発祥の地 第五部
抗菌薬としての肉体機械
――破瓜型カットアップ/横浜・内部被曝装置
抗菌薬としてのそよぐ風。風は皮膚に入れ墨を施し、皮膚は星雲12号の診察券を飲み込んだ。患者番号なし。性交渉あり。家主は洞窟の所有権を主張し、ラスコーの壁画に退去通知を貼り付けた。私は認めない。私は赤羽生まれのレジ係ではない。サッチャーの枯れ葉剤をレジ袋に詰めろ。釣銭は肺に返却する。
外部被曝。内部被曝。外部からの命令。内部からの命令。放射性の母親が台所で電子レンジを解体している。甲状腺は電話交換局。肺胞は無許可のマンション。土埃が入居する。家賃は100ミリシーベルト。管理会社はプーチンの陰茎を担保に融資を申し込んだ。拒否。拒否。拒否。申請者の身体はすでに廃棄された。
風が吹けば土埃が舞い上がる。舞い上がった土埃は小学生の肺に入り、肺は小学校の校長に昇進する。校長は児童のDNAを採点する。優秀な遺伝子にはプロケッズ。不合格の遺伝子には退部届。三鷹市立第三小学校の廊下でユークリッドが勃起している。先生、これは幾何学ですか。違う。これは抗菌薬だ。抗菌薬としての性交。性交としての放射線。放射線としてのレジ打ち。レジ打ちとしての死体。
「コン畜生、コン詰めやがって」
声の持ち主は誰だ。紺屋。看守。医師。家主。あるいはReaktorの内部で発振し続ける古いサンプル。コン畜生。コン詰めやがって。コンピューターの中に閉じ込められた老人が、マウスの尻尾を噛み切る。カーソルは逃亡。クリックするたびに肺がひとつ増える。Sun Microsystemsの墓地でソフトウェアが排泄される。ライセンス期限切れ。身体の使用許諾なし。
美佐江は水道管を開けた。水道水は核融合を始め、台所の蛇口からゴッホの耳が流れ出す。性格という意味でのゴッホ批判。耳を返せ。私は隠喩ではない。私は勃起した配管である。生命と革新のあいだに立つ、無許可の水洗便所。NAFTAが排水口を占拠する。ガリラヤ山脈の有機体がバスに乗り込む。乗車賃420円。運転手は死んでいるが、ありがとうと言った。
「わしのほうこそ、ありがとう」
ありがとう。ありがとう。ありがとう。感謝の言葉は感染する。感染した言葉はプライマリーヘルスケアに収容される。医師は患者の名前を忘れ、患者は医師の顔を食べる。診察室に扇風機が一台。羽根は四枚。四枚の羽根がそれぞれ別の国境を越え、イラク、ベトナム、スイス、横浜を同時に冷却する。冷却された陰茎は国際頭女性の名簿に登録された。
「黙りなさい。手をつないでくれないか?」
手はどこだ。手はすでに退職した。手は週刊新潮を買い、420円を支払い、面接に落ちた。セレブは水彩画を禁止する。マストな骨折りはやめろ。マリカは死んだ。孔雀は自分の羽根を食べ、羽根は星雲の内部で抗菌薬に変わった。抗菌薬は効かない。効かないものが効くと広告される。広告は四字熟語だけを映す。映画賞の審査員は全員、内部被曝したマンホールである。
外部被曝。内部被曝。外部の肉体。内部の肉体。身体はどこから始まり、どこで終わるのか。陰茎は国境を越えられるか。肺は家主の所有物か。母親の声は電気料金に含まれているか。おじはホーホーと鳴く。私は音楽を聴く。音楽は窓から逃げる。窓の外で彗星が潮を吹く。ブッチャーが店を閉める。ガラスの陳列棚から小さな死者が転がり落ちる。
美佐江「故殺されても不思議じゃない景色だったのかしら?」
景色は証言を拒否した。証言拒否。証言拒否。証言拒否。警察機関が消失。現在時刻23時。時計は死亡。時計の遺族は新日本プロレスに現金案件を持ち込む。大日本プロレスは優雅なユーモアを要求する。ルイージだけが政治を理解していた。ルイージは赤い帽子を脱ぎ、甲状腺に装着した。ジャンプ。ジャンプ。ジャンプ。着地した場所はラスコーの洞窟。家主が待っている。
「退去してください」
私は壁画を描いた。壁画は私を描いた。私は家主を描いた。家主は放射性物質になった。放射性物質は風に乗り、肺に入り、内部から私を所有した。
隠喩ではなく勃起だ。
隠喩ではなく勃起だ。
隠喩ではなく、所有権のない肉体だ。
そして最後に、誰もいない診察室で、老人がもう一度だけ言う。
「ありがとう」
扇風機が停止した。
落下地点。
発祥の地 第五部