霊能探偵・芥川九郎のZファイル(7)【日間賀島の海坊主編】
第1章 金鯱学園のお受験
霊能探偵・芥川九郎は、事務所で幸子に勉強を教えていた。彼の事務所は中区にあって立地はよいが、古びたビルの一室に過ぎない。
幸子「問題文の意味が分かんない。」
福家幸子は、芥川が栄で見つけて事務所に連れてきた座敷童子である。
芥川「分からないなら、図を描いてみるといいよ。」
幸子「自動車は・・・時速40kmで・・・?」
芥川「1時間に40km進むんだよ。」
そこへ芥川の相棒・牧田マリアがやって来た。
マリア「こんにちは、おじゃまします。あれっ?サッちゃんが芥川先生とお勉強してる!」
芥川「マリアさんか。こんにちは。サッちゃんのお受験のために今、算数の勉強をしているんだよ。」
幸子「分かんない・・・」
マリア「お受験って・・・座敷童子のサッちゃんに中学受験をさせるつもりですか?」
芥川「うん。金鯱学園を受験させるんだ。最近、『2月の下剋上』というドラマを見てね。僕はものすごく感動したんだ。」
マリア「そうですか・・・まぁ、勉強するのは良いことですけど。」
第2章 日間賀島の海坊主
芥川はマリアに言った。
芥川「能年君が今朝、淹れてくれたコーヒーが残っているから飲むといいよ。」
マリア「ありがとうございます。」
能年は鎧の妖怪である。芥川の助手として、彼の事務所に住み込みで働いている。
芥川「今日は特に、お客さんが来る予定はなかったと思うけど・・・」
マリアはイスに座り、熱いコーヒーをすすってから言った。
マリア「今日ではありませんが、日間賀島へ出張することになると思います。」
芥川「日間賀島で何かあったのかな?」
マリア「海水浴場で海坊主が目撃されたそうです。」
芥川「海坊主?その人はサメかイルカを見て、動転して海坊主と勘違いしたんじゃないかな・・・でも、まぁ、久しぶりに海水浴に行けるぞ!さっそく明日、行って調査しよう。」
それを聞いて、幸子が喜んで言った。
幸子「やったー!みんなで海に行くんだね。」
芥川「サッちゃんは事務所でお留守番だよ。勉強がちっとも進んでないじゃないか。」
幸子「・・・・・・」
幸子は目に涙を浮かべている。
マリア「芥川先生!サッちゃんがかわいそうですよ。」
芥川「・・・・・・」
第3章 日間賀島の海水浴場へ!
芥川は肩をすくめて言った。
芥川「しょうがないなぁ。能年君は海に入れないから、代わりにサッちゃんを連れて行くか。」
幸子「やったー!パパ、ありがとう。」
ちなみに、芥川は幸子にパパと呼ばせている。
マリア「能年さんは鎧の妖怪だから、泳げないんですね。」
芥川「うん。それに海水で体が錆びてしまうと思うよ。」
部屋の隅でイスに座っている能年(鎧)は、芥川の言葉にコクッコクッと2回、大きく頷いた。
芥川「マリアさん。悪いけど、サッちゃんの水着を買っておいてくれないかな?」
マリア「分かりました。芥川先生の水着はあるんですか?」
芥川「昔買った短パン型のやつがあるから大丈夫だよ。」
マリア「あぁ、サーフパンツのことですね。」
こうして芥川、マリアと幸子は翌日、日間賀島の海水浴場へ向かった。マリアの運転する車は名古屋高速から知多半島道路へ入り、そのまま南知多道路を走り続けた。
芥川「マリアさんは運転がうまいねぇ。」
マリア「ありがとうございます。芥川先生の免許はまだ失効中ですか?」
芥川「うん。自動車学校に通わないといけないからね。なかなか大変だよ。」
芥川は狂気の霊能探偵・夢野長政との死闘の末に、夢野の送還魔法によって魔界へ落とされ、5年間魔界をさまようこととなった。彼は魔界から帰還することができたのだが、驚くべきことに人間界では30年もの月日が流れていたのだ。車の免許はもちろん失効してしまった。
第4章 海坊主との死闘
マリアの車は豊丘ICを降りてから、しばらく走り続けた。やがてフェリー乗り場がある師崎港に到着した。三人は駐車場で車を降りると、そこから高速船に乗って日間賀島に上陸した。
マリア「ようやく日間賀島に着きましたね。」
幸子「やっと海に入れるね!」
芥川「僕は下にサーフパンツを履いてきたから、服を脱いでそのまま海水浴場へ向かうよ。」
マリア「分かりました。先生の服は私の荷物と一緒に、まとめてコインロッカーに入れておきます。私はサッちゃんと更衣室で水着に着替えてから、ビーチで待機しています。」
芥川はビーチに着くと、さっそく海に入った。
芥川「ハハハッ。気持ちいいなぁ。さてと・・・」
芥川は海坊主の妖気を探知しながら、海辺を泳ぎ続けた。
芥川「確かに、近くに何かいるなぁ。結構、強力な妖気を感じる・・・」
その瞬間、芥川は何者かに足をつかまれて、海の中へ引きずり込まれた。
芥川「ウワァーーー!!ブクブクブクブク・・・」
海中には数メートルの海坊主がいた。
芥川(海坊主にしては小さい・・・水中では物理攻撃は効かないし、魔法の威力も半減だ・・・)
芥川は海坊主に向かって破邪の法術を使った。聖なる光が海坊主の急所を貫通した。
海坊主「ウボォアーーーー!!!」
第5章 座敷童子の処世術
芥川は、海の底から響いてくる海坊主の断末魔の叫び声を聞きながら海面へ浮上した。
芥川「ブハァアーーーー!!!」
芥川は力なく、ビーチの浅瀬までゆっくり泳いでいった。
芥川「危なかった・・・日間賀島の海水浴場で溺死するところだった。」
そこへ水着に着替えた幸子がやって来た。
幸子「パパ、大丈夫?マリアお姉さんも水着に着替えて、向こうで待ってるよ。」
芥川「海坊主は退治したよ。でも、海の中で戦っている最中に、海パンが脱げてどこかへ流れていってしまった。サッちゃん。マリアさんにこのことを伝えてくれないかな?」
幸子は思案気な表情で芥川に答えた。
幸子「いいけど・・・代わりに、私のお願いを聞いてほしいの。私、お受験したくない!」
芥川「・・・サッちゃんのお受験とパパの海パンは、全然関係ないだろう!?」
幸子「じゃあ、パパのことなんて、もう知らないもん・・・」
幸子は本当に、芥川を見捨てて立ち去る素振りをした。
芥川「ちょっと待って!サッちゃん。分かったよ。お受験はやめよう!」
幸子「うん!パパ、ありがとう!!」
幸子はうれしそうに、ビーチで待つマリアのもとへ駆けていった。
芥川「やれやれ。算数はできないくせに、やけに計算高い座敷童子だ・・・」
芥川は海の中から呆然と、ビーチの砂浜を眺めたいた。
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