あのひと (ほ)

言葉

新着問い合わせって
そんな機能があるから
つい何回も押してしまう

あの日こっそり
テーブルの下で交換したアドレスから
まだかまだかとメールを待っていた帰り道

日付をまたいでかなり経ってから
ようやくきたメールは
中学生みたいにやんちゃで
素っ気ないものだった

絵文字も顔文字もなくて
どんな顔で
どんな気持ちで
メールを打ったのか
全く見えない

それでもうれしくて
メールを続けた

私は八方美人だと思う
親友にも言われたわ

相手がどうしたら喜ぶかなんて
大抵わかるし
その気にさせることなんて
言葉遣いや
雰囲気や
仕草で
どうとでも操れると思ってたし
操ってきた

特にメールはそう
言葉だけで
何人も彼氏ができた

でもそこで終わり
ゲームはクリア
付き合ったら
そこがゴールだった

そんな私が
メール無精になった

なんて返せばいいのか
考えても思い浮かばなかった

自動でほいほいと言葉が出てきたのに
なにも出なくなった

ふつう
好きな人からのメールって
何度も読んだりするものでしょう?

私は読みたくない
読むと
ますます迷子になってしまうから
あのひとの気持ちがわからなくて
怖くて不安になるから

それでもメールを消せないのは
...また会いたいから

あのひと (ほ)

あのひと (ほ)

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-14

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