部屋

 目が慣れるまでいくらか時間がかかった。真っ暗な部屋。中央に大きなスクリーンが吊るされていた。一歩踏み出すと待ちかねたように装置が作動し、映写が始まった。
 隣に誰かの気配がした。恐る恐るそちらに目を向けると、顔のない父が座っていた。ゆっくりと立ち上がると、私の前を横切り部屋から出て行った。呼吸だけを聞いていた。遠くで踏切の音がした。携帯が震えて我に返った。
「もしもし。今どこにいるの?」
「どこだろう。分からないけど、すぐ帰る」私の声は不思議に遠くから聞こえてくるような感じだった。
「大丈夫? なんだか周りで変な音が鳴っているみたい」
「うん。大丈夫」
 ひどく喉が乾いていた。

部屋

部屋

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-08-17

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