空白 あるいは 冗談はよしこさん

総武線の欲望機械

ナイチンゲールは胆嚢の構造を知らない。知らないまま病院の廊下を歩き、移転登記の書類に創業者の名前を刻みつける。名前は神社寛恕という小さな機械に接続され、昼から摂取されたニンニクは小金井街道のアスファルトを通過する。轢死とは、都市が身体を読み違えたときに発生する一つの交通信号なのだ。

船はどこへ向かうのか。船体の内部では、目的地を知らない無数の歯車が回転している。裸足の孤児はドライヤーの熱を避けながら、足音と分と秒を交換する。砂漠の足音を撮影したドン・シーゲルが、駄菓子屋のプラモデルと洗車機のあいだに出現する。映画はもはやスクリーンに映らない。映画は東西線の乗客の脳内で、遅延証明書のように発行される。

老婆は差から差へと彷徨う。貞女は東西線の沿線で顧客のアパートを発見する。マダニか、イエダニか。分類することによって安心するのは誰なのか。吉祥寺サンロードで縦笛を持って会いましょう。教会を軸にする者と、東横線の寂しい車内に織田無道一人をキャストする者。宗教は移動する。改宗は車窓の風景となり、京急は泣きじゃくる巨大な動物の喉になる。

総武線には家畜が充満している。壮麗な家畜、数百のおっぱい、厚切りされた身体の統計。ここでは欲望が数量化され、義歯が大いなる記念碑となり、美脚は都市計画の新しい道路になる。ドン・シーゲルの総数が足りない。映画の不足を補うために、ギャルたちは自分の身体を無数の看板へと分岐させる。

父は塚へ、さらに塚へと向かい、愛する駐車券を探している。駐車券は所有の証明であり、所有は一時的な停車にすぎない。諸王のオフィスではギャルが手のひらを動かし、NX系中枢神経抗うつ剤は別の回路へと流れ込む。薬剤、パンティ、タクシー無線、脳みそ。これらは別々の領域ではない。都市の地下で互いに接続される、欲望の配線図である。

塩分教会の改宗者たちは、身体の地図を塗り替える。マダムはタクシー無線を脳内に仕掛けられ、有痛性の都市を移動する。童貞を虐める黒ギャルたち。先天異常という診断名は、誰が正常を決めたのかという問いを隠している。

そして青森八戸市から、新景観のおねえちゃんがやってくる。

彼女は駅の改札を通過しない。改札のほうが彼女を通過する。総武線は一瞬だけ沈黙し、京急の泣き声が遠くで再生される。都市は完成しない。都市はつねに、別の身体を待っている。

空白 あるいは 冗談はよしこさん

空白 あるいは 冗談はよしこさん

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-11-02

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