蒼のグングニル

グングニル

空には星空が浮かんでいた。

海の静かな小波とともに、夜の心地よい風が頬を撫でる。

呼吸の音、心臓の音、風の音・・

昼の騒々しい現代も今は影を潜め夜の静寂に酔いしれている。

その中でも雲のような星があった

どの星も幻想的な雰囲気を漂わせているのに、その星だけなにか異質だった。

星の名はグングニル・・空を隔てるというべきものだった。

空虚

昼頃に帰るといったきり帰ってない・・。
いつものことだ、気にするでもない。

昔からそうだった。生きてることが空虚だった。生きてる意味はないと思ってた。
死のうと思ったこともあった。でも、死にたくはないとも思った。
日々の生活が楽しくない訳じゃない。友達がいないでもない。でも、思う。
生きてるってなんだろう・・・。じゃあなんで今生きてるんだろう。
きっと生きてないとできないような、すごく楽しいことが昔あったんだとおもう。
そう・・・ずっと昔・・・・・・。

たまに夢を見る。すごく楽しい夢だ。ここが自分の居場所なんだと思える。
でも目が覚めると、夢だったんだっと思う。夢がすごく充実してる。

でもいつも思う。あの女の人は誰なんだろう・・・・。

目を入れ替えた。なに不自然なことではない。現在では、当たり前のことだ。ああ、そうか
君たちにはわからなかったね。

誰に送るでもない少年は一人でパソコンにそう送っていた。打ち込むだけで誰かに届く気がするのだ。そんなわけぜったいないのに・・・。

ある日思いついた。夢日記で夢に過去ができて現実と区別できなくなるんだったら、小説でも同じようなことがいえて、思いついたエピソードを日記のように書き留めてるうちにリアルな物語になるんじゃないかと・・それが現実になるんじゃないかと。

現実以外にも生きてみたかった。夢で生きるのも悪くないと思った。妄想の中に生きるのもまたいいと思った。思考の海に沈んでもいいと思った。思いつくがままの物語の中でいきるのもいいとおもった。パソコンは本当に便利だ。思いついたことをリアルタイムでほとんどラグがなく記録として残せるのだから。

そんなある日、一通のメールがとどいた。いつもと違う赤いメールだ。
でも、何とも思わなかった。でも多少期待する気持ちもあった

メールを開くと、頭が真っ白になった。
2013年からのメッセージだった。日記を見ている・・。
嘘だと思った。夢かと思った。そもそも誰にも見せてはいないのだ
しかも この事実を知ってるやつは俺しかいないのだ。

怖くなった。
でも 日記やめなかった。やめたくなかった。でも、恐怖に対する好奇心もあった。
やめたら生きていけないと思った。
2度目はないと思った。だから書いた。

でも、メールは届き続けた。書いても書いてもメールは届き続けた。
でもあるときメールがこなくなった。おかしいと思った。恐怖心が消えると思ったのに
むしろどんどん不安になっていった。そんなときメールが届いた。今度は緑のメールだった。
いつもと違うから変だと思った。でもすごくうれしかった。

久しぶりのメールが届いた。僕はそれだけで浮かれていた。おかしかった
メールを開いて中を見た。返信もした。

今思えば返信なんてしなければよかった。平凡な日々でよかった。
そのまますごしたかった。生きてる喜びを僕は忘れていた・・・。

赤いメールには僕の日記のことが書かれてた。
僕のこともかかれてた。なぜかストーカーではないと思った
女だと思った。懐かしいような感じがした。でも血の感じもした。
でもやっぱり なぜだかはわからなかった 。

「ふぅ・・・」

その女性は今日もパソコンに向かっていた。部屋は不気味なくらい殺風景だ。暗闇をパソコンのディスプレイだけがぼんやり照らしていた。赤いめがねが特徴だった。

 僕は、ただの高校生である。それ以外の何者でもない。でも、少しみんなと違うところがある。僕には、前世が見える。ただ、前世が見えるっていってもそれ以外のことは何もできない。本当に何のためにあるのかわからない能力だ。しかも時々、うっすらと見えるだけなのだ。

 校門をくぐると桜の木がさざ波をうっていた。春の風が心地いい。桜の花びらが空に舞って雲と遊んでいた。ふと幹を見ると、うっすらと女の人の姿が見えた。色白で白い着物を着ている。頬はうすい桜色をしている。ああこの桜の前世は、この人なのかなと、いつものようにただ思うのであった。

 いつものように授業が終わった。昼休みになったので僕は図書室に移動する。いつもの習慣だ。昔から本が好きで、図書室に行くとたいそう落ち着くのだ。

 

 暗い夜だ。何も見えない。塾に行こうと思ったのだが、面倒くさいので、ばっくれてぶらぶらすることにした。最近何もかもが面倒くさい。何をするにしても、疲れるのが嫌なのだ。本当退屈だった。疲れたくもなかった。でも何をしてもおもしろくない。ただそんな平べったい一日を最近過ごしている。

 おっと、誰か来たようだ。公園のベンチでただ虚ろに星を見上げていたからであろうか。こんな高校生が真夜中に公園にいたら不自然であろう。僕は、面倒なことにならないように、そそくさとその場を離れるのであった。

 しかし、運が悪かった。自分を哀れだと思った。

俺は殺された。公園に来ていたやつだ。いつも、僕がここにきていることを知っていて、なぜか殺そうと思っていたみたいだ。殺人に興味があったのかもしれない。家の事情かなんかあったのかもしれない。でも、そんなの関係ない。僕は殺されたんだ。あいつに。
 
 あの日僕がその場を離れようとしたときだった。不意に横を見たときはもう遅かった。もうやつは僕の手が届くくらいまできていた。油断した。僕は刺された。果物ナイフだった。上から振り上げられそのままおろされた。

 でも不思議なことに、刺されても僕の意識はあった。手だけになっても意識はあるのだ。おかしいと思った。でもよかった。不思議だ。

蒼のグングニル

蒼のグングニル

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-02-10

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