あのひと (へ)

どうして

どうして覚えているの?

何度もそう思った
どうして、どうして、どうして

あのひとは
私の言ったささいなことを
しっかりと覚えてた

一ヶ月ほど昔の
ちょっとした
会いたい、を
どうして覚えてるの

私には
覚えてくれてる
なんて都合良く思えて
嬉しくて嬉しくて

そーいや明日約束してたっけ

そんなことをさらりと

一応。

なんてそっけなく返事をしてしまって

はい!覚えててくれたんですね!

って言えず
でも嬉しくて嬉しくて

あのひとは先に待ってて
私はふっと息を吐いて

行きたいんだけど
早く会いたいんだけど
緊張して
行きたくなくなってしまって
そんなアンビバレントな感情で
とても苦しくて

お待たせしました

そう言って
顔をあげた私を待っていたのは
とても優しげな
ちょっとはにかんだ
あのひとの笑顔

あのひと (へ)

あのひと (へ)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-17

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