箱庭世界ーカーディリア
プロローグ
【私Side】
とある病室
その部屋の壁はただひたすらに白く汚れは一切見つからない
綺麗な部屋であった
部屋に入った者は窓から差し込む日差しの反射する光に目を細める事だろう
その部屋は縦は2m程
横は5m程の正方形の部屋で
部屋の突き当たりにある大きな窓の手前には少し大きめのーとは言っても2m程だがーベッドが置かれていた
そのベットの横には物々しさを感じさせる大きな機械が置いてあった
その機械の上についている液晶にはジグザグとした線が画面を左から右へと脈動するかの様に流れてる
画面右下に書いてある数字は時折減ったり増えたりしてせわしなく動いている
ベットに視線を戻すと上半身を起こし窓の外を眺めていた10代半ば程の少年が見えた
どうやら今は調子が悪くないようで"彼"の顔にいつもの様な苦痛に耐える表情はなかった
私はベッドの方に歩いて行く
その足音でやっと気がついたのだろうか
窓の外を眺めていた"彼"はゆっくりとこちら顔を向けた
その髪は見ていると吸い込まれそうになる様な黒
まるで黒曜石のような黒
窓から刺す光を反射しているのが綺麗だ
瞳も髪と同じ黒
深い海底の様に光を吸い込むようで、見つめられれば目を話せなくなるだろう
髪は長い間切られていないのか
肩甲骨のあたりまで伸びている
鼻筋はくっきりとしていて
"彼"や私の民族の特徴である平たく鼻の頭が丸まっているなどと言う事は無く綺麗な顔立ちをしている
肌は白く透明感のある肌は頬は微かに染まっている事から辛うじて
人形じゃ無い事が伺える
それ程に完璧な造形を持つ"彼"の蝋燭火はもう長くはなかった
長い病院生活で衰えた
華奢な肉体
触れれば消えてしまいそうな
儚い魂
"彼"の綺麗な唇が僅かに開く
「こんにちわ、■■さん。今日は雲が無くでとても空が綺麗ですよ」
"彼"はよく通る透き通った声で
未だ扉の前に立つ私に声をかけた
「やぁ…元気そうだねカナデくん。そうだね、今日はとても綺麗な空だ…」
いつも数回言葉を交わし後は静かに沈黙を楽しむ
時折"彼"は気になる事を私に質問してくる
それが私と"彼"との距離であり関係と言える
"彼"は再び窓の外を眺めている
そんな"彼"を見ていた私は胸が締め付けられる様な思いを抱いた
窓から外を見る"彼"はまだ諦めていない
窓の外に見える青空を飛翔する小鳥達をを見つめる"彼"の横顔から見える黒い瞳は強い意思を宿している様に私は感じた
"彼"自身は"彼"自身の容体を知らない
いや、詳しく教えられてないと言うべきか
だが医師に問い詰めた所"彼"の身体を蝕む病魔は既に手の施せない域に達しているようだった
それは"彼"も薄々感じているのだろう
日々自らが弱っていく感覚と言うのはいかがなるものか
「■■さん?どうかしたの?」
いつの間にかこちらを向いていた"彼"は心配そうに私を見つめていた
私は力になる事が出来ないが
"彼"が来世では幸せに生きていける事を切に願う
「いえ、心配ないよ…じゃあまた。」
私は部屋を後にした
【SideOut】
『人間』 雪埜奏
内包生命力/残存内包生命力:9000/93
内包経験値/必要規定経験値:7523/10000
能力:未開放
加護:なし
箱庭世界ーカーディリア