北朝鮮のコッチェビ

嫌な夢を見た。
自分の住む家が無くなって、娘と実家に身を寄せていた。実家ではなく、私が中学生のときに祖母と住んでいた家だ。なぜか母だけがいた。隣にアパートがあるというので見に行ってみた。2階建ての立派な造りで家具もそろっていた。私がここに住もうかな、といったら、娘が「えー?」という顔をし、母が「やめなさい」といった。
「だって、お風呂場の勝手口から落ちたら、小さなこの子は誰も助けてもらえないよ」
そういえば、お風呂場が路地に面していて、少し高い造りになっていた。夜の真っ黒な帳が風呂場の窓から見えていた。
なんだか怖くって、目が覚めた。夜2:30だった。

ここ数日腹の調子が悪く、何か食べるとすぐ下している。しかし医者からもらった薬を飲まなくてはならないので、昼はとりあえずキャベツともやしのラーメンを作ることにした。
最近野菜は高いわりに品が良くない。キャベツの葉はややしなびていて、食欲の起こらないままフライパンで炒めていると、先日ネットで目にした北朝鮮の女性コッチェビ(浮浪者)のことが目に浮かんだ。
デノミ崩壊で経済が破綻し、家を売り、両親が亡くなって、半年以上放浪生活をしているという女性は痩せこけ、煤けた姿をしていた。ウサギが食べるような草を集めて飢えをしのいでいたが、その4ヶ月後、トウモロコシ畑で死んだという。
煤けた彼女の、喜怒哀楽が抜けたような顔を見たとき、なぜか自分まで魂を搾り取られていくような気がした。

私も今見えないない何かに脅かされている。

北朝鮮のコッチェビ

北朝鮮のコッチェビ

煤けた彼女の、喜怒哀楽が抜けたような顔を見たとき、なぜか自分まで魂を搾り取られていくような気がした。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-11

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