家政婦は見なかったことにした。4

徹夜というものは若い人の特権だと思うのです。
年を取るとどうも夜更かしというものが出来なくて
翌日の体のだるさや、節々の痛みには耐えがたい何かがあると思うのです。
これは、決して私が若くないと言っているわけではありませんよ。
あくまで、一般論です。

『・・・』

・・・誰のせいで夜更かしする羽目になったと思っているのですか。
いいえ、決してあなたのせいだとは思いませんよ。
ええ、誰にだって仕事を放り出してついつい見入ってしまうことはあります。
私にもありますよ。
でも・・・

私は、見ていませんよ。
仕事の最中に、旦那様が時間を忘れてトランプでタワーを作るのに夢中になっている姿なんて。
私は、見ていませんよ。
仕事の最中に、奥さまが電話を片手にテレビショッピングを食い入るように見ていた姿なんて。
私は、見ていませんよ。
仕事の最中に、お嬢様が勉強の休憩と称して恋愛ゲームを全てクリアして喜んでいた姿なんて。
私は、見ていませんよ。
仕事の最中に、お坊ちゃまが帰り道が一緒のように見せかけて好きな女の子をつけた姿なんて。

私は、何も見ていません。ですから、あなたも何も見ていません。一条家は今日も安泰です。それにしても、今日はどうしてこんなにも仕事が残ってしまったのでしょうね。未だに不思議でなりませんが、あと少しで日が昇ります。仕事に支障が出ても困りますので大人しく寝るとしましょう。では、おやすみなさい。

家政婦は見なかったことにした。4

家政婦は見なかったことにした。4

相変わらず家政婦は家政婦であった。一条家、こんなんで大丈夫なのか。

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-02-07

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