姉と私
真夜中に目が覚めてしまったときに急に考えついた物語です。
本文の内容にはやや極端な考え方が含まれていますが、これは、その考え方を押し付けたり、この物語のテーマである「恋愛」について否定したいというわけではありません。ただ、主人公の人物像や主人公の姉との会話を引き立たせるために、私が以前、友達から聞いた考えをやや極端なものにして書きました。
まだまだ未熟な部分が多い作品だとは思いますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。
姉と私は5歳離れた姉妹である。仲はいい。しかし、性格は真反対である。
昼寝から目を覚ますと、時刻は土曜日の午後4時だった。少し眠るつもりが、3時間も眠ってしまった。姉(名前は陽菜という)は私が目を覚ましたことに気づくと、漫画を読みながら話しかけてきた。
「ねえ、紗夜。あんた好きな人とかいないのー。」
「いないよ。何で陽菜はいっつもそういうことばっかり聞くの。いつもいないって言ってるでしょ。」
度々される質問に呆れながら私は適当に答えた。
姉は明るくて呑気な性格である。部活は女子バレー部で、オシャレや可愛いものに目がない。いわゆる「陽キャ」に該当する感じの性格をしている。だから学校では結構モテているらしい。もちろん、女友達も多く、休日はよく出かけている。
「なんだよー。つまんないなー。」
いつもの姉の会話パターンである。私に好きな人がいないのか尋ね、いつも通り「いない」と返される。それに対して「なんだよー。つまんないなー。」と返す。
「彼氏できると楽しいよ?」
「いらないよ、そんなの。」
「え、なんで?」
これもいつもの会話パターンである。
「だって、確かに私の周りに付き合っている人はいるよ。でも、大体長続きしてないよ。持って3カ月、持たなくて付き合った当日。そんな短い期間だけのためにわざわざ限られた時間を費やす気はないよ。」
「わかってないな、紗夜は。」
私は彼氏をつくることに対しては(少なくとも中学生のうちに彼氏をつくることに対しては)、誰に何と言われようと反対派である。確かに、その理由の1つとして、どうせ関係は長続きしないのにわざわざ恋愛に時間を費やしたくないと思うというのはある。しかし、私にはもっと大きな理由がある。
私は姉に言い返した。
「だってさ、恋愛の延長線上に結婚があるわけでしょ。うちのお父さんとお母さんを見てみなよ。昔は普通に彼氏・彼女の関係で楽しく恋愛していたのかもしれないけど、今なんか毎日のように喧嘩してるじゃん。喧嘩ばっかりじゃん。それって幸せなの?私はそんなのごめんだね。」
「何かちょっと、考え方が極端じゃない?結婚と恋愛はそんなに近いものじゃないよ。恋愛の延長線上に結婚があるっていうのも間違いではないけど、全部が全部そうっていうわけじゃない。結婚までいかずに恋愛でストップする恋愛だってある。」
姉は先ほどのだらんとした呑気な顔よりは少し大人びた顔つきになって言った。
「それにね、やっぱり恋愛っていうのは大人になるうえで割と重要な役割を果たすと思うよ。」
「例えば?」
私は納得いかずに尋ねた。
「例を挙げろって言われたら難しいけど、でも、この世の中の歌なんて、半分以上ラブソングでしょ。ってことは、それだけ恋愛っていうのは人に影響を与えるものなんじゃないの。」
呑気な姉には珍しく、真面目な顔つきでそれらしいことを言った。
「それにね、例え長続きしなくったって楽しいものなんだよ、やっぱり恋愛は。」
楽しいのは、「恋愛」というより「愛情」の関係を持って付き合っている人だけなんじゃないの、となんとなく心の中で思った。
姉は続けた。
「あの独特の感情の駆け引きとか、そのドキドキとほんの少しのワクワクとか、胸がギュッて締め付けられるあの感じとか、体験してみないと分かんないよ。紗夜には嫌なことのように聞こえるのかもしれないけど、やっぱり一度は体験してみるべきだと思うな。上手く言葉にできないけど、やっぱりいいんだよ、恋愛は。ほら、『タイタニック』に出てくるような、あんな情熱的な感情になるって中々ないよ。やっぱり、そういうのって、一生に一度は経験してみたいと思わない?恋愛をしなきゃ、一生経ったって経験できないと思うよ。まあ、そもそもあのレベルの情熱的な恋愛は中々ないけどさ。」
「ふうん。」と私は言った。最近の姉の中では最も真面目でそれらしい回答だったと思う。今日はなんだか姉は冴えているようだ。逆に、どうしたのかな、と思ってしまうくらいだった。普段なら、「だからとにかくいいんだよ!」「もー。なんでそんなに恋愛に対して他人事なの?」と、恋愛をする価値が全く伝わってこないことを言って終わるのだ。
「何なの、「ふうん。」って。私結構頑張って説明してたと思わない?なんか悲しいんだけど。」
私は無視した。やっぱり、恋愛には価値を感じられない。姉の言うこともよく分からない。だから「ふうん」なのだ。
「やっぱ納得してもらえなかったかあ。いいんものなんだけどな、本当に。」
姉は残念そうに言った。
「まあいいや。紗夜も好きな人ができれば絶対わかるさ。私の言ったことが。」
姉はいつもの呑気モードになって言った。「好きな人なんて絶対できないと思うけどな。」という私の返事は心にしまっておくことにした。
ふと時計をみると時刻は午後4時半を過ぎたところだった。姉は「ちょっと麦茶飲んでくるー。」と言って1階へ降りていくと、部屋には私一人になった。急に静かになった部屋で、天井をなんとなく見上げた。やっぱり恋愛なんてものはどうでもいい。でも、恋愛なんかでなくても、誰かに思いを巡らせる―そのこと自体は別に悪くはないかもしれない。階下から聞こえる氷の音を聞きながら、私はなぜか、ふと思った。
姉と私