映画『時には懺悔を』レビュー


 悪徳の限りを尽くし、死んで当然と誰もが思っていた男が殺された。その事件の背景を同業の探偵たちが調査する。その過程で浮かび上がるとある親子の存在。ボロ屋に二人っきりで住み、重度の障害を負った息子のためにつきっきりで世話をする姿は完璧といえずも理想的で、隠された真実に迫るほど、誰にも真似できない唯一無二の価値をこの世に生み落とす。そこから放たれる輝きを直視できない者たちが、抱える罪を引きずって、かつて手放したものを今度こそ守ろうと懸命に足掻く構図は磔刑に処されたキリストを見捨てた弟子たちの姿に重なって見え、その過程を1秒たりとも綺麗事にしない気骨ある映像描写にひたすらぶん殴られる。ノックダウン必至の傑作。むちゃくちゃ良かったです👏🏻
 個人的に際立っていると思ったのは各場面の切り替え方。アルコールに溺れる佐竹三雄あるいは常に睡眠不足の状態にある中野聡子が意識を失うように眠り、はっと目を覚ます度にジャンプするカットは癒えない痛みによってぶつ切りにされる彼らの人生を暗に物語っていて、あっち側の泥沼に引き込まれるような没入感を生み出していました。フラッシュバックするように差し込まれる回想も肝心なところを映さない=彼らが思い出したくもない心情の表現となっており、ぽっかり開いた穴として恐ろしい吸引力を発揮していました。
 俳優陣の熱量だって半端じゃない。唾が飛び散るかのような迫力で台詞が発せられるから、理性的に観ることなんて全くできません。障害児を育てる現実を嘘偽りなく開陳する気概にも圧倒される。その全部を踏み越えて証明される愛は、アガペーからほど遠い、極めて個人的な心情だったのだからもう両手を上げて降参するしかありません。



 「彼」が辿った運命に天の配剤という言葉を重しのように乗せると果たして何が正しいのか、何が過ちなのか分からなくなる。真っ黒に汚れた手で、元いた場所から離されなければ、彼は脱水症状でとっくに死んでいた。彼女だって母親になる喜びより、母親でいることの誇らしさを覚えることもなかったでしょう。見守ることで確保できた時間は何ひとつ無駄にならなかった。過ちを犯すことで正しくなれるなんて、私たち人間は本当に罪深い。『時には懺悔を』、圧倒的な一作です。胸を張ってお勧めします。

映画『時には懺悔を』レビュー

映画『時には懺悔を』レビュー

①相当程度のネタバレを含みます。事前情報なしに鑑賞されたい方はご注意下さい。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-09-06

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