虫
ほの暗い空間。四方コンクリートで囲まれた部屋の隅に、一匹の毒虫がいた。芋虫に似た形状の、絶えず節々を動かし体をくねらせるもの。傍らには、羽を震わせ縮こまる、死にかけの白い蝶。
私は誰かの労力を隠れ蓑に退屈を貪り食っている。それを咎められれば身をすくめ、薬毒分けずに全て吐き散らす、醜い生き物。
部屋の角には鏡があった。かつて誰かが使っていたと見える全身鏡。
鏡面は全てにかけて水垢のようなものがこびり付き、曇り、二匹の姿は見えない。よく探せば綺麗な箇所はあるのかもしれないが、地面に横たわるだけの私にもうそんな気力はない。
これの清い人間こそ、真に内心を吐露するに足りる者とみる。
カブトムシの幼虫みたく、私たちも土の中で生きているとしよう。地面を掘り進め、周囲に埋められた数々の宝玉を探ることが生きがいというのなら、その土どもが消し飛ばされた空っぽの中でどう生きればいいのか。
地面に転がる綺麗な石ころ達。自分の手で掘り当てられなかったそれに、何の価値を見い出せば良いのか。
やがて、部屋の角から色水が染み出してくる。赤、青、黄。どれも宝石をそのまま溶かしてしまったような鮮やかさを持っていた。
液体は毒虫の防波堤を超え、やがて蝶へたどり着く。羽に触れた途端、色たちが白の中で扇状に広がった。それらは境界線をぼやかし、混ざり、純白を濁していく。やがてそれは、地面のコンクリートと同化するに至った。
虫