歳越し青春物語

【登場人物】
・中野 雄一(なかの ゆういち;男、17歳。高3)
・綾川 陽菜(あやかわ ひなの;女、15歳。高1)
・藤井 芳樹(ふじい よしき;男、18歳。高3)
・小野 優香(おの ゆうか;女。)
・ 樋田 瑛介(ひだ えいすけ;男。)
・ナレーター(N表記、男女どちらも可だが、可能なら女。言い換え)


【注意事項】
①演者は全員で6人。"男性4人と女性2人"。若しくは、"男性3人と女性3人"で
②セリフの言い換えは可能ですが、雰囲気や作品を壊すことはしないように。
③米印はト書です。読まないように。
④学園モノという設定です。
⑤キャラクターの後に(N)があった場合は、そのキャラが読んでください。
⑥この物語はフィクションです。

歳越し青春物語

N:ここは"未知之山高校(みちのやまこうこう)"。歴史のある国立高校である。この学校で、とある2人の噂が立っていた。受験生である3年生男子と入学したばかりの1年生女子。決して同じ部活の選手とマネージャーという関係ではない。かといって、生徒会所属というわけでもない。


中野:終わったぁ~、学校の問題集!巻末問題まで全部いけたぜ。(※軽く息せいている)

藤井:お前ついにやったのかよ?全科目の問題集攻略。

中野:あたぼうよ。そりゃお前、こっちはこれからが本番だからさ!


N:中野が机の上に出したのは、伊大(いだい)という塾から出されている入試攻略問題集。まもなく実施されるセントラルグランプリと2次試験問題集が置かれる。見る限り薄いものの、よく見ると……。


藤井:お、おま!それ、マジか…。
ガチの本番セットじゃん。模試とかでお馴染みのアレじゃん……。

中野:そうだよ?いくら赤本とかの問題集を買ったしても、形から本番へのカウントダウンがどうしてもしたくてさ。家にあと6セットくらいあったはず。まだやってないのが。

藤井:おまアホか。

樋田:お前ら、そろそろ帰れよ。学校でやるのもいいけど、家でもキチンとな!

N:樋田瑛介。中野と藤井のクラスの担任で保健体育の担当。

藤井:は~い。今から帰ります。さようなら、先生。

樋田:おう、じゃあな。

中野:さようなら。

樋田:さようなら。

藤井:んじゃ、先帰るわ。

中野:あ、あぁ……。またね。


N:こうして靴を履き替えた中野。門を出ようとすると、同じ学校のブレザーを着ている1人の女の子が。リボンの色からして、1年生だろうか?緊張の様子が伺える。

中野:よし、早く帰って明日の用意をし……。

(※中野、何者かに服を少し引っ張られる。しかし、力は弱め)

中野:ん?誰ですか?

綾川:あ、あやや……。あわわ……。

中野:???

綾川:あ、あの……。

中野:どうしました?

綾川:い、一緒に帰って頂けませんか??

中野:は、はぁ。
……それより、どちら様ですか??


綾川:あ、あや、綾川です。先輩と同じ、未知之山高校の1年生です!

中野:なるほどね。綾川さん、でいいのかな?
私は中野。中野先輩で。

綾川:な、中野先輩。
ありがとうございます。突然の私のお願いに応えてくれて。

中野:気にしなくていいですよ。行きますか♪

綾川:は、はいっ!


N:2人は学校の最寄りの駅まで歩く。その道中でも会話は続く。すると、意外にも最寄り駅は近いようで。


綾川:私の最寄駅、倉肌(くらはだ)駅なんです。

中野:倉肌。隣じゃないですか!!
私はその次の和邇(わに)駅です。

綾川:あやや!まさかのお隣さん!

中野:……ってことになりますね。

綾川:じー……。

中野:ん?どうかしました??
……もしかして、この本??

綾川:じーっ、
うんうん。

中野:アハハ、これか。ボイコレがコラボとして出している英単語集と文法集を合体させたヤツ。たまたま見かけて軽く見てみたら面白そうだったから買ったのさ。試験対策にはもちろんだけど、学校の授業でも十二分(じゅうにぶん)に通用するレベルさ。

綾川:ぼいこれ?ボイコレって、あの女性用スマホ恋愛ゲームの"ボーイズコレクション"というものですか?

中野:そうだね。そう記されてるね。

N:その後、電車内で例の書を彼女に貸した中野。彼女に貸したまま降りてしまった彼。一瞬我を忘れかけるも、すぐに切り替える。

中野:別の科目の対策をしないと!!

N:借りパクが続いて数ヶ月。秋になっても戻ってこず。仕方ないので新しく買い直した彼。

樋田:中野。お前、単語集か何かを貸したまま返ってこないとか何とかあるらしいな。
大丈夫か?

中野:いいんです。学校の単語集でカバーはできますし、単語テストのことを考えればこれくらい。
それに、他の科目に時間を割けられると思えば。


樋田:サバサバしてるなぁ。
その性格なら、模試とかもケセラセラだろ?

中野:ま、そうですね。全国トップ10に入ってまるのでランカー扱いされてます。

樋田:良いのか悪いのか、ようわからんがなw
どっかの小さい先輩みたい。ってか?

中野:大きくなれたら、そうしたいですね。

樋田:それならいい。特に問題なさそうだ。すまんね、時間を取らせて。

中野:いえいえ。こちらこそ、先生とあまりお話できてなかったので。

良き気分転換になりました。


N:季節は巡り12月。本番まで1ヶ月。
この日は早く帰ることにした中野。
綾川と帰ることに。

綾川:あやや、中野先輩です!

中野:綾川さん、お疲れ様です♪

綾川:久しぶりに帰りたいです。先輩。

中野:私でいいのなら、ぜひ。勉強しすぎて会話の仕方すら忘れかけてましたからw


N:街は完全にクリスマス。道行く人々や学生たちもカップルばかり。
本来なら、試験に向けて遊んでもよい状況ではないのだが……。

綾川:先輩。……もし良かったら、クリスマスか年越し、一緒にいいですか?

中野:??

綾川:先輩が試験なのは分かってます。
……でも、私1年生だし。先輩とはあと少ししか居られないから……。

中野:……ありがとう。

綾川:?

中野:ま、本来はそうだよな。お泊まりなんてする暇あるなら勉強せい!ってね。

だったらさ、どこで勉強しようと変わりなくねぇか?ミセドやスカバで勉強しているバカとかいるけどさ、あそこは本来食事をするところだから、ジャックする方がおかしい。

陽菜がいいって言うなら、父上と母上に掛け合ってみるよ。
ただし!

綾川:ただし?

中野:ただし、インフルエンザワクチンの接種は済ませておくこと。
私はしましたからね?

綾川:はいッ!ちょうど今週の金曜日に受けるので。

中野:なら、お願いしますね。

私の可愛い綾川さん♪


N:その後、綾川は予防接種を受け、中野は両親から許可を貰いにいった。実は2人の母はそれぞれ知り合いだったとこの時に発覚。


中野:陽菜、許可貰えたよ!

綾川:私も話を伺いました!
先輩のお母様と私のママ、同級生でした!

中野:らしいですねw
おかげで話がトントン拍子に進みました。

勉強漬けの年越し、貴女にとって高校最初の年越しはこんな風ですが、許してくださいね?

綾川:(あやや、先輩が謝ってます。)
大丈夫です!逆に先輩から教えてもらうかも……。

中野:私でいいのなら是非。


N:電車を降り、改札を出る2人。これからのデートに思いを寄せ合います。

中野:では、今年の年末年始はそれで。

綾川:はい!

"先輩、大好きです♡"
むぎゅー♡


中野:むぎゅー。
よしよし、俺も愛してるよ。


N:それから数日が経過。大晦日。2人は必死に勉強をしていた。彼女は課題に追われ、彼氏はセントラルグランプリへの追い込みと赤本で気分転換。
綾川の両親はカップルの必死な姿を温かく見守っていた。

小野:ひな~?入るよ~??

中野:ん?どちら様??

綾川:私のお姉ちゃんです。結婚してるので苗字は小野です。

"は~い!"


N:部屋の中に入ってきたのは小野優香。陽菜の10歳上の長女。既婚者だが、旦那は現在出張中。年末年始のタイミングで帰省したのだ。


小野:貴方がひなの彼氏さんね?
初めまして、小野優香です。結婚しているので小野という苗字です。優香さんでも小野さんでもお好きに呼んでください。

中野:小野さん、ありがとうございます。
妹である陽菜さんの彼氏です。中野雄一と申します。好きに呼んでください。以降、お見知り置きを。

小野:丁寧にありがとうございます。
こんなタイミングで自己紹介というのもアレですね。

さ、温かい紅茶と茶菓子を置いておくので、適度に休んでくださいね。

中野:ありがとうございます!有難く頂戴します。


小野:ヒナ、素敵な彼氏さんじゃん。
なかなかやるじゃない!

綾川:お姉ちゃんったら……!(照)

N:そうこうしている内に、"砂利の遣い達でありんす!"の年末スペシャルがスタート。紅白歌合戦の開戦も近い。

小野:そろそろ晩御飯が出来るみたいだから、限(キリ)をつけて早く来なさいよ?

N:姉に呼ばれた2人。年越しそばを5人で頂くことに。

綾川:頂きます。 ふーっ、ふーっ。
おいひいです♡ママの特製月見蕎麦!

中野:私も、頂きます。
美味しいです。綾川家での年越しそばはいつもこれなのですか?

小野:そうだよ!ママの作る蕎麦がこの1年の最後の晩餐。

中野:最後の晩餐、ってw
言い方w

綾川:お姉ちゃん、

小野:あ、私ったら……♡
うふふ♡

中野:あははwww

綾川:あはは♡


N:紅白歌合戦が終わり、カップルも明日朝イチで勉強したいということで寝ることに。陽菜の家で寝る中野。他の女の部屋で一夜を明かすことは初めてだ。

小野:寒いから温かくして寝なさいよ?お二人さん!良いお年を!

中野:はい!小野さんも良いお年を!

綾川:お姉ちゃん、良いお年を!


N:陽菜の部屋に戻る2人。彼らもあとは寝るだけだ。


中野:(なかなかしっかりして、ちょっとおっちょこちょいな素敵なお姉さんでしたね。)
今年も後10分ほどですね。

綾川:早かったです。
でも、"ユウくん"と一緒に過ごせて幸せです♡

中野:私も、受験生の身ではありますが"ヒナ"と年を越せるのは嬉しい限りです。
自室で勉強してもどうせ何も代わり映えしないのでw

綾川:ユウくんも言うんだね?

中野:思ったことはスラスラと。

……あ、あと3分で年が変わりますよ!

綾川:来年は、もっと先輩と居たいです!

中野:ありがとうございます。
私も、来年は大学生となってヒナのもとへ行けるように!

N:そして、年が変わるその瞬間。2人は繋がった。

中野:来年こそ、我々の輝ける年になれるように!

綾川:先輩と悔いのない1年を過ごします!

中野:良いお年を!

綾川:良いお年を♪

中野:ん……。

綾川:ん……♡(※可能なら、軽くリップ音を)

N:カップルが唇を重ねた瞬間、年は変わった。

綾川:雄一さん♡
新年明けましておめでとうございます♡

中野:ひなの!新年明けましておめでとう!
今年もよろしく!

N:そのまま2人は抱きしめ合い床についた。

翌朝、彼らは同時に目を覚ました。

中野:ん……、おはようございます。

綾川:あわわ……。おはやいます……。
(※スパイファミリーのアーニャ風で、寝起き感を)

中野:さて、洗顔してからアップがてら少し勉強しますか!

綾川:私も少しだけお供します。

N:朝食を済ませ、勉強を済ませた2人。
気づけば夕方。帰るべきか少し悩む中野。

中野:(参ったなぁ、そろそろ帰らねぇと。)

小野:あら?どうしたの??

中野:その~、そろそろ帰らないと両親が心配してしまって。

小野:なるほどね。

N:すると、たまたま綾川家に来た中野の母。三が日は泊まっていいが勉強せよ、との一言で延長決定。

中野:母上、感謝!!

綾川:あやや!先輩がへこへこしてる!

小野:よかったじゃない!もっと勉強していきなさいよ!

中野(N):その日の夕方から我々は追い込みをした。陽菜は課題を全て済ませ、オープンキャンパス出もらったままの手付かず問題集に取り組んでいた。私も負けじと過去問ラッシュに挑んだ。

気づけば3日の17時。早いものです。

綾川(N):先輩が帰ったあとも私は勉強しました。かっこいい彼氏の為に彼女の私もしっかりしないと!この思いで勉強しました。
進路先はまだ分かりませんが、言えることはただ一つ。

"先輩と同じ大学に行くこと"


N:時間が経ち、セントラルグランプリの開幕。藤井の目は狩人の目だった。


中野:ヨッシー、おはよう。

藤井:"あぁ、おはよう"

中野:?

藤井:行くぞ。外で先生たちと話してるくらいなら温かい部屋にいたい。

中野:同感。それもそうだな。

藤井:あ、見つけちまったよ。

樋田:"お前ら〜、頑張れ~!!
今日からの2日間、正念場だぞ~!!"

藤井:ガン無視でいくぞ~。

中野:うぃ。


小野:ヒナ、あそこにいるの、中野さんじゃぬい?

綾川:え?………あ!見つけました!!

せんぱぁ~い!!

中野:ん?

小野:中野く~ん!頑張りなさいよ~!!

綾川:せんぱぁ~い!ふぁいとです!!

中野:任せとけ!!

藤井:だ、誰?

中野:後輩だよ。

"藤井ってやつにもエール送ってくれ!!"

小野:藤井さん、頑張って~!!

綾川:中野さんのお友達さんもふぁいと!!

藤井:www(※照れてます)

てめえw

中野:さ、軽く手を振っていくぞ?

藤井:おけ。


樋田:あれ?アイツらって会場に来たっけ??


N:日付がかわってDay2。あの姉妹は今日もいた。

小野:おふたりさーーん!今日が正念場ですよ~!!

藤井:見つけたぜ、中野。今日も応援団。

中野:あ、本当だ!

綾川:中野せんぱぁ~い!藤井先輩!
がんばって~!!!

藤井:おう!(※軽く拳を突き上げる)

中野:行ってきます!(※軽く手を振る)


N:その日の昼休憩。今朝、樋田先生を見なかった2人。いたかどうかを軽く討論するも、
"俺たちを見捨てた酷い担任"という冤罪でこの不毛な議論を5分ほどで済ませた。

藤井:中野。そういえばだけど、今朝、樋田の姿見た?

中野:いいや?
もしかして、部活の大会とかに行ったんじゃねぇの?

藤井:かもな。昨日はよく来れたもんだぜ。もし昨日も部活の大会とかなら誰がその部を見てたんだよ?

中野:んなん知らん。どーでもええ。

藤井:だな。


N:2日間のセントラルグランプリが幕を閉じた。

藤井:帰ろ帰ろ、疲れたし明日から学校だし、自己採点だし、めんどくせぇ~。

綾川:あ、せんぱぁ~い!

中野:え?まだいたんですか??

小野:違うんです。どうしてもヒナがお2人を迎えたくて。

藤井:どこまで優しいんだ?!この娘(こ)は!!

綾川:はい、藤井先輩にはホットブラックコーヒー♪
中野せんぱいには、ホットのレモンティー♪

藤井:ありがとう!俺にいいの?

小野:初めまして。小野です。
うちの娘がどうしてもと。

中野:素直に受けとってやれ

藤井:おけ。

"綾川さん、小野さん、ありがとうございます。"


N:藤井と中野は高校を卒業。そして国公立大学の試験。


中野:よっしゃあ~~!!!!
あーーーーーー!!!!


藤井:うぇ~い!やってやったぜ~!!

よし、奴に電話だ!!


中野:「ん?どうした??」

藤井:「受かったぜ、本命に!
そっちは?」

中野:「こっちもだよ!」

藤井:「俺たちやったな。

あの二人の女神に感謝しねぇとな!」

中野:「既に電話してあるよ。後でこっちから伝えておくよ。
『藤井さんがありがとう』って。」

藤井:「早ぇなぁ。」

中野:「だって、
"綾川と付き合ってるし。"」

藤井:「What?!

Are you joking me??」

中野:「That is true.

本当さ。」

藤井:「うらやまだぜ~。

んじゃ、またな!」

中野:「おう!

おめっとさん。」

藤井:「そっちこそ」


N:それから3年後。
中野が進学した大学のオリエンテーション。

彼女はいた。


綾川:あ!先輩!!

中野:お!入学おめでとう!
大学生活、一緒に楽しみますか!!

綾川:はい!先輩と講義が被れるなら是非とも……♡

中野:いいとも!頑張ろう!

綾川:はい!


N:時を同じくして、大学3年生の藤井。この時間帯はアルバイトをしていた。


藤井:ありがとうございました!

いらっしゃいませ!


小野:あ、あの時の。

藤井:ようこそ、お久しぶりです。

小野:ご無沙汰しています。
妹の綾川ですが、知人である中野さんの大学に無事進学できました。

藤井:おめでとうございます。
どうか、妹さんに藤井という中野先輩の同級生からよろしくと。

小野:はい。

歳越し青春物語

【注釈】
・セントラルグランプリ→現在の"大学入学共通テスト"。旧センター試験のこと。
・ミセド→ミセスドーナツ。ミスタードーナツのモジり。
・スカバ→スカイバーツコーヒー。スターバックスコーヒーのモジり。

歳越し青春物語

受験生が恋をするとどうなるのか? 試験に追われて大変な、とある男子学生のちょっとした青春物語。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2026-10-27

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