園鳴現パロ「ご自愛」
⚠️女体化×百合注意です。
物憂げな表情でテーブルに肘をつき、園はじっとこちらを見つめている。もう10月も末だというのに、今日の外気温は28度。中途半端な暑さと、執拗な目線に包まれ、休日の午後だというのに落ち着くこともできない。
一度、声はかけた。「どうしたの」「なんでもありませんよ」取りつく島もなかった。
ソファに全体重をかけ、ぼんやり天井を見つめる。すると園は無言で立ち上がって、部屋を出た。一体何に機嫌を損ねているのかわからない。けれど、いちいちご機嫌取りはしない。そのうちなんでもなかったかのように姿を見せて、笑ってこう言う。「本当に仕方ないひとですね」と。
ところが、扉を開ける音、足音が続いて、なんと、園は外へ出て行ってしまった。
「まさか……家出?」
身を起こして、玄関へ向かう。靴がない。
愛想を尽かされたのか。
呆然と立ち尽くして、追うか、追うまいか、思案する。考えている場合ではないのかもしれない。この反応の悪さも、要因のひとつだろうか……。
でも、これでよかったのかもしれない。
女同士なんて、やっぱり、園には。
それが誰であっても、男でも、女でも、どうであれ、きっと私より相応しいひとがいる。
「そうだ」
言い聞かせるために呟いたわけではない。ただ、こぼれ落ちただけ。締め忘れた蛇口からしたたる水滴のように、みっともなく。
リビングに戻ることもできず、これからどうしようか、と考えていると、勢いよく扉が開いた。
「えっ!? どうしてここに?」
目を見開く園の手には、段ボール。驚きたいのはこちらの方だ。
「ううん……なんでも」
「本当に?」
「うん」
納得していないという色を全面に押し出しながらも、結局園は「中に入りましょう」と促した。
リビングに戻ると、園は段ボールを置き、早速それを開けた。
「それ、なんなの?」
「見てのお楽しみです」
黒い梱包の奥には、艶やかな色がちらついている。白、赤、黒?
「なに……、なんなの」
「下着ですよ、あなたの」
「下着!? 下着……っ、なんで」
「自分の姿をよく確かめてください」
言われるがまま下を見るけれど、いたって普通の格好だ。いつも通りの部屋着。
「別に、いつも通りだけど」
「それが駄目なんです! 私の話、全然聞いていませんね!?」
「ちょっと、声大きい」
「そんな縒れた下着……! 目の毒なんですよ!」
「下着って、ブラトップでしょうが」
「同じことです!」
確かに、年季の入ったブラトップには違いないけれど。
「部屋着なんて、縒れてれば縒れてるほどいいの」
「そっ……んな、こだわりが、あったんですか?」
「そ、うだよ」
嘘だけれど。
「可愛い……って、でも、だってぇ……」
園はゆらりと立ち上がり、逃げようとする私の手を掴んで抱き寄せた。
「ここ……、ほら、ここ、こんなに無防備で、私、試されているんですか? 据え膳ですか?」
「ちょっ……」
胸を、横から、上から、くすぐるように触られる。
「あぁあ……ふっくらもっちり、なんでケアしていないのにこんなに……」
「園が……っ、触るから!」
「触るから? 私が触るからですか? どんなふうに触られたら、こんなに素敵な触り心地に?」
「ん゛っ……」
服の上から弾いたり、押したり、せわしない指先に確実に追い立てられて行く。度重なる洗濯で薄くなった生地が、頼りなくて仕方ない。
「っ゛……」
「可愛い……」
「……いで」
「え?」
「……私の気も知らないで」
「えっ、えっと、どういうことですか?」
仕返し。緩んだ表情筋をなんとか締め上げて睨みつけると、園は慌てて胸から手を離し、こちらを伺うように眉を下げた。
「さっき……、急に出て行くから、家出かと思った」
「家出!? そんな……っ、急に出て行ったのは、配達完了通知が来たからで、だって、もう、その肩紐も布も、全然支えになっていなくて! こぼれて、あふれて、私、もう、耐えられなくて! 実物を見てもらった方が早いと思って……でも、家出なんて、そんなふうに思わせてしまったんですね……、すみません」
「こぼれる!? 表現がおっさんくさい!」
「事実です」
「そんな真面目な顔で……っ、ふ、まったく、ああ、でも、いいんだ、それなら」
「家出なんてしませんから」
「うん」
「私のこと、信じてください」
「信じてるよ」
「同じくらい、あなた自身のことも、信じてくださいね」
「うっ……うーん」
「そこは即答するところですよ」
「努力してみる」と返しながら、そっと園から離れ、段ボールに視線を移す。ほっとしている場合ではない。懸案事項は、まだある。
「で、下着って、どんなの買ったわけ」
「色々です、でも、イチオシはこれですね」
園はそう言って、段ボールから純白の下着を取り出した。
「白……って、それ、透け……!?」
「レースが綺麗なんです。上下セットですよ、きっと似合いますね」
「絶対着ない!」
「じゃあそのままで好きにされたいんですか?」
「違う!」
押し合いへし合い、じりじりと、ソファに追い詰められ。
「好きな方を選んでください♡」
楽しげな園に、抵抗虚しく──まんざらでもなく、絆されそうな私だった。
園鳴現パロ「ご自愛」