映画『オデュッセイア』レビュー
正直に明かせば、本作を観に行く気はなかったんです。なぜ今になって神話の冒険譚を題材に?という疑問が先に立ってしまい、VFX技術をアピールすること以外に映画にする必然を見出せなかった。スパイダーマンで人気を博すトム・ホランドの起用も話題性のためとしか思えず、商業性の強い作品だと決め付けていました。観終わってからすぐに仮想クリストファー・ノーラン監督の前でひとり大反省会ですよ。オデュッセイアの目に焼き付いたトロイアの最後を物語の重しに使い、無慈悲な神々と愚かな人間たちの間で翻弄される智者の罪、その嘆きをこれでもかと大画面に叩きつける見事な手腕。神話をフィクションで解体するのではなく、そのリアルな息吹を追い求めて演出の舵を切る度胸。消費され尽くした太文字のエンタメに新たな奥行きを創り出す壮大さ。なるほど、映像技術が一つの円熟期を迎えつつある「今」だからこその神話なのかと納得させられて、思い込みで頭でっかちになっていた自分の感性がボッコボコのフルボッコになる快感に浸れました。いやぁ、ほんと素晴らしかった。マーベラス。
一部の例外を除き、ここ最近の大作に対しては風呂敷をでっかく広げて中身すっからかんの作品が少なくないと一刀両断するのがデフォルトでしたが、『オデュッセイア』を契機にその態度を悔い改めようと心に誓いました。ハリウッドはまだまだ健在です。スピルバーグ監督の『ディスクロージャー・デイ』も観に行きます。3時間超えの上映時間なんてあっという間に溶けるので、迷われてる方は是非とも劇場へ足を運んで頂きたい。傑作です。
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