要子の冒険(2)

 キョウとパレットは南の海でボートで暮らしていたそうだ。南洋からきた補給船からミサイルを譲り受けたとのこと。ミサイルを使って、キョウとパレットの住んでいた集落(現在は壊滅)の近くあると聞いていたミュータントの製造工場を破壊するために戻ってきたのことだった。
 今、要子たちがキャンプしている地点から、工場まではすでにミサイルの射程に入っているらしいのだが、工場の正確な位置情報がないため、狙いがつけられないでいた。

 キョウは、ミサイル輸送車で牽引してきた一人乗りの小型ビークルで単独、工場を探しに出かけていった。要子はパレットに協力して、大切なミサイルの防衛にまわることにした。
 
 キョウが出発して3日後、地上探索レーダーに金属反応があった。反応は微弱。ビークルではないらしい。場所は北方に2キロ。移動速度は遅かった。

 要子がひとり斥候にむかった。動きやすいようにレーザーライフと予備のエネルギーパックだけの軽装備で出かけた。
 草原を1キロ歩いたところで、人影を遠視スコープで捕らえた。人ではなかった。銀色の肌をした人型のミュータントの2人連れだった。行動の様子からうかがうと、偵察に歩いているらしい。武装からして通常の偵察行動で、ミサイルの破壊、無力化、奪取などが目的とは思われない。しかし、このまま彼らが直進すれば、ミサイルが発見される可能性が高い。
要子は岩陰に隠れて、ミュータントが接近してくるのを待った。十分引き寄せて、最大出力でレーザーライフルを撃った。片方の胸に大穴が開いて倒れた。もう片方が走り出した。しかし隠れることのできる場所はない。要子は、出力を下げてレーザーライフルを連射した。5発目でミュータントに当てられた。倒れこんだが致命傷ではなかった。まだ動いている。ライフルの出力を上げて止めを刺した。
 空になったエネルギーパックを交換し、様子をうかがった。偵察はこれ以上いないようだった。

 パトロールのミュータントが殺されたことによって、このあたりに敵(要子たち)がいることは知られてしまうだろう。戦闘力の高いミュータントたちに襲われるのも時間の問題だ。
 要子は早足でパレットのもとへ戻った。

 キョウは工場に到達して、ミサイル車両に正確な位置情報を伝えてきていた。
 しかし、その後連絡が取れなくなっていた。既に殺されているのかもしれないが、工場に囚われの身になっているのかもしれない。
 目標の正確な位置情報を得たので、今すぐにもミサイル攻撃が可能なのだが、問題はキョウの安否だった。
 しかし工場に拉致されているとして、要子とパレットたちで救出する術はなかった。援軍を待っている時間もなかった。
 要子は判断に迷ったが、パレットは迷わずミサイルを発射して工場を破壊した。

要子の冒険(2)

要子の冒険(2)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-06-03

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