部屋
目が慣れるまでいくらか時間がかかった。真っ暗な部屋。中央に大きなスクリーンが吊るされていた。一歩踏み出すと待ちかねたように装置が作動し、映写が始まった。
隣に誰かの気配がした。恐る恐るそちらに目を向けると、顔のない父が座っていた。ゆっくりと立ち上がると、私の前を横切り部屋から出て行った。呼吸だけを聞いていた。遠くで踏切の音がした。携帯が震えて我に返った。
「もしもし。今どこにいるの?」
「どこだろう。分からないけど、すぐ帰る」私の声は不思議に遠くから聞こえてくるような感じだった。
「大丈夫? なんだか周りで変な音が鳴っているみたい」
「うん。大丈夫」
ひどく喉が乾いていた。
部屋