zoku勇者 マザー2編・40

地底大陸編・5

4人組は一旦村の外に出る。……少し歩くと、地面が又大きく揺れた。
 
「ひゃあああっ!!」
 
「また地震か、……ダウド、その、コアラみたいに人に飛びつくのは
よせってば……」
 
「えうう~……」
 
「恐竜が又近くに来ているのかな、それとも地震なのか、
どっちだろう」
 
アルベルトがそう呟くなり、再び地面が大きく揺れ始めた。
 
「両方よっ!」
 
「はえ?両方って……、うわ!」
 
アイシャの言葉に後ろを振り返ると、カニメサウルスよりも
更に巨大で凶悪そうな恐竜が4人を見、背後からぬっと姿を現す。
現われたのは地底大陸最強、巨大凶悪恐竜のハラペコザウルス。
名前の通りいつも腹が減っているらしい。
 
「……じゅるり」
 
「な、何かオイラ達見てヨダレ垂らしてるんですけどおおおっ!?」
 
「まあこの手の奴はお約束だな、倒すしかねえだろ、行くぞ皆!」
 
「うあああっ!オイラ行きたくなあーいっ!」
 
ダウド以外のメンバーが返事をした。ダウドはしっかり抵抗する。
 
「私もこのフライパン折角買って貰ったんだし、まずは打撃で
いきたいわ!」
 
天使のフライパンを構え、アイシャの瞳が燃えている。
……まるで某古典テニス漫画のお蝶夫人の様である。
 
「いや、頼むからお前はよ、って!こらああーーっ!」
 
「たああーーっ!!いっくわよーーっ!!」
 
「アイシャっ!!駄目だよっ!!」
 
ジャミルとアルベルトがアイシャを止めようとするが間に合わず。
アルベルトは急いでスーパーバズーカで先にハラペコザウルスへ
先制攻撃しようとするが。
 
「!?シ、シールドが……、わあっ!!」
 
「きゃーーっ!!」
 
ハラペコザウルスはどうやら最初からシールド系が掛かっており、
アイシャはアルベルトの先制スーパーバズーカの所為で逆に
ダメージが跳ね返り、ふっ飛ばされた。無論、ジャミル達にも。
しっかりダメージが跳ね返る。アイシャはジャミル達の所まで
飛ばされてちゃんと戻った。
 
「きゅうう~……、にゅ……」
 
「おい、大丈夫かっ、ジャジャ馬っ!おーいっ!?」
 
「の、伸びちゃったよお~……、フライパン抱えたまま……」
 
「どうすんだよ、アホベルトっ!これっ!」
 
「ぼ、僕の所為!?だって分らなかったんだもの、仕方ないだろ!」
 
「オメーは個人特殊能力の『チェック』があんだろっ!事前に
チェックしろってのっ!」
 
書いてる奴だって実際あんまり使ってないのでんな事は忘れていた。
 
「……う、うるさいな!とにかく……っ!」
 
「ばしっ!」
 
……とにかく言ってる間に、ハラペコザウルスが尻尾を振り回し、
4人は揃って遠くにふっ飛ばされ猛スピードで宙を舞った。
墜落した場所は運よく青い湯が吹き出る温泉の中であった。
 
「ふう~、とにかく逃げられて良かった……、ねえ、もう戻ろうよお!
あんなの倒せないよおー!絶対無理っ!」
 
足の先だけ温泉に浸かりながらダウドがお湯をバシャバシャ
跳ね飛ばしながら文句を言った。
 
「ダウド、あんなの倒せない様じゃこの先ラスボスに挑むのは
無理だぞ……、ま、いつもの事だけどな、いい加減学習して
くれやって毎度言ってんだけど」
 
「うっ!それは分かってるけどお~……、うう~……、デカすぎるん
だもん……」
 
「私は負けないわよっ!何回だって挑むわっ!」
 
……ジャミルが頭を抱え困り出す。新しいフライパンの所為で
今日は異様にアイシャが張り切ってしまっているので、困った
状況になっていた。興奮が収まるまで、いっその事暫く拘束して
おこうかとも考えたが。フライパンを買ってやるんじゃなかったと
少し後悔。
 
「……う……」
 
「ジャミル!どうしたの!?」
 
「ジャミルっ!?」
 
「ま、また頭痛いのっ!?ライフアップ掛けようか!?」
 
突如しゃがみ込んでしまったジャミルを心配する他のメンバー達。
しかし、ジャミルは顔を赤くし……。
 
……ぐううう~……
 
「俺もハラペコなんだよ……」
 
「何だ、そんな事か……、全くもう……」
 
「呆れたよお~……」
 
「何だとはなんだっ!このアホベルトっ!ダウドもっ!自分一人で
マンモスバーガーむしゃむしゃ平らげておいて何が呆れただっ!
腹が減っては戦が出来……」
 
ぎゅるるる~……
 
ぐるるる~……
 
「私も鳴っちゃった……」
 
「不本意だけど……、僕もです……」
 
このままだと動けないので4人はテレポで一旦地上に戻り、
ある場所へと向かった。大量手数料の掛らないキャッシュ
ディスペンサーで安心してドルを降ろし、4人が向かった
場所とは……。
 
「あああ~、もう天国だわ、これ……、んめえーーっ!」
 
「美味しいーっ!」
 
「もう本当にこんな余裕も出来なくなるかも知れないものね、
いいよね、こういうのも……」
 
「オイラのお腹も年中無休、えへへ~!」
 
サマーズのレストランであった。4人はここぞとばかりに
後悔の無い様、食べたい料理を好きなだけ注文し、只管
食べ捲りお腹に入れた。
 
「よしっ、元気が付けばこれであの糞ザウルスも今度こそ
イチコロだぜっ!」
 
ところが……。
 
「……うえええ~……」
 
「ふええ~、もう動けないわあ~……」
 
「お腹……、いた……」
 
「ぐるじいよおお……」
 
限度を弁えず食べ捲った4人は今度は食べ過ぎて動けなくなって
しまったのである。重すぎでテレポートも出来なくなってしまった
ので身体が元に戻るまでサマーズに一晩留まる事に……。
 
翌日。
 
「よし!今度こそっ!」
 
再びテレポで地底大陸へ。恐竜に気を付け、落ちているプレゼント
ボックスを回収しながら歩く。通常で手に入る中では最強のボディ
防具であろう、海のペンダントを頂く。
 
「いつも思うんだけどさあ~、こういうのわざわざ置いといてくれる
人って親切だよね!」
 
「だから……、そういう事RPGで突っ込んだらキリがないん
だってば、ダウド……」
 
「アホはほっとけよ、アル、さて、こいつを誰が装備するかだけど……、
俺はいいよ、アイシャかアル、どっちかだな、相談して決めてくれ、
俺は別に大丈夫だからよ」
 
「何だよお!ジャミルだってアホの癖に!」
 
「……私はいいわ、買って貰った輝きのコインで充分よ、やっぱり
ジャミルかアルよ、ね?」
 
アイシャが二人の方を振り返る。しかし、アルベルトも首を振り、
ジャミルの方を見た。
 
「僕も大丈夫、やっぱりジャミルはこのPTの攻撃の軸なんだからさ、
君が装備するべきだよ、ほら……、これからますます大変になるんだし、
しっかり頑張って貰わないと……」
 
アルベルトがジャミルに海のペンダントを手渡した。
ジャミルは戸惑いながらもペンダントを受け取る。
 
「仕方ねえな、後悔すんなよお前ら……、こんなにすげえ
防具なのに……」
 
「いいのっ、うふふ!」
 
「ふふっ……、だよね」
 
「はあ~、いいよね、皆は……、いい防具装備出来てさあ~……、
オイラが普通の防具装備すればますますヘタレるって不公平だよお」
 
「何言ってるのよ、ダウドだって凄い専用防具あるじゃないの!」
 
「う~ん、何なんだろう、この王者シリーズって……、!?うわわ!」
 
「きゃ!?」
 
「ま、また地震かっ!……恐竜かっ!!」
 
再び地面が揺れ始め、……ハラペコザウルスが四人の前に姿を現した。
 
「えーと、僕がチェックした情報によると……、やっぱり打撃攻撃は
控えた方が良い、PSI中心でいった方が無難だ、そういう事で、
ダウド、アイシャ、大丈夫かい!?」
 
「任せてっ!」
 
「決して大丈夫……、とはお返事出来ないけど、頑張るよお……」
 
「……じゅるるる……」
 
ハラペコザウルスは4人を見て舌なめずり。大分腹が減っている様子。
 
「汚ねえヨダレなんか垂らしやがって……、けど、こいつはこの
地底に蔓延るされど恐竜の中の一匹なんだろうな、考えると
こいつらゴキブリ並にうじゃうじゃ他にも生息してるって
考えると寒気がすらあ……、昨日遭遇した奴なのかも判断出来ねえし」
 
「嫌な事言わないでよおお~……って、ええええっ!?」
 
「ダウドっ!?」
 
「ぴろーん!」
 
ハラペコザウルスが突如長い舌を伸ばし、ダウドを捕まえ拘束した……。
そして、あっという間にそのまま……。
 
「ごっくん。」
 
「きゃあああーーっ!ダウドがっ!!」
 
「……く、食われちまっ……、お、おおーいっ!ダウドおーっ!!」
 
「た、大変だっ!!」
 
ハラペコザウルスにはシールドβが掛かっているのにも係らず、
ジャミルは無我夢中でバットを構えハラペコザウルスに突っ込んで
行った……。

「ぺロ。」
 
「う、わわわわっ!!」
 
「ジャミルっ!」
 
……ハラペコザウルスは今度はあっという間にジャミルを飲み込んだ。
アルベルトとアイシャが止める事も出来ないまま。そのスピードは
強烈な速さであった。
 
「……にや。」
 
「ひいっ!?」
 
ハラペコザウルスは今度はアルベルトの方を見てヨダレを
垂らしている。今度はアルベルトを狙う気らしい。
 
「させないわよっ!あっちへ行きなさいっ!……じゃないと私が
お相手するわよ!」
 
天使のフライパンを構えて勇ましくアイシャがアルベルトの
前に立った。……までは良かったが……。
 
「アイシャ!危ないからっ!それにあっちへ行ったら
飲み込まれたジャミルとダウドが困るよ……、もしもの為に
やっぱりこれも使っておこう……」
 
まずは打撃攻撃が通りやすい様、アルベルトが中和マシンで
シールド解除。ハラペコザウルスを包んでいたシールドβは
あっという間に消えた。
 
「(汗)とにかくっ、二人が消化される前に何とか助けましょ、
アルっ!」
 
「うん、……わあっ!!」
 
「きゃあっ!アルーーっ!!」
 
「ペロペロ。」
 
しかし、ハラペコザウルスは……横から長い舌を伸ばして等々
アルベルトまで飲み込んだ。アイシャは激怒しフライパンで
ハラペコザウルスをげしげし叩く。しかし、ハラペコザウルスには
蚊が刺した程度にしか感じていないのであろう。
 
「こらーーっ!なんて事するのっ!出しなさいっ、出しなさいよっ!
……ハアハア、それにしても……」
 
そう言ってアイシャの頭に一つの考えが浮かんだ。……何故か
自分だけ飲み込もうとしない。それは何故……?
 
『しぶとい、……奴ら食道付近で抵抗して突っかかっているな……』
 
「……?聞こえる?この恐竜の声が……、私の中に?」
 
『……やかましいぶすは要らない。まずい。腹壊す。』
 
「なんですってえーーっ!?失礼ねっ!バカっ、バカっ、
バカバカバカっ!……きゃあああーーっ!!」
 
ハラペコザウルスは纏わりつくアイシャがうざったいのか、
鼻息でアイシャを吹き飛ばした。……ハラペコザウルスは
そのままのしのし歩いて行こうとした。野郎3人を
飲み込んだまま。しかし、直後に物凄いスピードでアイシャが
ダッシュで煙を上げて戻って来た。
 
「まちなさあーいっ!ハア、ハア……、に、逃げられたら……、
こ、困るんだからっ!此処であんたを倒さないとっ……!」
 
しかし、自分一人で一体どうやってこんなデカブツを倒したら
いいのかアイシャにはどうしたらいいか分らなかったが、とにかく
頑張るしかなかった。
 
『お前しつこい、栄養がいるんだ、……の、為に……、……でも
お前なんか喰ったら腹壊す、だからお前は要らない』
 
「きゃ!」
 
突如大人しく前を歩いていたハラペコザウルスが急に唸り声を
上げて振り返るとアイシャを鋭い眼球で睨みつけた。どうやら
本気でアイシャを殺すつもりらしかった。
 
『イケメン人間の男共は栄養になる、けどお前は要らない、
喰う気がしない』
 
「要らない要らないって……何よっ!もしかして……、あなた面食い……、
メスね?呆れたっ!恐竜の癖にっ!」
 
『……ぬへえ~、そういう事だ、お前は要らない、だから今此処で
この爪で……、切り刻んですぐに始末してやる!』
 
「望むところよっ!お相手するわっ、ひろみっ!」
 
『ひろみ?お前、ぶっ壊れてる、やっぱり食べたくない……』
 
二人の女?は互いに睨み合う。アイシャはPSIを試み、全神経を
集中させる。しかしそれよりも素早くハラペコザウルスの尻尾
振り回し攻撃がアイシャに当る。アイシャはダメージを受け地面に
つんのめって倒れた。その隙にハラペコザウルスは巨大な足で
そのままアイシャを潰そうとした。
 
「……私、負けないっ!ええいっ!!」
 
仰向けで寝転がったままの体制からアイシャがハラペコザウルスの
足の裏を思い切り力を込めフライパンで引っ叩いた。スマッシュに
なった様でハラペコザウルスは大きな呻き声を上げのた打ち回る。
その隙を見てアイシャもぴょこんと起き上がった。
 
「どう!?舐めたら駄目なんだからっ!さあ、ジャミル達を返してっ!」
 
『お前、中々人間のメスの癖に……、根性はあるな、面白い……、
それにしても何故お前は私の言葉が分る?』
 
「さあ、私にも分らないわ、でも時々、どうしてかあなた達の
言葉も聞こえる時があるわ」
 
『変な人間だな、お前は……、ますます面白い、……唯の傲慢で
野蛮な奴らとは違うのか……、ペッ……』
 
「あっ、……皆っ!」
 
ハラペコザウルスが飲み込んだ男3人を吐き出す、……3人とも
唾液まみれで気絶してしまっていた。アイシャは思わず3人に
駆け寄る。
 
『……変なお前の根性に免じてそいつらは返してやろう、持って行け』
 
「……持って行けって……、変な言い方、でも皆無事でよかった……、
ねえ、あなたも根っからの悪い恐竜さんじゃないのね!」
 
「フン、この地を荒し、我らに無謀な戦いを挑んでくるのは元々
お前達人間共の方だ、いつの時代でもそうだ、人間ほど野蛮で
傲慢な生き物はいない……最近は人間共も地上に移り住み、此処を
訪れる者も殆どいなくなったと記憶していたがな』
 
「私達だってあなた達と分かり合えれば何もしないわ!ね!」
 
アイシャがハラペコザウルスの方を見てウインクした。それを見て
ハラペコザウルスは首を傾げた。
 
『やっぱりお前は変わっている、特におかしいな……』
 
「いいのっ!……あ!あなた、赤ちゃんいるのね?聞こえるわ、
あなたのお腹の中から、うふふっ!あ、そうか、だから……」
 
『そうだ、だからこれから産まれる自分の子の為にも……、
栄養源が必要だった、久々の良い栄養源になるかと思ったが、
諦めよう、ちら』
 
ハラペコザウルスはジャミルの方を名残惜しそうに見た。
途端……。
 
「うわあああああっ!?」
 
視線を感じたのかジャミルが慌てて起き上がった。
 
「あっ、ジャミル、起き……」
 
「てめえっ!このクソザウルスっ!よくもっ!!……アイシャっ!
アイシャまで喰う気だなっ!?この野郎!!」
 
ジャミルが敵意向き出してハラペコザウルスに攻撃を仕掛け
ようとした。アイシャは慌ててジャミルを止めようとする。
 
「待ってジャミルっ!お願い、話を聞いて!この恐竜さんは
悪い恐竜さんじゃないの!お願い、……ダウドもアルも二人とも
無事よ、ちゃんと返してくれたのよ!」
 
アイシャに言われジャミルは隣で唾液まみれで気絶している
アルベルトとダウドの無事を確認した。しかし……。
 
「お前何言ってんだよっ!寝ぼけんな!こいつは俺達を喰おうと
してたんだぞ!一時的に吐き出しただけかも知れねえじゃねえか!
今此処で始末しとかねえと!」
 
「だからっ、私と恐竜さんとでちゃんとお話しして分かり合えたのよっ!
もう本当に何もしないったら!お願い、ジャミル止めて!……ばかっ!
この頑固者っ!!」
 
「うるせー!放せっ!何してんだよっ、こ、こらーーっ!!」
 
「……くあぁ~……」
 
ハラペコザウルスは自分の目の前で討論するジャミルとアイシャを
暇そうに眺めていた。
 
『……ううう~、い、痛い……、急に……』
 
「ハラペコザウルスさんっ!?」
 
「おわ!?」
 
アイシャの心の中に急に激痛を訴えてきたハラペコザウルスの
声が聞こてきた。ジャミルはアイシャに拳で顎を殴られその場に
倒れた。アイシャは急いでハラペコザウルスに駆け寄る。
 
「……お前なああーーっ!!」
 
「大丈夫?……もうすぐ産まれるのね、陣痛だわ!ジャミルっ、
何してるのっ!早く手伝ってよっ!!はやくーーっ!!」
 
『別に平気だ、我らはこうやっていつも一匹で出産してきた、
人間の助けなど……』
 
「でも今は私達側にいるんだから!お手伝いさせて!えーと、
どうしたらいいのかしら、恐竜さんのお産に立ち会うなんて
始めてだし、えーっと……」
 
『では静かな場所まで移動したい、邪魔が入らない様に見守って
いてくれ、それだけでいい……』
 
「分ったわ、……ジャミルもいいわねっ!?」
 
「は、はい……」
 
一体何を話しているのかジャミルにはちんぷんかんぷんで
あったが、とにかくアイシャが怖いので従うしかなかった。
結局はやはり尻に敷かれる男なのである。アイシャの大声で
気絶していたアルベルトとダウドも漸く目を覚ましたが、
やはり目の前の騒動に何が起きているのか分らず二人で
首を傾げた。
 
「どうなってんのお……?オイラ達、確か食べられたんじゃ
なかったっけ」
 
「さ、さあ~……」

……あれから数時間。ハラペコザウルスはジャミル達が見守る中、
静かな草場で見事に数十個の卵を無事出産した。
 
「凄いわ、ハラペコさん、よく頑張ったね!お疲れ様……」
 
アイシャがすり寄るとハラペコザウルスはアイシャの顔を
ペロッと舐めた。
 
「それにしてもアイシャってホント凄いねえ……、恐竜とも話が
出来ちゃうなんてさあ~……、しかも友達になっちゃうし……、いや、
一番最初に喰われたオイラはどうなる事かと思ったけど」
 
「ううん、全部の子と話が出来る訳じゃないの、ダウド、……偶々
このハラペコさんは声が聴こえたから……、分かり合えたんだわ……」
 
「ふえ~……、アイシャってホント、不思議ちゃんだね、ジャミル……」
 
「不思議の枠を越えてるよ、理解不能だぜ……、全く……」
 
「何よっ、ジャミルっ!」
 
「こら、ジャミルっ!……それにしても、アイシャ、僕らは卵が
孵るのをこのまま見届ける事は出来ないよ、残念ながら……」
 
「……アル、分かってるわ……」
 
アルベルトに言われ、何となく淋しそうにハラペコザウルスの顔を
見つめるアイシャ。
 
『世話になったな、……もう大丈夫だ、お前達にはまだやるべき事が
あるのだろう、もう行け、娘……、何も心配する事はない』
 
「うん、そうだね……」
 
「おい、……アイシャ?」
 
ジャミルが聞くと、アイシャは急いで目頭を擦りジャミル達の
方を向いた。
 
「ハラペコさんがもう大丈夫だから戻れって行ってる、……戻りましょ、
グミ族の村に、私達もそろそろ先に進まないとね……」
 
「そうか、お前も……、大丈夫なのか?」
 
「ええ、大丈夫よ!」
 
何となく元気がないのを心配し、アイシャに様子を覗う
ジャミルだったがアイシャは笑顔でジャミルに返事を返した。
 
「な、なら、……いいんだけど…、さ……」
 
「そうだよねえ~、……ボソ、アイシャ元気ないと……、
心配だもんねえ~、ねえ、ジャミルっ!」
 
「何だよバカダウドっ!何でそんなに嫌らしい目で見てんだよっ!
おい、コラっ!」
 
「べっつにい~?心配だもんねえー!…ボソボソ、俺は……、
ア・イ・シ・ャがあああー!……あうっ!」
 
……それ以上言わせない様に……、ダウドの口を塞ぎながら慌てて
向こうの方へダウドを引っ張って行くジャミル。顔を真っ赤に
しながら。
 
「はあ~、あの二人にも困ったモンだよ、全くもう……」
 
『……随分とやかましい奴らだな、あんなモノ食べたら……、こっちが
どうにかなってしまう処だったな、うっかり全部腹に入れなくて
良かった……』
 
「そうよ、食べ物には気をつけないと駄目よ、ジャミルみたいに
なっちゃうわよ!」
 
「ねえ、アイシャ、ハラペコザウルスは何て言ってるんだい?」
 
「んーと、食中毒には気を付けるって言ってるわ!」
 
「……はあ?そ、そうだね、時期的にもね……」
 
「うふふ!」
 
アルベルトが首を傾げる。アイシャがそれを見て微笑むと、
ハラペコザウルスも反応するかの様に大きく一声上げた。
 
「はあ、アイシャって本当に不思議な子だなあ~……」
 
……やがてダウドにヘッドロックを掛けたまま、激おこ状態で
ジャミルが戻って来た。
 
「お帰り、……君達一体何してたの……」
 
「別にィ~?ちょっとそこら辺一回り回って来ただけだっ!」
 
「その状態でかい……」
 
「いだだだだ!いい加減放してよおお~!アホジャミルっ!
首伸びちゃうじゃないかっ!」
 
……アホ二人はほおっておいて、最後にもう一度、アイシャが
ハラペコザウルスに寄りそう。
 
「じゃあ、私達行くね、頑張ってね、元気な子が産まれる様に
願ってるわ」
 
『お前も達者でな、……娘よ、お前も中々強かったぞ……』
 
「……ありがとう、さようなら……、ハラペコさんもね……」
 
ハラペコザウルスと別れを告げ、4人はグミ族の村へと戻った。
ちょっとしたハプニングにも見舞われたが、アイシャにとって実に
貴重な経験が出来たらしい。それでも……折角出来た友達と別れ
なければならないのは彼女にとって辛い事でもあった。
 
「はああ~、もう疲れた疲れた、むにゃ……、オイラお疲れ
ですよお~……」
 
宿屋に戻るなり、部屋でダウドはすぐにベッドに入ると眠ってしまう。
毎度の事だが。
 
「俺が床で寝るから、アルはそのままダウドと寝ろよ、狭いけどな……」
 
「でも、ジャミルだって疲れてるだろ?僕が床で寝るよ……」
 
「明日から又、洞窟巡りなんだ、最後の場所のな……、しっかり
身体休めとく事も大事だぞ!なーに、俺なんか大丈夫だって!
何処でも寝られっからよ!」
 
「じゃあ、私が床で寝ようか?ねえ、こっちのベッド使ってよ、
ジャミル!」
 
「アホ!お前なんか余計身体休めなきゃ駄目だろうが!
もう寝ろこの野郎!」
 
ジャミルはアイシャに上から無理矢理毛布を被せるとアイシャの
全身をすっぽり覆い隠した。
 
「……きゃ!何よっ、ジャミルのバカっ!」
 
「はいはい、もう聞こえなーい!お休みさん!」
 
アイシャから横をつん向いてさっさと目を瞑るジャミル。
アイシャは呆れるが。
 
「アイシャ、折角ジャミルが気を遣ってくれてるんだから……、
僕らももう休もう、ね?」
 
「分ったわ……」
 
ジャミルが心配であったものの、アルベルトの言葉に同意し、
何となく仕方なしであったが自らも身体を休め、就寝する事にした。
そして、時刻は丑三つ時。アイシャがもそもそとベッドから
起き上がり……。
 
「ジャミル、ありがとね」
 
「……」
 
アイシャはベッドから降りるなり小声で呟くと、眠っているジャミルの
頬にこっそりと、そっとキスをしたのであった。無論、寝ぼけている
訳ではなく……。
 
「お、おやすみなさい……」
 
その後、慌てて自分のベッドに戻ると横を向き、枕に顔を埋めて
眠ってしまったのであった。
 
(……うっわ!ま、ますます寝られなくなっちまった!)
 
実はこの男は、寝たふりをしていただけで、寝られなくてずっと
困っていたのであった……。アイシャのチュウでますます噴気し、
更に困ってしまったジャミルは慌てて宿屋の外に飛び出して行った。
 
「……はうう~、アイシャの奴……、とんでもねえ事しやがる……、
いや、嬉しかったけどさ……」
 
そう言いながらジャミルは自分の頬を触った。顔がぽわーんと
にやけている。嬉しいのでにやにやしながら村の入り口近くまで
歩いてみる事にした。入り口付近には相変わらずのグミ族の門番が
いて見張りをしている。
 
「大変だな、一晩中……、見張りもさ、なあ、今夜だけ俺が交代して……」
 
「があ~、ぐう……」
 
「おっさん寝てんのか、見張りも何もねえじゃんよ……、平和だな……」
 
「……は!お、お前、何してる……」
 
「よ!」
 
見張りのグミ族はジャミルに気が付くと慌てて目を覚まし、
口のよだれを拭いた。
 
「子供が起きている時間ではないぞ!とっとと宿に戻って寝ろ!」
 
「だってさあ~、寝られねえのよ、困ってんだあ~……」
 
「寝れなくても無理にでも寝ろっ!おらっ、来いっ!」
 
「いででで!んだよ、おっさんさっき居眠りこいてただろ!
ちゃんと見張りしろよ!さぼってんなよ!」
 
「やかましいっ!お前が心配するなっ!」
 
ジャミルは見張りのグミ族に猫の様に首根っこを掴まれ、
結局は宿屋に連れ戻されたのであった……。

zoku勇者 マザー2編・40

zoku勇者 マザー2編・40

SFC版ロマサガ1 マザー2 クロスオーバー 年齢変更 ジャミル×アイシャ カオス ギャグ 下ネタ

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 冒険
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2026-07-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work