機械輪廻

気まぐれで書いた作品です。中身はかなり短いはずですので、読んでもらえると嬉しいです。
ちなみに中身を解説してしまうのは意味がないのでやめておきますw

あるところに一人の科学者がおりました。
科学者は夢見がちでもとてもとても頭が良く、それが他の人に疎まれたり気味悪がられることもわかるくらいに頭のいい科学者でした。
だから特に努力もせず、一つのロボットを作りました。
彼のために働く、たった一人の助手です。
他の人も、すぐにはロボットと気づかない位の出来の助手は、博士を慕い、博士のために働くという自らの原理に従って一生懸命手伝いました。
ある日のこと、博士はとある親戚が来て以来、目に光がなくなりました。助手は心配という心を理解できませんでしたが、博士のために働きました。
博士はだんだん弱っていき、やがてベッドから起き上がることもできなくなりました。助手は問います。
「博士、私があなたにできることはありませんか」
博士は答えます。
「君なら一人でやっていける。僕がいなくても大丈夫だろう」
助手は言います。
「私は何をすればいいのでしょう」
博士は眠そうに目を閉じかけながら、答えます。
「君の行動原理を信じなさい。いずれわかってくれる人がいる。わかってくれる人のために、君は生きなさい」
そう言って博士は目を閉じ、もう二度と開くことはありませんでした。
助手は、それが死なのだと知っていました。埋葬することも知っていました。知っていた通りに行動し、粗末な墓を、彼なりに必死で作りました。作り終え、その前に立つと何故か目から水が流れ落ちます。それが視界をぼやけさせ、助手は不思議に思いながらも何故か止めようとは思いませんでした。
そして助手は、博士を真似て自分によく似たロボットを作り、自分の助手にしました。
助手は、自らをマスターと呼ばせ、助手を日ごろから手伝わせるようにしました。
しかし、そのマスターと呼ばれていたモノも、ロボットです。
いずれは不具合が起きることは明白でした。それは当然そのモノも知っていました。
「あなたの中にある、他人のために動くということを、どうか忘れないで」
そう言って、そのモノも、動きを止めました。
ひとり残された助手は、そのマスターと呼んでいたモノを、モノに言われたとおり前からあった小さな墓の隣に埋め、墓を作りました。
その助手は、人のために生きるため、自分によく似た機械を作り、他人のために動きました。
しかし、何も知らない他の村人は、当然薄気味悪がります。人間味のないやつだ、不気味なやつだ、そんなことを言われ、それでも尽くそうと努力していたソレに、あるものが言いました。
「あなたの奉仕は気味が悪い」
あるものは問いました。
「あなたは自分のために生きないの?」
そんな言葉を投げかけられ、ソレはわからなくなりました。自分がなぜここでこうやって他人のために動いているのか。
博士の顔も知らないソレは、自分のため、などという言葉も知らず、ただその言葉が理解できずソレはやがて他人に手を伸ばすことをためらい始めました。
やがてソレも朽ちていきます。ソレはそばにいた機械に伝えます。
「あなたは、誰かの為に、自分のために、そんなものを抱いて絶望なんてしないで欲しい。私はそれが、一番理解ができなかったから。私のマスターは、それが大事だと言っていた。だけどあなたはそんなことを考えなくてもいい」
そう言ってソレも目を閉ざし、動かなくなりました。
機械はソレを前に言われたとおり二つ並んだ墓の隣に埋め、簡素な墓を作りました。
機械は立ち尽くします。幾日も幾日も・・・。
誰も、博士が死んだことにすら、気がついていませんでした。
だってその機械の顔は、博士そっくりだったから。
機械は待ちます。誰かが博士の、博士たちの墓を参りに来る、その時を。

機械輪廻

なんとなく、自分の中から湧き出た文章を、そのまま書き連ねてみました。
どう受け取るかも、どんな気持ちになるのかも読者の自由だとは思いますができればけなすのはよして欲しいです(汗

機械輪廻

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-14

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