春色エプロン エピソード1~葉子おばあちゃんとの出会い~
吉田くるみは、36歳の会社員である。
今の会社は5年間ほど勤めていたが、ある日、凡ミスである商談の時間に間に合わず、、、会社に迷惑をかけてしまう。
その際に、先輩がカバーしてくれたのだがずっと会社をやめることを迷っていたくるみは、「いい機会ね」と自ら退職してしまう。
けれど、、、くるみは部屋で、ひとりで泣いた時もあった。
「あ~あ、30代半ばで転職なんて・・。」
「どうしたらいいかな・・? ママにもお金を頼めないしね」
この年親に生活費を頼むほど、くるみの両親は、甘やかしてはくれなかったのである。
会社を辞めたことを言うと、ママはヒステリックに叫んでいた・・。
「どこでもいいから働いて、、、少しは、生活費くらい、いれなさいよ!」
『はいはい、、わかりました』
くるみは、心で小さく返事をしてベッドの上で、ホットココアを飲むのだ。
まあ、いいか。明日には、なんとかなるだろう・・。
くるみは、布団にくるまり、熟睡してしまったのだ。
ーー ある初夏の日ーー
吉田くるみは、小さな喫茶店でレモンソーダを飲みながら、スマホで求人をさがしている。
もちろん、会社を辞めてしまったので、バイトをさがしているのだった。
「あ、、あんまり良いのは無いなあ。体力を使うバイトは、、自信が無いし・・。」
ぶつくさ言いながら、画面をスクロールする。。
その時、、ふっと、、手がとまった。
クルミの、小さな胸は、ドキドキしていた・・。
「えーー、このバイトって、おいしいかな?すごく時給がいいよねー」
くるみが見ていたのは、次の募集内容だった。
『この夏、老人の世話をやってみませんか?資格は要りません。。交通費、夏季手当付きます!食事作り、散歩の付き添い、家事の手伝い、話し相手が主な仕事内容です。』
詳しく、内容を見てみる、くるみだった。。
もう一杯、おかわりのレモンソーダを頼んで、、喫茶店の椅子に座り直して、声に出して読んでみた・・。
「ふむふむ、おばちゃんの世話をすればいいのね。たった、1ヵ月だけだし、、そうだ、私、昔に実の祖父の世話をした経験があったわ!これに、決定ね。。」
早速、これを掲載している会社へ電話してみると・・。
「はい、そうですか、、早速、お願いしたいですよ」
と、誠実そうな40代くらいの担当の男性が受け答えしてくれた。
「あ、あの、、前のバイトの人って、なんで辞めちゃったんですか??」
もしかして、この案件に「何か、問題でもあるのでは?」と、ちょっとは疑うくるみだったのである。
(くるみは、割と心配性で疑り深い性格だった)
数分たって、作ったような優しい声で男性は、こう言った。
「えええ、、、なにも問題は無いですよ、前のバイトの人は、、なんでも妊娠したとかで・・。」
「とっても、温和なおばあちゃんですからね。業務も、ラクですよ!」
これを聞いて、安心したくるみは、、明るくお願いしたのだ。
「じゃあ、申し込みます。。そのバイト、やらせてください」
くるみの頭の中には、、高額なバイト料しか、この時は無かった。
「あ~あ、このバイトが終わったらひとりで食べ放題に行ったり、テーマパークでも遊びに行っちゃおうかなーー」
くるみは、、ひとりで、『どんなおばあちゃんなんだろう?』と想像しながら、、喫茶店を後にしたのだった。
くるみには、ある考えが浮かんでいたのだ。
「もし、嫌だったら3日で、ドロンしちゃえば 自分も辛くないし・・」
こういう考えって、、読者の皆様の中にもありませんか・・・。
慣れないバイトって、不安だし、辞めたくなる時も多いでしょうね。
~ 2週間後の、、7月の中旬~
吉田くるみ、、36歳は新品のオレンジのシャツを着て、黒のジーパンをはき、ある家の玄関の前に立っていた。
「え、ここが葉子おばあちゃんの家ね!」
会社からの、「依頼メール」を、眼鏡をかけてじっと見てみる。
ーー 名前は、相川葉子さん( 84歳とのこと)。。一人暮らし、、病気には、かかってない。。飼っていた犬が居たが、、3年前に亡くなる。
「苗字が、相川さんて言うのね、きっと、温和な性格って言ってたからだいじょうぶよね」
吉田くるみは、3、4回ほどチャイムを押すか押さないか迷って、やっと、5回目で、、思い切ってチャイムを押してみる。
ーー 数秒後ーー
「はい、はい、誰かね・・?しばらく、誰もこなかったのに」
そう、ぶつくさと言いながら出てきたのは、、グリーンの時代遅れのワンピースを身に付けた、、、老齢の、おばあちゃんだった。
おばあちゃんは、目をこじ開けて、じ^^と、くるみを凝視している。
まるで、その視線は痛いくらいで、、思わず、くるみは、たじろいでしまう。
『はっ、、いけない、いけない、バイトなんだわ!』
「こんにちは! 私は、吉田くるみです」
「今日からバイトで、ここにきました」
お婆ちゃんは、よく見ると入れ歯がはいってないらしく、口元はしょぼしょぼして、、思わず、くるみは笑ってしまう。
そこを我慢して、、営業スマイルでくるみは、、、おばあちゃんに話しかけた。
「え?? あんた、誰なの?バイトなんて、聞いてないよ。もしかして、泥棒に入るつもりかい??」
葉子さんという、おばあちゃんは鋭い目つきになって、温和どころか疑い深そうに、、くるみを睨んでいる。
「きゃあーー、どうしたの??なんか、電話のおじさんの説明と違うけど、、」
くるみは、担当のおじさんが「温和で、いいおばあちゃんですよ」と言っていたのを、鵜呑みして信じていたのだ。
2分くらい、くるみを見ていたおばあちゃんだったが、ふっと、ため息をつくとこう言ったのだ。
「ほらほら、仕方がないね。。私に用事があるんだろ、中に入ったら?」
おばあちゃんは、そう言って家の中にあげてくれた。。
くるみは、その小さな背中を見ながら、、こう、つぶやいたのだ。
「あーーあ、このバイト、どうなっちゃうんだろう?」
「聞いていた話と違うよ・・!? おじさん、、どうしてくれるの??」
外は、7月の太陽の日差しが照りつけて、夏の風が、さわやかに吹いていた・・。
( 続く )
春色エプロン エピソード1~葉子おばあちゃんとの出会い~