ふつう
ある日の午後のこと…
今日は何かだるいからごろごろしていよう、と決めて布団に漫画と潜った途端、ばたばたと騒がしい足音が聞こえた。
陽(よう)は目をつぶり寝ているふりを決め込むことにした。この後どうなるのか、彼にはだいぶ見当がついており、巻き込まれたくなかったから。
しかしそれも虚しく。
「陽ちゃん!」
騒がしい足音と共にたけるが陽の部屋に飛び込んできた。
陽は動じず寝たふりを続ける。
「あれ?なんだよーねてんのかよー」
たけるは非常に不満げにぶつぶつ言いながら陽のことを揺する。
「陽ちゃん、陽ちゃーんってば!」
いくら8歳のたけるの力とは言え、がくがくと容赦なく揺さぶられ、さすがに観念して陽は目を開けた。
「たける、やめろ…」
「おおっ陽ちゃん起きたー!!」
たけるは満足げに笑った。
「たけるに起こされたんだよ…」
最初から起きていたくせに、陽はジト目でたけるを見やる。大人気ないとかはこの際気にしない。しかしたけるは全くそれに気づかない。
「あんな、陽ちゃん!おれ、きのうテストで百点とった!」
手に持っていたテスト用紙を陽に渡すと、たけるはぴょんぴょこ飛び回った。
「へえ…すごいじゃん」
陽が素直に褒めると、たけるは陽の近くに正座した。
「おれ、すごい?」
あまりにも真面目な顔で聞いてくるから、思わず陽は笑った。
「おー。すごいよ」
言いながらたけるの頭を撫でてやると、たけるは嬉しそうにニカッと笑った。
「陽ちゃん、笑った!」
「お前が普段俺を怒らすようなことばっかするからだろ」
言ってやると、ぶぅと膨れて陽のことをばしばし叩いた。
「陽ちゃんがママとおんなじこという!!」
「当たり前だろ!お前は喧嘩っ早すぎんだよ」
言いながら陽はたけるの前髪を手で抑え、たけるの額をじっと見た。
「…たける」
「…」
たけるは不自然に視線を逸らした。
「…お前またやらかしたな」
「だって!あいつらキライだ!!いきなりデコねらって木のえだでなぐってきた!」
「それはこの間お前がデコに新聞紙丸めて攻撃したからだろ」
「だって目つぶししようとしてくるから」
終わりの見えない報復合戦に陽は溜息をついた。
「陽ちゃんは!?おれキライか!?」
なぜこんなにこのいとこに懐かれてるのかイマイチ自分でもわからないのだが、陽はたけるにデコピンしてやった。
「いでっ」
「喧嘩ばっかしてんじゃねーの、たけるだって友達になりたいんじゃねえの?」
「キライなやつとはともだちじゃねー」
たけるは少し俯いて頬を膨らませる。陽はそれを見てまたふっと笑ってしまう。
「キライじゃないやつはどうなんだ?」
「みんなキライだ!!陽ちゃんもキライだ!俺のともだちは陽ちゃんだけでいいんだ!」
困ったことを言い始めたなぁと陽は半分呆れつつ、ちょっと可愛いやつだなとも思って微笑んでしまう。
「もう陽ちゃんなんかしらねー!」
べーっと舌を出してたけるはまたばたばたと走り去って行った。
…と思ったら閉まったはずの部屋の扉が僅かに空いており。
「…陽ちゃんキライじゃない。…ふつう」
それだけ言うと、ばたばたという足音は階下へ消えていった。
ふつう
とりあえず何か載せてみようと思って書いたので色々粗が…!!
個人的に年の離れた男の子がお兄ちゃんに懐いてるっていう関係はすごく可愛いと思って書いてみました。
いかがでしたでしょうか?
また気が向いたら加筆修正していきたい作品です。