臥す
僕が風邪を引けば
君はシャツにアイロンをかける
不自然に開いた襖の隙間
その向こうで
ぴんと伸ばした背筋を見せながら
あちこちの皺を伸ばそうと
蒸気をあてて シュッとする
音を立てる
バナナの皮は枕元にあって
コップはお盆の上
頭痛を気にして
冷えたものよりは常温がいいと
用意してくれた麦茶入れに
麦茶が入っていない ただの水は
ちゃぷちゃぷとたゆたう
それを飲みたがる子供たちが
いないのだ
天井はすっかり見飽きて
頭を動かせば
ちゃぷんとする氷袋
唾を飲み込めば まだ痛い
咳はそれでも出なかった
襖の方へ寝返りを打つ
畳を顔に近づける
転倒する世界
翅を背負った蟻はいる
ふっと息を吹きかける
そうやって やっと
君はほのかに笑うのだった
臥す