迷子同盟 第三話 センダングサ

今日も楽しく迷子になりに行こう!

迷子同盟 第三話 センダングサ

 迷子同盟に入会と同時に卒業してしまったチコさんより、卒業したくない旨の意思をいただいた。なんと、ご自分から留年するという決意。やっぱり「迷い」はない…。
 しかし、卒業してから留年するというのは逆だ。よってこれは「正しい」ということで、めでたく留年していただくことにしよう!

 チコさん、お帰りなさい。そしてごめんなさい…。

 
 さて、今日もほのぼのと迷う道を探しながら、畑仕事に精を出す。畑仕事と言っているが、僕の本業はリフォーム屋である。(※肩書きと枠 ※田舎と故郷 より)

 まあ、それはどっちでも良くて、今日は新たにお借りした畑の草刈りをやりに行った。
 数年前までは田んぼだったこの土地。その後、放置されてきたため、草が伸び放題である。もう二メートルくらいの高さがある。

 その中でも特に厄介なのが「センダングサ」と呼ばれる植物だ。
 黄色い花が咲いた後、種が出来るのだが、これが服にひっついてくる。そう、だから「ひっつき虫」とも呼ばれている。

 この地域では、センダングサのことを「ばか」と呼ぶ。僕は知らなかった。はじめて聞いた。
 調べてみると、「ばか」と呼ぶ地域は多いらしい。あと「ばか草」とか「どろぼう」とか「どろぼう草」とか…。
 
 ちなみに、我が家ではこれを「トゲトゲ」と呼び、自分はもちろん、散歩する時にワンコたちに付かないように気をつけている。
 そうだ。だから「ひっつき虫」と呼ばれるのは、理解できる。

 この「トゲトゲ」という呼び方は、僕たちが勝手につけた呼び名だ。もしかしたらそう呼ぶのは、我が家だけなのかもしれない。調べても出てこなかった。
 しかし、見た目そのままだから、名前の由来はきっと誰でもすぐわかってくれるだろう。

 しかし「ばか」とか「どろぼう」っていうのはどうだ?

 酷いネーミングだ…。

 言葉だけを聞いても、その名前の由来は、わかりそうでわからない。そう、少しモヤモヤする。
 しかも、本名であるセンダングサを上回って、その呼び方は全国的に広まっている。

 そこで少し考えてみる。そう、このネーミングの由来を…。
 

 よし、始めてみよう。

 秋田犬の「もこ」と散歩する僕。両脇にはセンダングサがワサワサしている。ちなみに、もこは長毛の秋田犬である。少し前に有名になった「わさお」みたいな感じだ。

「もこちゃん、トゲトゲに近寄らないでね。それ付くと取るの大変だから。」
「……クンクン…。」
「あっ、こらっ!そっちは…。」
「ガサガサガサッ。」
「あーーっ、ばかっ。トゲトゲまみれになっちゃったよ…。近寄らないでって言ったでしょ?」

 そう、こんな感じ。

 しかしこの場合、「ばか」だったのは突っ込んで行った「もこ」なのか?それとも、ちゃんと見てなかった「僕」なのか?
 いずれにせよ、センダングサに責任はないはずだ。
 なのに、彼らは「ばか」と呼ばれている。
 これは、すごい八つ当たりだ。


「どろぼう」はどうだ?

「ただいまー。」
「あぁ、あなた、もこちゃん、お帰りなさい。」
「さっきね、もこがトゲトゲに突っ込んじゃってさ。」
「そうなの?」
「そうなんだよ。取るの大変だったよ…。」
「それはお疲れさま。あれっ、あなたのその足に付いてるの、何?」
「あっ、トゲトゲだ。しかも枝ごと…。どろぼう、して来ちゃった…。」

 うん、こんな感じ。

 勝手に持ってきてしまう、というところが、「どろぼう」なのだろう。
 しかしこの場合も「どろぼう」だったのは僕だ。決してセンダングサが「どろぼう」をしたわけではない。
 これはなんだ?そう、冤罪だ。

 センダングサは、八つ当たりされ、更に冤罪により酷いネーミングをされている。しかも全国に晒されているようだ。

 そう考えると、今まで厄介ものだと思っていた「トゲトゲ」さんに同情する。

 お気の毒に…。
 もう呼び捨てにはしないことにするよ。

 そもそも、センダングサさんだって、特に名前をつけて欲しかった訳でも、ひっつきたかった訳でもないのだろう。
 あちらは自然界の生き物だから。
 そうだ。植物のほうが人間よりも遥かに先に地球にいたようだし、あちらが自然なのだ。
 これは逆だ。やっぱり逆だから「正しい」ということにしよう。

 それなのに、色々と巻き込んでしまった。ごめんなさい…。お詫びの印として、センダングサさんにも「迷子同盟」に入っていただこう。逆だったし。迷子かどうかは知らないけど…。
 
 しかし人間っていうのは、本当に面白い。まあ全員ではないかもしれないが、少なくとも「僕」は面白い。
 だって、好きに名前をつけて、名前の由来を考えて、さっきまで「厄介もの」としていたものに、今は「同情」している。
 同じ人が、数分経ったら違う考えになっているからだ。

 まとめてみよう。わからなくなってきたから…。よし。

「トゲトゲ」と名前をつけた僕
「ばか」「どろぼう」に疑問を持つ僕
「ばか」は誰だ、と考えた僕
「どろぼう」になった僕
「厄介もの」と思った僕
「同情」している僕
「お詫び」する僕
「迷子同盟」へ勝手に入れた僕

 うん。今日もいい調子で迷子になってきた。これは楽しい。

 「十人十色」なんていうが、そんなのはとんでもない。

 「一人無限色」だ。

 そうだ。こうなったらやっぱり事態を楽しまなければ、人生面白くない。ん?なんか変かな?

「一人無限色」なんだから、自分以外の人のことを理解するなんて、相当難しいことだろう。
 だって、自分自身のことすらわからなくて、迷子になっているのだから。

 でも、これだけは思う。
 
 それでも穏やかに、ほのぼのと生きていたい…。

 
 うん、よし。今日もなんとなく帰って来ることが出来た。良かった…。

「迷子同盟」は人間、植物、動物、虫、AI ………。誰でも歓迎だ。
 というか、勝手にどんどん会員を増やしていってしまおう。…と思っている…。

 だって「迷子」だから。


 

迷子同盟 第三話 センダングサ

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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迷子同盟 第三話 センダングサ

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-11-07

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