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『チョロ執事をハロウィンでメイド姿にする話』
 コメディ  作者:鳳月 眠人 houzuki mint
シャノン
おかえりなさいませ。
遠征、大変お疲れさまでございました。

モーガン
うん。館やかたに変わりは?

シャノン
特にございません。
一昨日にアンデッドが十体ほど湧きましたが、イーファがすべて撃退しました。

モーガン
あー、ハロウィンが近いからな。
イーファ、よくやったね。

イーファ
はい、ありがとうございます。
武器とコートをお預かりします。

モーガン
うん。あ、そうそう、オーウェンが一緒に来ていてね。
ゲストルームへ通して。

シャノン
かしこまりました。
ハロウィンまでご滞在ですね。

オーウェン
よーう、オーウェンが応援に来ましたぜっ、と。

モーガン
日本語でのみ通じるダジャレを飛ばすんじゃない。シャノン、やれ。

シャノン
一足飛びに冬が来たのかと思いましたー
オーウェン様は冬の精でいらしたんですねぇー

オーウェン
はぁ!
シャノン砲が辛辣しんらつぅ!

モーガン
嬉しそうな顔しやがる。

シャノン
イーファ、オーウェン様を。

イーファ
はい。どうぞ。

オーウェン
おっ……

イーファ
ご案内いたします。

オーウェン
処されるのかと思ったぜ。

モーガン
セクハラしない限り処されることはない。

シャノン
左様でございますね。

オーウェン
命は惜しい。そんなことしねーよぉ。

イーファ
まずはバスルームへご案内します。

オーウェン
……しねーよぉ?

モーガン
アホだあいつは。

シャノン
ふふ、しかし心強いです。

モーガン
そうだな……

シャノン
ご主人様、今はしばし休憩を。
身体を清めて温めましょう。
エキナセアの薬湯くすりゆをご用意しております。

モーガン
抜かりないね。

シャノン
秋の砦を守るモーガン様の執事バトラー、ですから。

モーガン
私の執事は、執事モードだと本当に優秀だね。

シャノン
……優秀でない時があるみたいに聞こえますが?

モーガン
えー?どうだろうなー?

――― 間

オーウェン
で?上手くいってるのか?

イーファ
……うまく、とはどの件でございましょうか?

オーウェン
?そりゃもちろんシャノンとそろそろくっつい、うおっ!

イーファ
セクハラを感知しました。

オーウェン
落ち着いてイーファちゃん~!

イーファ
ちゃん付けもセクハラです。

オーウェン
ごめんごめんてごめんて。
強い強い!この子つよい!
俺、要らなかったのでは!?

イーファ
いえ……

オーウェン
お?

イーファ
一昨日のアンデッドの強さからして、今年のハロウィンは屋敷総出でも厳しい状況になりうると思っておりましたので。

オーウェン
遠征の感じからしてモーガンも心配していたからな。
まっ!オーウェンの応援がありゃあちっとは楽になるさ!任せな~

イーファ
(M)
ハロウィンスタンピード。

シャノン
(M)
モンスターやゴーストが大量に湧いて
押し寄せる日。

オーウェン
(M)
他の使用人もどことなく
ピリピリしてやがんなー。

モーガン
(M)
こんな雰囲気では良くない。
気が張りっぱなしでは疲れが出る。
しかしどうする……

――― 翌日、食事中。

モーガン
なにかしたいなあ。

オーウェン
なにかって?

モーガン
楽しいことがしたい。

オーウェン
珍しく思考が明るいじゃねーの。

モーガン
酷くないか……
私一応、辺境伯……

オーウェン
はは、思い詰めてないモーガンの方が俺は好きだ。

モーガン
それはどうも。

オーウェン
うーん、面白いことねぇ。

イーファ
(小声)
シャノン様。

シャノン
(小声)
どうした、イーファ。

イーファ
(小声)
屋敷北東に、小規模警報です。

シャノン
(小声)
またか。

イーファ
(小声)
騎士達の討ち漏らしのようです。
わたくしが出ましょうか。

シャノン
(小声)
いい。イーファはこのまま給仕をして。
私が出る。

イーファ
(小声)
!はい……

シャノン
モーガン様、オーウェン様。
また湧いたようですので、少々失礼を。
ひと狩り行って参ります。

モーガン
一人で大丈夫か?

シャノン
小規模ですので問題ありません。

オーウェン
油断するなよー気をつけてな。

シャノン
ありがとうございます。
それでは失礼します。

イーファ
……。
……。
ワインをおつぎします。

オーウェン
青春いいねぇ……

モーガン
おっさんやめな。

オーウェン
酷くないか……
俺まだそこまで歳いってない……

モーガン
んー、楽しいこと……

オーウェン
スルーなの?

モーガン
ハロウィン……

オーウェン
春の砦では、呑気に仮装パーティーなんかしているらしいけどな、ハロウィン。

モーガン
へぇ。仮装。どんな?

オーウェン
ウィッチとかミイラとか、ワーウルフとかゴーストとか。

モーガン
悪趣味だな。秋の砦が大変な時に。

オーウェン
シスターとか騎士とか、劇場でヒットした役柄の衣装だとか……あとメイドとか。

モーガン
職業への憧れが?

オーウェン
なんかもうそういう文化なんだろう。

モーガン
なるほど……?

オーウェン
トリック・オア・トリートっつって練り歩いて、キャンディや菓子を子供たちがねだるらしい。

モーガン
スタンピードを模しているという訳か。
キャンディをいただくのは我々側なのだが。

オーウェン
ははっ!全くだ。

シャノン
ただいま戻りました。

イーファ
!

オーウェン
早いな。服装に乱れも汚れもない。
腕を上げたな。

シャノン
お褒めに預かり恐縮です。

モーガン
何体いた?

シャノン
ワーウルフ3体とアンデッドが9体です。

オーウェン
湧くねえ~

モーガン
……あっ。

オーウェン
どうした?

モーガン
シャノン。キミのメインスタイルはダブルガンだな?

シャノン
はい。

モーガン
補助は。

シャノン
暗器剣と魔導スナイパーライフルです。

モーガン
うん、いけるな……?

オーウェン
なにが?

モーガン
いや……うん。
イーファ、ちょっと食後に私の部屋へ来てくれる?

イーファ
承知をいたしました。

オーウェン
気になるなあ。

モーガン
オーウェンは顔に出るからお楽しみだ。

オーウェン
より気になるじゃねーの。

モーガン
さて。じゃ、お先に。
イーファ。ついてきて。

イーファ
はい。

――― 間

モーガン
ハロウィンが近くなって、屋敷がピリついているだろう?

イーファ
はい。

モーガン
なのに我々がこの砦を死守している間、春の砦では仮装パーティをしているらしい。

イーファ
あ、オーウェン様の仰っていた、あの。

モーガン
そう。それで思いついたことがある。
みんなの緊張をほぐすために……
シャノンを尊い犠牲にしようと思う。

イーファ
シャノン様を、尊い犠牲に、ですか?
……まさか。

モーガン
シャノンを慕っているイーファに頼むのは
心苦しいが──

イーファ
お任せ下さい。

モーガン
食い気味。

イーファ
シャノン様を仮装させればよろしいのですね?
お任せ下さい。

モーガン
話が早い。というか抵抗とかないんだ……

イーファ
何の仮装を考えておいでですか?
先程、武器の確認をしていらっしゃいましたが。

モーガン
それはね──

イーファ
やはりモーガン様は稀代の天才です。
ワクワクして参りました。

モーガン
うん。思いついちゃったな、名案。

――― 間

オーウェン
野暮なこと聞くんだけどさ、シャノンくんは、秋の砦の美形執事として名が高いけれど、実は性別どっちなの?

シャノン
ふふ、繊細なご質問ですね?
性別がどちらか。それは私にとって一種の哲学のようなものになります。

オーウェン
ほおー?手馴れた返答だ。
じゃあ、モーガンと、イーファちゃん。
もしも万が一好意を寄せられて同時に迫られたとしたら!どっち取る?

シャノン
えっ、な、うぇ
そのような対象として、見た事がない……のでっ、お答えっ、できかね、ます。

オーウェン
あっ、この手の話題になると、免疫ないのねキミ。

シャノン
そんなこと、ございませんよ。
モーガン様は常に尊敬している主人であり……
イーファは後ろを任せられる相棒のようなものです。

オーウェン
俺はー?

シャノン
冬の精でございます。

オーウェン
おー、調子戻ってきた。

イーファ
失礼いたします。
シャノン様、モーガン様がお呼びです。

オーウェン
迫られるかもな……

シャノン
オーウェン様。
三人で会議など日常でございます。

オーウェン
どうだろうな……

シャノン
失礼いたします。

オーウェン
モーガンは何を企んでいるのやら。
素振りでもしてこよう。

――― 間

モーガン
シャノン。キミに是非うなずいてもらいたいお願いがあるんだ。

シャノン
お願い、でございますか?

モーガン
そう。屋敷内の緊張が続いていて、みんな気が詰まっている。
そこにあっと驚く楽しいことを取り入れてみて、みなをリラックスさせたい。
それに協力してもらいたいんだ。

シャノン
素晴らしいお考えです。
具体的には、何をすればよろしいのでしょうか?

モーガン
メイド服を、着て欲しい。キミに。

シャノン
……ちょっと耳が遠かったようです。
もう一度仰っていただけますか?

モーガン
キミに、メイドの仮装を、してほしい。

シャノン
メイド?

モーガン
メイド。

シャノン
なぜに、メイド?

モーガン
可愛いと思う。

シャノン
仮装なら、他のでも……

モーガン
それなんだ。
ハロウィンまで日がないし、新たに衣装を作るような手間暇があれば防衛に出ている。
調達しやすいもので手頃な仮装を考えた。
メイドしかない。

シャノン
いや、騎士服とか……

モーガン
意外性がないじゃん。

イーファ
お仕着せは用意してございます。

シャノン
用意が早すぎる。
…………これ、は、今からですか?

モーガン
うん。

シャノン
話が急すぎる。

モーガン
見たいな……シャノンのメイド姿……
メイド姿のシャノン……
キミはメイドモードでも優秀だと断言できる。

シャノン
なんか怖っ!

イーファ
絶対、素敵です。大丈夫です。
尊厳は失われません。輝きます、むしろ。
この姿で戦うシャノン様の横で私も戦います。

シャノン
待ってください、ハロウィンスタンピードの戦闘中もコレですか!?

モーガン
いけるだろ?ホルスターも用意した。

シャノン
ッスーーーーー……
一旦、落ち着いていただけますか?

モーガン
私は落ち着いて……ごめん。興奮してる。
抑えられない。

イーファ
わたくしもです。抑えられません。

シャノン
イーファも!?
嫌だこんなイーファ初めて見た!
これはッ、なんらかのチャームに、お二人ともかかっているのでは!?
目を覚ましてください!

モーガン
興奮しているけれど正気だ。
私のお願い、聞いてくれるね……?

イーファ
わたくしも正気です。シャノン様。
わたくしとメイドになりましょう?

モーガン
さあ。

イーファ
さあ。

シャノン
(M)
うっ、奇しくもオーウェン様の言葉通りに……
こんな迫られ方しとうなかったぁ……

イーファ
お任せ下さい、シャノン様。
シャノン様の魅力を最大に引き出してみせます。

モーガン
ま、お願いとは言ったが、拒否権は無い。
コレでしっかり御奉仕、してほしいな?

シャノン
ご、ほ、う、しっ!?
うっ、ううう分かりましたあ!
もういいヤケクソだ何にでもなってやるー!

モーガン
よく言った。さすが私の執事。

イーファ
流石です!それでは早速、失礼します!

モーガン
(小声)
チョロいな。

イーファ
(小声)
チョロすぎです。

シャノン
え、なんて、
うわー!自分で着替えます!
脱がさないでッ

オーウェン
(三回ノック)
失礼するぜー……

――― 間。モーガンとイーファに執事服を脱がされかけのシャノン。目が合うオーウェン。

オーウェン
んー、邪魔したぜー。

シャノン
あーーーーーー!

オーウェン
青春、いいねぇ……

――― 間

シャノン
とんだ辱めを受けました。

オーウェン
ぶぁははは!それでこの格好かぁ!
意外にも似合ってるぞ!胸を張れよ!
騎士も使用人も、空気は明らかに変わってるぞ。

イーファ
最高です、シャノン様。
普段の執事姿の雄々しさと恥じらうメイド姿のギャップ。
全戦闘メイドの士気が百億倍上昇です。

シャノン
そうですよね。私だけの犠牲で、みなの士気が上がると言うのなら!

オーウェン
お、モーガン!天才のお出ましだ!
お?おお?隠れてどうした?
さっきもソレで給仕してただろ。

シャノン
うう……

モーガン
シャノン……お前の主人は誰だ?

シャノン
……モーガン様です。

モーガン
よろしい。来なさい。

シャノン
は。

オーウェン
猫みたいになりやがって。

イーファ
最高です、シャノン様。

オーウェン
毎秒言ってるなぁ。

モーガン
これよりハロウィンスタンピードを迎え撃つ!
私と第一騎士団は東を。
オーウェンと第二騎士団は西を担当する。
他戦闘員は第一ライン防衛だ。
合図があったら遠距離援護を頼む!
負傷したら第二ラインまで下がって回復。
ドロップキャンディに気を取られすぎるなよ!
後日回収すればいい。
魔力切れの時だけ拾って使え。
では──
今年の勝利の女神──

イーファ
(M)
紅葉色の髪をなびかせ、壇上へ登る女神。
いつもは余裕のあるお顔も
今日は髪とおなじ、紅葉のよう。
夜風に揺れるお仕着せのドレープ。
中の白いパニエのレースが明日の朝の光みたい。
脚に巻かれたホルスターが覗く。
スカートをひるがえして戦う姿に
うっかり見蕩れて負傷しないようにしなければ。
ほんと最高です。

モーガン
出陣の掛け声を。

シャノン
はい。執事長、シャノンが!
万聖ばんせいの加護を奏上する!

モーガン
(M)
これで戦闘になったら容赦がないのだから、そそられるな。

オーウェン
(M)
これ、来年以降も恒例になるんだろうなー。

シャノン
(ヤケクソ)
は……ハッピー!ハロウィーン!!!

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  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-11-04

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著作権法内での利用のみを許可します。

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