映画『ブルーロック』レビュー
序盤から中盤にかけては正直、物足りない印象でした。特に動きの面で不満を感じてしまうんです。サッカーのリアルに寄せた演技というフィルターがどうしても拭えなくて、原作にある熱さに近付けない。実写化の意味を見出せるのは櫻井海音さん演じる蜂楽廻ぐらいで、東京ヴェルディのジュニアユースに所属していた経歴に相応しいスキルと演技のハイブリッドで映像を磨き上げてくれる。あとはもう窪田正孝さん演じる絵心甚八が漫画から飛び出てきたような存在感を放っているので、彼らをよすがにどうにかスクリーンにしがみついて鑑賞していました。
そんなどこか晴れないモヤモヤを見事に吹き飛ばしてくれたのが&TEAMのKさん演じる凪誠士郎です。彼が登場してからの『ブルーロック』は文字どおりに化ける。やる気のない天才が繰り出すサッカーはサッカーであって、サッカーでないクオリティ。現実の試合ではまず目にすることができない異次元のプレーがいい感じにフィクションの要素を強め、演技するサッカーの歯車とがっちり噛み合う。1秒たりとも違和感を覚える瞬間がない。フィールド上のやり取りが熱を帯びて、どんどん前のめりになります。そんな劇中のボルテージの高まりを受けて覚醒する高橋文哉さんがマジで潔世一。圧倒的な壁として立ち塞がるライバルを前にして顔が、語調がギラついていきます。
「うるせぇよ天才。いま良いとこなんだ、黙ってろよ」
原作でも震えたこの台詞をあの表情で観れた時、全ての不満が一気に解消されて潔世一の世界は始まる。俺が、俺が、俺がとステップを段飛ばしで駆け上がっていくエゴイストの誕生が最後のピースとなって映画、『ブルーロック』の狼煙は上がります。ほんと観終わってからが本番って感じで、続きをすぐに観たくなるのは最高のプロモーションになっていますね。新キャラの前ふりも無事に済んでいた所から察するに、続編は必ずあると踏んでいます。
原作を知らない方からすれば、本作に対してスポーツ版のイケパラみたいなレッテルを貼ってしまうかもしれませんが、蠱毒に見立てたイカれた施設でヒーローが奮い立つ様にぶち上がれること間違いなしの良作です。興味がある方は是非、劇場へ足を運んでみて欲しい。原作も面白いので、そちらにも手を出してくれればと思います。
映画『ブルーロック』レビュー