ほーむしゃありんぐ ~俺と同居人との日々~
爽やかな朝と共に目覚ましが8:00を知らせる。
どうやら今日もこの時間に起床しなくてはいけないらしい
「おはようございます」
ニ階から降りてリビングへと向かうと
ルームシェアリングならぬホームシェアリング相手の
『小鳥遊 奈菜』 が制服にエプロンという姿で
朝食の準備をしていた。
「おはよう 今日も偉いね~」
「おだてても、朝食はありませんよ?」
「えっ」
「いつものことじゃないですか」
「普通、用意してあるものじゃないのか!?」
「何言ってるんですか? 制服エプロン見てニやけてる
犯罪者予備軍に挨拶交わして差し上げてる
私に対してそんな言葉づかいでよろしいのでしょうか?」
「あーいいよーだ! 自分で作るし」
「水道代とガス代がもったいないので
これでも食べてください。」
渡されたのは賞味期限昨日までの菓子パンだった
「え・・あ、うん」
「ありがたく思ってください?」
「・・・はい」
いつに無く不機嫌な気がする
どうしてなのだろうか?
「いくら休日だからといって
寝坊する人に作る朝食なんてないですからね」
「8:00だよ!? 全員集合どころか
休日の朝にしては早い方じゃないのかな!」
「さぁ?」
「だって待ち合わせが、11時に映画館前なんだぜ?
あと一時間寝てもおつりがくる!」
駅まで徒歩で20分とかからないし
駅から2駅ほどだから40分もあれば遅刻するようなことはないのだ。
「へー、11時から デート だから
今日は早起きですか? どうぞ楽しんできてください」
言葉にとげがあるように聞こえるのは
なぜだろうか、もしかして俺嫌われてる?
「そいや、今日なんで小鳥遊は制服なんだ?」
「・・・・」
「小鳥遊・・・?」
「・・・・奈菜」
無言の後に発した言葉が
小さくて聞き取ることが出来なかった
「・・・?」
「奈菜で良いって言ってるんです!」
そんな赤面して言われても・・・
「そ、そんな顔してませんから!」
「なんで! 俺の心の声が読めたの!?」
「晶くんの顔に書いてありました。」
「えっ」
「嘘です。
半年も暮らしてれば
・・・・・・・・・・こういう時何考えてるかわかります」
うん、どうやら俺は難聴なのかもしれない
「ごめん・・・聞こえなかった」
「もう知りません!
早くデートにでもなんでも行ってきてください!」
まだ時間あるのにな
「分かった分かった
菓子パンありがとな」
「結局食べたんですね ・・・・ばか」
半年前 家の都合とかでホームシェアリングすることになった
遠い血縁にあたる 「小鳥遊 奈菜」 とは幼馴染みで妹みたいな存在。
中学に上がるまではお互いに遊んだりした仲だったりしたのだが
相手の引っ越したこともあり 3年ほど前に再び連絡を取るようになり
今ではホームシェアリングをするという間柄だ。
親からは「責任は果たしなさいよ!」っとだけ言われて
この家の鍵を渡され 海外へと出張に行き
小鳥遊の両親からは「任せたぞ」と神妙な趣で頼まれ
今に至るわけだが、部屋は別 風呂も別 だけど
リビングだけは共有という
珍しい家にすんでいるわけなのだが
この後、俺たちはどうなっていくのだろうか?
五十嵐 寧々
待ち合わせの1時間以上前に家を出ると
駅の近くで知り合いにばったり出会った。
「寧々ー」
「あっ、晶 だ」
「買い物?」
「うん」
「一人で?」
「うん」
「・・・・・・」
質問には答えてくれるんだけど凄い淡泊で会話にならない。
「下着に買いに行ってた」
「いいよ! 求めてないよ! その情報は!」
「晶が困った顔してたから・・・」
俺の周りには表情から思ってる事を当てることのできる人物だらけらしい。
「ごめん、晶。 まだレースとかは恥ずかしくて無理」
「待って! 誤解だよ! そんなこともちてない!」
「おもちてない?」
しまった! 間違えてしまった
なんかここで噛むと本気でそう考えてみたいに思われてしまう。
「思ってないだよ! 俺はそもそもどういう会話なら
お互いに続けることが出来るのかな って思ってたんだよ
だから・・・・・」
「だから・・・下着の話?」
「なんでそーなるの!」
「だって、晶 必死なんだもの」
裏目に出てたのかよ。
「俺は下着の話なんてしようと思ってないし
ただ会話のキャッチボールをしたいだけだよ!」
「そうだったの。
綿100%の物が好みなのね」
どうしよう、この子とのキャッチボール
一生俺の胸元に返球される気がしないんだけど。
少し困って、携帯を開いてみると
待ち合わせの時間まで時間が迫っていることに気付いた
「悪い、俺 莉子先輩と待ち合わせがあるんだった!
またな、寧々」
「そうなの、いってらっしゃい」
僕は 五十嵐 寧々 にそう伝えて 駅前を後にして電車に乗り込むのだった。
天音 莉子
五十嵐 寧々 との会話のノ―コンキャッチボールを経て
待ち合わせの映画館までついた。
「少し早かったかな」
どうやら先輩はまだきていないらしい
周りをふらっと見渡しながら歩いていると
上段のテラスみたいになっている場所に
座っている女性がミニスカートだということが分かった。
うん、良いもの見れた。
「何見てるの~」
ふんわりとした高い声が背後から聞こえた。
この特徴ある高い声の持ち主は
学園時代の先輩 天音莉子 先輩しか該当者が居なかった。
「莉子先輩 来てたんだ」
「うん、 ところで晶くん?」
「なんでしょう?」
「レースじゃなくて残念みたいな顔してるけど
私はレースだよ?」
「なんで、みんなそこをピンポイントで推すの!
そして、乙女だったら隠せ! 恥じらいを持てよ!」
「???」
「なんでそこでポカン顔なんだよ!」
「羞恥心ならあるよ?」
「ないでしょーが!!」
「こんな大声で出してる人の隣にいる」
「恥じるとこ違いますよね!」
「???」
「だから、なんでポカン!」
「もう晶君声大きいってば!」
顔を赤く染めた先輩は可愛いけど
なぜだろう、この腑に落ちない感じは
ポップコーンや飲み物をを売店で購入して休憩したあと先輩は口を開いた
「これなら喫茶店の方が良かったね~」
「だったら映画館集合って言ったんですか!」
「ポップコーン食べたかった・・・・」
「それだけ!?」
「千と千尋の〇隠しやってると思ったのに」
「いつの時代だよ!」
「金曜ロードショーで公開するとか」
「それテレビでみるやつですよ!!」
「え!???」
「天然か!」
「よくいわれる~」
「・・・・・・もう良いです」
今朝、奈菜とは正反対に位置する人だなって
俺は思ったのだった。
ほーむしゃありんぐ ~俺と同居人との日々~