あこがれの彼女
薄暗いコンクリートの壁の部屋に数人の人が働いていた。
会社のようだった。男の人が電話をかけたり、机で作業をしていた。
女性から声をかけられた。彼女は私のことをよく知っているようで、フレンドリーに、手を振った。
高校時代、私と一緒にバンドを組んでいたWさんだった。
これから新しい事業を始めるの、といいい、私もそれに協力することになった。
彼女は流暢な英語でしゃべっていた。あまりの上手さに私は感動した。
昔からの、明るく活動的でリーダーシップのある性格は変わっておらず、当時はそんな彼女に圧倒されたが、今はなんだか頼もしく、これから始めることも、不安もありながら、楽しみであった。
急に彼女の近況の話になった。
「子供、いるの?」と私が聞くと「いる。知人の子供と住んでる」といった。
「自分の子供は?」ときくと、戸惑ったように、ゆっくり首を縦に振った。それ以外に家族は居ないようだった。
高校時代、彼女が年上の彼と熱愛していたことを思い出した。そして卒業後、進学先のデザインの専門学校で新しい彼ができ、その彼がイタリアに留学した時に、後を追ってイタリアへ行ったと聞いていた。
いろんな面であこがれの彼女だった。
そんな彼女の意外な近況を聞き、私は少し寂しい気持ちになった。
あこがれの彼女