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プロローグ
賭け事。様々なものが存在する。
競馬、競艇、カジノ・・・・
それらすべてのもの、勝ち続ける男がいた。
人は彼を、「Hat magician」と呼んだ。
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西暦2065年。第三次世界大戦が勃発。
その原因はなんとも笑いがこみ上げてきそうなものだった。
それは、カジノルーレットである。
後に神とキリスト教神父が名づけた大富豪が、その余生をすべての資産を使って、カジノへと流した。その影響により、大統領より力持っていたその大富豪が動いたならばと、アメリカがカジノに全面投資を決定。徐々に世界もカジノの渦へと流れていった。国際連盟はカジノを、正式な企業、経済として認えめ、世界の経済はカジノの力にのみこまれていった。カジノなしでは国がなりたたなくなり、それによって発生した、国民の貧富の差はますます大きくなっていった。
カジノなしでは生きていけない。そんな考え充満していった。
そして現在は、2095年。終戦から、まもなく10年である。
「金だ。金がいる。」
質屋へと歩いていく者たち。彼らはみな、カジノで負けたきた者たちである。
少しでも金を手に入れ、またカジノへ向かおうとしているのだ。
その流れと、逆に進む男が二人いた。
一人は帽子をかぶっている。
その帽子をかぶった男が口を開いた。
「今日も酷いな。」
帽子を深くかぶっているために、顔はうかがえない。
「最近は一層増えたような気がするな。」
もう一人の男が答えた。その男は、ブラウンのロングコートをはおり、サングラスをかけている。
「ルーレットのインチキ化がさらに進行したようですからね。ひどいと思いますよ。人の心をもてあそんでいるように思えます。」
「何を言っているんだベンソン君。インチキは立派な商売だよ。」
「だから僕の名前はベンソンではありません。マークですって!それにエンさんは運がいいからそんなことがいえるんですよ。」
二人は顔を上げた。
その顔はこの二人とは逆の方向に進んでいる連中より綺麗である。というより、連中の顔が醜すぎるのだ。この世の者とは思えないようなスッとした不気味な顔をみなしているのである。
「しっかし今日はまた何のようですかね、エンさん。珍しいですよね。司令官自ら僕らを呼ぶなんて。」
「そうか。君は初めてか。君と一緒になるまでは結構呼ばれたものだ。そのほとんどが、退屈しのぎだったがな。」
風が吹き抜ける、このミシシッピの通りを二人は歩いて行った。
「失礼します。」
15年は変えてないだろという木のドアを開け中に入った二人を待っていたのは、エンテレスと同い年くらいの男だった。
「今日はどういった御用で・・・・・。」
マークが尋ねる。
その男は、こちらを向くと目を見開いて歩いてくきた。
「おー来たかね。元気かい?」
しゃべり方がジジイである。これでも40くらいだろう。ジャケットを着ている、映画のカウボーイみたいな印象だ。
「エンテレスとマーク。うーん。いつみてもいいコンビだ。」
「いやあ・・・・・。」
マークが頭をかきながら照れる。
さっきから、エンテレスはしゃべっていない。
「ところで君たち。単刀直入に悪いんだが・・・・・。」
「なんだデイビット。」
やっとエントレスが口を開く。
「えっとな・・・。」
デイビットは息を吸った。
「君たちはコンビ解散だ。」
二人は顔を見合わせた・・・・・・・・・・
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二人は、顔を合わせたまま動けなかった。
デイビットが続ける。
「えっとな。コンビ解散っつってもまあエンテレスと組んでもらう奴がいるんだ。」
「はあ・・・・・。」
エンテレスが口をひらいた。
「そいつとは?」
「ベストという男だ。まあまあの中堅だが、彼には問題があってな。」
「問題?」
「彼に任せた任務はすべて最悪の形で帰ってくるんだ。」
「「可能を不可能にする男」的な?」
マークが口を挟む。
「彼と組んだ者は任務中に絶対に死んできてしまうんだ。」
エンテレスとマークは、背筋をゾクッとさせた。
「そこでだエンテレス。君と組んでもらうことにした。」
「へえ・・・・。」
「またなぜエンさんと?」
「君はどんな任務も、どんなピンチになってもそっから奇跡がおきて任務成功してしまうだろ?」
「「不可能を可能にする男」的な?」
マークはもうそのことは知っていたため、冗談半分で言った。
「ついてる男とついてない男。これで+-ゼロだろ」
エンテレスは心の中で、そんな無茶なと思った。
「まあ細かいところは後ほど説明する。もう決まったことだ。」
デイビットは笑顔で言った。
しばらく沈黙が続いた。
エンテレスが口を開いた。
「・・・。わかりました。それで、ベストという男は今どこに?」
「あ・・・・・。」
デイビットは、ゆっくりと言った。
「町外れのゴミ捨て場だ。」
デイビットの笑顔で言ったその言葉に、二人は何も答えられなかった。
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