に襲いかかる狂魔を華麗に斬りさばいて行く。
エリア「…はぁ、そろそろかしら…。」
その時、羽の生えた大きな狂魔が飛んできた。
エリア「あれは…!蛾の狂魔!飛んでるから列車を切り離しても意味無い…なんとかしないと…!」
エリアは銃を撃った。
しかし、狂魔は華麗にかわす。
その時、蛾の狂魔に気を取られていたせいで
バッタの狂魔が飛びかかってきた。
エリア「きゃあ!」
狂魔に噛みつかれ、痛みが走る。
エリア「あぐっ…!」
エリアは狂魔をふりほどいた。
エリア「…はぁ…はぁ…。」
噛まれた所が真っ黒になっていた。
エリア「やっぱり…慣れない事はするもんじゃ無かったわ…。」
サラ「エリア!終わったわ!」
すると、後ろから誰かが走ってきた。
サラ「あなた達!来ちゃ駄目でしょ!?」
レア「お母さんは!?」
エリア「ここよ。」
レア「お母さん!早く!」
その時、エリアは列車を留めていた金具に銃を撃った。
サラ「な!エリア!なにやってるの!?まだあなたがいるでしょ!?」
エリア「ごめんね、私はここまでみたい。」
エリアはうでの傷を見せた。
サラ「…!まだ…まだ分からないわ!」
徐々に離れて行く列車。
レア「お母さん!!」
エリアは武器庫の中から爆薬を手に取った。
エリアは震えた声で言った。
エリア「レア…ごめんね…。」
列車が離れて行く…もう飛び移る事はできない。
エリア「サラ!あの子達を…お願い…!」
サラ「…エリア……。」
レア「お母さん!嫌だ!嫌だ!!」
レア「お母さん!」
すると、レアの手が強くつかまれた。
レア「……!」
少年だった。
エリアは、また列車の上に上がる。
エリアは大きく息を吸い込んだ。
蛾の狂魔がこちらに突進してくる。
エリアは爆薬に火をつけた。
ドーン!!
サラ「………!」
残された列車は爆発の連鎖で大爆発を起こした。
レア「お母さん…!!」
少年はただ立ち尽くし、レアを見守る事しかできなかった。
しばらくし、カナルという街に着く。
サラは列車を止め、3人は降りた。
しかし、そこにはたくさんの警官がいた。
警官は降りてきたのが人間なのを確認すると近寄って来た。
警官「君達、私達についてきてもらいたい。」
3人は街の病院に連れていかれ、汚染されていないかを検査された。
3人とも異常は無かった。
翌日…
レアは病院のベッドから外を眺めていた。
涙はすでに枯れ果て、悲しみだけが5歳の少女の心に残っていた。
死を初めて理解した。
もう二度と会えないものなんだと…。
一方、サラは少年の身元の確認をしていた。
サラ「はい…分かりました。」
受話器を戻す。
サラは少年に目を向けた。
サラ「記憶喪失…か…。」
少年は病院のベンチに座り下をむいている。
あの子達を…お願い…!
サラはある決心をした。
サラは少年に語りかけた。
サラ「あのね、君のお母さんが見つかるまで…私がお母さんでもいい?」
少年は顔あげた。
「俺の…?」
サラ「そう。本当のお母さんじゃないけど、代わりのお母さんでもいいかな?」
少年は頷いた。
サラ「うん、ありがと。名前…決めなくちゃね。」
サラ「アルバート……これが、君の名前。」
「アルバート…。」
アルバート「サラ…さん?」
サラ「…ん?なに?」
アルバート「ありがとう。」
サラ「ふふ、まだ幼いのに…やけに大人ね。」
サラとアルバートはレアの病室に入って行った。
サラ「レアちゃん…?」
レアはピクリとも動かなかった。
ただ、外を眺めている。
サラ「これね、列車の中にあったの。」
サラは一枚の写真を出した。
レアはゆっくりと手に取った。
背景に映る大きな木、自分。
そして、お母さん…。
枯れたはずの涙がまた込み上げて来た。
レア「お母…さん……お母さん…。」
サラはレアの頭におでこをくっつけた。
サラ「ごめん…ごめんね…私、エリアを守れなかった…。」
レアは声を出して泣き始めた。
サラ「だから…エリアが残したレアちゃんを…絶対に守るから…!」
2人は声を出して泣いた。
アルバートは、それをただ見ているしか無かった。
_________________________________________________________
ア……
……ア……。
アルバート「レア。」
レア「えっ…!あ!はい!?」
アルバート「何ボサッとしてんだ。寝るぞ。」
レア「あ、あはは…もうこんな時間か…。」
アルバートはレアの顔見た。
アルバート「お前…それ……。」
レア「え…?」
レアの目から涙が流れた。
レア「えっ…?あっれぇ?…涙…なんで出てるんだろ…?」
レアは涙をぬぐった。
しかし、拭えばまた流れる。
レアの声は震えていた。
レア「あれ…おかしいな……別に悲しくなんて…ないのに…。」
その時、レアの頭にコツンと何か当たった。
レア「…ふぇ…?」
アルバートはレアの頭に自分のおでこをくっつけていた。
アルバート「昔から悲しい事あったら、こうやってしただろ?」
アルバート「悲しみを分け合うんだって…サラが教えてくれた。」
レアは涙を流しながら笑った。
レア「だから、悲しくなんてないのに…。」
レア「でも…ありがと…。」
アルバート「うん。」
レア「しばらく、こうしてていい…?」
アルバート「うん。」
辛くて…悲しくて…
そんな過去を吹き飛ばすような…
「今」を、作りたいって思った。
序章 EP4「ハッピーバースデイズ」
どれくらい時間が経っただろう…?
ガバッ!
レア「あれ…?」
レアは布団から目が冷めた。
朝になっていた。
レア「あれ…?私、いつのまに寝て…。」
そして、時計を見る。
レア「あ!遅刻!」
レアはバタバタと部屋を出て行く。
アルバートはテレビを見ていた。
レア「アル!やばい!遅刻!」
アルバート「何に?」
レア「バイトだよ!バイト!」
アルバート「ふぅん。」
レア「ふぅんじゃなくて!」
レアは急いで準備を始める。
レア「アルは!?またバイト昼からなの?」
アルバート「いや、今日は休み。」
アルバートはコーヒーを一杯飲んだ。
レア「休み…。」
その瞬間、レアは全身の力が抜けたように座り込んだ。
レア「そっか…今日、私も休みだった…。」
アルバート「早く、着替えて寝癖直せよ?」
レア「あ、うん。」
アルバート「後10分でダモスとリイナが来るんだから。」
レア「え、なんで?」
アルバート「ん。」
アルバートはカレンダーを指差した。
レア「あ……そっか…今日は…。」
アルバート「お前と俺の誕生日。」
私とアルは誕生日が同じ日。
まぁ、それには理由があって…
記憶の無いアルは、自分の誕生日なんて知る由も無い。
だから、私と同じ誕生日にしたんだ。
レア「そっか、昨日サラさんから…。」
そう言って、レアはネックレスを握りしめる。
アルバート「ほら、早く準備しろ。」
レア「うん!じゃあ、お風呂行ってくる!」
そして、10分後ぴったりにチャイムが鳴る。
アルバート「来たか。」
ガチャ
パン!
アルバート「は?」
リイナ「2人共誕生日おめでとう!!」
ダモス「どうだ?びっくりしただろ?」
アルバート「………残念ながら、レアは風呂行ってるけどな。」
リイナ「本当だ!いない!」
ダモス「よりによって、反応の薄いアルバートだけかよ…。」
アルバート「悪かったな。」
アルバート「ほら、入れよ。」
リイナ「お邪魔します。」
ダモス「お構いなく。」
アルバートは風呂場の扉越しに言った。
アルバート「レア!来たぞ!早くあがって来い!」
レア「え?もう来たの!?」
アルバート「だから、10分後だって言っただろ。」
ダモス「久しぶりに来たなー。」
リイナ「サラさんいなくても、ちゃんと綺麗にしてるね。」
アルバート「悪いな、2人共。受験控えてるのに。」
ダモス「1日くらい大丈夫だって!」
リイナ「今度、ダモスに勉強教えてあげてね。」
アルバート「暇あったらな。」
ダモス「なっ!そんな必要無ぇし!」
そんなこんな話しをしていると、レアが部屋に入ってきた。
レア「あは、ごめん。ちょっと寝坊しちゃって。」
リイナ「あ、レア誕生日おめでとうね。」
レア「うん、ありがと!」
ダモス「お風呂あがりのレアちゃん。んー、良い匂いするな。」
レア「え……あ、あはは…。」
ダモス「アルバートめ、いつもこの匂いを嗅いで生活してんのか。」
パン!
アルバートはダモスの耳元でクラッカーを鳴らした。
ダモス「うわいっ!?何すんだアルバート!」
アルバート「はい、じゃあ乾杯。」
「乾杯ー!!」
そして、4人は中学の思いでをたくさん話した。
リイナ「アルバート君のモテようは凄かったよね。」
レア「へ?」
ダモス「ん?レアちゃん知らなかったの?」
ダモス「アルバート、何回告られた?」
アルバート「8回」
レア「はぁぁ!?何!?どんだけよ!?」
リイナ「でも、全部断ったんでしょ?」
アルバート「ああ…。」
ダモス「勿体無いなぁ、なんでよ?」
アルバート「こっちは家庭の事情で忙しかったんだ。恋なんてしないよ。」
リイナ「ふーん。家族想いだね。」
アルバート「会えなくて、嫉妬されても困るしな。」
ダモス「かぁぁぁ!大人くせぇぇ!」
アルバート「お前は、親父くせぇんだよ。」
レア「知らなかった…。」
リイナ「レア…知らなかったんだね。」
レア「だって…そんな事言わないもん。」
アルバート「いちいち、お前に報告してたまるか。」
レア「いーじゃん!ちょっとはしゃべってくれても!」
ダモス「あー、でもよ?レアちゃんも男子から結構人気だったんだぜ?」
レア「へ…?私?」
リイナ「うん、でもみんなレアがアルバート君とばっかり話すから諦めてたんだよ?」
レア「え…!え、でも。」
アルバート「そりゃ、悪い事したな。」
レア「わ、私だって。家庭の事情で忙しかったし!?恋する余裕なんて無いから断ってた!うん!」
アルバート「ふーん。」
レア「あれ、アルと全然違う反応なんだけど?」
ダモス「んー、アルバートが言ったら説得力あったしな。」
リイナ「うん、だからちょっと比較しちゃって…。」
アルバート「ふ…。」
レア「な!何鼻で笑ってるのー!!」
アルバート「ん、俺大家さんに家賃渡して来るわ。」
レア「うん、お願い。」
アルバートはマンションを出て、階段を降りて行った。
アルバート「すいません。今月分の家賃です。遅くなってすいません。」
大家「あら、良いの!良いの!大変だろうけど、頑張ってよ?」
アルバート「ありがとうございます。」
大家が外を見て言った。
大家「なんか、外が変なのよね。」
アルバート「変って?」
大家「実際に外に出てみればわかると思うけど。」
アルバートは外に出た。
アルバート「なんだ…?」
頬に冷たいのが当たる。
アルバート「これって……!?」
そう…あの日と同じ「風」だった。
序章 EP5「壊れゆく夢達」
霊結界制御室
「おかしい!霊力の出力が上がらない!」
研究員は焦っていた。
「今すぐ、住民に避難命令を出せ!」
________________________________________
アルバート「大家さん!今すぐ街を出てください!」
大家「え?何を言ってるんだい?」
アルバート「霊結界が通すのは水だけだ。なのに、風が吹いてるのはおかしい。」
大家「まさかぁ…。」
その瞬間、街内放送が流れる。
『住民の皆さん、落ち着いて聞いて下さい。』
『この街の霊結界が消滅しました。今すぐ、駅の列車に乗って避難して下さい。繰り返します…』
大家「本当かい!!」
アルバートは階段を上がっていると、3人も降りて来た。
レア「アル!!」
アルバート「聞いたか?」
ダモス「あぁ、聞いたよ!」
リイナ「早く駅に行こう!」
4人はマンションを出ると、すでに狂魔が街を徘徊していた。
アルバート「もう狂魔が!」
ダモス「早く!」
リイナ「ダモス!後ろ!」
ダモス「なっ!」
アルバート「ダモス!!」
アルバートは、狂魔に回し蹴りをした。
ダモス「あ、アルバート…惚れちまうぜ…。」
リイナ「冗談言ってる場合!?」
レアは震えていた。
レア「あの時と……同じ…!」
その時、レアを何かが包んだ。
レア「え…。」
アルバート「大丈夫だ。大丈夫だから。」
レア「アル…。」
ダモス「そうだ、アルバート!」
アルバート「なんだよ、こんな時に?」
ダモスは鞄から刀剣を出した。
アルバート「それ、本物か?」
ダモス「本物だ。誕生日プレゼントで、将来ソルジャーになるアルバートにと思ってさ。」
ダモス「お前が持っておいた方が役立つだろ?」
アルバート「……分かった。ありがとな。」
そして、4人は駅に着く。
ダモスとリイナは先に走っていた。
ついに、駅の中まで狂魔が来た。
レア「うっ!」
レアは転んでしまった。
アルバート「レア!」
ダモスとリイナはギリギリ電車に乗った。
リイナ「アルバート君とレアは!?」
ダモス「おい!嘘だろ!?」
『電車が発車します。」
リイナ「そんな!」
ダモス「まてよ!まだ乗り遅れたやつがいるんだ!!」
無情にも電車は走り去って行った。
アルバート「行っちまったか…!」
レア「そんな!」
その時、狂魔がアルバートに飛びかかった!
レア「アル!!」
アルバート「…………!!」
アルバート「………?」
アルバートはなんとも無かった。
アルバート「…は!!」
その隣で、レアは狂魔に飛びつかれ襲われていた。
レア「は……あぁ!」
アルバート「レア!!」
アルバートは狂魔を蹴り飛ばし、レアを抱き起こした。
アルバート「レア…?しっかり…しっかりしろ…!」
レア「ふ…う…あ、アル…。」
レアの右手には噛まれた後が痛々しく残っていた。
アルバートは、自分のシャツの袖を破りレアの腕に巻いた。
アルバート「レア…俺をかばって…!」
レア「アル……?もう行って…?」
アルバート「馬鹿野郎!置いて行けるわけねぇだろ!!」
そう言うと、レアの目から涙が流れた。
その右目はすでに紅に染まっていた。
目が紅いのは、極負汚染されたという事である。
レア「アル…お願い…!」
アルバートはレアの右手をつかんだ。
アルバート「大丈夫…大丈夫だから…俺がなんとかする…!」
アルバートの体が光出した。
レア「アル…?何を…?」
すると、レアは自分の体に何かが入っていく気がした。
レア「え…。」
すると、赤色に染まっていた右目の視界が元に戻った。
レア「アル…?な、何をしたの…!?」
アルバート「わ、分からない。」
アルバートは自分のした事がよく分かっていなかった。
また、狂魔の声が聞こえる。
アルバート「とにかく、ここを離れるぞ!」
レア「う、うん。」
アルバート「どうすれば…。」
すると、アルバートはある方法を思いつく。
アルバート「地下鉄だ!」
レア「え、でも、地下鉄の列車も行っちゃったよ?」
アルバート「違う、線路を歩いていくんだ。」
レア「は、そか!」
アルバート「急ぐぞ!」
2人は地下鉄に走って行った。
ホームに出ると、セネラの街への線路の扉は閉まっていた。
アルバート「…じゃあ、アスカの街の線路だ。」
すると、アスカの街の線路の扉も閉まろうとしていた。
レア「やば!早く行かないと!」
その時。
アルバート「ぐっ!?」
アルバートは狂魔に殴られ吹き飛ばされた。
レア「アル!」
アルバート「…は…早く…行け…!」
アルバートは、ダモスから貰った刀剣を抜いた。
レア「アル!!」
徐々に扉が閉まって行く。
アルバート「うおぉ!」
アルバートは狂魔を倒していくが数が多過ぎた。
アルバート「ぐあ!」
アルバートは狂魔に跳ね飛ばされた。
レア「そんな…アル!」
狂魔が徐々にレアに迫っていく。
薄れていく意識の中で、レアに近づく狂魔が見える。
アルバート「やめ…ろ…。」
アルバート「やめろぉぉ!!」
その瞬間、黒い衝撃波が放たれ周りの狂魔が吹き飛ばされた。
レア「え……。」
アルバート「…………。」
アルバートの姿は
左目が紅く染まり、黒髪が白くなり、頬には黒い刻印が浮かびあがっていた。
レア「アル…?それって…まさか…。」
アルバート「……………。」
レア「狂魔…?」
レアはアルバートに近寄った。
レア「ねぇ?アル…?」
すると、アルバートはレアに剣を向けた。
レア「え…?」
ドスッ!
アルバートの剣がレアの体を貫いた。
レア「……。」
アルバートは剣を抜いた
レアはその場に倒れこむ。
レア「アル……な…んで…?」
アルバートはレアに剣を突き立てようと構えた。
レア「………アル……。」
レアは目を瞑った時だった。
アルバート「ぐっ!…が…!」
アルバート「ああああぁぁぁ!!」
すると、みるみるうちに髪が元の黒に戻った。
しかし、頬の紋章と目は紅いままだった。
アルバート「はぁ…はぁ…!」
アルバート「ぐっ…レア……!!」
アルバートはレアを抱き起こした。
レア「あれ……アル…?」
アルバート「ちくしょ……なんて事を…!」
急所は外れていたが、危ない状況だった。
アルバートはレアを抱きかかえた。
そして、扉の向こうにレアを下ろした。
レア「あれ……アル…アルは…?」
アルバートは扉の向こうで黙って見ていた。
アルバート「俺は…もう、お前と一緒にいれそうに無い…。」
レア「そんな…!アル…!待ってよ…!
扉が閉まって行く。
レア「嫌だ…!アルがいなかったら私!」
ごめん…レア…。
お前には、生きていて欲しいんだ。
序章 Last EP「守る為の強さ」
薄暗い、地下鉄の線路を一人歩くレア。
怪我の痛みや暗さの不安…
そして失いの悲しみを背負い、その足取りは重かった。
レアはついに、座り込んでしまう。
アスカの街に着いたとしても、行った事の無い街…。
どうすれば良いのか、検討もつかない。
携帯も家に置いて来てしまった。
いっそここで死んでしまおうか…
そんな考えがレアの頭をよぎる。
お前には、生きていて欲しいんだ。
レア「………うっ……。」
レアは15歳になって、大声で泣いた。
しかし、その悲しみを洗い流してくれる事は無かった。
「ん!?誰だ!誰かいるのか!?」
人の声…
しかし、レアは泣き止む事が出来ない。
現れたのは、一人の白い長いヒゲを蓄えた老人だった。
「おぉ、どうした?泣くでない。」
レア「ひっ…ひっく…おじいさん…。」
「もう安心じゃ、ほれ涙を拭いて。」
レアは人に会えた安心感で気を失った。
レアは目が覚めると街の病院にいた。
レアは窓の景色を見た。
レア「こんな事…前にもあったな……。」
すると、老人が部屋に入ってきた。
「おぉ!目が覚めたか!」
レア「えと…ここは?」
「アスカの街じゃ、そなたはカナルの者じゃな?」
レア「はい…そうです。」
アスカは伝統を重んじる街で、それらしい建物やムードが漂っていた。
レア「は!サラさん!すいません!電話はありませんか!?」
「む?ああ、病院の1階にあるが…。」
レアは点滴台を押しながら1階に行った。
途中、老人が付き添ってくれた。
レアは電話で、サラの携帯電話にかけた。
レア「サラさん!」
サラ『レア!!良かった!無事だったのね!』
レア「サラさん…。アルが……アルが…。」
サラ『アルバート?アルバートがどうかしたの!?』
レア「狂魔に…狂魔に……。」
サラ『そんな……嘘…!?』
レア「サラさん…私…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい。」
サラ『レア……レアは悪く無いのよ…?』
レア「私が…アルを守れなくて、足を引っ張ってたから…!」
サラ『レア……。」
レア「ごめんなさい…ごめんなさい…!」
サラ『……落ち着いて…?こっちにダモス君とリイナちゃんいるから変わるね。」
リイナ『…もしもし…レア?』
レア「リイナ…ダモスも無事だったんだね。良かった。」
リイナ『レア…大変だったね。』
レア「リイナ…。」
リイナ「……ごめんなさい…やっぱり…サラさんに変わるね。無事で良かったよ。」
レア「うん…。」
サラ『レア…今どこにいるの?』
レア「アスカって街みたい。」
サラ『カナルの街が壊されたから、当分そっちにはいけないかもしれない。」
レア「そんな…。」
すると、話を聞いていた老人が近寄って来た。
「ちょっと良いかな?」
レア「あ、はい…。」
「あい、電話変わったんじゃがすまないの。」
サラ『はい、あなたは?」
「わしは、ヴェン・エッゼルというものじゃ。」
サラ『ヴェン・エッゼル…って、あの…剣豪と呼ばれたあの方ですか!?」
ヴェン「そうじゃが…、話の内容を話したい。」
ヴェン「あの女子の保護者の方じゃな?」
サラ『はい、そうです。」
ヴェン「こちらからも、しばらくはそちらの街にはいけそうにない。」
ヴェン「そこで、本人さえ良ければわしの剣道場で街からセネラの街に行けるようになるまで、保護させてもよろしいかな。」
サラ「え、あ、はい!剣豪の道場に置いて貰えるほど心強い事はありません!」
ヴェン「分かった。本人に話してみるからの?」
すると、ヴェンは一旦受話器を置いた。
ヴェン「話しは聞いとったな?」
レア「はい、あの…よろしくお願いします。」
ヴェン「うぬ。」
老人に連れられある所に着く。
レア「エッゼル剣道場…?」
中に入ると、たくさんの人が稽古をしていた。
「ヴェン師匠!お疲れ様です!」
「うむ。」
中には、レアと同じくらいの子や下の子、上の子がたくさんいた。
しかし、全員男だった。
そして奥のふすまを開けると、部屋が広がっていた。
「ばあさん!帰ったぞ!」
「はい。あら、そのおなごは?」
「地下鉄に侵入した狂魔がいないか、見とったらおなごが一人泣いておった。」
「まぁ、可愛らしいこやのう。」
レア「あ、あの。」
「おぉ、自己紹介がまだだったな。」
ヴェン「わしは、ヴェン・エッゼル。この道場を仕切っとるものじゃ。」
ヴェン「で、あっちがわしの女房じゃ。」
女房「よろしゅうなぁ。」
ヴェン「じゃが、早速お主の名前を聞かせては貰えんか?」
レア「えと、レアです。レア・フォーエバイト。えっと、15歳です。」
ヴェン「ふむ…イース!イースはおるか!?」
すると、レアと同じくらいの歳の子が来た。
イース「なんだよ。今稽古中だ。」
イースは、レアをちらっと見た。
レアは焦って頭を下げた。
ヴェン「すまんが、このおなごの身元の確認をして来て欲しい。」
イース「おなごの名前は?」
レア「えっと、レア・フォーエバイトです。」
イース「お前、なんか都会くせぇな。」
レア「え…?」
イースは道場を出て行った。
ヴェン「ほほ、すまんのう。ありゃ、わしの一人息子じゃ。」
ヴェン「少々感じ悪いがな、気にせんといてくれ。」
ヴェン「さて、話したくは無いと思うが…なぜ、あそこで泣いておった?」
レア「………はい。」
レアはあそこまでのいきさつを話した。
ヴェン「そうか…やはり、カナルの子か。」
ヴェン「そして、大切な人を失ったか…。」
ヴェン「ご苦労だったな。」
ヴェンは、レアの肩を優しく叩いた。
すると、イースが帰ってきた。
イース「ダメだ、親父。カナルの街がやられたせいで通信が届かねぇ。」
ヴェン「そうか…よし、イースは稽古に戻れ。」
ヴェン「よし、レアと言ったか。身元が分かるまで、ここでゆっくり心と体を休めるといい。」
レア「あ、あ、ありがとうございます。」
ヴェン「おっと、お主。怪我をしとるんだったな。ちょいと見せてみ?」
ヴェンはアルバートの服の裾を取った。
ヴェン「こ、これは…!」
ヴェン「お主、この傷。どこで?」
レア「狂魔に…。」
ヴェン「しかし、おかしい…負を感じない。」
レア「そ、それは。」
レアはアルバートにされた事を話した。
ヴェン「負を取り除く術……聞いた事さえ無いな。」
ヴェン「古い文献にものっておらん。」
ヴェン「しかし、その者のお陰で今もこうして生きておる。無駄にしてはならないぞ?」
レア「はい。」
レアはボーッとしながら稽古を見ていた。
アルバートを守れなかった自分を責めていた。
もっと自分が強ければ、あんな事には……。
イース「おおおぉ!!」
レア「うわぁ、強いなぁあの人。」
イースは、稽古が終わり一人で外にいた。
レアはジッと見ている。
イース「なんだよ。」
レア「え、あ、凄いなぁと思って、戦い方が。」
イース「ふん。」
レア「あ…。」
イース「別に、まだまだ足りないさ。」
レア「え…。」
イース「親父にはまだ全然だよ。」
レア「ヴェンさんは、凄く有名人だよね。」
イース「親父が死ぬ前にいつかぶっ倒してやる。」
レア「あ、あはは。そうなんだ。」
レア「でも、なんか目標があってそこまで頑張れた事が凄いよ。」
レアは笑顔で言った。
イース(あれ……なんか、可愛いな…。)
イース「お、お前は…なんか頑張れた事とかはあんのか?」
レアは下を向いた。
レア「私は…全然。」
イース「……………。」
イース「………いまからじゃ、遅いか?」
レア「え?」
レアはある事を思いついた。
レア「そうだ!」
イース「ちょ!どこ行く!?」
レアはヴェンの所に行った。
ヴェン「ん、どうした?なんか聞きたい事でも?」
レア「私を…私に……。」
レア「剣を教えて下さい!」
レア「もう私の大切な物を失いたくないんです!」
レア「守る為の強さを…私に下さい!」
ヴェンは、レアの肩を優しく叩いた。
ヴェン「わしは、剣技については教えられよう。」
ヴェン「しかし、強さだけでは守れない物もある事を覚えておれ。よいな?」
レア「はい。」
ヴェン「分かった。お主がそこまで言うならわしも、力を貸そう。」
レア「あ、ありがとうございます!」
私は強くなる。
もう…何も失わなくて済むように。
そして、3年の月日が流れ…
物語は再び動き出す。
想いの物語が幕を開ける。
序章 終
第一章 EP1「街の華」
アスカの街。
3年前に比べて、色んな建物が増えたが雰囲気は変わっていなかった。
「このパン屋のバイトしてる女の子知ってるか?」
「知ってる知ってる!やばい可愛い子だよな!」
「そーそ!肩まで伸びた髪の先がクルンってなってる茶髪の子だよ。」
「じゃあさ、今からパン屋行こうぜ!」
そのパン屋は行列が出来ていた。
行列に並んでるのは主に男だ。
店の中は大分混雑していた。
主に男だが。
「はーい!メロンパンできましたよー!」
一人の女の子が焼きたてのメロンパンを持ってくる。
すると、一斉に男達が群がって行く。
「やったぁ!出来たてのメロンパンだー!」
「ちょっ…!お客さん!落ち着いて下さーい!」
「いやぁ、今日も可愛いねぇ?」
「何言ってるんですか!それより、落ち着いてー!」
すると、店のおばさんが大声をあげる。
「こらぁ!あんた達!店内では静かに!!」
すると、一気に静かになる。
「えと、順番に…ね?」
女の子がしゃべると、また店内が賑わう。
順番に並ぶ男達。
「ありがとうございます!またのお越しをお待ちしております!」
「はぁーい。」
男達はデレデレしながら受け取って行く。
「レアちゃーん!今日はもうあがって良いわよー!」
「あ、はい!ありがとうございます!」
レアは3年経って、外見も大人っぽくなり。内面も成長した。
街の人達に好かれ、充実した毎日を送っている。
レア「ん…んー、今日も疲れた!」
大きく伸びをする。
レアは鞄を肩に下げ、店を後にした。
レア「では、お先です!」
「あ、レアちゃん!」
レア「はい?」
「レアちゃんが来てから店は大繁盛よ!これからも頑張ってね!」
レア「あはは、はい!頑張ります!」
「やっぱり可愛い子ねぇ、素直だし。これ、売れ残りのパンだけど…。」
レア「あ、ありがとうございます!」
レアが街を歩くと、必ず声をかけられる。
「レアちゃん!バイト帰りかい?」
レア「はい、そうですよ。」
「気をつけてなぁ。」
レア「あは、ありがとうございます!」
そして、周りのコソコソ話しも…
「おい、あの子可愛いくねぇか?」
「うおっ、色の白い子だなぁ。」
「胸も結構あるんじゃねぇか?」
「Eぐらいあるんじゃねぇ?」
「たまんねぇなぁ…。」
レア「あ……。」
レアが見た先で、女性が不良達に絡まれていた。
「あーあ…、お前がぶつかってきたせいでソフトクリームが落ちちゃったじゃねぇかよ。」
「すいません!お金は払いますんで!」
「お金とかじゃねぇよ。服にまで付いちまったじゃねぇか!」
「すいません…。」
「あぁ…どうすればいいか、分かってるだろうな?」
「うぅ…わかりました…。」
「ほぅ!OKだってよ!野郎ども!」
「いえーい!アニキ!」
歩行者は見ないフリをしていた。
不良達が女性を連れて行こうとした時。
レア「女の子によってたかって卑怯ですよ!」
「あぁん?」
「はは!可愛いヒーローだな!」
そうして、大笑いした後急に形相を変えた。
「で?なんか用か?」
レア「その人を離して下さい!」
「はーはっはは!」
「捕まえろ。」
すると、男が後ろから掴みかかろうとした。
レアは手をしゃがんでよけてひねりながら、顎にアッパーをお見舞いした。
「うげっ!」
男は1メートル飛んだ後地面に崩れ落ちた。
「なんだ、喧嘩慣れしてんのか?」
「お前ら!一斉にやれ!」
_______________________________________
ドサッ!
「おい…冗談だろ…?」
レアの周りには男達が倒れていた。
レア「さっ、もう終わりだよ!」
「う…うわぁぁぁ!」
男は混乱して、ナイフ構えて襲ってきた。
周りの人達は、一斉にどよめく。
レアはナイフを避けると、鞄に入っている竹刀を取り出した。
「おおおぉ!
レア「…はっ!」
レアは、手を竹刀で叩いた。
「いてっ!」
その瞬間、レアは全身をひねりながら猛烈な突きを繰り出した。
ドゴッ!
竹刀の先は男の顔のすぐ横を捉えた。
コンクリの壁に竹刀が刺さっていた。
すると、レアは男に言った。
レア「もう、降参するよね?」
「あ……あ……。」
男はその場に座り込んだ
レア「ふぅ…大丈夫?」
「え…あ、ありがと…ございます…。」
レアは刺さった竹刀を抜こうとするが抜けない。
レア「ん〜!!」
すると、竹刀は抜けて抜けた勢いでレアは尻餅をついた。
レア「いったぁ…。」
「おい…見たかよ…?」
「可憐な華には棘があるんだろうな…。」
レアは住んでいる剣道場に帰ってきた。
レア「先生ー!帰ってきたよー!」
ヴェン「おお…レアおかえり。」
レア「ほら、余り物だけど貰ってきたから後でみんなと食べてね!」
ヴェン「うむ、ここのパンが美味しいとイースが言っていたぞ。」
レア「え?本当?」
ヴェン「うむ、普段は言わないがな。」
レア「あは、嬉しいな。」
ヴェン「疲れただろう?ゆっくり休めよ?」
レア「はーい。」
レアはある所に行った。
レア「イース?」
イース「なんだよ…。」
レア「ほら、余り物のパン!好きなんでしょ?」
イース「は!別に好きでもないし。」
レア「ふーん…。」
レア「じゃあ、私が全部食べちゃお!」
イース「あ!待て!ダメだ!」
レアがイースをニヤニヤしながら見つめる。
イース「あぁ…食べるよ!全く。」
2人はパンを食べながら話した。
イース「バイトなんか始めて…剣の方が衰えるんじゃないか?」
レア「んーん、大丈夫!先生からのお墨付きだもん。」
イース「へっ!俺なんかをあっちゅうまに追い越して行ってよ。」
レア「イースだって、もっと頑張れば強くなれるよ?」
イース「十分頑張ってる。いつも剣をさぼってるお前とは違うんだよ!」
レア「そんな事言わなくても良いじゃん!」
レア「ふん!イースなんか知らない!」
イース「あ!おい!」
レアはどこかに行ってしまった。
イース「あぁ…またやっちまったぁ…。」
イース「いつになったら言えるんだろうなぁ…。」
レアは自分の部屋で勉強をしていた。
とは言っても、学問のような問題では無く。
あの日、アルバートにされた術について調べているのだ。
レア「んー、ここも関係無しか…。」
レア「なんか、歴史の知識ばっかり溜まるなぁ。」
アスカは伝統の街。
そのような資料は幸い、山のようにあった。
夜も更け、夕食の時間になった。
レア「今日は、肉じゃが作ったよー!」
ヴェン「おお…うまそうじゃなぁ。」
女房「んー、レアちゃんはきっと良いお嫁はんになれるなぁ。」
レア「いやいや、そんな。」
イースも無言でパクパク食べている。
レア「イース?美味しい?」
イース「うん、まぁな。」
レア「良かったぁ!」
イース「でも、味落とさないようにせいぜい頑張れよ!」
レア「はぁーい、頑張りますぅ…。」
イース(またやっちまったぁ…。)
その夜。
イース「なんだよ…。あんなサボリ魔に…。」
夜が12時を過ぎた頃…
イースはいつもなら、いびきをかいて寝ている頃だが今日は違った。
パン!パン!
イース「なんだ?こんな夜中に?」
イースは部屋を出て剣道場を見てみた。
レア「はっ!…はっ!」
レアが竹刀で一人、稽古をしていた。
イース「まさか、いつもここで一人で…?」
レア「はっ!」
イース「練習相手になってやろうか?」
レア「きゃあああああぁぁぁぁ!!!」
イース「うわぁ!?なんだよ!?」
レアは完全に腰を抜かしていた。
レア「い、イース…?」
イース「そうだよ。」
レア「ビックリしたぁ…出たと思った…。」
イース「どんだけビビりだよ。」
レア「どうしたの?こんな夜中に?」
イース「ちょっと眠れなくてさ…。」
レア「そうなんだぁ。」
イース「あの…さ。」
レア「ん?」
イース「悪かったな…サボリ魔なんて言って。」
レア「……………………。」
レアはそっと微笑んでイースに竹刀を渡した。
イース「なんだよ?」
レア「相手してくれるんでしょ?」
レア「久しぶりにやろうよ、試合。」
第一章 EP2「覚悟の差」
イースは竹刀を構えた。
イース「良いだろう。どっちが強いか白黒ハッキリさせてやる!」
レア「よーし、久しぶりに本気でやるかなぁ?」
イースは竹刀を前に出した中段の構えだった。
しかし、レアは片手に竹刀を持ち身を引いた体制だった。
イース「なんだ?その構え?」
イース「体がガラ空きだ!!」
イースは竹刀を斜めに振り下ろそうとした。
その時レアは体をひねらせ竹刀を下から振り上げた。
2つの竹刀がぶつかり合う。
ガシャ!!
イース「…!重っ……!」
イースは力負けし大きくのけぞった。
レア「はあぁぁぁ!!」
レアは更に体をひねらせ突きを繰り出した。
イース「まずい!!」
イースは首を傾け、間一髪避けた。
イースは竹刀を横に振って、レアは一旦後ろに下がった。
イース「なんだよ!今の!?」
レア「ふふっ!まだまだー!」
レアは次々と竹刀を振るう。
イースはただ避けるしか無い。
イース「くそ、打ち合いでなんで負けるんだ!?」
レア「隙あり!」
レアは大きくひねりながら横一閃した。
イースは辛うじて竹刀で防いだが、激しいノックバックに襲われた。
イース「ぐっ…おぁぉ!」
その瞬間、レアは飛び上がり横に体を捻りながら竹刀を振り下ろした。
バキィィィ!
イースの竹刀は割れ、イースは吹っ飛んだ。
レア「はっ!ごめん!つい熱くなっちゃって!」
レアはイースに駆け寄った。
レア「ごめん、大丈夫?」
イース「くそ…負けた…全く歯が立たなかった。」
イース「なんで、そんな強くなれたんだよ?」
レア「…………うん、イースには話して良いかな?」
イースに3年前の事を話した。
イース「お前、そんな事が…。」
レア「守れなかったの、大切な人を。」
レア「だから、強くなろうって。」
レア「まだ、守れる物があるならそれを守れるくらい強くなろうって。」
レア「サラさんや、リイナ、ダモス、そしてここにいるみんな、イース。」
レア「守りたいの、私が。」
レア「もう誰も失いたく無い。」
レア「失うのが恐くて恐くて仕方なくて。」
レア「だから、私は先生に剣の基礎をたくさん教えて貰ったんだ。」
イース「そうやったんだ。」
レア「もう、私を守って誰も死んで欲しく無いの。」
レア「だから、強くならなきゃダメだった。」
イース「はは…そりゃ敵うわけねぇ。」
レア「へ?」
イース「じゃあな、わいは戻る。」
わいは親父を越す事しか頭に無かった。
あいつは、守る為に強くならなきゃダメだって。
はは…覚悟の出来が違うわ。
そりゃ、敵うわけねぇよ。
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その朝、レアはバイトに行っていた。
レア「ふわぁぁ。」
レアは大きなあくびをした。
「レアちゃん、寝不足?」
レア「あ、すいません!大丈夫です!」
「あんま無理しちゃダメよ?」
レア「あはは、大丈夫ですよ。」
そして、パン屋が開店すると共にいつも通りたくさんの男が入って来た。
「レアちゃん!見たよ!昨日!」
レア「へ?何をですか?」
「怖い不良を懲らしめてたろ?かっこよかったなぁ!」
レア「え、やだな。見てたんですか…。」
「可愛いだけじゃなくて、強いなんて完璧だ!」
レア「いえいえ、そんな事は…。」
すると、どこか見慣れた顔の人が入ってきた。
レア「あ、昨日の!」
「昨日は、助けていただいてありがとうございました!」
レア「いえいえ、無事で良かったです!」
レア「良かったら、うちのパン買って行って下さい!おいしいんですよ?」
「はい!ぜひ!」
バイトの帰り道、レアは電気屋のテレビに目がとまる。
『首都レヴァントの軍事施設に監禁されていた2名の極負汚染者が脱走しました。』
レア「レヴァントって大分遠いかったなぁ。」
『犯人は今も逃亡を続けており、近隣の街や人々に注意を呼びかけています。」
『また、犯人の情報はこの写真です。」
レア「ん?逃げてる最中かな?」
写真には、女性が1人、男性が1人写っていた。
レア「女の子…綺麗な人だなぁ。」
レア「もう1人は顔がぼやけて見えないや。」
レア「…………あれ…?」
男性の方がかけているネックレス…なにか…見覚えがある。
レア「はっ!」
レアは自分がかけているネックレスを見た。
レア「同じ………?」
見間違いなんかじゃない。
明らかに同じだった。
第一章 EP3「決意」
ヴェン「おぉ、レアおかえり。」
レア「ただいま。」
レアはそう言うと、すぐ自分の部屋に入って行った。
ヴェン「ん?どうしたのかの…?」
レアは部屋のベッドに倒れこんだ。
間違い無い、あれは私と同じネックレス。
サラさんが作ってくれた3つと無いネックレス。
じゃあ、あの人はまさか……?
そうでなくとも、あの人と関係のある人なのかも。
確かめたい。
私が確かめなきゃだめな気がした。
レアは部屋の扉を開けた。
夕陽がまぶしかった。
レア「この世界の何処かに…いるのかな?」
レア「会いたいな…。」
レアは拳を握りしめた。
レア「いや、会いに行かなくちゃ…。」
レア「もう決めたんだから…!」
ヴェン「旅に出たい…!?」
その日の夕飯の時だった。
ヴェンとヴェンの奥さん、そしてイースは目を丸くする。
レア「ん、旅。」
レアはおかずを一口。
奥さん「なんだで急に?」
レア「確かめたい事があるの。」
イース「なんだよ、その確かめたい事って?」
レアは口を濁らせた。
レア「それは、ちょっと言えないけど…。」
ヴェン「いつ行くんだ?」
レア「明日。」
イース「明日!?」
奥さん「ずいぶん急な話ね。」
ヴェン「しかし、今この街は電車は使えないぞ?」
レアは、おかずをまた一口。
レア「電車は使わないよ。歩くの、平原を。」
ヴェン「平原を歩く!?確かに…昼間は多少安全だが…夜は危険だぞ?それに、昼間も安全とは限らん。」
レア「分かってるよ…。」
ヴェン「…どこまで行く気だ?」
レア「…レヴァント。」
イース「はぁ?レヴァントって大分遠いぞ!?」
ヴェン「それに、カナルのルートが使えないんじゃ…遠回りの上に、山を越えなきゃいけないぞ!?」
レア「良いの!それでも行くの!」
レアは食器を片付けた。
レア「ごちそうさま…。」
ヴェン「何がそこまでお前を動かしてるかは知らんが…わしは反対じゃ。」
レア「…………。」
ヴェン「お前の実力を軽視してるわけでは無い…。」
ヴェン「ただ…1人の家族として心配なのだ…。」
家族…か…。
レア「……会いたい人がいるの…私の…大切な人なの…家族と同じくらい…。」
イース「まさか…お前……。」
ヴェン「気持ちは分かる…だが…わしは…。」
__________________________________________________________________
その夜、レアはいつも通り稽古をしていた。
イース「本当に行くのか?」
レア「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」
イース「またかよ!!俺は幽霊じゃねぇ!!」
レア「またイースか…脅かさないでよー。」
すると、イースは真剣な眼差しで言った。
イース「誰を探しに行く気だ…?」
レア「……………。」
イース「誰にも言わないから、俺には話してくれないか?」
レア「……はぁ…しかたないなぁ。」
レア「私が捜しに行く人は…極負汚染者なの。」
イース「な!汚染者!?」
レア「あはは…予想通りの反応。でも、冗談じゃないよ?」
イース「汚染者を捜しに行くって何で…?」
レア「偶然、テレビに映ってた人が私と同じネックレスをしてたの。」
レア「このネックレスは…サラさんに作って貰った…3つ目なんて存在しない物なんだ。」
イース「だからって、今更そいつに会ってどうすんだよ?」
レアはうつむいた。
レア「…分からない………。」
イース「分からないって…お前な…。」
レア「駄目かな!?」
イース「え…?」
レア「会いに行く理由が…会いたいだけじゃ…駄目かな…?」
イースはしばらく黙った。
イース「……そいつは…一体どんなやつなんだ?」
レアは縁側に歩き、座った。
レア「私の…幼馴染なの…。」
レア「出会った時に、記憶喪失で…どこから来たのかさっぱり分からなくて、おまけに考えてる事はさっぱり分からないし…謎だらけな人だったんだ。」
レア「でも、無愛想だけど、凄く優しくて…私達を支えてくれたの。」
レア「凄く…凄く、大切な人なの。」
イース「……そいつの名前は…?」
レア「アル……アルバート。」
そう…私は、知らない内にあの人に助けられてたんだ…。
失ってから気づいた。
ハルカカナタ