君が笑わないでくれたから

あぁもう
うまくいかない

鏡の中の自分を見つめて苦々しく言う

鏡の中の自分は
アイラインがぐちゃぐちゃで
チークも濃すぎて
リップも歪んでる

何度やってもうまくいかない

なんで世の中のアーティストはあんなに上手なんだ

メイクが上手な姉には絶対頼りたくない
バカにされる

メイク道具を集めてることだって
言っていない

だって、“普通”じゃないから
“俺”は、メイクをすると、気持ち悪がられるから

可愛くなりたいと思うのは、いけないこと?
好きな人に自分を見てもらいたいと思うのは、いけないこと?


ぁおい、ノックもせずに入るなよ…っ

ぁ

終わった

メイク落としてない

絶対気持ち悪がられる

見るな

見るな見るな見るな!!!


さわんなよっ
お前はいいなぁ、メイク上手くて
メイクしても親に何も言われなくて

姉というお前は、“女”ってだけで
メイクをすることが許されている

じゃあ“男”である“俺”は?
許されていない

一度母に見つかったことがある

その時は、
頼むから“普通”になってくれ
って言われた

普通ってなんなんだよ


黙るなよ
なんか言えよ
バカにしろよ
笑えよ



いっ、いてぇよ
メイク落とすなら優しくこすれよ

目ぇ閉じろ?
何すんだよ
何する気だよ






やっぱ、お前、メイク上手いんだなぁ
うらやましい
“俺”が魔法にかかったみたいだ



“俺”じゃない



“わたし”は
可愛くなりたい

好きな人の性別は
いつだって男だった

その男は、毎回かわいい女の彼女作って
わたしのところから離れて行った

好きって言ったら
絶対関係が崩れるから

言わないんだ

けど、少しは見て欲しくて

可愛くなったら

見てもらえるかなって

今の鏡の中のお前はどうだよ

めっちゃ
いいじゃん

ありがとう、ねーちゃん
ちょっと勇気出た

ありがとう
笑わないでくれて

君が笑わないでくれたから

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君が笑わないでくれたから

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-10-18

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