zoku勇者 マザー2編・49
シーユー・アゲイン2
……アンドーナッツ博士とアップルキッドが仮設テントに
入って数時間。ジャミル達は広場を行ったり来たりしながら
只管博士の報告を待つ……。
「大丈夫かなあ~、アイシャ達……、もしも酷い事されてたら……、
オ、オイラ達が行くまで……、耐えられるかなあ~……」
「ダウド、だからなあ、悪い方に考えんなっつーんだよ!
……大丈夫だ、あいつは強い、誰よりも……、だから、きっと……、
耐えてくれる……、でも、何かあればテレパシーで声を送って
くれんのに……、何も来ねえ、それが心配なんだよ……」
「ジャミルううう……」
「そうだね……、アイシャがテレパシーで声を送ってくれれば……、
アイシャがいる居場所の特定もすぐに出来るんだろうけど……」
本当は今すぐにでもアイシャの所に飛んで行きたい。そう思うのは
ジャミルも同じだった。しかし今はどうする事も出来ない。……全てを
博士達に託し……、アイシャ達の無事を祈る事しか自分達は出来ないの
だから。
「……父さん?」
ガサガサと物音がし、アルベルトが反応した。テントの幕が開き、
博士は手に変な人形を持っている。
「博士!完成したのかっ!?……そ、それなのか?」
「ああ、この機械人形が靴の持ち主の臭いに反応し……、
アイシャ君達が連れて行かれた場所をすぐに教えてくれたよ……」
「はや~、何だか分かんないけど、すごいんだねえ~……」
「教えてくれっ!す、すぐにっ!」
「まさか、またスペーストンネルで移動しないと行けない
場所なんですか……?」
「アルベルトもまあ、落ち着きなさい……、場所だが……」
博士の報告にジャミル達が息を飲んだ……。
……そして、拉致られたアイシャ。地底大陸のとある場所に
連れて来られていた。テレパシーで何回か……、ジャミル達に
声を送って呼び掛けてみたのだが……、原因は不明だがどうしても
声を送れなくなってしまっていた……。
「よう、ブス!お前まーた捕まったな!何回目だよこれで!ははは、
いいザマだなあー!」
ポーキーはアイシャに悪態を飛ばす。しかし、彼女は怯まず
ポーキーに立ち向かう。
「うるさいのっ!アンタには関係ないわよっ!も、もう……、
ほっといて欲しいわっ!それよりどうして?今回は私を特に
縛り付けたりしないのね……」
「ふん、お前は逃げないって分かってるからさ、絶対にさ、
これを見たらさあ~……」
ポーキーはごそごそとポケットを探るとある物を取り出し、
アイシャの前に付き付けた。
「何よ、それ……」
「ハン、お前は知らなかったんだな、今、サターンバレーには
一匹もあのうざったらしいモグラ野郎はいないんだぜ、どうしてか
分るか……?」
「モグラ野郎って……、どせいさんの事……?……アンタまさか……、
ど、どせいさん達に何かしたのっ!?ねえっ!」
「ちょっ!……このブスっ!気安く触るなっ!」
「きゃあっ!」
ポーキーは自分に掴み掛ろうとしたアイシャを引っ叩き
無理矢理払いのけた。
「静かに聞けよ、このカプセルはな、あのハゲ爺が発明したモン
らしい、しかも本人に言わせれば失敗作だってよ、笑っちまうだろ、
元々ゴキ野郎を何億匹も捕獲出来る容器だったらしい、それがな、
何と……、モグラ野郎を捕獲するカプセルを作っちまったんだと!
ぎゃーっはっはっは!な、おかしいだろう!!」
「……」
アイシャはポーキーを睨みつけた。昨夜自分を気絶させ、
拉致った後、彼が何を行ったか漸く理解した様だった。
「おい、ブス……、あんだよ、その顔は……、笑えよ、おかしいだろ?
……笑えって言ってるんだよおおお!!」
「あっ!?」
ポーキーはアイシャの顎を強く掴む。思い切り力を込めて。
「……い、いた……」
「どうだい?痛いだろ?このまま大人しく言う事聞かないと……、
顎の骨折っちまうぞ~?……どうだ、泣き叫べよお~、ブス!
ブスブスブス!!」
「何よ、……泣かないわよ、あんたなんか全然平気だもん……」
ポーキーは気丈に振舞うアイシャの様子を見、激怒した様子。
更にアイシャの顎を掴む手に力を込めた。
「お前、いつまでお姫様気取りなんだよ、どうせあの糞連中が
助けに来てくれるから平気……とか、まーだ思ってんじゃね?
……甘いんだよォ!!」
「……っ!」
ポーキーは漸くアイシャの顎から手を離したが、そのまま身体を
突き飛ばし転ばせる。転がり膝を擦りむいて痛みを堪えている
アイシャをポーキーは更にコケにするのであった。
「ぎゃーはははは!ブスの末路だ!ざまあねえなあ!」
「何とでも言いなさいよ、……私はこんなの全然平気なんだから……」
それでも尚もへこたれないアイシャ。ポーキーは全然屈しない
彼女を見、等々怒りが爆発した……。
「なら、これならどうだよ?このカプセルさ、どうすると思う……?
この糞モグラが詰まってるカプセルだよ、これをさあ~、この下の
崖に捨ててやろうか?……それともおお~?ん?ん?ん~?何なら
ぼくと戦うか?掛って来るか?PSI使ってさ、唯、ぼくを傷つけ
ようとしたその暁には代償としてこいつをどうするか分るか?
どうとでもなるんだぜ?何せぼくもPSIが使える様になったからな!
近寄って来てみな、すぐにこんな物一撃で破壊してやるからさあ!」
「……ポ、ポーキーっ!そ、それだけはっ!……やめるのよーーっ!!」
ポーキーは漸く焦り出したアイシャを見、にやりと笑った。
「返して欲しいか?こんなゴミ……、んーっ?んーっ!?
返して下さい、お願いします、かっこいいポーキー様って
言えオラーーっ!」
「お願い……、やめて……、お願いだから……、やめて……」
今まで健気に……、気丈に強く振舞っていたアイシャの目から
涙が一滴。等々零れた。どせいさん達を人質に取られている今、
卑劣な手に脅され……、戦って取り返す事も出来ず……。
「よし、なあぼくだって悪魔じゃないんだからさあ~、キシシ……、
そうだなあ、よし、こういうのはどうだ?お前ブス過ぎて嫁の
貰い手ないんだろう?……ならぼくが貰ってやるよ、お前はぼくの
お嫁さんになるんだ」
「なんですって……?」
「お前がぼくの嫁さんになれって言ったんだよ……、そうしたら
このカプセルは返してやるよ?どうだ?嫌なんて言えないだろ?
……もうお前に断る権利はないんだからな……」
ポーキーは今一度カプセルを崖に捨てる仕草を見せ、アイシャに
恐怖を与えた。
「……分ったわ……、あなたのお嫁さんになります、……それで
いいのね?」
「キヒヒ!言ったなあーー!よし、契約成立っ!結婚式だっ!
新婚旅行だーっ!おい、もうすぐあの連中も来るんだろう?
……わざわざお前を助けにさ、まーったく暇な奴らだよなあ~、
はん!……おい、あの馬鹿連中が来たら自分できちんと言えよ、
私はもうアンタ達の所には戻りませんてなあ!……お前だけは
生かしといてやろうと思ったんだからなぁ~……」
アイシャはポーキーの手にしっかりと握られているカプセルを見た。
自分の行動がどせいさん達の命を握っているのだと思うとやるせない
気持ちになった……。
「お、ま、え、……なんか……、もういく所も帰る場所もないのさ……、
ぼくの所以外はな、……さあ来いよっ!……何だよ、そのしょげた
ブス顔は!きちんと返事しろ!ポーキー様ってなあ!!」
「はい、……ポーキー……、さま……」
「キシシキシシ!あーーっ!何てすがすがしいんだよォーー!
今日はさあーー!!」
(ジャミル、アル、ダウド……、おじいちゃん……、私、もう皆の
所へ帰れません、……ごめんなさい……)
再び流れて来そうになった涙を堪え、とぼとぼと……、
アイシャはポーキーの後を付いていくのだった……。
……
「地底大陸の……、現在の時代の……最底国に当る場所だと?」
「うむ、そこにアイシャ君達は連れて行かれた様だ……」
「僕らがスペーストンネルで飛んだ場所だけど、其処は人の
力じゃいけない深い地の奥の……裏の場所だったね、今度は
表の場所なのか……」
「普通に行ける場所なら今すぐ行こうよお!流石に今回は
オイラはもうポーキーを絶対許せないよお!!」
「ああ、ダウド、俺も腸がスゲー煮え繰り返ってらあ、
……冗談じゃねえよ!」
「行こう!アイシャとどせいさん達を助けに……!」
「……すぐに目的地の場所に辿り着ける、新型のスペーストンネルを
作った、今までのスペーストンネルとは違うタイプのだ、過去や未来を
移動する様な型の物ではなく、まあ、今回はテレポート型のロケット……、
みたいな乗り物と思ってくれていい、行先はインプットしてある、直ぐに
目的地に辿り着ける筈だ……、乗っておくれ……」
博士は機械に掛けてあったビニールシートを取り外す。
「おおっ!こりゃ助かるよ、博士っ!」
「うむ、……元はと言えば、こうなった責任の大半は私に
あるのだから……、……もうすぐ君達を故郷に返してやれると
いう時に……、本当にすまぬ……」
「全くです、父さん、本当に少しは反省して下さい……、
じゃないと、近い将来は糖尿病死か老人介護施設行き
待ったなしですよ!」
「うっ……、あ、相変わらずはっきり言うな、お前は……、とにかく……、
子供達よ、どうか……、無事で……、それと、後もう一つ……」
「ん?何だこれ」
博士はジャミルに近寄り、ある物をジャミルに手渡した。
「どせいさんホイホイカプセル解除の薬だ、……これをカプセルに
掛ければ……、中に閉じ込められているどせいさん達を救う事が
出来る筈だ……」
「……ああ、サンキュー、博士!」
「けど、それ使ったら物凄い数のどせいさん大量になるんじゃ……、
だってさあ、……サターンバレー中のどせいさんを拉致したんで
しょお~?」
「いいんだっ!今はんな事考えんのは後だっての、ダウドっ!」
「……ん~、結構重大な問題だと思うんだけどなあ~……」
「はあ、またまさかこの言葉を言わなきゃならない時が来るなんて……、
ジャミル君達、……どうかご無事で!!」
「戻ったら今度こそ凱旋パーティなのである!……皆、気をつけるのだーっ!」
博士達に見送られ、ジャミル達はスペーストンネルに三度乗り込む。
……アイシャとどせいさん達を救うため……。待ち構える本当に最後の
ポーキーとの対決の地へ。
ひひひ、糞バカ共~、来るなら来てみろよお~、……お前らは
今度こそ終わりだあ~……
「着いたっ!」
スペーストンネル号外号は漸く現代の最底国、表面へと到着。
見た目は過去の最底国となんら変わりはないのだが、場所が
とにかく狭く移動出来る場所も限られている。
ジャミルが一番最初にスペーストンネルから飛び降りた。
続けてアルベルト、最後にダウド。
「……ポーキーっ!何処だーっ!畜生!アイシャ達を返せーーっ!!」
ジャミルが大声で叫ぶが、何の反応もあらず……。
「ね、ねえ……、先に進めそうな道なんか全然見当たらないし……、
……目の前は崖だしさあ……、本当に此処にポーキーがいるの?
罠なんじゃない?オイラ達、嵌められたんじゃ……」
段々と不安になってきたのか、ダウドの声がか細くなった。
「ダウド、父さんの作った変な機械は確かに此処に反応したんだ、
不安かも知れないけど、……父さんを……、博士を信じてあげて欲しい……」
「アル、……分ったよお……」
「……ええ、間違ってないわ……、私は此処にいるわ……」
「アイシャっ!無事だったんだな!」
「良かった!」
「け、怪我はない!?」
突然……、おかしなオブジェ、タコの足の様な物の影から
アイシャが姿を現す。……しかし、ジャミルはまたアイシャの
顔が曇っている事にすぐに気づいた。
(あいつ、まーた……、俺らに隠し事して独りで悩んでやがる……、
たく、何回言ったら……)
「……お願い皆、もう帰って……、此処にいたら……、私……」
……あのブスっ!私はポーキー様のお嫁さんになるのっ!
だからあなた達の所には戻らないのよ~……って、何で
ちゃんと言わないっ!ブスめっ!
PSIを使い姿を消し……、こっそり様子を覗っているポーキー。
……手に持っているどせいさん達が閉じ込められているカプセルを
握りしめる手に力が入った。
「お願い、もう私に何も聞かないでっ!私は大丈夫だから!
黙ってこのまま……、皆戻って!お願いっ!!……じゃないと、
私……」
「アイシャ……?な、何言って……」
「そうだよお!オイラ達、折角アイシャを助けに来たのに!
何でそんな事……」
「もうお願い……、これ以上……」
「い・や・だ・ね!」
「……ジャミル」
やはりと言うか、……ジャミルはアイシャの言葉を拒絶し、
拒否した。
「おい、お前あのブタに脅されてんだろ?……何揺さぶられてるか
知んねえけどお前の不安そうな顔に、お約束な態度見りゃすーぐ
分んだっつーの!たく……、けど、何が何でも俺らは帰んねえぞ!
絶対にっ!お前を助けて、あの糞豚に仕置きする!……激安肉特価品
ポークソテーにしてやるっ!!」
「アイシャ、そうなのかい……?」
「ア、アイシャあ~……」
「……アル、ダウド……、やめて……」
アルベルトもダウドも。自分を心配して命懸けで此処まで
迎えに来てくれた。出来る事なら今すぐに皆の所に戻りたい、
……帰りたい。けれど、ポーキーに捕まっているどせいさん達。
自分が今この場で戻ってしまったら……。そう考えるとどうしても
自分は皆の元に戻る事が出来ない。
「……何がなんでも……、俺は無理矢理にでもお前を連れて帰るっ!」
「ジャミルっ!やめて、おねが……」
等々、ジャミルがアイシャに向かって前に進み、アイシャの元に
歩き出した。
……よし、掛ったっ!……サイマグネット……、地獄級……、
発動だあ~!!
「……?な、何だ、この嫌な感じ……、う、ううっ!」
「ジャミル……?」
突然ジャミルが胸を抑えてしゃがみ込む……。何か異変が
起きているらしかった。
「……ぼ、僕もだ……、急に……、身体が……、おかしい……」
「力が……、何だか抜けて行く様な……、変だよおお~……」
「アルっ、ダウドっ!」
アルベルトもダウドも……、明らかに様子がおかしくなっており、
苦しんでいる。……アイシャは堪らなくなり、仲間の元へ掛け
寄ろうとする……。
「……けーっけっけっ!バカ共!遂に捕獲っ!!」
「ポーキーっ!あっ!?」
今まで隠れていたポーキー、遂に姿を現す。ポーキーは
アイシャの背後に回るとアイシャの身体を抑え付けると
羽交い締めにする……。
「罠に掛ったな、……ブタ共っ!」
「う、うるせ……、……ポーキーっ!テメエ、アイシャから
手を放せってんだよっ!」
ジャミルは全身から力が抜けて行くにも係らず、どうにか声を
振り絞るとポーキーに向け罵声を飛ばした……。
「ジャミル、……アル、ダウド……、お願い、逃げ……て……」
「おい、ブス、この際だから教えてやるよ、ぼくは善人者なんだ、
そもそも最初から糞モグラ達を殺す気なんかぼくにはないのさ!」
「何……ですって……?」
「ハン!お前と一緒に捕まえて糞野郎どもをおびき出す餌でも
あったし、そうだなあ、事が終わったらポーキー様エライ帝国を
作るんだ!糞モグラ共を奴隷にしてな!そしてお前はこのぼくの
嫁さん、お妃になるって訳さ!」
「……ポーキー、あなた……、うっ!」
ポーキーはアイシャを羽交い締めする腕に更にぐぐっと力を込めた。
そしてどせいさんが入っているカプセルを片方の手で楽しそうに
ポンポンと宙に投げて遊んでいる。
「な~る、やっと理解したよ、そう言う訳だったか……」
ジャミルが憎々しげにポーキーを睨んだ。アイシャがジャミル達を
拒絶したのもやはり、奴に脅されていたのだと理解し、……少し
安心した。
「しかし、ブスも馬鹿だなあ~、こんなモンの為にさあ~、何で
命張れるんだかなあ~、ぼくには全く理解出来ないなあ~!」
「ポーキー……、アンタだけはっ!も、もう……絶対にっ!」
「あ、……あーーーーー!!」
「……ゆるふぁはひんだふらーーっ!」
アイシャが怒りを込め、自分を捕まえているポーキーの腕に噛み付く。
ポーキーは焦りどせいさん達が入っているカプセルを地面に落とした。
カプセルはコロコロと……、地面を転がる。
「……お願いっ!みんなっ!そのカプセルの中に……、どせいさん達がっ!!
カプセルを……、拾ってーーっ!!」
「……くそ、アイシャっ……、っ……」
カプセルはジャミル達のすぐ側まで転がって来た……。手を伸ばせば
届く距離……。しかし、ポーキーの凶悪サイマグネットにより……、
ジャミル達はPPを奪われたどころか身体の自由さえも奪われて
しまい真面に動く事が出来ず……。
「このっ……、ブスめっ!よくもやりやがったな!死ねーーっ!
このクソアマッ!!……ブスブスブスっ!!」
「……きゃああーーっ!!」
怒りに駆られたポーキーは我を忘れ、自由の訊く片方の手で
アイシャを思い切り、……頭、顔を……、バシバシ叩き捲る……。
「やめろーーっ!……ポーキーーっ!!」
「くっ、酷いよおおお!あいつ、もうアイシャの事……、お、
女の子とも……、何とも……」
「このままじゃ……、アイシャが……、は、早く助けないとっ!」
「お前なんかあああーーっ!……マジで死んじまえーーっ!!」
アルベルトもダウドも……、どうにかしてアイシャを助けに
今すぐに飛び出して行きたい想いに駆られるが……。目の前で
しこたま叩かれ、それでも必死に堪えているアイシャを見……、
怒りで悔しくて体が震える……。しかし、身体は動かずどうする
事も出来ない……。
(……どうすりゃいいんだよ、このままじゃ本当に……っ!
……俺、アイシャを守れねえのか……?男として……、目の前で
泣いてる……、苦しんでる……、好きな奴も碌に守れねえで……、
最悪なクズとして終わんのか……?嫌だ、嫌だよ……)
どうする事も出来ず……、ジャミルが悔しくて歯噛みする……。
その時……。
……ます……
(……?こ、この声……)
『ぷう~。わしらです。どせいさんたち、です。』
『ぼくらのちからも、ないしょ。むげんだい。かぷせるのなかから。
じゃみるくんとおはなし。ぷう。』
……カプセルの中からか細いが、微かにジャミルの心に
聞こえてきた声。どせいさん達が力を使ってジャミルに
声を届けているらしかった。
「あんたら……、大丈夫なのか……?」
『どうにか。……わしらもあいしゃさん、たすけたい。』
『あのぶた。ゆるせない。』
『あいしゃさんいじめる。……わしら。とても……、おこってます。』
『ぶーぶー!』
(は、はは……)
あまり切れている様には感じないが……、それでも彼らなりの
ポーキーに対する静かな怒り……。ジャミルはどせいさん達の
アイシャを思ってくれる心からの気持ちを感じ取り……、とても
嬉しくなるのだった。
(……でも、駄目だ、駄目なんだよ……)
『ぷう。』
(動きたくても……、急に体の自由が利かなくなっちまって……、
動けねえんだ……、アンタらをカプセルからすぐに解除出来る
薬は博士から預かってる、……でも……)
『じゃみるくん。どうにかして、わしらをここから、だして。』
『いま、くすり、どうにかがんばって。ぼくらにかけて。』
(え、ええええ……!)
『わしらをしんじて。』
『おねがいます。』
ジャミルは焦る……。どせいさん達は……、自分達が閉じこめられて
いるカプセルからすぐに救出してくれと訴えている……。しかし、
こんな所で……、今カプセルを解除したら……、どせいさんだらけで
やっぱりさぞかしエライ事になっちまうじゃねえか……と、ジャミルは
思う。
けど、それ使ったら物凄い数のどせいさん大量になるんじゃ……、
だってさあ、……サターンバレー中のどせいさんを拉致したんで
しょお~?
「……」
此処に来る前にダウドが言った言葉が脳裏に浮かぶ。確かに
あの時はジャミルもんな事考えんのは後でいいんだっ!……とは、
言ったが……。
「……はあ、はあ、どうだ?……このブス、い、いたい……、お前
石頭だな、くそっ!ぼくの手がっ!こんなに赤くなっちまったよ
おおおーーー!畜生おおおーーー!!」
ポーキーは尚も懲りず……、アイシャに又も手を振り上げた……。
(くっ、……畜生ーーーっ!俺の身体っ、どうにか動けぇーーーっ!)
ジャミルが怒りを込め心で叫ぶ。……奇跡が起こった。
動かない筈の右手がどうにか少しだけ……、力が入る様になり……。
ジャミルは必死で右手を動かしズボンのポケットを探る。
「もうどうにでもなれーーっ!……くそったれええーーっ!!」
ジャミルは最後の力を振り絞り、どせいさん達が閉じこめられている
カプセルへ向け……カプセル解除の薬を思い切りほおり投げた。自分達を
信じてくれと言う……どせいさん達の言葉を信じて。
zoku勇者 マザー2編・49